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2026.08.11 らしくコラム

バックアップは本当に戻せるか|復旧訓練の要点

多くの現場では、バックアップは毎日のように取られています。ところが「そのバックアップから本当に元へ戻せるか」を確かめている組織は、意外と多くありません。いざ障害やランサムウェアの被害に遭ったとき、バックアップを開いてみたら壊れていた、鍵が分からず復号できなかった、手順書どおりに進まず何日もかかった——こうした話は珍しくないのです。

バックアップは取ること自体が目的ではなく、戻せて初めて意味を持ちます。そこで欠かせないのが、定期的に実際へ戻してみる復旧訓練(リストア試験)です。本記事では、自社のシステムを守る立場の情報システム部門やインフラ担当者に向けて、復旧訓練とは何か、災害復旧構成や運用代行とどう違うのか、そして進め方と外注の勘所を整理します。

サーバーとバックアップ復旧のイメージ

バックアップの復旧訓練とは——DR構成・運用代行との違い

バックアップの復旧訓練とは、取得しているバックアップを実際に別環境へ戻し、データが揃っているか、業務が動く状態まで復旧できるかを、決めた周期で確かめる取り組みを指します。単に戻すだけでなく、復旧にかかった時間の計測や、手順の抜け・課題の次回への反映までを含む取り組みです。似た文脈で語られる2つの取り組みと並べると、役割の違いがはっきりします。

クラウドのDR(災害復旧)構成は、障害が起きたときに別の環境へ切り替えられる仕組みそのものを設計・構築する取り組みです。いわば「切り替えの備えを作る」側を担います。またクラウド運用代行(マネージドサービス)は、監視やパッチ適用を含む日々の運用全般を任せるものです。これらに対して復旧訓練は、備えた仕組みやバックアップが「いざというときに本当に使えるか」を、実際に戻して確かめる部分に絞られています。

備えを作る取り組みでも、日々の運用を任せる取り組みでもなく、戻せることを定期的に検証する——ここに違いがあります。なお、バックアップそのものの保管コストを抑えたい場合に向いているのが、バックアップ・スナップショットのコスト最適化という別の切り口です。自社が何を確かめたいのか、切り替えの仕組みなのか、日々の運用なのか、戻せることの確認なのかを見極めておくと、取り組みの範囲を絞りやすくなります。

この記事のポイント

  • 復旧訓練は、DR構成の構築や日々の運用代行とは別に、バックアップから戻せることを定期的に確かめる部分を担います。
  • 取るだけでは戻せる保証になりません。壊れ・鍵の紛失・手順の抜けは、実際に戻して初めて見つかります。
  • 対象と頻度を決め、復旧時間(RTO)を計測して手順を見直す運用として組み込むことが要点です。

なぜ「取るだけ」では足りないのか

バックアップを取っていれば、いざというときに戻せる——そう思いたくなります。しかし現実には、取得と復旧のあいだにはいくつもの落とし穴が潜んでいるのが実際です。取れているつもりのデータが実は途中で欠けていた、保存先の一部が壊れていた、暗号化した鍵の管理があいまいで復号できない、といった事態は、戻そうとした瞬間に初めて表面化します。

とりわけ近年は、ランサムウェアの被害が組織の規模を問わず広がっています。情報処理推進機構(IPA)の「情報セキュリティ10大脅威」でも、ランサムウェアは組織向けの脅威の上位に挙げられ続けています。攻撃を受けたとき、頼りになるのはバックアップからの復旧です。ところが、バックアップ自体が暗号化されていたり、戻す手順が整理されていなかったりすると、復旧に何日もかかり、その間の業務停止が損失につながります。だからこそ、平時のうちに戻して確かめておく意味は小さくありません。訓練を通じて、戻せないパターンを先に潰し、復旧までの段取りを体で覚えておくのです。

復旧訓練でやること

復旧訓練は、思いつきで戻してみるだけでは効果が薄くなります。おおまかには次のような工程を、決めた周期で繰り返します。自社でどこまで回せているかと照らし合わせてみてください。

まず、今回の訓練で戻す対象と目標を決めます。すべてを一度に戻すのは大変なので、重要な業務データやシステムから範囲を絞り、どれくらいの時間で戻したいか(復旧時間の目標)も、このとき決めておくのが要点です。次に、本番とは切り離した検証環境へ、実際にバックアップから復元します。復元できたら、データが欠けていないか、システムが起動して業務が動く状態かどうかの確認です。さらに、復旧にかかった時間を計測し、あらかじめ決めた目標と照らし合わせます。最後に、手順の抜けや気づいた課題を記録し、次回の訓練や手順書へ反映します。この一連の流れを図にすると次のとおりです。

バックアップの復旧訓練の流れを示す図

つまずきやすい難所

復旧訓練を回すうえで、あらかじめ想定しておきたい難所がいくつかあります。着手前に押さえておくと、いざ戻すときに慌てずに済みます。

一つ目は、本番と検証環境の差です。訓練用の環境が本番と大きく違うと、そこでは戻せても本番では通用しないことがあります。二つ目は、依存関係です。一つのシステムを戻しても、それが参照する別のデータベースや外部連携が揃っていないと、業務としては動きません。どこまでをひとまとまりで戻すかを見極める必要があります。三つ目は、暗号化と鍵の管理です。バックアップを暗号化している場合、その鍵が失われれば戻せません。鍵の保管と受け渡しの手順も、訓練の対象に含めておきたいところです。四つ目は、頻度と鮮度です。数年前に一度試したきりでは、その後の構成変更に手順が追いついていないことがあります。これらは、訓練を溜めるほど絡み合って難しくなります。だからこそ、周期を決めてこまめに回す運用が現実的なのです。

