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基準未達から支払までの手順、英国の40ポンドと10営業日
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 未達は請求を待たずに払う:10営業日以内に40ポンド*2。
- 払い忘れにも同額が積む:追加標準支払*2。
- 不具合の定義を4つに分けた:第5A条第5項*1。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
約束した時間を外したとき、何が起きるか。多くの契約は「協議のうえ定める」と書いて終わります。相手が申し出なければ、何も起きません。
英国のガス・電力市場規制庁は電気およびガス(履行基準)(供給者)(改正)規則2026を2026年1月27日に制定し、2026年2月23日に施行しました*1。
この制度は、基準を外したこと自体を支払いの引き金にする作りです。2026年の改正はそこへスマートメーターの項目を足しました*1。サービス水準の設計として読むと、参考になる点が多く見つかります。
目次
未達そのものが、支払いの引き金になる
まず全体像です*1*2。
土台は2015年の主要規則です*2。第8条第1項は、供給者に第3条から第6条までに定める個別履行基準のそれぞれを満たさなければならないと課します*2。
外したときの効果が、同条第2項です*2。個別履行基準を満たさなかった場合、その一つひとつについて、影響を受けた顧客へ40ポンドの支払い(標準支払)を、当該基準を最初に達成しなかった時から10営業日以内に行わなければならない*2。顧客の申出は要件になっていません*2。
さらに第3項があります*2。標準支払を行わなかった場合、または第7条第1項の配分支払を中継しなかった場合、それぞれについてさらに40ポンド(追加標準支払)を、その不履行から10営業日以内に支払います*2。第4項により、この義務は元の標準支払の義務に上乗せされます*2。
支払いの方法にも定めがあります*2。第7項は、顧客が特定の支払方法を指定した場合、供給者はその方法で支払うことへの同意を不合理に留保してはならないとしました*2。なお支払いを行うには、供給の料金として顧客の口座に入金記帳することも含まれます*2。
無制限ではありません*2。第9条第1項は、未達が継続している場合、その未達について2回以上の標準支払を求められないとし、第2項は追加標準支払についても同じ制限を置きました*2。
免除の類型も並びます*2。支払義務の有無について供給者と顧客の間に真正な紛争があるとき、顧客がそれ以上の対応を望まない旨を、未達となる時点より前に通知したとき、顧客の通知や請求が軽薄または濫用的だと供給者が合理的に考えるとき、そして悪天候、供給者の役職員や代理人でない者の行為または懈怠、必要な立入りを得られないこと、法令違反となるおそれなどにより、違反の時点までに基準を満たすことが合理的に実行可能でなかったときです*2。
「意図どおり動いていない」を4つに分けた
2026年の改正の中心は、新設の第5A条です*1。顧客が、自らのスマートメーターまたは宅内表示装置が意図どおりに動いていないと考える旨を供給者へ通知した場合に適用され、前払メーターとして動作しているものを含むすべてのスマートメーターが対象です*1。
供給者は、通知を受けてから5営業日以内に3つのことをします*1。意図どおりに動いていないかどうかの初期判定を完了すること、適当な場合には、原因の特定、または宅内表示装置が意図どおりに動いていないかどうかの特定に資する行動をとること、そしてその初期判定の性質と結果および講じた行動を、書面で確認する旨を申し出ることです*1。
この3つは、それぞれが個別履行基準とされました*1。ひとつの通知から、支払いの引き金になりうる義務が3本立ち上がる構造です*1*2。
| 号 | 状態 |
|---|---|
| (a) | 供給者が、スマートメーター通信サービスが提供する手段によるか他の手段によるかを問わず、そのスマートメーターから遠隔検針の値を受け取っていない |
| (b) | (a)の状態の結果として、顧客が不正確な請求書を受け取っている |
| (c) | 宅内表示装置が、料金や支出の情報を含む、顧客のエネルギー消費に関する正確な実時間の情報を表示していない |
| (d) | 前払メーターとして動作することが意図されたスマートメーターについて、顧客がそのメーターを通じて遠隔で前払いできない |
(a)と(b)の関係が特徴的です*1。(a)は供給者の側で値が届いていないという状態、(b)はその結果として顧客に生じた不利益です*1。原因の状態と、顧客が体験する影響を、別の号として並べています*1。
