LASSIC Media らしくメディア

2026.03.30 らしくコラム

SESと準委任契約の違いとは?請負・派遣との比較と正しい選び方

LASSIC IT事業部|プライムベンダーとしてシステム保守・運用を受託

 

SES契約・準委任契約・請負契約・派遣契約の違いを解説する記事のタイトル画像

【結論】SES契約と準委任契約は、本質的に同じ契約形態です。

SES契約は、民法上の「準委任契約」に該当します。「SES」はIT業界における通称であり、法的な位置づけとしては準委任契約そのものです。ただし、請負契約・派遣契約とは「報酬の対象」「指揮命令権の所在」「完成責任の有無」が大きく異なります。

ここで注意が必要なのは、この違いを正しく運用できていないと「偽装請負」と判断され、最悪の場合は刑事罰(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)の対象になり得るという点です。本記事では、比較表による整理に加え、偽装請負の判定基準と回避策、そして自社のプロジェクトに適した契約形態の選び方まで解説します。

本記事は、プライムベンダー(元請けとしてクライアントと直接契約するIT企業)としてSES・請負双方の契約形態でシステム開発・保守・運用を多数支援してきたLASSIC IT事業部の立場から、契約形態の違いと実務上の注意点を整理しています。

この記事のポイント

  • SES契約と準委任契約の法的関係、請負契約・派遣契約との違いを比較表で整理できる
  • 偽装請負と判断されないための運用ポイントと、違反時の罰則を確認できる
  • 自社のプロジェクト特性に合った契約形態を選ぶための判断基準を入手できる

SESと準委任契約の基本を整理する

SES契約と準委任契約の法的関係を示すイメージ

SES(System Engineering Service)契約とは、IT企業がエンジニアの技術力を一定期間クライアント企業に提供する契約形態です。経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年公表)によると、日本では2030年にIT人材が最大約79万人不足すると推計されています。厚生労働省の統計では、2025年11月時点の「情報処理・通信技術者」の有効求人倍率は1.43倍に達しており、IT人材の確保は企業経営に直結する課題となっています*1

こうした人材不足を背景に、特に中小・中堅企業を中心にSES契約で外部のIT人材を確保する動きが広がっています。SES契約の法的性質を正しく理解するには、まず民法上の「準委任契約」との関係を押さえる必要があります。

SES契約は準委任契約の一形態である

準委任契約とは、民法656条に基づく契約形態で、「業務を遂行すること」自体に対して報酬が支払われる仕組みです。たとえば、弁護士に訴訟を依頼するような「法律行為」の委託は「委任契約」と呼ばれますが、プログラム開発やシステム運用のように法律行為に該当しない業務を委託する場合は「準委任契約」になります。

SES契約は、この準委任契約をIT業界のエンジニア派遣に適用した形態です。契約の目的は、エンジニアの技術力と労働時間を提供することにあります。「このシステムを完成させます」と約束する契約ではないため、成果物の完成責任は負いません。受託側のエンジニアには「善管注意義務」が課されます。これは「プロとして通常期待される注意を払って業務にあたる義務」のことで、たとえば納期やセキュリティへの配慮を怠らないといった姿勢が求められます。

準委任契約の2つの類型

準委任契約には「履行割合型」と「成果完成型」の2つの類型があります。

履行割合型は、業務の遂行そのものに対して報酬が発生する形態です。エンジニアが稼働した時間や工数に応じて対価が支払われます。SES契約の大半はこの履行割合型に該当し、月額単価(人月単価)で報酬が設定されるのが一般的です。

成果完成型は、成果物の納品をもって報酬が発生する形態です。請負契約と似た構造ですが、請負契約のような「仕事を完成させる義務」は負いません。仕様変更への柔軟な対応が求められるプロジェクトで採用されることがあります。ただし、IT業界で一般的に「SES契約」と呼ばれる契約のほとんどは、作業時間単位で報酬が発生する履行割合型です。

