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生産性向上支援訓練は1人・4時間からでも使える
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- カリキュラムは企業ごとに組む:センターが個別企業の課題に合わせてカスタマイズし、民間機関と連携して実施します*1。
- 会場は自社の会議室でもよい:自社会議室等を訓練会場とすることが可能で、企業に講師を派遣します*2。
- 1人からでも受けられる:少人数の場合はオープンコースの利用が提案されます*1*2。
※ 本記事は2026年8月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
研修を外に出したいが、人数も予算も足りない。その条件で使える公的な在職者訓練があります。
高齢・障害・求職者雇用支援機構の説明はこうです。生産性向上支援訓練は、生産管理、IoT・クラウド活用、組織マネジメント、マーケティングなどあらゆる産業分野の生産性向上に効果的なカリキュラムにより、企業が生産性を向上させるために必要な知識などを習得する職業訓練です*1。
特徴は、既製のコースを買うのではないという点です。全国のポリテクセンターなどに設置した生産性向上人材育成支援センター(生産性センター)が、個別企業の課題に合わせてカリキュラムをカスタマイズして訓練コースを設定し、専門的な知見やノウハウを持つ民間機関等と連携して実施しています*1。
本記事では、4つの訓練分野、対象と訓練時間と受講料、実施の形態、利用までの流れ、そして在職者訓練という枠の中での位置づけを整理します。個別のコース設定はセンターとの相談になりますが、問い合わせる前に固められる前提は先に確認できます。
目次
カリキュラムは企業ごとに組み直される
まず、何を提供する訓練なのかを確認します。
案内資料も同じ説明です。全国のポリテクセンター等に設置した生産性向上人材育成支援センターが、専門的知見を有する民間機関等と連携して、企業が抱える課題や人材育成ニーズに対応した訓練を実施します*2。
訓練の実施主体は機構そのものではありません。専門的な知見やノウハウを有し、訓練の適切な実施が可能な民間機関等に委託して実施します*1。公的な枠組みで、民間の講師を使う構造です。
対象を絞ったコースも用意されています。70歳までの就業機会の確保に向けた従業員教育「ミドルシニアコース」を開設し、中高年齢層の中堅・ベテラン従業員に向けた技能・ノウハウ継承、リスクアセスメント、フォロワーシップによる組織力向上など生涯キャリア形成を支援する訓練も行っています*1。
デジタル側の括りもあります。令和4年度からは、現行のカリキュラムの中からDX(デジタルトランスフォーメーション)に資する要素を含むコースを「DX対応コース」として選定し、中小企業等のDX人材育成を支援しています*1。
自社の研修そのものを公的な枠に乗せる道もあります。認定職業訓練とは|自社の研修を認定に変える要件は、外に出すのではなく自前の訓練を認定してもらう制度です。
訓練分野は4つに整理されている
次に、どの領域が用意されているかを見ます。
機構は分野を4つに整理しています。名称は生産・業務プロセスの改善、横断的課題、売上げ増加、IT業務改善です*1。
| 訓練分野 | 主な目的 | コースの例 |
|---|---|---|
| 生産・業務プロセスの改善 | 工程管理のポイントや見直し及び改善を行う際の課題とその解決方法など、生産管理や生産現場の業務プロセスの改善に必要となる知識や手法の習得 | 生産現場の問題解決、生成AIの活用、テレワークを活用した業務効率化 |
| 横断的課題 | 既存の業務の効率化や業務の改善、あるいは70歳までの就業機会の確保に向けて中高年齢者の役割の変化への対応やノウハウ継承に必要となる知識や手法の習得 | 成果を上げる業務改善、リスクマネジメントによる損失防止対策、作業手順の作成によるノウハウの継承 |
| 売上げ増加 | マーケティングや広報戦略、新商品の企画・開発やサービスの高付加価値化を実現するために必要となる知識や手法の習得 | マーケティング志向の営業活動の分析と改善、提案型営業手法、提案型営業実践 |
| IT業務改善 | 生産性を向上させるための手段としてITを利活用する上で必要となるネットワーク、データ活用、情報発信、情報倫理・セキュリティに関する知識・手法の習得 | 表計算ソフトのマクロによる定型業務の自動化、SNSを活用した情報発信 |
コースの数も公表されています。案内資料は生産管理、組織マネジメント、マーケティング、データ活用など、あらゆる産業分野の生産性向上に効果的なカリキュラムを用意(全134コース(’26.4月))としています*2。
