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システム運用保守コスト削減とは?要点を解説
LASSIC IT事業部|プライムベンダーとしてシステム保守・運用を受託

この記事のポイント
- システム運用保守コスト削減とは、ラン・ザ・ビジネス支出の構造的見直しと体制最適化の取り組みである。
- JUAS・IDCの公的データから、コスト膨張の要因と削減余地のある領域を整理する。
- 体制見直し・自動化・契約再設計という3つの打ち手を、進め方とリスクとともに解説する。
目次
システム運用保守コスト削減とは:ラン・ザ・ビジネス支出の構造的見直し
システム運用保守コスト削減とは、既存システムの稼働維持に投じている支出(ラン・ザ・ビジネス支出)を可視化し、体制・自動化・契約構造を見直すことで運用品質を維持しながら総コストを抑える取り組みである。JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)の「企業IT動向調査2025」(JUAS会員企業を中心とした調査)では、2025年度のIT予算を増額する企業は49.5%を占め、増額理由には「クラウド運用コストの増加」が38.5%含まれる*1。コスト削減は単純な値引き交渉ではなく、運用体制と契約のあり方を再設計する取り組みである。
【要点】運用保守コスト削減の本質は、稼働維持に偏った支出(ラン・ザ・ビジネス)の構造を、体制・自動化・契約の3面から見直し、運用品質を保ちながら総コストを下げることにある。
コスト削減の3つの方向性:体制・自動化・契約の組み合わせで最適化する
コスト削減は単一の打ち手ではなく、体制(人員配置・委託形態)・自動化(運用監視・障害対応)・契約(保守契約・SLA)を組み合わせて最適化する取り組みである。JUASの「企業IT動向調査2025」では、既存システムに対するランニングコストの評価実施率が約30%にとどまっており(JUAS会員企業を中心とした調査)、コスト構造の可視化に課題を持つ企業が多い*1。可視化されていないコストは削減対象から外れるため、まずは支出の分解から着手する。
ラン・ザ・ビジネスとバリューアップの比率を変える視点が起点となる
IT予算は、既存業務維持のための支出(ラン・ザ・ビジネス)と、新規価値創出のための支出(バリューアップ)に分けられる。コスト削減の目的は単に総額を下げることではなく、ラン・ザ・ビジネスの比率を下げてバリューアップへの投資余力を生み出すことにある。
コストが膨らむ背景:人件費上昇とレガシー保守の負担増

運用保守コストが膨張する背景には、構造的な3つの要因が存在する。これらを認識しないまま価格交渉のみで削減を進めると、品質低下や保守停止のリスクが高まる。
背景1:エンジニア人件費の上昇がインフラ保守サービス価格に転嫁されている
IDC Japanの調査では、インフレや技術者不足によりITハードウェア価格と人件費が上昇しており、インフラ保守運用サービスの価格も上昇傾向にある*2。同調査によれば、国内ITインフラストラクチャサービス市場は2024年に2兆2,685億円に達し、2029年には3兆674億円まで拡大する見通しである*2。価格上昇のなかでコストを抑えるには、契約構造そのものの見直しが避けられない。
背景2:レガシーシステムの保守は属人化が進み代替要員の確保が困難になる
長期間運用してきた基幹システムは、特定の担当者しか保守できない属人化状態に陥りやすい。経済産業省のDXレポートが示した「2025年の崖」では、レガシーシステムを刷新できない場合、2025年以降に最大12兆円/年(現在の約3倍)規模の経済損失が国内で生じる可能性が指摘されている*3。属人化が進むと、退職・異動のたびに業務委託費が割高になる悪循環が発生する。
背景3:クラウド移行後にランニングコストが想定を超えて増加する事例が顕在化している
JUASの調査では、2025年のIT予算増額理由として「クラウド運用コストの増加」が38.5%を占める*1。クラウド移行後にコスト管理が後回しになると、利用量増加と価格改定の影響でランニングコストが想定を超える。移行直後だけでなく、運用フェーズでのコスト監視が不可欠である。
コスト構造を分解:人件費・ソフトウェア・クラウド・ハード保守の4要素