対象となる顧客の範囲も、号によって変わります*1。第5A条第5項は、顧客には零細事業者の顧客を含む。ただし「意図どおりに動いていない」の定義の(c)の適用については、この限りでないとしました*1。宅内表示装置の項目だけ、零細事業者が外れます*1。
この切り分けは、支払いの側にも反映されています*1。改正の第6条と第7条は、主要規則の第8条第9項(a)と第9条の顧客の定義に、第5A条(意図どおりに動いていないスマートメーターの調査)を加え、ただし定義の(c)の適用については除くという文言を挿入しました*1。義務の範囲と支払いの範囲を、同じ条件でそろえています*1。
「合理的な期間」に、数字を入れた
もう一つの改正が、予約に関する第3条です*1。従来の第3条第3項は、合理的な期間内に、それ自体が合理的な期間内の日で、4時間以内の時間帯で、稼働時間内に行われる予約を顧客へ申し出なければならないという書き方でした*2。
改正はここへ、初回に限った数字を入れました*1。新設の第4A項は、初回のスマートメーター設置予約について、第3項(a)の「合理的な期間内」を、家庭の顧客は30営業日、零細事業者の顧客は60営業日の期間内の日と定義します*1。
起点は2つあります*1。顧客が予約を請求した日、または供給者もしくは顧客が予約の変更を請求した日です*1。変更のたびに時計が引き直される形です*1。第4B項と第4C項により、それぞれ2026年2月23日以後の請求に適用されます*1。
| 号 | 条件 |
|---|---|
| (a) | 顧客の建物にスマートメーターを首尾よく設置することはできないと、供給者が合理的に判断する場合 |
| (b) | スマートメーター通信サービスが提供する手段によるか他の手段によるかを問わず、そのメーターから遠隔検針の値を受け取れないと、供給者が合理的に判断する場合 |
| (c) | 顧客が2026年2月23日以後に、初回のスマートメーター設置予約の申出を1回以上、能動的に拒んだか、その予約のための建物への立入りを妨げた場合 |
(a)と(b)は、供給者が合理的に判断するという形をとっています*1。義務の外になる条件を、供給者側の判断にゆだねたうえで、その判断に合理性を求める書き方です*1。
(c)は顧客側の行為です*1。能動的に拒んだという限定があるため、応答がないだけでは当たりません*1。また日付が明示されているので、施行前の拒否は数えられません*1。
細かいところでは、第3条第9項も直されました*1。供給者が代表者に必要な技能、経験および資源を持たせる旨の規定について、スマートメーターの設置を目的として予約に臨む場合を含むという文言が加わっています*1。
なお用語の定義も追加されました*1。スマートメーターは、スマートエネルギー規約の別表9に含まれるガスまたは電気のスマートメーター機器の技術仕様のいずれかの版の最低要件を満たすメーターと定義されます*1。宅内表示装置は、顧客の建物でスマートメーターに付随する装置で、料金や支出の情報を含む消費の正確な実時間の情報を表示するよう設計されたものです*1。
作り方が示す、3つの設計判断
この改正は、規制の作り方として3つの判断を含んでいます*1*2。
第一に、不定形な語を残したまま、一部にだけ数字を入れたことです*1。第3条第3項の「合理的な期間内」という文言はそのままで、初回のスマートメーター設置予約という限られた場面についてだけ、30営業日と60営業日という定義を差し込みました*1。全体を数値化せず、問題が起きている場面だけを固めるやり方です*1。
第二に、義務の外になる条件を先に書いたことです*1。第1A項は、適用しない場合を3つ挙げています*1。期限を設ければ、期限を守れない事情が持ち出されます*1。どの事情なら外れるのかを条文に置いておけば、個別の交渉が減ります*1。
第三に、支払いの範囲を、義務の範囲と同じ文言でそろえたことです*1。第5A条で零細事業者を含めつつ宅内表示装置の号だけ外す、という条件を、第8条第9項(a)と第9条の顧客の定義にも同じ言い回しで挿入しました*1。片方だけ直すと、義務はあるのに支払いは生じない、という空白が生まれます*1。
そして制度の前提として、この規則は規制庁が定めるものです*1。制定にあたっては、影響を受けうる者の代表的な標本の意見を知るための調査を手配して結果を検討し、提案の告示を公表して意見を検討し、市民相談所、スコットランド消費者機構、ガス供給者、電気供給者、影響を受けうる者を代表すると思われる者や団体へ諮問しています*1。手続そのものが授権法に書き込まれています*1。
日本のIT部門が持ち帰れる論点
