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業務委託エンジニアの契約書に入れる7つの項目|初めての企業向け
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- 業務委託エンジニアの契約書には、業務範囲・成果物と検査・稼働と報告・報酬と支払期日・知的財産権・秘密保持・契約期間と解約の7項目を入れます。
- 後から直しにくいのは支払期日・知的財産権・解約の3つで、受け取りから60日以内の支払と、長く続く契約の30日前の予告を書いておきます。
- 同じ人に続けて頼むなら基本契約と個別契約に分け、1回きりの開発なら契約書1本にまとめるなど、頼み方で書面の形を選びます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
個人のエンジニアに業務委託で開発を頼むことになり、契約書を用意しようとしたものの、どの項目を書けばよいのか分からない。ひな形を探して当てはめてみたが、自社の案件に合っているのか判断がつかない——。初めて個人と契約する企業では、ここで手が止まることがあります。
本記事は、業務委託でエンジニアを受け入れる開発マネージャーや情報システムの責任者、人事の担当者に向けて、業務委託エンジニアの契約書に入れる7つの項目を表で整理します。公正取引委員会と厚生労働省の資料、フリーランス・事業者間取引適正化等法の条文をもとに、書き漏らすと困る点と、契約書の形の選び方をまとめます。
目次
業務委託エンジニアの契約書とは
業務委託エンジニアの契約書は、社員として雇わずに個人のエンジニアへ開発などの仕事を頼むとき、頼む仕事の中身と報酬、期間を書き残す書面です。従業員を使わずに一人で仕事を受ける個人(一人で営む法人も含む)に頼む場合は、フリーランス・事業者間取引適正化等法の対象になります。*2
この法律は、業務委託をしたら直ちに、給付の内容、報酬の額、支払期日などを、書面か電磁的方法(メールなど)で相手に示すよう発注する側に求めています。*2 本記事では、この明示の事項も契約書に書き込む前提で項目を整理します。
書き漏らしは珍しいことではありません。公正取引委員会と厚生労働省が法律の施行前の2024年に行った調査は、直近1年ほどに業務委託をした委託者1,090件と、受けたフリーランス782件の回答を集計しています。*1 同じ問いに、それぞれの立場で答えた割合は次のとおりです。
- 取引条件を明示しなかった(明示されなかった)ことがある:委託者17.4%、フリーランス44.6%
- 報酬を60日以内に支払わなかった(支払われなかった)ことがある:委託者4.8%、フリーランス28.1%
- 契約期間が30日以上の契約を発注側の都合で途中解除するとき、30日前までに予告しなかった(予告がなかった):委託者5.1%、フリーランス18.7%
回答した事業者は別々なので、同じ取引を両側から見た数字ではありません。それでも、受ける側が「示されていない」と感じる場面は、出す側の自覚より多いと読めます。契約書に項目を並べておくことが、こうした行き違いを減らす手立てになります。
契約書に入れる7つの項目
業務委託エンジニアの契約書に入れておきたい項目を、書く中身と、書き漏らしたときに起きやすいこと、法律との関わりに分けて表にしました。⑥の秘密保持は法律で示すよう求められる事項ではありませんが、開発を頼む企業なら入れておきたい項目です。

| 項目 | 書く中身 | 書き漏らすと起きやすいこと | 法律との関わり |
|---|---|---|---|
| ①業務範囲 | 担う工程(設計・開発・テストなど)、使う技術、対象のシステム | 範囲の外の作業を頼むたびに話がこじれる | 給付の内容として示す |
| ②成果物と検査 | 受け取るもの(プログラム・設計書・手順書)、受け取る日、検査を終える日 | 仕事が終わったかどうかで意見が分かれる | 受け取る期日と場所、検査を終える期日を示す |
| ③稼働と報告 | 月の稼働時間の目安、作業する場所、報告の頻度と方法 | 時間の管理が社員と同じになり、雇用に近い働き方とみられやすい | 役務を受ける期間と場所を示す |
| ④報酬と支払期日 | 金額か計算の方法、時間の幅を超えた分と足りない分の精算、支払期日 | 支払いが遅れ、期限を超える | 報酬の額と支払期日を示す。支払期日は受け取りから60日以内 |
| ⑤知的財産権 | 著作権を譲り受けるか利用の許諾か、その範囲と対価 | 改修や別の案件での再利用に相手の了解が要る | 譲渡・許諾させるなら給付の内容に範囲を書く |