運用保守コストを「人件費」「ソフトウェアライセンス」「クラウド利用料」「ハードウェア保守」の4要素に分解する。削減余地は要素ごとに異なり、画一的な施策では効果が出にくい。
要素1:人件費は委託形態と地域配分の見直しで削減余地がある
運用保守の人件費は、自社雇用・SES(システムエンジニアリングサービス、特定技術者の労働力を契約する委託形態)・請負・ニアショア(国内地方拠点での開発・運用)など複数の調達形態が存在する。都市部中心の体制から地方拠点を活用するニアショア体制への切り替えは、人件費単価を下げる打ち手の一つである。
要素2:ソフトウェアライセンスは利用実態調査と契約形態の最適化で削減できる
サブスクリプション型ライセンスは、契約者数と実利用者数に乖離が生じやすい。利用実態を棚卸しし、ユーザー数の最適化や上位エディションから下位への切り替えで削減余地が生まれる。
要素3:クラウド利用料はリザーブドインスタンス・スポット活用で最適化する
クラウド利用料は、オンデマンド契約のみで運用するとコストが膨らみやすい。リザーブドインスタンス(長期契約による割引枠)やスポットインスタンス(余剰リソースの安価利用)の活用、未使用リソースの削除など、運用ルールの整備でランニングコストを抑えられる。
要素4:ハードウェア保守はライフサイクル管理と段階的なクラウド移行で見直す
オンプレミス機器の保守費用は、機器の老朽化に伴い指数関数的に増加する。ライフサイクル管理を行い、保守延長コストとクラウド移行コストの分岐点を見極めることが、長期コストの最適化につながる。
削減で得られる3つのメリット:投資余力・属人化解消・運用品質の向上
コスト構造を可視化した次のステップとして、削減で得られる効果を整理する。運用保守コストの削減は、単なる支出削減を超えた経営効果を生む。バリューアップ投資への原資確保、属人化解消、運用品質の標準化という3つの効果が期待できる。
メリット1:バリューアップ投資への原資が確保できる
ラン・ザ・ビジネス比率を下げることで、新規事業・DX投資・データ活用へ振り向ける予算が生まれる。JUAS調査の通り、2025年度のIT予算増額企業が49.5%を占めるなか、増額予算をどこに配分するかが企業の競争力に直結する*1。
メリット2:属人化が解消され担当者依存のリスクが低下する
運用保守を外部委託に切り替える過程で業務手順の文書化が進み、特定担当者への依存が下がる。退職・異動による業務停滞リスクを構造的に下げる効果がある。
メリット3:標準化された運用プロセスにより品質のばらつきが減少する
運用代行サービスの導入時には、SLA・運用手順書・障害対応フローが文書化される。これにより担当者ごとの属人的判断に依存していた運用が標準化され、品質のばらつきが減る。
削減で生じるデメリット:移行コスト・知見流出・ガバナンス低下のリスク
コスト削減には正の効果だけでなく、移行期のコスト・社内知見の流出・ガバナンス低下のリスクが伴う。デメリットを直視した上で意思決定することが必要である。
デメリット1:体制移行期には一時的に二重コストが発生する
運用委託への切り替え期間中は、引継ぎ工数・並行運用期間の人件費・ドキュメント整備費用が発生する。短期的な収支では悪化することもあるため、中期での投資回収計画を立てる必要がある。
デメリット2:完全委託に進めると社内に運用知見が残らない
運用を外部に完全に委ねると、業務知見・障害履歴・改善ノウハウが社内に蓄積されない。委託先の交代時に情報移管が困難になるリスクが生まれる。社内に「運用ガバナンス担当」を残す設計が現実的である。
デメリット3:価格のみで委託先を選ぶと品質低下・障害多発につながる
価格競争のみで選定すると、対応時間・技術者の経験年数・障害時のエスカレーション体制が劣後する委託先を選ぶリスクが生まれる。価格と品質のバランス評価が不可欠となる。
削減の具体的アプローチ:体制最適化・自動化・契約再設計の3手法

