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ZulipとMattermostの違い|社内チャットの選び方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- Zulipはトピック単位で会話を分ける、Apache 2.0のオープンソースの社内チャットです。
- Mattermostとは会話のまとめ方とライセンスの形が違い、話題を分けて書く使い方に向きます。
- 自社のサーバーに置くなら、専用サーバーと証明書、更新とバックアップの担当を先に決めます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
チャンネルの中でいくつもの話題が混ざり、前の議論がどこにあったか分からない。返信がスレッドの欄に埋もれて、大事な決定を見落としていた——。社内チャットを使い込んだ会社では、こうした食い違いが起こりがちです。Zulip(ズーリップ)は、会話を話題ごとの「トピック」に分けて進める、オープンソースのチーム向けチャットです。
自社のサーバーに置いて無料で使え、データを社内に持てます。ただし万能ではなく、使い方の慣れやサーバーの保守には手当てが要ります。本記事では、社内チャットの見直しを任された情報システムの担当者に向けて、Zulipの仕組み、Mattermostとの違い、セルフホストの要件と進め方、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
Zulipとは
Zulipは、開発元のGitHubで「トピック単位のスレッド」を特徴にしたオープンソースのチーム向けチャットとして公開されています。*1 開発元が運営するクラウド版(Zulip Cloud)と、自社のサーバーに置くセルフホスト版の2つの使い方があり、社内のデータを自社で持ちたい会社はセルフホスト版を選びます。
- ライセンスはApache 2.0(改変や商用利用を広く認める、条件のゆるいライセンス)です
- セルフホスト版は無料でもZulipの全機能が含まれます*3
- 無料のセルフホスト版では、企業のように無償の対象(非営利の団体など)に当たらない組織のスマートフォン通知は10人までです。人数の制限をなくすには有料プランを選びます
- 書き出しと取り込みの機能があり、クラウド版と自社のサーバーの間を行き来できます
無料で全機能を使える点は魅力ですが、社員がスマートフォンで通知を受ける使い方を前提にするなら、プランの選び方まで含めて費用を見積もる必要があります。
トピック単位の会話の仕組み
Zulipの会話は「チャンネル」と「トピック」の2段で整理されます。チャンネルは部署や案件ごとの部屋、トピックはその部屋の中の話題です。開発元はトピックを付けることを、メールに件名を付ける作業の軽い版にたとえています。*2

- 1つのチャンネルで、いくつもの会話をトピックごとに同時に進められます
- 会話が何時間・何日続いても、返信はそのトピックの流れの中に表示されます
- 返信を書き始めると、いま読んでいるトピックが宛先として自動で入ります
- 最初の投稿を探さなくても、トピックの名前で過去の会話をたどれます
多くのチャットでは、返信は画面の横の小さな欄に「スレッド」として開きます。Zulipでは、トピックごとの会話が本文の画面にそのまま並びます。*2 時差のあるチームや、すぐには返事をしない使い方でも話が混ざりにくいのが、この仕組みの狙いです。
ZulipとMattermostの違い
セルフホストできる社内チャットとして、Zulipと並んで名前が挙がるのがMattermostです。どちらも自社のサーバーに置けますが、会話のまとめ方とライセンスの形が違います。次の表は、両者の公式の資料に書かれている事実だけを並べたものです。
| 観点 | Zulip | Mattermost |
|---|---|---|
| 会話のまとめ方 | チャンネルの中の投稿に、話題ごとのトピックを付けて分ける | チャンネルの投稿に返信をつなげる「スレッド」で分ける |
| 返信の見え方 | トピックごとの会話が本文の画面にそのまま並ぶ | 返信は最初の投稿の下に折りたたまれ、スレッドの一覧で追う |
| ライセンス | 全体がApache 2.0 | ソースコードはAGPL v3.0か商用ライセンス。開発元が配る実行版はMITライセンス |
| サーバーの構成 | 専用のサーバーに、インストーラーがnginx・PostgreSQL・Redisなどをまとめて入れる | Linux用の1つのプログラムとPostgreSQLで動く |
Mattermostのスレッドについては公式ドキュメント、ライセンスと構成はGitHubの記載によります。*8*7 どちらが合うかは、話題を最初から分けて書く使い方に社内が慣れられるかで変わります。Mattermostの構築はMattermostで社内チャット基盤を外注構築、もう一つの選択肢であるRocket.ChatはRocket.Chatで社内チャットをセルフホスト外注で扱っています。
セルフホストの要件と進め方
Zulipを自社のサーバーに置く場合、公式ドキュメントが求める条件は次のとおりです。*4 インストーラーは、そのサーバーでZulipだけが動くことを前提に、必要なソフトをまとめて入れて設定します。ほかのシステムと同じサーバーに同居させる構成は避けます。
- Zulip専用のマシンか仮想マシン(OSはUbuntuかDebianの対応版)
- メモリは2GB以上。利用者が100人を超えるなら、メモリ4GBとCPU2つ
- 空きディスク10GB以上と、利用者が開くためのドメイン名
- 登録確認や通知のメールを送るための送信用メールの設定*4
つまずきやすいのはステップ3の初期設定です。Zulipは暗号化した通信(HTTPS)でしか画面を出さないため、証明書の取得と更新の方法を先に決めておきます。社外から使うなら、利用者のいる場所から443番のポートに届く必要があります。*4 スマートフォンへのプッシュ通知を使うなら、サーバーからインターネットへの接続も止めずにおきます。
外部に頼むときに確認しておきたい点
Zulipを自社のサーバーに置くと、ライセンス費用はかからなくても、構築と保守の手間は自社で持つことになります。構築や移行を外部に頼むときは、次の点を見積もりの前に確かめておきます。

