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Samba ADとは?ドメインコントローラーの仕組みと導入を解説
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- Samba ADは、オープンソースのSambaをWindowsのドメインコントローラーとして動かす使い方です。
- WindowsのPCをドメインに参加させ、グループポリシーで設定を配る管理ができます。
- 機能レベルの上限とSYSVOLの同期、版の更新の担当を構築の前に決めておくことが大切です。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
Linuxのサーバーが中心なのに、WindowsのPCを管理するためだけにWindows Serverを置いている。PCの設定を1台ずつ変えていて手が回らない——。システムを預かる情報システムの担当者には、こうした悩みがつきものです。Samba AD(サンバ エーディー)は、オープンソースのSambaを、Active Directory(Windowsの利用者とPCをまとめて管理する仕組み)のドメインコントローラーとして動かす使い方です。
LinuxのサーバーでWindowsのドメインを作り、グループポリシー(PCの設定をまとめて配る仕組み)でPCを管理できます。ただし万能ではなく、Windows Serverの新しい機能には対応していない点があります。本記事では、Windowsのドメインを任された担当者に向けて、Samba ADの特徴とWindows Serverとの違い、グループポリシーの扱い、導入の進め方、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
Samba ADとは
Sambaは、Windowsのファイル共有に使われるSMBと、Active Directoryの通信の仕組みを、LinuxやUNIXの上で実装したオープンソースのソフトウェアです。ライセンスはGNU GPL(改変して配るときにソースコードの公開を求めるライセンス)の第3版です。*1 2012年に出た4.0から、ドメインコントローラー(利用者とPCの情報を持ち、ログインを確かめるサーバー)として動けるようになりました。*2
- 利用者とPCの情報は、Sambaに組み込まれたLDAP(利用者の情報を収める台帳の仕組み)のサーバーに収めます*2
- ログインの確認には、Kerberos(チケットを使う認証の仕組み)を使います
- グループポリシーを置いて、ドメインに参加したWindowsのPCに配れます
- 公式wikiは、障害に備えてドメインコントローラーを2台以上置くよう勧めています
WindowsのPCは、Windowsの標準の画面からドメインに参加させます。利用者の情報を集めるだけなら単体のLDAPサーバーでも足ります。Samba ADが向くのは、グループポリシーでPCの設定まで管理したいときです。
Windows ServerのADとの違い
Samba ADとWindows ServerのActive Directoryは、同じドメインの仕組みを別々に実装したものです。主な違いを表にまとめます。
| 項目 | Samba AD | Windows ServerのAD |
|---|---|---|
| 動かすOS | LinuxやUNIX | Windows Server |
| 機能レベル(使える機能の世代) | 既定はWindows Server 2008 R2の水準。より高い水準は開発途上 | Windows Server 2025の水準まで |
| SYSVOLの複製 | DFS-Rに対応せず、別の手段で同期する | DFS-R(Windowsの複製の仕組み)で複製する |
| ライセンス | GPL第3版のオープンソース | Microsoftの製品ライセンス |
Samba ADは既定でWindows Server 2008 R2の機能レベルで動きます。4.19以降はより高い水準も設定できますが、公式wikiは本番では使わないよう案内しています。*2 一方、Microsoftの資料では、Windows Server 2025は機能レベル2012 R2のドメインでドメインコントローラーとして動かせません。*7 新しいWindows Serverを後から加えるなら、構築の前に版の組み合わせを確かめておきます。Linuxのサーバーの認証が中心ならFreeIPAも候補です。
グループポリシーでのPC管理
グループポリシーは、OSやアプリ、利用者ごとの設定を1か所から配る仕組みです。Samba ADでは、ポリシーの一覧をLDAPに、中身のファイルをSYSVOL(ドメインコントローラーの共有フォルダー)に置きます。WindowsのPCは、ドメインに参加すれば追加の設定なしにポリシーを受け取ります。*3

- ポリシーの作成と編集は、WindowsのPCに入れる管理ツール(RSAT)のグループポリシー管理コンソールで行います
- Samba用の管理テンプレート(設定項目を定義したファイル)を入れるなら、Microsoftのテンプレートも入れないとWindowsのPCを管理できなくなります*3
- ドメインを構築しただけではグループポリシーの機能は有効にならず、構築の後に設定を変える必要があります*2
- Linuxのサーバーもドメインに参加させれば、同じ仕組みでポリシーを当てられます
ドメインコントローラーが2台以上あるときは注意が要ります。SambaはSYSVOLの複製に対応していないため、ポリシーのファイルをrsyncなどの別の手段で各台に同期し、利用者やグループのIDの対応表もそろえます。*4 同期が抜けると、台ごとに配る設定が食い違うおそれがあります。
導入の進め方
Samba ADの導入で後から直しにくいのは、ドメインの名前と台数の決め方です。次の4つの段階で進めると、途中で作り直さずに済みます。
- ステップ1:ドメインの名前と台数を決める(名前は後から変えられないため、会社のWebサイトとは分けたサブドメインにします)
- ステップ2:1台目のドメインコントローラーを構築し、グループポリシーの機能を有効にする
- ステップ3:WindowsのPCを参加させ、DNSと時刻の設定を確かめる
- ステップ4:2台目を加え、SYSVOLの同期とバックアップの方法を決める
つまずきやすいのはステップ3です。Kerberosは時刻のずれに厳しく、PCとドメインコントローラーの時刻の差が既定の5分を超えると、PCはドメインの資源を使えません。*5 PCが問い合わせるDNSサーバーも、ドメインの名前を引ける先に向けておきます。
外部に頼むときに確認しておきたい点
Samba ADにはライセンス費用がかかりませんが、構築と保守の手間は自社で持つことになります。構築や運用を外部に頼むときは、次の点を見積もりの前に確かめておきます。

- 移行元:いまのWindows Serverのドメインや古いSambaから移すのか、新しく作るのか
- 機能レベル:今後、Windows Serverのドメインコントローラーを混ぜる予定があるか
- SYSVOLの同期:2台目以降への同期の方法と、IDの対応表をそろえる手順を誰が受け持つか
- バックアップ:ドメインのバックアップをどこへ取り、復元を試したことがあるか
