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研修管理システムの選び方|受講記録と費用の管理で見る基準
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- 研修管理システムは、研修の計画・申込みと承認・受講記録・費用を1つにまとめて管理する仕組みです。
- 選ぶときは、受講した日ごとの時刻と時間数、研修ごとの費用と証拠の書類まで残せるかを確かめます。
- 人材開発支援助成金を使うなら、計画届と支給申請の期限、5年間の書類の保存を記録の設計に入れておきます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
研修の申込みはメールで受け付け、誰が受講したかは部署ごとのExcelに散らばっている。助成金を申請しようとしたら、誰が何時間受けたのかを示す記録がそろわない——。社員研修を人事部が手作業で回している会社では、こうした行き違いが起こりがちです。研修管理システムは、研修の計画から受講の申込みと承認、受講記録、費用までを1つの仕組みで管理するためのシステムです。
教材を配信して学ばせるLMS(学習管理システム)とは役割が少し違い、研修の運営の事務を受け持ちます。ただし万能ではなく、残す記録の細かさを先に決めないと、Excelと同じ抜け漏れが起こります。本記事では、研修の運営を任された人事部と情報システム部の担当者に向けて、研修管理システムで管理するもの、LMSやExcelとの違い、選び方の4つの基準、助成金の申請に備える記録、そして導入か開発かを決めて外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
研修管理システムとは
職業能力開発促進法は、事業主に対し、社員の職業能力の開発と向上が「段階的かつ体系的に行われることを促進するため」の計画を作るよう努めることを求めています。*1 あわせて、その計画の作成と実施を担当する職業能力開発推進者を選ぶことも、事業主の努力義務です。*1 研修管理システムは、この計画を日々の運営と記録に落とし込む道具です。

- 研修の計画:年間の研修の予定、対象者、講師、会場や受講の方法
- 申込みと承認:社員が受講を申し込み、上司や人事部が承認する流れ
- 受講記録:出欠、受講した日時と時間数、修了したかどうか
- 費用:受講料・講師への謝金・教材費などの支払いと、どの研修に使ったか
人事評価やタレントマネジメントの仕組みが「誰がどんな能力を持っているか」を扱うのに対し、研修管理システムは「どの研修を誰がいつ受け、いくらかかったか」を扱います。困っているのがどちらかを分けると、候補を絞れます。
LMSやExcel台帳との違い
Excelの台帳で研修を管理していて、申込みの承認や費用の集計を手で追い切れなくなったときに、研修管理システムやLMS(学習管理システム)が候補に挙がります。3つは似て見えますが、得意なことが違います。
| 選択肢 | 得意なこと | 向いている場面 |
|---|---|---|
| Excelの台帳 | すぐに始められる。項目を自由に決められる | 研修の本数と受講者が少なく、管理する人が1人のとき |
| 研修管理システム | 申込みと承認の流れ、集合研修や社外の講座も含めた受講記録、費用の集計 | 集合研修や社外の講座が多く、申込みと費用をまとめて追いたいとき |
| LMS | eラーニング教材の配信、テスト、学習の進み具合の記録 | 自社で教材を作り、オンラインで受講させたいとき |
迷ったら、研修の中身がどこで行われるかで考えます。社外の講座や集合研修が中心なら研修管理システム、自社の教材をオンラインで受けさせるのが中心ならLMSです。両方あるなら、LMSの受講記録を研修管理システムに取り込む構成も考えられます。LMSそのものの開発についてはLMS(学習管理システム)開発を外注する方法で扱っています。
研修管理システムの選び方
研修管理システムを選ぶときは、機能の数よりも、自社の研修の流れに沿って記録が残るかどうかを見ます。計画から助成金の申請までの流れで記録が途切れないかを、次の4つの基準で比べます。
- 基準1:申込みと承認の流れ。部署の上長、人事部、予算の担当など、自社の承認の順番をそのまま設定できるか
- 基準2:受講記録の細かさ。出欠だけでなく、受講した日ごとの開始と終了の時刻、時間数を残せるか
- 基準3:費用の記録。研修ごとに受講料・謝金・教材費を分け、請求書や領収書と結び付けて残せるか
- 基準4:ほかのシステムとのつながり。社員の情報を人事のシステムから取り込めるか。LMSや勤怠の記録と突き合わせられるか
つまずきやすいのは基準2と基準3です。記録が「受講済み」の印だけだと、あとから受講した時間を問われたときに答えられません。費用も、まとめて支払った請求書のどれがどの研修の分か分からなくなりがちです。助成金を使うなら、次の節の記録を残せるかを選ぶ段階で確かめます。
助成金の申請に備える記録
社員研修の費用に使える国の制度として、厚生労働省の人材開発支援助成金があります。事業主が雇用する社員に職務に関連した専門的な知識や技能を身につけさせる訓練を「計画に沿って実施した場合等」に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。*2 申請には期限と記録の決まりがあり、研修管理システムで追いたい項目とよく重なります。

| 決まり | 内容 | システムで持っておきたい記録 |
|---|---|---|
| 申請の前提 | 職業能力開発推進者を選任し、事業内職業能力開発計画を作って社員に周知していること*3 | 推進者の氏名、計画を周知した日 |
