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2026.09.10 らしくコラム

JC-STARのラベルを英国PSTIで使う、みなし適合の条件

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

開いた旅券のページに、各国の出入国のスタンプが色違いで押されている様子を斜め上から写した写真

この記事の結論

  • 英国では2025年12月の改正で、英国の要件を満たしたと扱われる条件に、日本のJC-STAR STAR-1の有効なラベルが加わりました。
  • ラベルが1枚あれば、製品は3つのセキュリティ要件と、要件への適合を示す宣言の添付を、まとめて満たしたものとして扱われます。
  • 条件は、自社が製造者である製品そのものに、期限の切れていないラベルがいま付与されていることです。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

日本で取ったJC-STARのラベルは、英国でも通用するのか。英国向けにもう一度、別の手続きを踏まなければならないのか——。IoT(インターネットにつながる機器)を海外に出す製造者では、こうした疑問が起こりがちです。英国は2025年12月3日に規則を改正し、翌4日から、日本のJC-STAR STAR-1とシンガポールのサイバーセキュリティ・ラベリング制度(CLS)のラベルを、みなし適合の条件に加えました。*1 みなし適合とは、定められた条件を満たせば、英国のセキュリティ要件に従ったものとして扱う仕組みです。

国内向けにラベルを取っている製品なら、英国向けの作業を大きく減らせる可能性があります。ただし万能ではなく、ラベルの期限や、誰が製造者に当たるかによって、使えない場合もあります。本記事では、英国のIoT製品規制を検討する企業の担当者に向けて、英国が製造者に求める義務、みなし適合の条件、適合の宣言の扱い、そして英国向けに製品を出すときに確認したい点を整理します。

英国のIoT製品規制とは

英国のIoT製品規制の根拠となる法律は、製品セキュリティ・電気通信インフラ法2022(PSTI法)です。その第1部は、インターネットなどにつながる製品(法律では「関連する接続可能な製品」)の製造者に、2つの義務を課しています。セキュリティ要件を満たすこと(第8条)と、製品に適合の宣言を添付すること(第9条)です。*1 要件の中身は、2023年の規則の別表1に書かれています。

英国のSI 2025年第1267号が2025年12月3日に制定され翌12月4日に施行して2023年規則(SI 2023/1007)を改正したこと、根拠が製品セキュリティ・電気通信インフラ法2022の第3条第1項と第2項(a)・第9条第7項・第77条第2項(a)であること、義務の側として別表1に3つのセキュリティ要件があり第1項のパスワードは製品ごとに一意か利用者が設定するものであることと連番や公開情報や製造番号由来が不可であること、第2項の報告の受け口は連絡先を1つ以上公表し受領の確認と解決までの経過連絡の時期も示し請求なし・英語・無償・個人情報を求めない形で提供すること、第3項の更新提供期間は定義された支援期間を公表し延長したら新しい期間をすみやかに公表し公表後に短縮したら要件を満たさないこと、みなし適合の側では別表2の条件が1つから3つに増え条件Aが従来のETSI EN 303 645の該当条項に従うこと(報告の受け口はISO/IEC 29147も参照)で条件Bが日本のJC-STAR STAR-1の適合ラベルが現に付与され有効期限が切れていないこと、条件Cがシンガポールのサイバーセキュリティ・ラベリング制度のいずれかの水準のラベルが現に付与され有効期限が切れていないことであること、条件Bと条件Cが別表1の3つの要件それぞれに同じ文言で挿入されたためラベル1枚で3つの要件をまとめて満たしたものとして扱われること、ならびに新設の別表2Aと規則第4A条により法2022第9条第2項の適合の宣言を製品に添付する義務についても有効なラベルがあれば満たしたものとして扱われることを整理した図

今回の改正規則は、この2023年規則を改正するものです。義務そのものは変えずに、「どうすれば義務を果たしたと扱われるか」の選択肢を増やしました。改正は、セキュリティ要件と適合の宣言の2つに及びます。以下では、まず要件の中身を確かめ、そのあとに、それぞれの側で何が変わったかを見ていきます。