2025年時点で、DXレポートが警告した「2025年の崖」のまさに渦中にあり、IT人材不足は約43万人に達すると予測されています*2。こうした43万人規模の人材不足のもとで、SES契約の活用が加速しています。しかし、契約形態の違いを正しく理解しないまま運用すると、法的リスクが生じる可能性があります。SES契約と混同されやすい「請負契約」「派遣契約」との違いを、次のセクションで体系的に確認しましょう。

SES・請負・派遣──3つの契約形態を比較する

SES契約・請負契約・派遣契約の3形態を比較する表のイメージ

IT業界で外部人材を活用する際の契約形態は、大きく「SES契約(準委任契約)」「請負契約」「派遣契約」の3つに分かれます。この3つは、指揮命令権の所在、報酬の対象、完成責任の有無、契約期間の制約という4つの軸で明確に区別できます。

比較項目 SES契約(準委任契約) 請負契約 派遣契約
指揮命令権 受託側企業(ベンダー)に帰属 受託側企業に帰属 発注側企業(クライアント)に帰属
報酬の対象 業務の遂行(労働時間・工数) 成果物の完成・納品 労働力の提供
完成責任 なし(善管注意義務のみ) あり(契約不適合責任を負う) なし
契約期間の制約 法律上の制限なし 法律上の制限なし 同一組織単位で最長3年(労働者派遣法)
契約の法的根拠 民法656条(準委任) 民法632条(請負) 労働者派遣法

つまり、SES(準委任)と請負は「報酬が時間に対してか、成果物に対してか」、SESと派遣は「現場で誰が指示を出すか」で区別されます。

SES契約と請負契約の違い

SES契約と請負契約の最大の違いは、「何に対して報酬を支払うか」です。SES契約では、エンジニアが業務を遂行すること自体が報酬の対象です。仮にプロジェクトが未完了であっても、稼働した時間に応じた報酬が発生します。

一方、請負契約では成果物の完成が報酬の前提条件です。受託側は契約で定められた仕様・品質の成果物を期日までに納品する義務を負い、納品物に欠陥があった場合は契約不適合責任(納品物に欠陥があった場合に修補や損害賠償を求められる責任)を問われます。要件が明確に固まっている開発案件では請負契約が適しています。

SES契約と派遣契約の違い

SES契約と派遣契約は、いずれもエンジニアがクライアント企業で業務に従事する点で外見上は似ています。しかし、最大の違いは「指揮命令権の所在」です。指揮命令権とは、業務の進め方を具体的に指示したり、勤務時間を管理したりする権限のことを指します。

派遣契約では、クライアント企業(派遣先)がエンジニアに対して直接の指揮命令権を持ちます。業務の進め方や作業手順について具体的な指示を出すことが可能です。一方、SES契約では指揮命令権は受託側のベンダー企業に帰属します。クライアント企業がエンジニアに直接業務指示を出すことは、原則として認められません。

また、派遣契約には労働者派遣法による規制があり、同一組織単位での派遣期間は原則として最長3年に制限されています*3。SES契約にはこうした法律上の期間制限がないため、数年単位の長期プロジェクトにも対応できます。

この指揮命令権の違いが曖昧になると、SES契約でありながら実態が派遣と同じになる「偽装請負」の問題が生じます。次のセクションで、このリスクの実態と回避策を確認します。

偽装請負リスクと適正な運用ポイント

偽装請負の判定基準と適正運用ポイントを示すイメージ

SES契約を運用する際に最も注意すべきリスクが「偽装請負」です。偽装請負とは、契約書上はSES契約(準委任契約)の形態をとりながら、実態としてクライアント企業がエンジニアに対して直接の指揮命令を行っている状態を指します。

偽装請負の判定基準

偽装請負かどうかの判断基準は、厚生労働省が公表した「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号、通称:37号告示)で示されています*4。37号告示では、以下のすべてを満たす場合に適正な請負・準委任と認められるとしています。

第一に、ベンダー企業がエンジニアの業務を自社で直接管理していること。具体的には、以下の3点をベンダー自身が行っている必要があります。

  • 業務の進め方に関する指示
  • 業務の成果に対する評価
  • 労働時間や休憩・休日の管理

第二に、ベンダー企業が受けた業務を「自社の仕事」として独立して処理していること。業務に必要な機器や環境を自ら用意し、専門的な技術・経験に基づいて業務を進めていることが求められます。

