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業務委託エンジニアの参画後の著作権|プログラムの権利の決め方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 業務委託エンジニアが書いたプログラムの著作者は、自社、受託会社、書いた本人のいずれかになります。
- 著作権を譲り受ける契約で、作り変える権利などを定めた第27条と第28条を書き出さないと、その権利は譲渡した側に残ると推定されます。
- 意に反して改変されない権利などの著作者人格権は譲渡できず、著作者が自社でないときは相手に残ります。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
業務委託エンジニアに参画してもらい、機能を1つ書いてもらった。そのプログラムの著作者は自社なのか、エンジニアを雇っている会社(受託会社)なのか、書いた本人なのか。あとで別の人に改修を頼むとき、誰の了解が要るのかが分からない——。業務委託エンジニアを受け入れる現場では、こうした迷いが起こりがちです。ここで関わるのが著作権法です。成果物の著作権とは、著作権法が著作者に認める2種類の権利の1つで、プログラムを作り変える権利もここに含まれます。*1
参画後に成果物の扱いを決めるときは、契約で著作権を譲り受ける方法がまず思い浮かびます。ただし万能ではなく、契約の書き方しだいで一部の権利が相手に残ると推定されるうえ、譲渡そのものができない権利もあります。本記事では、業務委託エンジニアを受け入れる発注側の担当者に向けて、著作者が決まる仕組み、著作権を譲り受けるときの注意、譲渡できない権利、そして参画後に確認しておきたい点を整理します。
目次
成果物の著作者とは
著作権法は、著作者を「著作物を創作する者」と定めています。*1 業務委託エンジニアが書いたプログラムなら、次に見る第15条に当てはまらない限り、書いた本人が著作者です。プログラムは、コンピュータを動かして一つの結果を得られるように、指令を組み合わせて表現したものと定義されています。
第17条第1項によると、著作者は2種類の権利を持ちます。1つは著作者人格権で、第20条の同一性保持権(意に反して改変されない権利)などが含まれます。もう1つは著作権で、第21条から第28条までの権利です。第27条の翻案する権利(もとの著作物を作り変える権利)もここに入ります。*1 著作者が自社であれば、2種類とも自社が持ちます。
この2種類の権利は、他人に譲れるかどうかが違います。後で見るように、著作権は契約で譲り受けることができますが、著作者人格権は譲渡できません。そのため、参画後の成果物については、まず誰が著作者かを確かめます。
著作者が法人等になる場合
書いた本人ではなく、会社などが著作者になる場合を定めているのが第15条です。第15条は、法人その他の使用者をまとめて「法人等」と呼んでいます。プログラムについての規定は第2項です。法人等の発意(発案)に基づき、その法人等の業務に従事する者が職務上作成したプログラムは、作成の時の契約や勤務規則などに別段の定め(別の取り決め)がない限り、法人等が著作者になります。*1
第1項は、プログラム以外の著作物についての規定です。第2項と比べると、要件が1つ多くなっています。法人等が「自己の著作の名義の下に公表するもの」、つまり法人等の名義で公表するものであることです。プログラムを対象にした第2項には、この要件がありません。*1 2つの項の要件を並べると、次のようになります。
| 条文の要素 | 第1項(プログラム以外) | 第2項(プログラム) |
|---|---|---|
| 対象 | プログラムの著作物を除く | プログラムの著作物 |
| 法人等の発意に基づくこと | 要る | 要る |
| その法人等の業務に従事する者であること | 要る | 要る |
| 職務上作成する著作物であること | 要る | 要る |
| 法人等が自己の著作の名義の下に公表するもの | 要る | 条文にない |
| 作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがないこと | 要る | 要る |
どちらの項も、基準にしているのは「その作成の時」の契約や勤務規則です。参画後の時点ですでに書き上がっているプログラムについては、作成の時にどんな取り決めがあったかをまず確かめます。そのうえで、自社に権利が無い部分は、後で見る著作権の譲渡で補います。
自社か、受託会社か、本人か
業務委託エンジニアの場合、第15条で著作者になりうる法人等は、仕事を頼んだ自社と、エンジニアを雇っている受託会社の2つです。法人等が自社であれば自社が、受託会社であれば受託会社が著作者になります。どちらにも当たらなければ第15条は当てはまらず、書いた本人が著作者です。*1
ただ、「業務に従事する者」が何を指すかは、著作権法の条文には定められていません。そのため、3者のうち誰が著作者になるかは、条文だけでは決まりません。参画の契約を結ぶときや参画後の早い段階で、成果物の著作者を誰と考えるのかを受託会社やエンジニア本人と確かめておくと、後で契約を結ぶ相手がはっきりします。
著作者が決まれば、権利の持ち主も決まります。著作者が自社であれば、著作権も著作者人格権も初めから自社にあります。著作者が受託会社や本人であれば、自社が権利を得るための手段として、次に見る第61条の著作権の譲渡があります。
著作権を譲り受けるときの注意
第61条第1項は、著作権を譲渡できるとしています。注意したいのは第2項です。著作権を譲渡する契約で、第27条または第28条の権利が「譲渡の目的として特掲されていない」ときは、これらの権利は譲渡した側に残っているもの(条文では「留保」)と推定されます。*1 特掲とは、譲渡の対象として特に書き出すことです。契約書に「著作権を譲渡する」と書いただけでは、この2つの権利は相手に残ると推定されることになります。