訓練の進め方も示されています。幅広い職務階層の方を対象に、様々な課題の解決や現場力の強化を支援するカリキュラムをご用意し、座学と演習を組み合わせて訓練を実施します*1。
ミドルシニアコースの狙いも具体的です。“従業員のモチベーションの維持”、“後輩への技能伝承”など、企業の定年延長や継続雇用等における課題の解決に効果的なカリキュラムが用意されています*1。
研修をどの水準から「実施している」と言えるかは研修ありと書けるのは、どの水準からかで扱いました。外部の枠を使うかどうかも、その判断材料になります。
対象と時間、受講料の条件
使えるかどうかは、この3点で決まります。
対象は在職者に限られます。在職者の方を対象としていますとされ、「ミドルシニアコース」については、45歳以上の従業員の方を対象としています*1。
注記も付いています。事業主からの受講指示を受けた方に限ります*1。個人が思い立って申し込む制度ではないということです。
訓練時間には幅があります。6時間から30時間の範囲内で実施しますとされ、「IT業務改善」の訓練分野については、4時間から30時間の範囲で実施します*1。案内資料では実施日時や訓練時間も調整可能(訓練時間は4〜30時間で設定)と要約されています*2。
受講料も公表されています。訓練時間数に応じて、受講者1人あたり3,300円〜6,600円(税込)です、「IT業務改善」の訓練分野については、2,200円〜4,400円(税込)です*1。
案内資料は受講料は1人あたり2,200円〜6,600円(税込)とまとめたうえで、条件を満たす場合は国の助成金(人材開発支援助成金)を利用可能と添えています*2。
賃金の引上げと設備投資をセットで支援する制度は業務改善助成金の進め方と、対象外になる場面で扱いました。育成に使う枠とは別の経路です。
会場と実施形態は4通りある
受けさせ方にも選択肢があります。
基本は出張型です。ご要望にあわせて、自社会議室等やポリテクセンターの教室等で実施します*1。案内資料は自社会議室等を訓練会場とすることが可能(企業に講師を派遣します)と説明しています*2。
人数が少ない場合の受け皿もあります。「人手不足なので訓練を受けさせられるのは1、2名」、「どのような訓練なのか試しに受講させてみたい」といった場合には、広く受講者を募集して実施するオープンコースによる訓練のご利用をご検討ください*1。
効用も書かれています。自社の受講者が少ない場合でも集合型の訓練を受けさせることができ、他社の従業員と一緒にグループワーク等を行うことで、自社の強みや課題の気づきにつながります*1。
拠点が分かれている場合はオンラインです。「複数の営業所の従業員に対し、同時に訓練を実施したい」という場合に、同時双方向通信によるオンラインコースが用意されています*1。同時双方向通信とは受講者と講師及び受講者と受講者が、映像と音声により常時お互いにやりとりできることを指します*1。
4つ目は動画の定額利用です。「集合型訓練を従業員に受講させたいが、一度にたくさんの従業員に受講させることが難しい」等といった場合には、サブスクリプション型生産性向上支援訓練のご利用をご検討くださいとされ、生産性向上支援訓練で人気のコースの動画に加え、生産性向上に資するITスキルが身につく動画を2か月間何度でも視聴できます*1。
実施を受託する側の募集もあります。訓練は会員企業の人材育成に取り組む事業主団体に委託する方式によっても実施していますとされており、業界団体としての利用も想定されています*1。
利用の流れと、公表されている実績
手続きは相談から始まります。
案内資料は3段階で示しています。センター担当者が企業を訪問し、人材育成に関する課題や方策を整理します、相談内容を踏まえて、課題やニーズに応じた訓練コースを提案します、所定の期日までに受講料の支払い等の手続を行い、訓練を受講してください*2。
相談の入口で、別の形が提案されることもあります。相談内容によっては、少人数からでも受講できるオープンコースのご利用を提案する場合があります*2。
実績も公表されています。令和6年度の全国実績は利用した企業数23,154社、受講者数70,951人、受講者評価(業務への役立ち度)98.6%です*2。
相談時に持ち込まれる課題の例も列挙されています。ベテラン従業員の技術を後輩に継承させたい、生成AIを活用して業務のスピードを高めたい、テレワークを導入して業務を効率化したいといった内容です*2。
IT寄りの相談も並んでいます。データ集計の作業を効率化したい、マクロを使って定型業務を自動化したい、SNSを使って効果的な情報発信をしたい*2。大がかりなDXの前段にある、手元の作業の話から入れるということです。
問い合わせ先も明確です。厚生労働省のページは詳細は最寄りの生産性向上支援センター(ポリテクセンター、ポリテクカレッジ)にお問い合わせくださいとしています*3。
在職者訓練という枠の中での位置づけ