偽装請負と判断された場合の罰則

偽装請負が労働者派遣法違反と認定された場合、ベンダー側(受託側)には1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります(労働者派遣法59条2号)。また、クライアント側(発注側)も行政指導や改善命令の対象となり、場合によっては企業名が公表されるリスクがあります*5

さらに、2015年の労働者派遣法改正で導入された「労働契約申込みみなし制度」(同法40条の6)にも注意が必要です。これは、偽装請負の状態で就業していたエンジニアが希望した場合、クライアント企業がそのエンジニアを直接雇用しなければならなくなる仕組みです。意図せず採用義務が発生するリスクがあります。

偽装請負を回避するための運用ポイント

偽装請負を回避するために、クライアント企業が特に注意すべきポイントは以下の通りです。

チェック項目 適正な運用 偽装請負のおそれがある運用
業務指示 ベンダーの責任者を通じて依頼 クライアントがエンジニアに直接指示
勤怠管理 ベンダーが労働時間を管理 クライアントが出退勤を管理
業務評価 ベンダーが評価・フィードバック クライアントが人事評価に関与
機器・設備 ベンダーが用意(原則) クライアントのPCや社内ツールを使用
配置変更 ベンダーが決定 クライアントがエンジニアを指名・選別

判断のポイントは「契約書の文面」ではなく「日々の業務運用の実態」です。現場で誰が指示を出しているかが問われます。

ポイントは、形式面だけでなく「業務の実態」が判断基準になるということです。契約書上でSES契約と明記されていても、日常の業務運用がこれらの基準に抵触していれば、偽装請負と判断されるリスクがあります。

では、自社のプロジェクト特性に合った契約形態を選ぶには、どのような基準で判断すればよいのでしょうか。

自社に適した契約形態を選ぶ判断基準

プロジェクト特性に応じた契約形態の選定基準を示すイメージ

契約形態に「正解」があるわけではありません。大切なのは、自社のプロジェクト特性にどの契約形態が合っているかを見極めることです。以下のチェックリストで確認しましょう。

プロジェクト特性別の選定チェックリスト

判断軸 SES契約(準委任)が適する場合 請負契約が適する場合 派遣契約が適する場合
要件の確定度 要件が流動的、アジャイル型(短期間で開発とフィードバックを繰り返す手法) 要件が明確に確定済み
成果物の定義 明確な成果物がない、運用・保守業務 成果物の仕様が明確
指揮命令の必要性 ベンダー主体で進めてよい ベンダー主体で進めてよい 自社で細かく業務指示を出したい
期間 中長期(3年超も可能) プロジェクト単位 最長3年(法定)
リスク負担 発注側(成果は保証されない) 受託側(完成責任あり) 発注側

要件が固まっていないフェーズではSES、仕様が確定した工程では請負、自社で細かく管理したい場合は派遣──という使い分けが基本です。

SES契約の人月単価相場

SES契約の費用は「人月単価」(1名のエンジニアが1か月稼働する際の単価)で算出されます。レバテックやPRONIアイミツの調査(2025年時点)によると、職種・スキルレベル別の目安は以下の通りです。

レベル 月額単価の目安
初級(経験5年以内) 60万〜100万円
中級(経験5〜10年) 80万〜120万円
上級(経験10年以上、PM/PL) 100万〜160万円
プロジェクトマネージャー 80万〜130万円
システム運用エンジニア 50万〜100万円

SES契約は派遣契約と比較して20〜30%程度高額になる傾向があります*6。専門性の高いエンジニアを、必要な期間だけ柔軟に確保できる点に対するコストと考えるとよいでしょう。

ただし、単価の高低だけで判断すべきではありません。重要なのは「商流の深さ」です。商流とは、発注元からエンジニアに届くまでの企業間の取引経路のことです。元請けから二次請け、三次請けと仲介企業を経由するごとに、10〜20%のマージンが発生します。結果として、同じスキルのエンジニアでも商流の位置によって実質コストが大きく変わります。