この制度は英国の電気・ガスの規制で、日本の事業者へ直接の義務を課すものではありません*1。ただしサービス水準を外したときにどうするかという問いは、保守や運用の契約でそのまま現れます*2。設計の参考になる点を4つ挙げます*1*2。
第一に、未達の検知そのものを支払いの引き金にすることです*2。主要規則の第8条第2項は、顧客の申出を要件にしていません*2。申出を要件にすると、気づいた顧客だけが救われ、気づかない顧客の分は事業者の側に残ります*2。保守のサービス水準を決めるときも、未達の判定を人の申告ではなく記録から導ける形にしておくと、運用の負担が読めるようになります*2。
第二に、是正しないことにも値段をつけることです*2。第8条第3項の追加標準支払は、標準支払を怠ったことに対する支払いです*2。一次の未達より、その後の放置のほうが関係を損ないます*2。一次の対応期限と、それを外したときの二次の効果を、別々に決めておく作りは応用が効きます*2。
第三に、不具合の定義を、原因と影響に分けて書くことです*1。第5A条第5項は、遠隔検針の値が届かない状態(a)と、その結果として不正確な請求が届く状態(b)を別の号にしました*1。監視の指標で言えば、(a)はデータの取得に関する指標、(b)は利用者が受け取る成果物に関する指標です*1。監視の設計では、この二つを同じ画面に並べておくと、届いているのに中身が誤っている場面を見落としにくくなります*1。
第四に、期限の起点を、変更のたびに引き直すかどうか決めておくことです*1。第4A項は、最初の請求の日だけでなく、供給者または顧客が予約の変更を請求した日も起点にしました*1。どちらの都合による変更かを問わない書き方です*1。運用の現場では、相手都合の延期をどう扱うかが後から争点になります*1。起点の定義に「誰の都合か」を入れるかどうかを、最初に決めておくほうが揉めません*1。
免除の並べ方も参考になります*2。第9条は、真正な紛争、顧客が対応を望まない旨の事前の通知、軽薄または濫用的な請求、悪天候、第三者の行為、立入りができないこと、法令違反となるおそれを挙げました*2。免除の一覧がないサービス水準は、結局どこかで運用が止まります*2。どこまでを引き受けるのかを先に書くほうが、守れる約束になります*2。
まとめ:英国の履行基準の改正で押さえる3つの視点
英国のガス・電力市場規制庁は、電気およびガス(履行基準)(供給者)(改正)規則2026を2026年1月27日に制定し、2026年2月23日に施行しました。2015年の主要規則を改めたものです。押さえたい視点は三つあります。第一に、支払いの仕組みです。主要規則の第8条は、個別履行基準を満たさなかった場合、その一つひとつについて、最初に達成しなかった時から10営業日以内に40ポンドの標準支払を行うよう求めます。顧客の申出は要件ではありません。標準支払を怠れば、さらに40ポンドの追加標準支払が上乗せされます。第9条は、継続中の未達について2回以上の支払を求めないという制限と、真正な紛争、顧客の事前の通知、軽薄または濫用的な請求、悪天候、第三者の行為、立入りができないことなどの免除を置きました。第二に、新設された第5A条です。顧客がスマートメーターまたは宅内表示装置が意図どおりに動いていないと通知したとき、供給者は5営業日以内に初期判定を完了し、適当な場合には原因の特定に資する行動をとり、判定の性質と結果および講じた行動を書面で確認する旨を申し出ます。この3つはそれぞれ個別履行基準です。意図どおりに動いていないとは、遠隔検針の値を受け取っていないこと、その結果として不正確な請求書を受け取っていること、宅内表示装置が正確な実時間の情報を表示していないこと、前払メーターとして遠隔で前払いできないことの4つを指します。第三に、予約の期限です。初回のスマートメーター設置予約については、合理的な期間内が、家庭の顧客は30営業日、零細事業者の顧客は60営業日と定義されました。起点は予約の請求の日と、変更の請求の日です。設置が成功しないと合理的に判断される場合、遠隔検針の値を受け取れないと合理的に判断される場合、顧客が能動的に拒んだか立入りを妨げた場合には適用されません。
よくある質問
この改正規則は、いつから適用されていますか。
電気およびガス(履行基準)(供給者)(改正)規則2026は2026年1月27日に制定され、2026年2月23日に施行しました。ガス・電力市場規制庁が、1986年ガス法第33A条第1項および第47条、ならびに1989年電気法第39条第1項および第60条に基づいて定めたものです。改正の対象は、電気およびガス(履行基準)(供給者)規則2015です。初回のスマートメーター設置予約に関する期限は、2026年2月23日以後に行われた予約の請求と、同日以後に行われた予約の変更の請求に適用されます。