| ⑥秘密保持 | 秘密にする情報の範囲、持ち出しの禁止、終了後の返却と消去 | 契約が終わった後の情報の扱いが決まらない | 明示の事項ではなく自社で決める |
| ⑦契約期間と解約 | 期間と更新の区切り、解約を伝える日数と方法 | 急な終了で引き継ぎが間に合わない | 期間を示す。6か月以上続く契約の解除・不更新は30日前までに予告 |
③の稼働は書き方に気をつけます。行政のガイドラインは、勤務場所と勤務時間が指定され管理されていることを「一般的には、指揮監督関係にあることを示す基本的な要素」としています。*7 業務委託で頼むなら、始業と終業の時刻を決めるよりも、月の稼働時間の目安と、成果や進み具合を報告する頻度で書く形が考えられます。働き方が雇用に近くないかの個別の判断は、専門家に確かめてください。
書き漏らしやすい期日と権利
7つの項目のうち、契約を結んだ後に直しにくいのは、支払期日、知的財産権、解約の3つです。契約から終了までのどの時点で何を決めておくかを、図にまとめました。
- 支払期日:従業員を使う発注側は、成果物などを受け取った日から60日以内で、できる限り短い期日を定めます。*2 定めなかったときは、受け取った日が支払期日とみなされます。
- 知的財産権:プログラムなどの知的財産権やノウハウを譲り受ける、または利用の許諾を受けることも頼む仕事に含めるなら、その範囲を給付の内容に明確に書き、対価を報酬に加える必要があります。*6
- 解約:6か月以上続く業務委託を解除する、または期間の満了後に更新しないときは、少なくとも30日前までに予告します。*4 予告は書面、ファクシミリ、電子メールなどの方法で行います。*5
著作権は、契約の書き方によって一部の権利が相手に残ると推定される場合もあります。詳しくは業務委託エンジニアの成果物の著作権の基本で扱っています。担当者が契約の途中で抜けるときの取り決めは早期離任に備えて契約で決めておくことが参考になります。
契約書の形の選び方
項目が決まったら、どの形の書面にするかを選びます。法律の明示は、一定の期間の業務委託に共通する事項をあらかじめ書面などで示しておけば、その期間の個々の業務委託ではそれを指す形でもよいとされています。*3 主な形は次の3つです。
| 形 | 書くもの | 向いている場面 | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 契約書1本 | 7つの項目をすべて1通に | 期間と範囲がはっきりした開発を一度だけ頼む | 範囲が変わるたびに結び直す |
| 基本契約+個別契約 | 共通の項目(秘密保持・知的財産権・支払の方法・解約)を基本契約に、範囲・期間・報酬を個別契約に | 同じ人に続けて頼み、作業の中身が月ごとに変わる | 個別契約で毎回示す項目を決め、基本契約を指す一文を入れる |
| 発注のメール | 範囲・報酬・支払期日などを文面で示す | 数日のうちに終わる小さな作業を急いで頼む | 秘密保持と知的財産権は別に取り決める。後から探せる形で残す |
どれがよいかは頼み方で変わります。半年以上同じ人に続けて頼むなら、基本契約に共通の項目をまとめ、月ごとの作業を個別契約で示すと、結び直す手間が減ります。期間の決まった開発を一度だけ頼むなら、契約書1本のほうが読み返しやすくなります。短い作業ならメールで条件を示し、秘密保持の取り決めだけ先に結ぶ形もあります。
外部に頼むときに確認しておきたい点
個人と直接契約するか、紹介や仲介の会社を通すかで、契約書を誰が用意し、誰と結ぶかが変わります。どちらの場合も、次の5つを書き出しておくと契約書の項目をそのまま埋められ、相談の準備にもなります。

- 範囲:任せる工程と、受け取りたいもの(設計書、動くもの、運用の手順書など)
- 期間:始めたい時期、終わりの見込み、更新の区切り
- 体制:何人で、月何時間ほどの稼働か、社内の窓口は誰か
- 費用の決まり方:月額で固定するか、時間の幅で精算するか、支払期日をいつにするか
- 引き継ぎ:作業の記録の置き場所と、契約が終わるときに受け取るもの
契約書のひな形を使うときも、自社の案件に合わせて7つの項目を読み直します。条文の読み方や、働き方が雇用に近くないかといった個別の判断は、契約と専門家に確かめてください。法律の全体はフリーランス新法とはで、本業を持つ人と結ぶ場合は副業エンジニアとの契約で書いておく条項で扱っています。
まとめ:業務委託エンジニアの契約書に入れる項目