コストの透明性と技術力の両方を確保するには、一次請け(プライムベンダー)と直接契約する選択肢が有効です。二次請けの上限帯と同等の単価でプライムベンダーの提案力・品質管理力が得られるなら、同じ投資額で得られる価値が構造的に変わります。

開発体制構築の視点から、IT人材不足時代に企業が取るべきアプローチを次のセクションで整理します。

IT人材不足時代の開発体制構築

IT人材不足時代における開発体制構築のアプローチを示すイメージ

経済産業省「DXレポート」(2018年公表)は、DXが推進されない場合に2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が生じると警告しました*7。IT人材不足が約43万人に達するとされるこの局面で、企業が開発体制を維持・強化するためには、外部人材の活用が欠かせません。

一般社団法人ひとり情シス協会の調査によると、情報システム部門の要員が1人以下の企業は中小企業で88%、中堅企業でも38%に上ります*8。社内にIT人材を十分に抱えられない企業にとって、SES契約は必要なスキルを持つエンジニアを迅速に確保する手段として機能します。

SES契約を活用する際のベストプラクティス

SES契約の効果を引き出すためには、契約前・契約中・契約後のそれぞれのフェーズで適切な対応が求められます。

契約前の段階では、自社に必要なスキルセットを具体的に定義し、ベンダーと共有することが重要です。「Java開発ができるエンジニア」のような曖昧な要件ではなく、「Spring Bootでのマイクロサービス構築経験3年以上、AWS環境での運用経験」のように粒度を上げることで、ミスマッチを低減できます。

契約中は、偽装請負に該当しない範囲で定期的なレビュー体制を構築します。ベンダーの責任者を通じた進捗確認の場を設け、課題の早期発見・対応を図ります。

契約後は、プロジェクトで得られた知見を自社にナレッジとして蓄積する仕組みが必要です。SES契約はあくまで外部リソースの活用であり、中長期的には自社のIT人材育成と組み合わせた体制設計が求められます。外部人材への依存度が高まると、自社に採用・育成ノウハウが蓄積されないリスクも生じるため、SES活用と並行して社内人材の育成計画を策定することが望ましいでしょう。

契約形態の組み合わせという発想

大規模なシステム開発プロジェクトでは、工程ごとに適した契約形態を使い分けるアプローチも有効です。要件定義や基本設計のようにクライアントとの密な連携が必要な上流工程ではSES契約を活用し、仕様が確定した後の実装工程では請負契約に切り替えるという組み合わせが考えられます。一律にどちらかの契約形態に固定するのではなく、プロジェクトのフェーズに応じた柔軟な設計が、品質とコストの両立につながります。

プライムベンダーを選ぶ意味

SES市場ではIT業界特有の多重請負構造が存在します。三次請け・四次請けを経由すると、クライアントが支払う費用のうちエンジニアの技術提供に充てられる割合が低下します。また、プロジェクトに対するコミットメントや提案力も、商流が深くなるほど薄くなる傾向があります。

一次請け(プライムベンダー)と直接契約することで、コスト構造の透明性が高まり、要件定義から運用まで一貫した責任体制のもとでプロジェクトを推進できます。


こんな課題を感じていたら、ぜひ一度ご相談ください。

  • 「SESで進めているが、これって偽装請負にならない?」
  • 「派遣との違いを説明できず、社内承認で止まっている」
  • 「商流が深く、単価の内訳が見えない」

まずは無料でご相談ください

契約形態の選定からプロジェクト体制の設計まで、プライムベンダーの立場でご提案いたします。

無料相談・お問い合わせはこちら

*1 出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年3月公表)、厚生労働省「職業別一般職業紹介状況」(2025年11月)
*2 出典:経済産業省「DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜」(2018年公表)
*3 出典:労働者派遣法35条の3、同法40条の3(同一組織単位3年ルール)
*4 出典:厚生労働省「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)
*5 出典:労働者派遣法59条2号、同法49条の2
*6 出典:AI Front Trend「SESの料金相場」(2024年公表)
*7 出典:経済産業省「DXレポート」(2018年公表)
*8 出典:一般社団法人ひとり情シス協会調査

 


View