製造者に求められる3つの要件

1つ目はパスワードです。パスワードは製品ごとに一意であるか、利用者が自分で設定するものでなければなりません。一意のパスワードでも、連番に基づくものや、公開されている情報から導けるものは認められません。製造番号のような固有の識別子に基づくものも認められず、使えるのは、良い業界慣行として認められる暗号化や鍵付きハッシュ(鍵を使う一方向の変換)を通した場合に限られます。*2

2つ目は、セキュリティ上の問題を報告する窓口の情報です。製造者は連絡先を少なくとも1つ公表し、報告した人が受領の確認と解決までの経過の連絡をいつ受け取れるかも示します。この情報は、事前の請求なしに、英語で、無償で、報告する人の個人情報を求めずに提供しなければなりません。*2

3つ目は、セキュリティ更新を提供する期間の情報です。製造者は、更新を提供する期間(支援期間)を公表します。期間を延ばした場合は、新しい期間をできるだけ早く公表します。反対に、公表した後で期間を短くした場合は、この要件を満たさないとされています。*2

みなし適合の条件はどう変わったのか

2023年規則の別表2は、みなし適合の条件を要件ごとに定めています。改正前は、各要件に条件が1つずつで、いずれもETSI EN 303 645という規格の該当する条項に従うことでした。報告の窓口については、ISO/IEC 29147という規格の各項に従うことも含まれていました。

改正規則の第5条から第7条は、パスワード、報告の窓口、更新期間の3つの要件の条件すべてに、同じ文言を加えました。*1 従来の条件を「条件A」と呼び直したうえで、日本のJC-STAR STAR-1のラベルを条件B、シンガポールのCLSのラベルを条件Cとして加えています。条件は、要件ごとにどれか1つを満たせば足ります。

みなし適合の条件(2023年規則 別表2の2025年改正後)
条件 内容
条件A 製造者が、その要件に対応するETSI EN 303 645の条項(報告の窓口についてはISO/IEC 29147の各項を含む)に従うこと
条件B 自らが製造者である当該製品に、JC-STAR STAR-1の適合ラベルが現に付与されており、かつそのラベルの有効期限が切れていないこと
条件C 自らが製造者である当該製品に、シンガポールのサイバーセキュリティ・ラベリング制度のいずれかの水準のラベルが現に付与されており、かつそのラベルの有効期限が切れていないこと

同じ文言が3つの要件すべてに入ったため、有効なラベルが1枚あれば、パスワード、報告の窓口、更新期間の3つをまとめて満たしたものとして扱われます。

ラベルに求められる3つの条件

条件Bと条件Cの文言には、ラベルがあれば何でもよいわけではないことを示す言葉が3つ入っています。1つ目は「現に付与されている(currently assigned/currently awarded)」ことです。*1 過去に取得したという事実だけでは足りません。ラベルが取り消されたり失効したりすれば、その時点で条件を満たさなくなります。

2つ目は「そのラベルの有効期限が切れていない(that label has not expired)」ことです。ラベルには期限があるため、ラベルを更新し続けることが、英国の要件を守ることの一部になります。3つ目は、ラベルが付いているのが「自らが製造者である製品」であることです。他社が取得したラベルを、自社の製品の条件として使うことは想定されていません。

1つの製品に製造者が複数いる場合について、2023年規則の第5条は、それぞれの製造者が別表1の要件を満たすか、別表2の条件を満たさなければならないとしています。*2 製造を委託している製品や、相手先のブランドで販売する製品では、英国の法律のうえで誰が製造者に当たるかを先に決めておく必要があります。

ラベルの根拠となる文書も、版まで指定されました。JC-STAR STAR-1は、情報処理推進機構(IPA)が公表する「JC-STAR STAR-1 適合基準および評価方法」(JST-CR-01-01-2024R1、2024年12月)です。シンガポールのCLSは、シンガポールのサイバーセキュリティ庁(CSA)が公表するCCC SP-151-2 CLS(IoT) Scheme Specificationsの第1.4版(2025年4月)です。*1

