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2026.10.22 らしくコラム

ランサムウェア被害の業種別件数と対策|警察庁の令和8年上半期版

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

工場の機器盤の扉を開けて束ねたLANケーブルを確かめる手元

この記事の結論

  • 警察庁の令和8年上半期の統計では、ランサムウェア被害は123件で、製造業が37件と約3割を占めます。
  • 規模別では中小企業が79件で約6割を占め、大企業だけが狙われるわけではありません。
  • 侵入はVPN機器が約5割で、バックアップがあっても戻せない例が多く、ここが業種を問わない備えの要です。

※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

うちの業種はランサムウェアに狙われやすいのか。規模の小さい会社まで本当に被害が出ているのか——。取引先の被害を耳にしたとき、情報システムの担当者が最初に知りたくなるのは、こうした点ではないでしょうか。ランサムウェアは、データを暗号化して使えなくしたうえで、元に戻す対価を要求する不正なプログラムです。

業種や規模ごとの被害件数は、警察庁が半年ごとに公表しています。ただし件数が多い業種だけが危ないわけではなく、件数の少ない業種でも被害は出ています。本記事では、IT投資を判断する担当者に向けて、業種別・規模別の被害件数、被害企業に共通する弱点、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。

警察庁の被害統計とは

警察庁は年に2回、サイバー犯罪やサイバー攻撃の状況を「サイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」として公表しています。本記事が使うのは、2026年9月に公表された令和8年(2026年)上半期版です。企業や団体から警察に報告されたランサムウェア被害を、業種別・規模別に数えています。

  • 令和8年上半期の被害報告件数は123件で、統計を取り始めた令和2年下半期以降、半期として最も多い件数です*1
  • 直近の半期は、令和7年上半期が116件、令和7年下半期が110件でした*2
  • データを盗んだうえで「払わなければ公開する」と迫る二重恐喝が、被害の多くを占めています*1
  • 件数は警察に報告された被害の数です。報告されなかった被害は含みません

件数の数え方は業種も規模も同じで、報告のあった123件をどちらの見方で分けたかの違いです。以下ではまず業種、次に規模の順に、公表値をそのまま並べます。

業種別の被害件数

業種別では製造業が37件で、全体の約3割を占めます。*1 警察庁は、続いて卸売・小売業、情報通信業、不動産業・物品賃貸業が上位にあるとし、これら以外にもさまざまな業種で被害が出ていると書いています。下の表は、警察庁の図に載っている順と件数をそのまま写し、業種ごとの備えを添えたものです。

工場の生産ライン脇に並ぶ制御盤の列と配線管

ランサムウェア被害の業種別件数(警察庁の令和8年上半期の公表値と掲載順)と備え
業種 件数 社内でやること 外部に頼めること
製造業 37件 工場や拠点ごとのVPN機器(社外から社内網へつなぐ装置)と保守用の回線を一覧にする 拠点を含めた社外との接続点の洗い出しと、機器の弱点の診断
卸売・小売業 15件 受発注や店舗のシステムが止まったときに、手作業で回す手順を決めておく 受発注システムのバックアップと、戻す手順の整備
情報通信業 9件 顧客の環境へつなぐ経路と、誰がどの権限を持つかを一覧にする 社外の専門家による侵入の試験と、管理者権限の見直し
不動産業、物品賃貸業 9件 顧客や契約の情報をどこに置いているかを把握する 顧客情報の置き場所の整理と、閲覧できる人の絞り込み
医療、福祉 9件 診療や介護の記録が開けなくなったときの紙の運用を決めておく 記録システムのバックアップを本体から切り離して保管する仕組みづくり
建設業 8件 現場から社内へつなぐ端末と回線を把握する 社外からの接続の設定見直しと、多要素認証の導入
その他 36件 表にない業種も、社外との接続点とバックアップの点検から始める 上の各行と同じ点検を、自社の業務に合わせて組み立てる

製造業が多い傾向は今回だけではありません。令和3年から令和7年までの5年間の合計でも、1,021件のうち353件が製造業でした。*2 一方で令和8年上半期でも、製造業以外の業種を合わせると123件のうち86件と、全体の7割近くになります。自社の業種が上位にないことは、狙われにくい理由にはなりません。

規模別の被害件数

規模別では、中小企業が79件で約6割を占めました。*1 前の年と同じ傾向で、令和7年の1年間でも226件のうち143件が中小企業です。*2 大企業だけが狙われるわけではなく、むしろ件数の上では中小企業の被害が多いという結果です。

ランサムウェア被害の規模別件数(警察庁の公表値)と備え
規模 令和8年上半期 令和7年(1年間) 社内でやること 外部に頼めること
中小企業 79件 143件 VPN機器の更新と、多要素認証(パスワードに加えてもう1つの確認を求める仕組み)の担当者を決める 機器の監視と更新の運用、バックアップの点検
大企業 31件 64件 子会社や海外拠点を含めて、社外とつながる機器を把握する グループ全体の接続点の診断と、復旧の訓練
団体等 13件 19件 限られた人数で、止まったときに誰へ連絡するかを決める 初動の窓口と、システムの復旧作業

中小企業では、システムの担当者が1人か2人という会社も珍しくありません。機器の更新やバックアップの点検が、ほかの仕事に押されて後回しになりやすい環境です。担当者を決めるところまでは社内で行い、日々の監視や更新の作業は外部に頼む、という分け方も選べます。