スマートメーターが「意図どおりに動いていない」とは、どのような状態ですか。
新設の第5A条第5項が4つ挙げています。供給者が、スマートメーター通信サービスによるか他の手段によるかを問わず、そのメーターから遠隔検針の値を受け取っていないこと。その状態の結果として、顧客が不正確な請求書を受け取っていること。宅内表示装置が、料金や支出の情報を含む顧客のエネルギー消費に関する正確な実時間の情報を表示していないこと。そして、前払メーターとして動作することが意図されたメーターについて、顧客がそのメーターを通じて遠隔で前払いできないことです。なお顧客には零細事業者の顧客が含まれますが、3つ目の宅内表示装置の号についてはその限りではありません。
基準を満たさなかった場合、供給者は何をしますか。
2015年の主要規則の第8条第2項により、個別履行基準を満たさなかった場合、その一つひとつについて、影響を受けた顧客へ40ポンドの標準支払を、当該基準を最初に達成しなかった時から10営業日以内に行います。顧客からの申出は要件ではありません。標準支払を行わなかった場合、または配分支払を中継しなかった場合には、それぞれについてさらに40ポンドの追加標準支払を、その不履行から10営業日以内に支払います。この義務は元の支払義務に上乗せされます。顧客が特定の支払方法を指定した場合、供給者はその方法で支払うことへの同意を不合理に留保できません。
初回の設置予約が30営業日以内でなくてよい場合はありますか。
あります。新設の第1A項により、3つの場合には第3条が適用されません。顧客の建物にスマートメーターを首尾よく設置することはできないと供給者が合理的に判断する場合、そのメーターから遠隔検針の値を受け取れないと供給者が合理的に判断する場合、そして顧客が2026年2月23日以後に初回の設置予約の申出を1回以上能動的に拒んだか、その予約のための建物への立入りを妨げた場合です。また第9条には、悪天候、供給者の役職員や代理人でない者の行為または懈怠、必要な立入りを得られないことなどにより基準を満たすことが合理的に実行可能でなかった場合の免除も置かれています。
出典
- *1 参考:英国法令データベース「The Electricity and Gas (Standards of Performance) (Suppliers) (Amendment) Regulations 2026」(SI 2026 No. 73・2026年1月27日制定)(https://www.legislation.gov.uk/uksi/2026/73/made)。本記事の一次情報。制定日(2026年1月27日)、施行日(2026年2月23日)、授権(1986年ガス法第33A条第1項・第47条、1989年電気法第39条第1項・第60条)と制定前の調査・告示・諮問の手続、第3条(初回のスマートメーター設置予約・宅内表示装置・スマートエネルギー規約・スマートメーター・スマートメーター通信サービスの定義の追加)、第4条(第1A項の3つの適用除外、第4A項の30営業日と60営業日、第4B項・第4C項の適用日、第9項への設置目的の予約の追加)、第5条(新設の第5A条=5営業日以内の初期判定・原因特定に資する行動・書面での確認の申出、3つがそれぞれ個別履行基準であること、意図どおりに動いていないの4つの定義、零細事業者と(c)の関係)、第6条・第7条(主要規則の第8条第9項(a)と第9条の顧客の定義への挿入)を確認した。確認日は2026年9月15日。(2026年9月確認)
- *2 参考:英国法令データベース「The Electricity and Gas (Standards of Performance) (Suppliers) Regulations 2015」(SI 2015 No. 1544・第8条は2026年2月23日時点の版)(https://www.legislation.gov.uk/uksi/2015/1544/regulation/8)。第2条(顧客・家庭の顧客・零細事業者の顧客・個別履行基準・支払いを行う・営業日・稼働時間などの定義)、第3条(予約。合理的な期間内の申出、4時間以内の時間帯、稼働時間内)、第8条(第1項=基準の遵守義務、第2項=10営業日以内の40ポンドの標準支払、第3項=40ポンドの追加標準支払、第4項=上乗せ、第5項=共同顧客への支払、第7項=支払方法の指定、第9項=顧客の範囲)、第9条(第1項・第2項=継続中の未達についての回数の制限、第3項=真正な紛争、事前の通知、軽薄または濫用的な請求、法定の罪や料金不払いに関する場合、悪天候・第三者の行為・立入りができないこと・法令違反のおそれなどによる免除)を確認した。第8条の金額は現行の版で40ポンド。確認日は2026年9月15日。(2026年9月確認)