業務委託エンジニアの契約書で押さえたい点は3つです。第一に、業務範囲、成果物と検査、稼働と報告、報酬と支払期日、知的財産権、秘密保持、契約期間と解約の7項目を入れること。第二に、後から直しにくい支払期日、知的財産権、解約は、受け取りから60日以内の支払や30日前の予告といった期限を確かめて書くこと。第三に、同じ人に続けて頼むか一度だけ頼むかで、契約書1本、基本契約と個別契約、メールでの明示から形を選ぶことです。項目の書き出しに迷ったら、外部の手を借りるのも一つの方法です。
よくある質問
業務委託エンジニアとの契約書にひな形を使ってもよいですか
使えます。ただし、ひな形は案件を問わない書き方になっているため、業務範囲、成果物と検査、稼働と報告、報酬と支払期日、知的財産権、秘密保持、契約期間と解約の7項目が自社の案件に合っているかを読み直します。法律で示すよう求められる事項が抜けていないかも確かめます。
契約書を作らずに発注のメールだけで頼んでもよいですか
法律は、給付の内容や報酬の額、支払期日などを書面か電磁的方法で示すよう求めています。メールで条件を示す形もありますが、秘密保持や知的財産権の扱いは別に取り決めておき、後から探せる形で残します。
業務委託契約を途中で終えるときは何日前に伝えますか
従業員を使う発注側が、6か月以上続く業務委託を解除する、または更新しないときは、少なくとも30日前までに予告します。契約書にも、解約を伝える日数と方法を書いておきます。
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出典
- *1 参考:公正取引委員会・厚生労働省「フリーランス取引の状況についての実態調査(法施行前の状況調査)結果」(2024年10月18日)(https://www.jftc.go.jp/file/2024flsurvey.pdf)。出典:公正取引委員会・厚生労働省。回答母数(委託者1,090、フリーランス782)、取引条件の明示、報酬の支払期日、解除等の予告の回答割合を参照(確認日2026年10月20日)(2026年10月確認)
- *2 参考:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000025)。出典:e-Gov法令検索。第2条(定義)、第3条(給付の内容その他の事項の明示等)、第4条(報酬の支払期日等)、第16条(解除等の予告)を参照(確認日2026年10月20日)(2026年10月確認)
- *3 参考:公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/506M60200000003)。出典:e-Gov法令検索。第1条第1項(明示すべき事項)と第4項(共通事項のあらかじめの明示)を参照(確認日2026年10月20日)(2026年10月確認)
- *4 参考:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/506CO0000000200)。出典:e-Gov法令検索。第3条(継続的業務委託の期間=6月)を参照(確認日2026年10月20日)(2026年10月確認)
- *5 参考:厚生労働省関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/506M60000100094)。出典:e-Gov法令検索。第3条(解除等の予告の方法)を参照(確認日2026年10月20日)(2026年10月確認)
- *6 参考:公正取引委員会「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」の改正(2026年10月1日公表)(https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2026/oct/261001_toriteki.html)。出典:公正取引委員会。別紙1-2の第2部第1の1(3)ウ(給付の内容と知的財産権等)とキ(イ)(知的財産権等の譲渡・許諾等がある場合)を参照(確認日2026年10月20日)(2026年10月確認)
- *7 参考:公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省 フリーランスとの取引に関するガイドライン(本体・別紙)(https://www.jftc.go.jp/file/fl_guidelines1-2.pdf)。出典:公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省(令和3年3月に内閣官房を含む連名で策定、令和8年1月1日改定)。労働基準法における「労働者性」の判断基準のうち拘束性の有無を参照(確認日2026年10月20日)(2026年10月確認)