最後に、制度全体の中でどこに置かれているかを確認します。
厚生労働省はハロートレーニング(在職者訓練)を主に中小企業に勤める方々を対象に、従事されている業務に必要な専門知識及び技能・技術の向上を図るための比較的短期間のハロートレーニングと説明しています*3。対象は主に中小企業に在職している方、訓練期間は2日〜5日です*3。
実施主体は2系統あります。国(機構)は企業の生産現場が抱える課題解決のため、生産性の向上や業務改善、新たな製品づくりに必要な専門知識及び技能・技術を習得する短期間(概ね2日から5日)の在職者の方向けに訓練を実施しています*3。
都道府県側もあります。都道府県は、機械・機器操作等の基礎的な取扱いを習得させる訓練等地域の人材ニーズを踏まえた基礎的な在職者向け訓練を実施していますとされ、訓練例として「電気工事科」「溶接科」「機械加工科」「機械製図科」「情報ビジネス科」等が挙げられています*3。
長期の枠も併存します。主に若手・中堅社員の方向けに、長期間(2年)の訓練(ポリテクカレッジの事業主推薦制度)も実施しています*3。
規模も公表されています。令和5年度の在職者訓練の受講者数は、機構が70,789人、都道府県が43,763人で、合計114,552人です*4。数万人規模で回っている枠であり、例外的な制度ではありません。
育成の外部化と採用を並行させたいときのご相談
研修を外に出しても、現場を回す人手は別に要ります。任せたい職責と必要な稼働の形から、担当が一緒に整理できます。
最後に育成の手当てが採用に間に合わないと判断したときの分岐を1つだけ挙げておきます。訓練は4時間から使えますが、受講中は現場の手が減りますし、相談からコース設定までの調整も要ります。その間の実務を業務委託で受け止め、育成に人を出せる余白をつくるという順番も現実的な選択肢です。研修を後回しにし続ける前の検討として有効でしょう。
まとめ:問い合わせる前に決める3点
第一に、何を提供する訓練かです。生産性向上支援訓練は、生産管理、IoT・クラウド活用、組織マネジメント、マーケティングなどあらゆる産業分野の生産性向上に効果的なカリキュラムにより、企業が生産性を向上させるために必要な知識などを習得する職業訓練です。全国のポリテクセンターなどに設置した生産性向上人材育成支援センターが、個別企業の課題に合わせてカリキュラムをカスタマイズし、専門的な知見やノウハウを持つ民間機関等と連携して実施します。訓練分野は生産・業務プロセスの改善、横断的課題、売上げ増加、IT業務改善の4つで、コース数は全134コースとされています。第二に、条件です。対象は在職者で、事業主からの受講指示を受けた方に限られます。ミドルシニアコースは45歳以上が対象です。訓練時間は6時間から30時間の範囲内、IT業務改善の分野は4時間から30時間です。受講料は1人あたり3,300円から6,600円、IT業務改善は2,200円から4,400円で、条件を満たす場合は人材開発支援助成金を利用できるとされています。第三に、受けさせ方です。自社会議室等を会場にして講師の派遣を受ける形のほか、1、2名でも参加できるオープンコース、複数拠点に同時実施できるオンラインコース、動画を2か月間視聴できるサブスクリプション型があります。まずは自社の課題を1つ書き出し、最寄りの生産性向上支援センターに相談してください。
よくある質問
生産性向上支援訓練とは何ですか。
生産管理、IoT・クラウド活用、組織マネジメント、マーケティングなどあらゆる産業分野の生産性向上に効果的なカリキュラムにより、企業が生産性を向上させるために必要な知識などを習得する職業訓練です。全国のポリテクセンターなどに設置した生産性向上人材育成支援センターが、個別企業の課題に合わせてカリキュラムをカスタマイズして訓練コースを設定し、専門的な知見やノウハウを持つ民間機関等と連携して実施します。訓練分野は生産・業務プロセスの改善、横断的課題、売上げ増加、IT業務改善の4つです。
誰が受けられますか。
在職者が対象です。ただし事業主からの受講指示を受けた方に限られるとされており、個人が単独で申し込む制度ではありません。ミドルシニアコースについては、45歳以上の従業員が対象です。厚生労働省はハロートレーニング(在職者訓練)全体について、主に中小企業に在職している方を対象とし、訓練期間は2日から5日の比較的短期間であると説明しています。
時間と費用はどのくらいですか。
訓練時間は6時間から30時間の範囲内で、IT業務改善の分野については4時間から30時間の範囲で実施されます。受講料は訓練時間数に応じて受講者1人あたり3,300円から6,600円(税込)、IT業務改善の分野については2,200円から4,400円(税込)です。案内資料では受講料を1人あたり2,200円から6,600円(税込)とまとめており、条件を満たす場合は国の助成金(人材開発支援助成金)を利用できるとされています。