被害企業に共通する弱点

警察庁は、被害に遭った企業・団体へのアンケートの結果も公表しています。回答した組織の数は質問ごとに違いますが、業種や規模を問わず共通する弱点が見えてきます。

  • 侵入の経路:VPN機器からの侵入が約5割を占めます*1。回答のあった36件のうち18件がVPN機器、9件がリモートデスクトップ(社外から社内のPCを操作する仕組み)でした*2
  • バックアップ:取っていた組織は50件中44件でしたが、バックアップから戻せたのは40件中11件にとどまります*2
  • 戻せなかった理由:29件のうち14件は、バックアップ自体も暗号化や消去をされていました*2
  • 費用と期間:復旧に1,000万円以上かかった組織が約6割、1か月未満で復旧できた組織は5割弱です*1
  • 事業継続計画:回答45件のうち、サイバー攻撃を想定に含めて策定していたのは6件でした*2

ランサムウェア被害企業へのアンケート結果を4つの箱で左から並べた図。侵入の経路はVPN機器が約5割、バックアップから戻せたのは40件中11件、復旧に1,000万円以上かかった組織が約6割、サイバー攻撃を想定した事業継続計画は45件中6件。

バックアップを取っていても戻せないのは、本体と同じネットワークに置いたままだと一緒に暗号化されるためです。手口と対策の全体はランサムウェア対策と復旧計画の要点、戻せるかを確かめる方法はバックアップは本当に戻せるかで扱っています。

外部に頼むときに確認しておきたい点

統計を見ると、侵入の入り口とバックアップの置き方が、業種を問わず弱点になっています。この2つは専門の知識と継続した手間が要るため、外部に頼みやすい部分です。頼む前に、次の点を社内で整理しておくと話が早く進みます。

ケーブルを外したバックアップ用の外付けディスクを保管ケースに収める手元

  • 範囲:VPN機器やリモート接続の点検、バックアップの設計、復旧の訓練のうち、どれを任せるか
  • 現状の一覧:社外とつながる機器と回線、バックアップの置き場所を、分かる範囲で書き出しておく
  • 体制:異常に気づいたときの連絡先と、夜間や休日に誰が受けるか
  • 検証の方法:バックアップから実際に戻す訓練を、どの頻度で行うか
  • 運用後の見直し:機器の更新や設定の変更を、誰がいつ確かめるか

業種が違っても、確かめる項目はほぼ同じです。そのうえで、製造業なら拠点の回線、医療・福祉なら記録システムのように、自社の業務で止まると困るものから優先順位を付けます。事業が止まったときの備えはIT-BCPの考え方と策定ステップも参考になります。

まとめ:業種別の被害で確かめておきたい3つの点

ランサムウェア被害の業種別・規模別の件数から備えを考えるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、製造業が最も多いものの、ほかの業種を合わせると全体の7割近くになり、どの業種でも起こりうること。第二に、件数では中小企業が約6割を占め、担当者が少ない会社ほど点検が後回しになりやすいこと。第三に、侵入の入り口になりやすいVPN機器と、戻せないバックアップが、業種を問わない弱点であることです。この3点を踏まえておけば、「うちの業種は関係ないと思っていた」という事態を避けやすくなります。点検や復旧の備えに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

LASSICは2006年の創業以来、システムの運用・保守に特化したプライム(一次請け)のシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。日本ニアショア開発推進機構の認定ベンダーとして、全国のリモート人材による開発・運用の体制を整えています。

ランサムウェアへの備えでは、まずVPN機器やリモートデスクトップなど社外とつながる接続点を洗い出し、機器のファームウェア(内部のソフトウェア)の版と多要素認証の有無を一覧にします。設計の段階では、バックアップを本体のネットワークから切り離す方法(オフライン保管や、書き換えできない保存領域)と、どこまでの時点に戻せればよいかを、業務の止まり方に合わせて決めます。検知にはEDR(端末の不審な動きを記録して知らせる仕組み)を使い、ログは攻撃者に消されない場所へ集めて保全します。運用では、バックアップから実際に戻す訓練を定期的に行い、結果をもとに手順と保管の方法を見直します。

よくある質問

警察庁の統計はどのくらいの頻度で更新されますか

上半期の分と1年間の分の、年2回公表されています。業種別・規模別の件数はどちらにも載っているため、半年ごとに自社の業種の動きを見直せます。図に使われた数値は、表計算ソフトの統計データとしても公開されています。

被害に遭ったら警察に届け出るべきですか

警察庁は、被害に遭ったときは早めに警察や関係機関へ通報・相談するよう呼びかけています。*1 警察は、初動対応への助言や、暗号化されたデータを元に戻すツールの提供などの支援ができるとしています。取引先や個人情報への影響がある場合の対応は、契約や専門家に確かめながら進めます。

件数が少ない業種なら対策は後回しでよいですか

後回しにはしないほうがよいでしょう。表の上位6業種に入らない業種をまとめた「その他」だけでも36件あり、全体の約3割にあたります。*1 侵入の経路やバックアップの弱点は業種を問わず共通しているため、まずは社外との接続点の点検から始めると進めやすくなります。

ランサムウェアへの備えと復旧体制づくりのご相談

社外との接続点の点検から、戻せるバックアップの設計、復旧訓練の運用まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。

2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。

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出典

  1. *1 参考:警察庁「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(令和8年9月10日公表)(https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/data/R8kami/R08_kami_cyber_jousei.pdf)。出典:本編9〜11ページ(ランサムウェアの定義、被害報告件数123件、二重恐喝、侵入経路のVPN機器約5割、図表6 規模別・業種別件数、復旧費用と期間)と、被害時の通報・相談の呼びかけを参照(2026年10月確認)
  2. *2 参考:警察庁「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」統計データ(https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/data/R8kami/R08kami_jousei_data.xlsx)。出典:図表4(半期ごとの被害報告件数)、統計編141〜152ページ(規模別・業種別の経年件数、感染経路、バックアップの取得と復元の結果、事業継続計画の策定状況)の数値を参照(2026年10月確認)




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