- 更新:新しい版への切り替えを誰がいつ判断するか
特に更新は、決めないまま運用に入りやすい点です。Sambaの各系列は、通常の保守、保守モード、セキュリティ修正のみの期間を6か月ずつ経て、約18か月で更新が止まります。*6 Windows以外のシステムも含めてログインをまとめる考え方はKeycloakによるSSO認証基盤の解説にまとめています。
まとめ:Samba ADで確かめておきたい3つの点
Samba ADでWindowsのドメインを作るうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、既定の機能レベルで足りるかを、今後加えるWindows Serverの版と合わせて確かめること。第二に、ドメインの名前と台数を最初に決め、SYSVOLの同期の方法を用意すること。第三に、バックアップと版の更新の担当を決めることです。この3点を踏まえておけば、「入れてはみたが、ポリシーが配られずWindows Serverに戻した」という事態を避けやすくなります。移行の進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
いまのWindows Serverのドメインに、Sambaのドメインコントローラーを加えられますか
加えられます。公式wikiには、Sambaを既存のActive Directoryに追加のドメインコントローラーとして参加させる手順があります。*8 ただし、機能レベルがいまの構成と合うかを先に確かめておきます。
OpenLDAPを利用者の情報の保存先に使えますか
使えません。Samba ADが保存先にできるのは、Sambaに組み込まれたLDAPのサーバーだけです。公式のFAQは、Active Directoryに必要なアクセス権の情報や項目の定義に、一般的なLDAPサーバーが対応していないことを理由に挙げています。*10
バックアップはドメインコントローラーごとに取る必要がありますか
1台分で足ります。Sambaのバックアップはドメイン全体の情報を保存するもので、1台から取れば復元に使えます。*9 復元すると新しいドメインコントローラーが1台でき、残りの台はそこへ参加させ直します。
Samba ADによるドメイン構築のご相談
Samba ADのドメインコントローラーの設計と構築から、グループポリシーの整備、SYSVOLの同期とバックアップの運用まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:Samba「What is Samba?」・「GNU General Public License」(https://www.samba.org/samba/what_is_samba.html)。出典:SMBとActive Directoryの通信の仕組みのオープンソース実装であること、ドメインコントローラーとして動けること、GNU GPL(第3版)で配布されていることの記述を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:Samba Wiki「Setting up Samba as an Active Directory Domain Controller」「Raising the Functional Levels」(https://wiki.samba.org/index.php/Setting_up_Samba_as_an_Active_Directory_Domain_Controller)。出典:4.0(2012年)からの対応、既定の機能レベル(Windows Server 2008 R2)、4.19以降の高い機能レベルが開発途上で本番向けでない旨、組み込みLDAPのみ対応、グループポリシーの有効化、2台以上の推奨、ドメイン名を変えられない旨、設定できる機能レベルの表を参照(2026年10月確認)
- *3 参考:Samba Wiki「Group Policy」(https://wiki.samba.org/index.php/Group_Policy)。出典:グループポリシーの仕組み(LDAPとSYSVOL)、Windowsのドメインメンバーでの自動適用、RSATの管理コンソールでの編集、ADMXテンプレートの注意、Linuxのドメインメンバーへの適用を参照(2026年10月確認)
- *4 参考:Samba Wiki「SysVol replication (DFS-R)」(https://wiki.samba.org/index.php/SysVol_replication_(DFS-R))。出典:DFS-RとFRSによるSYSVOLの複製に対応していないこと、rsyncなどの回避策、IDの対応表(idmap.ldb)をそろえる注意を参照(2026年10月確認)
- *5 参考:Samba Wiki「Joining a Windows Client or Server to a Domain」(https://wiki.samba.org/index.php/Joining_a_Windows_Client_or_Server_to_a_Domain)。出典:WindowsのPCをドメインに参加させる手順、DNSの設定、時刻の差(既定5分)の記述を参照(2026年10月確認)
- *6 参考:Samba Wiki「Samba Release Planning」(https://wiki.samba.org/index.php/Samba_Release_Planning)。出典:各系列の保守期間(6か月ずつ、合計約18か月)の記述を参照(2026年10月確認)
- *7 参考:Microsoft Learn「Active Directory Domain Services functional levels」(https://learn.microsoft.com/en-us/windows-server/identity/ad-ds/active-directory-functional-levels)。出典:機能レベルの説明と、Windows Serverの版ごとにドメインコントローラーとして動かせる機能レベルの表を参照(2026年10月確認)
- *8 参考:Samba Wiki「Joining a Samba DC to an Existing Active Directory」(https://wiki.samba.org/index.php/Joining_a_Samba_DC_to_an_Existing_Active_Directory)。出典:既存のActive Directoryに追加のドメインコントローラーとして参加させる手順の記述を参照(2026年10月確認)
- *9 参考:Samba Wiki「Back up and Restoring a Samba AD DC」(https://wiki.samba.org/index.php/Back_up_and_Restoring_a_Samba_AD_DC)。出典:バックアップがドメイン全体を対象とすること、1台分で足りること、復元後に他の台を参加させ直すことを参照(2026年10月確認)
- *10 参考:Samba Wiki「FAQ」(https://wiki.samba.org/index.php/FAQ)。出典:Samba ADがOpenLDAPなどのLDAPサーバーを保存先にできない理由の記述を参照(2026年10月確認)