適合の宣言も免除されるのか

今回の改正は、セキュリティ要件だけでなく、適合の宣言にも及んでいます。改正規則は、2023年規則に第4A条と別表2Aを加え、適合の宣言についても新しい条件を設けました。別表2Aは、JC-STAR STAR-1のラベル、またはシンガポールのCLSのラベルが現に付与され、期限が切れていなければ、製品に適合の宣言を添付する義務(PSTI法第9条第2項)に従ったものとして扱うと定めています。*1

ここで注意したいのは、別表2と別表2Aの違いです。別表2には、ETSIの規格に従う条件Aが残っています。これに対して別表2Aには、ETSIの規格に従うという条件がありません。適合の宣言の添付が不要と扱われるのは、日本とシンガポールの2つの制度のラベルがある場合に限られます。

改正規則の説明ノート(規則に付く解説)も、第4条と第8条が適合の宣言についての条件を、第5条から第7条がセキュリティ要件についての条件を定めると整理しています。*1 2つの義務は、どちらもラベルで果たせるようになりました。宣言の作成と添付は、輸出の実務では手間のかかる作業です。ラベルの取得で両方の義務を果たせるなら、英国向けにかかる費用の見積もりも変わってきます。

つまずきやすい点

一つ目は、規制の対象外に当たるかどうかを、みなし適合と混同することです。2023年規則の別表3は、規制の対象外となる製品の種類を並べています。みなし適合は、対象になる製品が義務をどう果たすかの話で、対象外かどうかは別に判定します。

二つ目は、ラベルを取った製品と、英国に出す製品が同じものかを確かめないことです。条件は「当該製品に」ラベルが付与されていることを求めています。型番やハードウェアの構成が違う派生機種まで、同じラベルで扱えるとは限りません。JC-STAR側で、ラベルがどの製品を対象にしているかを確かめておきます。

三つ目は、ラベルがあれば設計の手間がなくなると考えることです。みなし適合は「要件に従ったものとして扱う」という効果を与えるだけで、初期パスワードの作り方、問題を受け付ける窓口、支援期間の公表は、製品と運用の側に引き続き必要です。また、英国の規則は制度の文書を版まで指定しているため、JC-STAR側の基準が改訂されても、英国の規則が指しているのは改訂前の版のままです。

英国向けに製品を出すときに確認しておきたい点

この規則は英国の制度で、日本の事業者に直接の義務を課すものではありません。ただし、英国の市場に製品を出すなら、準備にかかる費用を大きく左右します。まず、国内向けにJC-STAR STAR-1を取っている製品を洗い出し、型番ごとにラベルの有効期限と対象の範囲を一覧にします。英国向けの作業は、この一覧をもとに見積もれます。

次に、ラベルの期限を日々の運用で管理できるようにします。製品の管理表にラベルの有効期限の欄を設け、期限が近づいたら担当者が更新を申請する流れにしておけば、失効したまま出荷を続ける事態を防げます。あわせて、製造を委託している製品や共同開発の製品では、誰が製造者に当たり、誰のラベルを使えるのかを契約の文言で決めておきます。

最後に、パスワード、窓口、支援期間の3つの仕組みは、ラベルとは別に製品の側で作っておきます。これらを先に作っておけば、ほかの国の制度に対応するときにも役立ちます。近い仕組みは、豪州のスマート機器のセキュリティ基準にも見られます。制度の全体像は、IoT機器のセキュリティ規制で整理しています。