- どこまで頼むか:サーバーの用意、インストールと初期設定、旧チャットからの移行、利用者への説明のうち、どれを任せるか
- 移行の範囲:Mattermostから取り込む場合、組織の設定は書き出されず、スレッドの投稿もスレッドとしての印は付かずに入ります*6
- ログインの方法:社内のアカウントやLDAP(社内の利用者情報をまとめた仕組み)・SAML(シングルサインオンの方式)とつなぐか
- 更新とバックアップ:バックアップは同じZulipの版・同じPostgreSQLの版のサーバーにしか戻せません。版の更新とバックアップを誰がいつ行うか*5
- 運用後の見直し:トピックの付け方やチャンネルの分け方を、使い始めてから直す場を設けるか
特に移行は、旧チャットのスレッドがそのままの形では入らない点を、利用者に前もって伝えておく必要があります。過去の会話をどこまで新しいZulipへ持ち込むかは、移行の前に決めておきます。
まとめ:Zulipで確かめておきたい3つの点
Zulipを社内チャットとして入れるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、話題ごとにトピックを付けて書く使い方を、社内の決まりとして根付かせられるかを考えること。第二に、クラウド版かセルフホスト版か、スマートフォン通知の人数まで含めてプランを決めること。第三に、自社のサーバーに置くなら、専用のサーバーと証明書を用意し、版の更新とバックアップを誰が受け持つかを導入の前に決めることです。この3点を踏まえておけば、「入れてはみたが、結局いつものチャットのように話題が混ざってしまった」という事態を避けやすくなります。構築や移行の進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
クラウド版と自社のサーバーはあとから切り替えられますか
切り替えられます。開発元は、書き出しと取り込みの機能でZulip Cloudと自社のサーバーの間を行き来できると案内しています。*3 ただし、サーバーの丸ごとのバックアップはこの移動には使えないため、組織のデータを書き出す別の機能を使います。
社内のネットワークだけで使えますか
使えますが、一部の機能に影響があります。公式ドキュメントでは、画像やWebサイトのプレビューとスマートフォンへのプッシュ通知に、サーバーからインターネットへの接続が必要とされています。*4 これらの機能を止めれば、インターネットへの接続は要りません。
旧チャットの利用者のパスワードも移せますか
移せません。Mattermostなどから取り込んだ利用者には、最初はパスワードが設定されていません。*6 社内のアカウントでのログインに切り替えるか、各自にパスワードを設定してもらうかを、移行の前に決めて利用者へ案内します。
社内チャットの構築と移行のご相談
Zulipなどのセルフホスト型チャットのサーバー構築から、旧チャットからの移行、更新とバックアップの運用まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:zulip/zulip(GitHub)README・LICENSE(https://github.com/zulip/zulip)。出典:トピック単位のスレッドを特徴とするオープンソースのチームチャットという説明と、Apache 2.0ライセンスの記載を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:Zulip help center「Introduction to topics」(https://zulip.com/help/introduction-to-topics)。出典:チャンネルとトピックによる会話の整理、メールの件名へのたとえ、ほかのチャットのスレッドとの見え方の違いの記述を参照(2026年10月確認)
- *3 参考:Zulip「Plans and pricing」(https://zulip.com/plans/)。出典:セルフホスト版の無料プランに全機能が含まれること、スマートフォン通知の人数の条件、クラウド版と自社サーバーの間の移動の記述を参照(2026年10月確認)
- *4 参考:Zulip documentation「Requirements and scalability」(https://zulip.readthedocs.io/en/latest/production/requirements.html)。出典:対応OS、メモリ・CPU・ディスクの条件、専用マシンの推奨、HTTPSとポート、インターネットへの接続、送信用メールの記述を参照(2026年10月確認)
- *5 参考:Zulip documentation「Backups, export and import」(https://zulip.readthedocs.io/en/latest/production/export-and-import.html)。出典:バックアップを同じZulipの版・同じPostgreSQLの版のサーバーへ戻す必要があること、クラウド版との移動には使えないことの記述を参照(2026年10月確認)
- *6 参考:Zulip help center「Import from Mattermost」(https://zulip.com/help/import-from-mattermost)。出典:組織の設定が書き出されないこと、スレッドの投稿の扱い、取り込んだ利用者にパスワードが設定されないことの記述を参照(2026年10月確認)
- *7 参考:mattermost/mattermost(GitHub)README・LICENSE.txt(https://github.com/mattermost/mattermost)。出典:1つのLinux用プログラムとPostgreSQLで動く構成、AGPL v3.0・商用ライセンス・MITライセンスの記載を参照(2026年10月確認)
- *8 参考:Mattermost Documentation「Organize conversations using threaded discussions」(https://docs.mattermost.com/end-user-guide/collaborate/organize-conversations.html)。出典:返信が最初の投稿の下に折りたたまれること、スレッドの一覧画面の記述を参照(2026年10月確認)