少人数でも利用できますか。
できます。受けさせられるのが1、2名という場合や、試しに受講させたい場合には、広く受講者を募集して実施するオープンコースの利用が案内されています。自社の受講者が少ない場合でも集合型の訓練を受けさせることができ、他社の従業員と一緒にグループワーク等を行うことで自社の強みや課題の気づきにつながる、と説明されています。相談内容によっては、センター側からオープンコースが提案される場合もあります。
どこに相談すればよいですか。
最寄りの生産性向上支援センター(ポリテクセンター、ポリテクカレッジ)です。流れは3段階で、センター担当者が企業を訪問して人材育成に関する課題や方策を整理し、相談内容を踏まえて課題やニーズに応じた訓練コースを提案し、所定の期日までに受講料の支払い等の手続を行って受講する形になります。都道府県が実施する在職者訓練もあり、そちらは各都道府県が窓口です。
出典
- *1 参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「生産性向上支援訓練」(https://www.jeed.go.jp/js/jigyonushi/d-2.html)。生産性向上支援訓練の定義と生産性向上人材育成支援センターが個別企業の課題に合わせてカリキュラムをカスタマイズし民間機関等と連携して実施する旨、ミドルシニアコースとDX対応コースの位置づけ、4つの訓練分野(生産・業務プロセスの改善、横断的課題、売上げ増加、IT業務改善)とそれぞれの主な目的、訓練の概要(対象者は在職者でミドルシニアコースは45歳以上、事業主からの受講指示を受けた方に限る旨、訓練実施場所は自社会議室等やポリテクセンターの教室等、訓練時間は6時間から30時間でIT業務改善は4時間から30時間、座学と演習の組み合わせ、受講料は1人あたり3,300円から6,600円でIT業務改善は2,200円から4,400円、民間機関等への委託実施)、オープンコース・オンラインコース(同時双方向通信の定義を含む)・サブスクリプション型の各案内、事業主団体に委託する方式の一次情報として(2026年8月確認)
- *2 参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「生産性向上支援訓練のご案内」(https://www.jeed.go.jp/js/jigyonushi/q2k4vk000000v87c-att/q2k4vk000000v9t5.pdf)。訓練受講までの3段階(センター担当者による企業訪問と課題や方策の整理、訓練コースのコーディネート、受講料の支払い等の手続と訓練受講)、相談内容によってはオープンコースの利用を提案する場合がある旨、3つのポイント(全134コース(2026年4月)、自社会議室等を訓練会場にでき企業に講師を派遣する旨と訓練時間4〜30時間で設定できる旨、従業員1人からでも利用できるオープンコース、受講料1人あたり2,200円〜6,600円(税込)と条件を満たす場合の人材開発支援助成金の利用)、分野ごとのコース例、相談時に想定される企業の課題の例、令和6年度の全国実績(利用した企業数23,154社、受講者数70,951人、受講者評価(業務への役立ち度)98.6%)の一次情報として(2026年8月確認)
- *3 参考:厚生労働省「ハロートレーニング(在職者訓練)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/zaishokusha.html)。在職者訓練が主に中小企業に勤める方々を対象とした比較的短期間のハロートレーニングである旨、対象が主に中小企業に在職している方で訓練期間が2日から5日である旨、国(高齢・障害・求職者雇用支援機構)が概ね2日から5日の在職者向け訓練を実施している旨、若手・中堅社員向けの長期間(2年)の訓練としてポリテクカレッジの事業主推薦制度がある旨、民間機関等の教育資源を活用した生産性向上支援訓練を実施している旨、都道府県が基礎的な在職者向け訓練を実施しており訓練例として電気工事科・溶接科・機械加工科・機械製図科・情報ビジネス科等がある旨、受講希望者の問い合わせ先が最寄りの生産性向上支援センター(ポリテクセンター、ポリテクカレッジ)である旨の一次情報として(2026年8月確認)
- *4 参考:厚生労働省「ハロートレーニング(在職者訓練)の実績の推移」(https://www.mhlw.go.jp/content/001189193.pdf)。在職者訓練の実施状況の推移(平成20年度から令和5年度)と、令和5年度実績として高齢・障害・求職者雇用支援機構の受講者数70,789人、都道府県の受講者数43,763人、合計114,552人という数値の一次情報として。障害者訓練を除く定例業務統計報告調べである旨の注記を含む(2026年8月確認)