| 計画届 | 訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に労働局へ提出*3 | 研修ごとの開始日と届出の期限 |
| 支給申請 | 訓練終了日の翌日から2か月以内に提出*3 | 研修ごとの終了日と申請の期限 |
| 受講の記録 | eラーニングでは、修了日・受講開始日時・受講終了日時・受講時間数・進捗率などが分かるLMS情報の写し*3 | 受講者ごと・日ごとの時刻と時間数 |
| 費用の記録 | 運営に要した経費は、請求書と領収書の写しや振込通知書など*3 | 研修ごとの支払いと、その証拠になる書類 |
| 書類の保存 | 関係書類は支給決定後も5年間保存*3 | 記録を消さずに残す期間の設定 |
表のとおり、期限は研修の開始日と終了日から数えます。開始日と終了日を持っていれば、届出と申請の期限を一覧で確かめられます。詳細版パンフレットは同じ年度の中でも改められているため、申請の前には最新の案内を確かめ、管轄の労働局に問い合わせてください。*2
導入か開発かと外部に頼むときの確認点
研修管理システムには、クラウドサービスや製品を契約して使う方法と、自社の業務に合わせて作る方法があります。どちらが合うかは、次のような事情で分かれます。
- 既製のサービスが合う:承認の流れが単純で、記録の項目を製品の標準に合わせられる
- 作る・作り込むが合う:既存の人事や勤怠のシステムとの連携が多い、グループ会社や部門ごとに承認の流れが違う
どちらの場合も、構築や移行を外部に頼むときは、次の点を見積もりの前に確かめておきます。
- どこまで頼むか:要件の整理、設定や開発、Excel台帳からの移行、操作の説明のうち、どれを任せるか
- 記録の項目:受講日ごとの時刻と時間数、研修ごとの費用と証拠の書類を残せる設計になっているか
- 連携:人事のシステムから社員の情報を取り込む方法と、退職した人の記録の扱い
- 保存と権限:記録を何年残すか。誰がどの記録を見られ、直せるか
- 運用後の見直し:年間の研修計画を見直す時期に、記録の項目や承認の流れを直す場を設けるか
記録の項目は、運用を始めてから増やしても過去の分は埋められません。研修の結果を評価や人材データにまで広げたい場合の考え方は人事評価・タレントマネジメントシステム開発の外注にまとめています。
まとめ:研修管理システムで確かめておきたい3つの点
研修管理システムを選ぶうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、研修の計画・申込みと承認・受講記録・費用のうち、自社がいま追い切れていないのはどれかを決めること。第二に、受講した日ごとの時刻と時間数、研修ごとの費用と証拠の書類まで残せるかを、選ぶ段階で確かめること。第三に、既製のサービスで足りるか、人事や勤怠のシステムと連携させて作るかを、承認の流れと連携の多さから判断することです。この3点を踏まえておけば、「システムを入れたのに、申請のときは結局Excelと紙を集め直した」という事態を避けやすくなります。選定や構築の進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
研修管理システムがあれば助成金の申請書類は要らなくなりますか
要らなくはなりません。人材育成支援コースでは、様式に沿った報告書のほか、訓練の方法によっては出勤簿や賃金台帳の写しなども求められます。*3 研修管理システムは、そうした書類を作るときの元になる記録をそろえておく役割を担います。
職業能力開発推進者には誰を選べばよいですか
厚生労働省のパンフレットは、研修や人事の担当課長など、社員の能力開発の企画や訓練の実施について権限を持つ人を例に挙げ、事業所ごとに1名以上の選任を求めています。*3 常時雇用する社員が100人以下の事業所で適任者がいない場合などは、本社の推進者と兼ねることもできます。
Excelの台帳から移すときに気をつけることはありますか
同じ研修が別の名前で2行に分かれていないか、受講した時間が空欄になっていないかを先に確かめて片づけます。あわせて、過去の記録を何年分移すかを決めておきます。助成金を受けた研修は書類を支給決定後5年間保存する決まりがあるので、その期間が目安になります。*3
研修管理の仕組みづくりのご相談
研修管理システムの選定や開発から、Excel台帳の移行、人事や勤怠のシステムとの連携まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:e-Gov法令検索「職業能力開発促進法(昭和44年法律第64号)」(https://laws.e-gov.go.jp/law/344AC0000000064)。出典:第11条(計画的な職業能力開発の促進)、第12条(職業能力開発推進者)の条文を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:厚生労働省「人材開発支援助成金」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html)。出典:制度の説明(計画に沿って訓練を実施した場合等に訓練経費や賃金の一部を助成)、詳細版パンフレット(令和8年4月8日版・8月3日版)の掲載、問い合わせ先の記述を参照(2026年10月確認)
- *3 参考:厚生労働省「令和8年度版 人材育成支援コースのご案内(令和8年8月3日版)」(https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731967.pdf)。出典:主な受給要件(職業能力開発推進者の選任、事業内職業能力開発計画の策定・周知)、計画届の提出期間、支給申請の期限、支給申請時に必要な書類(LMS情報の写し、請求書・領収書の写し等)、関係書類の5年間保存、職業能力開発推進者の選任のポイントの記述を参照(2026年10月確認)