どれくらいの頻度・範囲でやるか

復旧訓練は、対象の重要度に応じて頻度と範囲を分けるのが現実的です。すべてを毎回フルで戻すのは負担が大きいため、重要なものは手厚く、そうでないものは軽めにと、めりはりを付けます。目安を整理しました。

対象 頻度の目安 確かめること
基幹の業務データ・DB 四半期〜半年ごと データの欠けの有無・復旧時間・業務が動くか
ファイルサーバ・共有 半年〜年ごと 任意のファイルを指定して戻せるか
システム全体の切り替え 年ごと 代替環境で一連の業務が回るか

頻度は、そのシステムが止まったときの影響の大きさで決めます。止まると事業に響く仕組みほど、手厚く確かめておきたい対象です。大きな構成変更やシステム更改があったあとは、周期を待たずに一度戻してみると、手順のずれを早めに見つけられます。

外注時に確認しておきたい点

復旧訓練を外部に委託する場合は、次の点を事前にすり合わせておくと、認識のずれを防ぎやすくなります。まず、対象とするシステムと、目標とする復旧時間です。どこまでを、どれくらいの時間で戻せる状態にしたいのかで、進め方が変わります。次に、訓練を行う環境です。本番とは切り離した検証環境をどう用意するか、費用や準備の分担も含めて決めておきたいところです。

さらに、訓練の頻度と、問題が見つかったときの手順書の直し方、そして結果の報告のしかたも、あらかじめ整理しておきたい点です。復旧訓練は一度やって終わりではなく、構成の変化に合わせて続けていく取り組みです。訓練の実施だけを頼むのか、手順書の整備や定例の報告まで含めて依頼するのかを明確にしておくと、任せたあとのつまずきを抑えやすくなります。いずれ自社だけで回せるよう、手順を残してもらえるかどうかも、長い目で見て役に立ちます。

まとめ:復旧訓練で押さえる3つの視点

バックアップの復旧訓練は、切り替えの備えを作るDR構成や、日々の運用を任せる運用代行とは役割の異なる、「バックアップから戻せることを定期的に確かめる」取り組みです。検討するうえで押さえたい視点は3つに整理できます。第一に、DR構成の構築・日々の運用代行・復旧訓練を切り分け、自社が確かめたいのがどれなのかを見極めること。第二に、取るだけでは戻せる保証にならないと捉え、重要なシステムから範囲を絞って実際に戻してみること。第三に、復旧時間を計測して手順を見直し、決めた周期で続く運用として組み込むことです。この3点を踏まえておけば、「バックアップはあるのに、いざというとき戻せない」という事態を避けやすくなります。自社だけで訓練を回しきるのが難しいと感じたら、環境づくりや手順の整備から外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、元請(プライムベンダー)としてインフラの構築から運用までを一貫して受託しています。バックアップの復旧訓練は、対象システムの棚卸しと目標の整理から、検証環境の用意・実際の復元と確認・復旧時間の計測、そして手順書の整備や定例の報告まで、工程を分断せずに対応できるのが強みです。どこから手を付けるべきか、現状把握の段階からご相談いただけます。

よくある質問

DR(災害復旧)構成の構築と復旧訓練は何が違うのですか。

DR構成の構築は、障害時に別環境へ切り替えられる仕組みそのものを設計・構築する取り組みです。復旧訓練は、その仕組みやバックアップが本当に使えるかを、実際に戻して定期的に確かめる取り組みを指します。備えを作る側と、戻せることを検証する側という関係で、役割が分かれています。

バックアップを取っていれば復旧訓練は要らないのではないですか。

取得と復旧のあいだには、データの欠けや保存先の破損、暗号鍵の紛失、手順の抜けといった落とし穴があります。これらは実際に戻そうとした瞬間に初めて表面化しがちです。平時のうちに戻して確かめておくことで、いざというときに戻せない事態を避けやすくなります。

どれくらいの頻度で訓練すればよいですか。

対象の重要度で分けるのが現実的です。止まると事業に響く基幹データは四半期から半年ごと、ファイルサーバは半年から年ごと、システム全体の切り替えは年ごとが一つの目安になります。大きな構成変更のあとは、周期を待たずに一度戻してみるとよいでしょう。

ランサムウェア対策としても役立ちますか。

役立ちます。ランサムウェアの被害では、バックアップからの復旧が頼りになります。ただし、バックアップ自体が暗号化されたり、戻す手順が整っていなかったりすると、復旧は長引きがちです。訓練を通じて戻せることを確かめ、鍵の管理や手順を整えておくことが、被害からの立ち直りを早めます。

外注する場合、どこまで依頼できますか。

対象システムの棚卸しや目標の整理といった上流から、検証環境の用意、実際の復元と確認、復旧時間の計測、そして手順書の整備や定例の報告まで、範囲を分けて依頼できます。訓練の頻度や環境の準備の分担、内製に戻すための手順の残し方をあらかじめすり合わせておくと進めやすくなります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑

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  1. *1 出典:情報処理推進機構(IPA)「情報セキュリティ10大脅威」(https://www.ipa.go.jp/security/10threats/index.html


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