まとめ:英国のみなし適合で確かめておきたい3つの点

JC-STARのラベルを英国で使ううえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、JC-STAR STAR-1の有効なラベルがあれば、3つのセキュリティ要件と適合の宣言の添付を、まとめて満たしたものとして扱われること。第二に、ラベルは自社が製造者である製品に現に付与され、期限が切れていない必要があること。第三に、対象外かどうかの判定と、パスワードや窓口などの仕組みづくりは、ラベルとは別に残ることです。この3点を踏まえておけば、「国内のラベルがあるから英国も大丈夫だと思っていたのに、期限が切れていた」という事態を避けやすくなります。英国向けの準備の進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は元請(プライムベンダー)として、組込みからクラウドまでを含む製品システムの設計・構築・運用を受託しています。海外の製品規制が絡む案件では、要件と証跡の対応表を最初に作ります。具体的には、製品の型番ごとに「取得済みの認証・ラベル」「有効期限」「対象となるハードウェア構成とファームウェアの版」「参照している規格の版」を1行で持ち、期限の到来を製品ライフサイクルの管理と同じ台帳で扱います。初期パスワードの要件は、製造の工程まで含む設計になります。個体ごとに一意の値を生成する場合は、生成に使う乱数の出どころ、書き込みの工程、値を保持しない仕組み、そして製造記録との紐づけを設計文書に書き、製造委託先と合意します。

脆弱性の受け口は、フォームやメールアドレスの用意だけでなく、受領の自動応答、追跡の番号、経過連絡の周期を運用手順に落とします。支援期間は、製品ページに機械可読な形(構造化データや一覧のCSV)でも出しておくと、調達側の確認が速くなります。ファームウェアの配信では、署名の検証、ロールバックの防止、失敗時の復旧を設計に含め、更新の到達率を計測できるようにしておくと、支援期間中の実効性を説明できます。認証の版が動く前提で、参照している規格や制度の改訂を監視する担当と手段を、保守の契約に明記しておくことをおすすめしています。

よくある質問

シンガポールのラベルは、どの水準でも認められますか

条文は水準を限定していません。改正規則が加えた条件Cは、シンガポールのサイバーセキュリティ・ラベリング制度の「いずれかの水準(any level)」のラベルが現に付与され、期限が切れていないことを求めています。*1 適合の宣言についての別表2Aも、同じ書き方です。

ラベルの有効期限が切れたら、どうなりますか

その時点で、みなし適合の効果は失われます。そのあとは、条件AとしてETSI EN 303 645の該当する条項に従うか、別表1の要件を直接満たす必要があります。適合の宣言についても、別表2Aの条件が同じ書き方なので、同じようにみなし適合の効果が失われます。

今回の改正のほかに、2025年に行われた改正はありますか

2025年2月の改正規則があります。この改正は、規制の対象外となる製品を並べた別表3に、自動車の項目を加えました。*3

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出典

  1. *1 参考:英国法令データベース「The Product Security and Telecommunications Infrastructure (Security Requirements for Relevant Connectable Products) (Amendment) (No. 2) Regulations 2025」(SI 2025 No. 1267)(https://www.legislation.gov.uk/uksi/2025/1267/made)。出典:2025年12月3日制定・12月4日施行。第3条(JC-STAR STAR-1とシンガポールのサイバーセキュリティ・ラベリング制度の定義。IPAのJST-CR-01-01-2024R1(2024年12月)、CSAのCCC SP-151-2 CLS(IoT) Scheme Specifications第1.4版(2025年4月))、第4条(第4A条の挿入)、第5条〜第7条(別表2の3つの要件への条件B・条件Cの挿入)、第8条(別表2Aの新設)、説明ノートを参照。根拠は製品セキュリティ・電気通信インフラ法2022 第3条第1項・第2項(a)、第9条第7項、第77条第2項(a)(2026年9月確認)
  2. *2 参考:英国法令データベース「The Product Security and Telecommunications Infrastructure (Security Requirements for Relevant Connectable Products) Regulations 2023」(SI 2023 No. 1007)(https://www.legislation.gov.uk/uksi/2023/1007/made)。出典:第3条〜第5条、別表1の第1項〜第3項(パスワード、報告の窓口、更新の提供期間)、別表2(ETSI EN 303 645の条項とISO/IEC 29147の各項)、別表3(対象外の製品)を参照(2026年9月確認)
  3. *3 参考:英国法令データベース「The Product Security and Telecommunications Infrastructure (Security Requirements for Relevant Connectable Products) (Amendment) Regulations 2025」(SI 2025 No. 211)(https://www.legislation.gov.uk/uksi/2025/211/made)。出典:2025年2月24日制定・2月25日施行。第4条(別表3への自動車の項目の追加)を参照(2026年9月確認)




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