具体的な削減手法を3つに整理する。単独で実施するよりも、組み合わせることで効果が高まる。
手法1:ニアショア・段階的委託で人件費構造を最適化する
都市部中心の体制から、国内地方拠点を活用するニアショア体制へ切り替えることで、人件費単価を下げられる。海外オフショアに比べ、日本語・日本の商習慣・タイムゾーンの面でコミュニケーションコストが低い利点がある。
手法2:運用自動化(RPA・監視自動化・障害復旧自動化)で工数を削減する
定型作業のRPA(Robotic Process Automation、業務操作を自動化する技術)化、監視ツールの導入、復旧手順の自動化により、運用要員の工数を削減できる。自動化対象は「頻度が高く・手順が定型化されている」業務から優先的に選定する。
手法3:契約形態・SLAを見直して固定費と変動費のバランスを再設計する
固定費の保守契約から、サービス利用量に応じた変動費型のマネージドサービスへ切り替える選択肢もある。IDCの調査では、2024年の国内マネージドサービス市場は前年比5.2%増の4兆1,380億円となり、変動費型サービスの需要が拡大している*4。SLAを業務影響に応じて再設定し、過剰品質を解消することも検討対象となる。
削減を進めるステップ:現状可視化・優先度評価・委託先選定・効果測定
コスト削減を進める手順を4ステップで整理する。順序を飛ばすと、削減効果が見えなかったり品質低下を招いたりする。
ステップ1:支出を費目別・システム別に分解し現状を可視化する
運用保守支出を「人件費/ライセンス/クラウド/ハード保守」の費目別と「業務システム単位」のマトリクスで可視化する。JUASの調査では、ランニングコスト評価の実施率は約30%にとどまっており、可視化自体が削減の第一歩にあたる*1。
ステップ2:業務影響度と削減余地で対象システムの優先度を評価する
業務影響度(停止時の損失)と削減余地(コスト構造の改善幅)の2軸で、対象システムを評価する。影響度が低く削減余地が大きいシステムから着手し、段階的に対象を広げる。
ステップ3:体制最適化・自動化・契約再設計から打ち手を組み合わせる
対象システムごとに、ニアショア委託・運用自動化・契約見直しの3手法を組み合わせる。一律の打ち手ではなく、システムの特性に応じた個別最適が必要となる。
ステップ4:削減効果を月次でモニタリングし継続改善のサイクルに乗せる
施策実施後は、削減額・運用品質指標(障害件数・復旧時間)・利用部門満足度を月次でモニタリングする。一度の施策で終わらせず、半期・年次で見直しのサイクルを回すことが、効果の持続につながる。
委託・内製の必要スキルと失敗コスト:判断軸となる工数とリスク

ここでは、コスト削減を内製で行う場合と委託で行う場合の必要スキル・工数・失敗コストを整理する。CTA直前の節として、自社で取り組む場合の難しさを正確に伝えることを目的とする。
内製でコスト削減を進める場合に必要な専門知識の広さ
内製でコスト削減を完結させる場合、IT予算管理・調達契約・SLA設計・クラウド原価管理・運用自動化設計など、複数領域の専門知識が必要となる。経済産業省・IPAの調査では、DXを推進する人材の不足が継続的に指摘されており、自社内で全領域の知見を揃えることは多くの企業で難しい*5。
失敗コストの定量化:過剰削減による障害発生と業務停止のリスク
削減を急ぎすぎると、運用要員不足・SLA低下・障害対応遅延につながる。基幹システムの停止は業務全体に影響し、復旧コストと機会損失が削減額を上回ることもある。価格のみで委託先を選ぶ判断は、失敗コストを増大させる典型例である。
専門家との差分:運用品質を維持しつつコスト構造を再設計する設計力
専門パートナーに委託する場合、運用品質の指標管理・契約構造の再設計・段階的移行の設計といった経験値が活かされる。LASSICはプライムベンダー(元請)として、システム運用保守の体制構築から契約再設計まで連続して対応している。リスクを最小化するために専門家を活用することは、内製断念ではなく、コスト削減の確度を高める経営判断である。
まとめ:システム運用保守コスト削減を判断する3つの軸
システム運用保守のコスト削減は、単なる価格交渉ではなく、稼働維持に偏ったラン・ザ・ビジネス支出の構造を見直す取り組みである。まず人件費・ライセンス・クラウド・ハード保守の4要素に分解し、要素ごとの削減余地を見極める。そのうえで、体制最適化(ニアショア)・自動化・契約再設計の3手法を、システムの特性に応じて組み合わせる。
進め方としては、業務影響度と削減余地の2軸で対象システムの優先順位をつけ、影響度が低く削減余地の大きい領域から着手して効果を月次で測定する。価格だけで委託先を選ぶと品質低下や障害リスクを招くため、運用品質を維持できる体制かどうかを含めて判断したい。
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)「企業IT動向調査2025」(2025年)
- *2 出典:IDC Japan「国内ITインフラストラクチャサービス市場予測」(2025年)
- *3 出典:経済産業省「DXレポート2.2」(2022年)
- *4 出典:IDC Japan「国内サービス市場の実績と予測(Worldwide Semiannual Services Tracker)」(2025年)
- *5 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025」(2025年)