第27条は、著作物を翻訳し、編曲し、変形し、脚色し、映画化し、その他翻案する権利です。こうした行為で作られた著作物を、著作権法は二次的著作物と呼びます。第28条によると、二次的著作物が利用されるときには、もとの著作物の著作者も、二次的著作物の著作者と同じ種類の権利を持ちます。*1 プログラムに手を入れて二次的著作物ができれば、それを使う場面にも、もとのプログラムの権利が関わってきます。
参画後に手を入れる作業が翻案に当たるかどうかは、条文からは決まりません。また「推定する」という書き方なので、条文は相手に残ると決めつけているわけではありません。それでも、契約で第27条と第28条の権利を書き出しておけば、そう推定されることはありません。*1 改修する予定のある成果物ほど、契約書の文言まで確かめておきたいところです。
譲渡できない著作者人格権
第59条は、著作者人格権は著作者本人だけに属し(一身専属)、譲渡できないとしています。*1 著作者が自社でないときは、著作権を全部譲り受けても、著作者人格権は著作者のもとに残ります。改修で関わってくるのは、第20条第1項の同一性保持権です。著作者は、その著作物と題号(題名)の同一性を保持する権利を持ち、その意に反して変更、切除その他の改変を受けないとされています。*1
第20条第2項には、第1項を適用しない改変が4つ挙げられています。第1号と第2号は学校教育と建築物についての改変で、プログラムに関わるのは第3号と第4号です。第3号は、特定のコンピュータで実行できないプログラムを実行できるようにするため、またはより効果的に実行できるようにするために必要な改変です。第4号は、著作物の性質や利用の目的・態様に照らしてやむを得ないと認められる改変です。*1
機能の追加や不具合の修正がこのどちらかに当たるかは、条文には書かれていません。一方で、第1項が対象にしているのは、著作者の意に反する改変です。著作者が同意している改変は、この規定が問題にする場面には当たらないと考えられます。著作者が自社でないときは、予定している改修の内容について、著作者の同意を得ておくと確実です。
参画後に確認しておきたい点
ここまでの条文を踏まえると、業務委託エンジニアの参画後に確かめておきたいのは次の4つです。
- 第15条の前提:法人等の発意、業務に従事する者、職務上の作成、作成の時の別段の定めが、それぞれどうなっているか
- 権利の持ち主:自社、受託会社、書いた本人のうち、誰が著作者で、いま誰が著作権を持っているか
- 譲渡の書き方:著作権を譲渡する契約に、第27条と第28条の権利が書き出されているか
- 著作者の同意:著作者が自社でないとき、予定している改修について同意を得られるか
2つめの確認で、著作権を譲り受ける相手が決まります。第15条第2項の法人等が自社なら著作権は初めから自社にあり、受託会社なら受託会社から、どちらにも当たらなければ書いた本人から譲り受けることになります。受託会社を通して参画してもらっている場合は、受託会社とエンジニア本人の間の取り決めも、受託会社に尋ねておきます。
外部に頼むときの契約の論点を広く見るなら「AI開発を外注する際の契約・著作権・データ利用の留意点」を、前の開発会社が作った既存システムの改修で誰から許諾を得るかは「業務委託エンジニアの既存システム改修、許諾は誰から得る?」を参照してください。
まとめ:参画後の成果物で確かめておきたい3つの点
業務委託エンジニアの参画後に成果物の著作権を扱ううえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、自社、受託会社、書いた本人のうち誰が著作者かを、第15条の要件と作成の時の取り決めから確かめること。第二に、著作権を譲り受ける契約で、第27条と第28条の権利を書き出すこと。第三に、著作者が自社でないときは、譲渡できない著作者人格権が相手に残るため、改修について著作者の同意を得ておくことです。この3点を踏まえておけば、「著作権は全部譲り受けたはずなのに、改修のときに相手の了解が要ると分かった」という事態を避けやすくなります。成果物の扱いの確かめ方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
「職務著作」という言葉は著作権法に出てきますか
条文には出てきません。第15条の見出しは「職務上作成する著作物の著作者」で、法人等が著作者になる場合を定めています。*1 この第15条のことを職務著作と呼ぶことがあります。
プログラム以外の成果物は、どう扱われますか
プログラムの著作物に当たらない成果物は、第15条第1項の対象です。第2項と同じ要件に加えて、法人等が自己の著作の名義の下に公表するものであることが求められます。*1 プログラム以外の成果物については、誰の名義で公表するのかもあわせて確かめておくと判断しやすくなります。
著作権の一部だけを譲り受けることはできますか
できます。第61条第1項は、著作権はその全部又は一部を譲渡することができるとしています。*1 一部だけを譲り受けるときも、改修に関わる第27条と第28条の権利を含めるのであれば、契約で書き出しておくと、第2項による推定を受けずに済みます。
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出典
- *1 参考:著作権法(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048)。出典:著作権法(昭和45年法律第48号)。第2条第1項第2号(著作者)・第10号の2(プログラム)・第11号(二次的著作物)、第15条第1項及び第2項(職務上作成する著作物の著作者)、第17条第1項(著作者の権利)、第20条(同一性保持権)、第27条(翻訳権、翻案権等)、第28条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)、第59条(著作者人格権の一身専属性)、第61条第1項及び第2項(著作権の譲渡)の一次情報として参照(2026年9月確認)