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2026.06.22 らしくコラム

勤怠管理システム開発を外注する費用相場と委託先の選び方

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

勤怠を記録するオフィスのイメージ

この記事のポイント

  • 勤怠管理システムのスクラッチ・カスタム開発が適するケースと、パッケージ型との違いを整理します
  • 打刻方式・36協定アラート・シフト管理・法改正対応など、開発時に検討すべき機能要件を説明します
  • 外注費用の市場参考値と、委託先選定で確認すべき体制・実績・保守継続性の3軸を紹介します

勤怠管理システムの開発外注とは——パッケージとスクラッチの違い

従業員が働くオフィスのイメージ

勤怠管理システムの開発外注とは、自社の就業規則・打刻環境・連携システムに合わせたシステムをスクラッチ(ゼロから)またはカスタム開発で構築する業務を、外部のシステム開発会社に委託することを指します。市販のパッケージ型やクラウドSaaSでは対応しきれない独自要件を持つ企業が、専門ベンダーに設計・開発・運用保守を依頼する形態です。

要件定義 就業規則・ 打刻方式・ 連携先を整理 設計・開発 打刻機能・ 集計ロジック・ API連携実装 テスト・検証 法令ルール・ 計算精度・ UAT実施 導入・移行 データ移行・ 従業員向け トレーニング 保守・法改正 残業上限・ 有給管理等の 継続アップデート
図1:勤怠管理システム開発外注のフロー(要件定義→設計・開発→テスト→導入→保守・法改正対応)

パッケージ型・クラウドSaaSとスクラッチ開発の特徴比較

勤怠管理システムには大きく3つの調達方式があります。クラウドSaaS型は初期費用を抑えられる一方、就業規則のカスタマイズに限界があります。オンプレミス型パッケージは既存の業務フローに合わせた設定が可能ですが、独自のビジネスルールへの対応は難しい場合があります。スクラッチ(フルカスタム)開発は初期費用が高くなりますが、自社固有の就業規則・打刻方式・連携要件を完全に実装できます。

方式 初期費用目安 カスタマイズ性 主な向き先
クラウドSaaS型 0〜50万円程度 低〜中(設定範囲内) 標準的な就業規則の中小企業
オンプレミス型パッケージ 数十万〜200万円程度 中(追加開発が必要な場合も) 既存パッケージで対応できる中堅企業
スクラッチ・フルカスタム開発 200万〜1,800万円超(市場参考値・一次資料ではない) 高(完全自由設計) 独自就業規則・複雑なシフト・多システム連携が必要な企業

スクラッチ開発が適するケース——独自就業規則・複雑なシフト・他システム連携

既存のSaaSやパッケージでは要件を満たせないケースが、スクラッチ開発に向いています。具体的には次の3つのパターンが代表的です。

  • 独自の就業規則・給与計算ルール:深夜割増・変形労働時間制・みなし労働時間制など、標準パッケージでは設定できない複雑なルールを持つ企業
  • 多拠点・複数シフトパターン:工場・店舗・現場など複数の勤務体系が混在し、シフト管理をシステム側で一元化したい企業
  • 基幹システムとのAPI連携:既存の給与計算システム・ERPとリアルタイムでデータ連携する必要があり、既製品では連携仕様が合わない企業

SaaSを導入後に「やはりカスタムが必要だった」と気づいた場合、移行コストが二重にかかります。開発前に要件を整理し、スクラッチか既製品かを判断することが、プロジェクト全体のコスト最適化につながります。

勤怠管理システムに求められる機能要件——打刻から法対応まで

勤怠管理システムをスクラッチ開発する際は、自社の就業形態に必要な機能を漏れなく洗い出すことが重要です。機能追加は後工程になるほど費用が増加するため、要件定義段階で優先度を決めておく必要があります。

打刻方式の選択——ICカード・生体認証・スマートフォンGPS・PCログ

打刻方式は「誰が・どこで・どのように記録するか」を決める中核設計です。主要な4方式の特徴を以下に整理します。

  • ICカード打刻:交通系ICカードや専用カードで打刻。オフィス出勤が多い企業に向く。リーダー機器の設置コストが発生します
  • 生体認証打刻(指静脈・顔認証等):なりすまし打刻(代打ち)を防止。高いセキュリティが求められる製造・医療現場に適します
  • スマートフォンGPS打刻:テレワーク・外勤・直行直帰の従業員が多い企業に有効。位置情報ログで打刻場所を記録できます
  • PCログイン打刻:PCの起動・シャットダウン時刻を勤怠記録として使用。厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(2017年)*1でも、客観的な記録方法の一例として示されています

複数の拠点・勤務形態が混在する場合は、方式を組み合わせて実装します。打刻方式の種類が増えるほど開発・テスト工数が増加するため、実態の勤務パターンを先に整理しておくことが大切です。

労働時間集計・36協定アラート・残業上限管理

勤怠管理システムの中核は労働時間の正確な集計と、法令に基づく超過管理です。働き方改革関連法の施行により、残業時間の上限管理はシステムの必須機能となりました。

厚生労働省「時間外労働の上限規制」*2によると、残業時間の原則上限は月45時間・年360時間です。特別条項を締結した場合でも、年720時間以内・月100時間未満(休日労働含む)・複数月平均80時間以内の3要件をすべて満たす必要があります。違反には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。

これらの上限に対してアラートを自動通知する機能は、開発時の重要な要件の一つです。従業員ごとに月次・年次の累計残業時間をリアルタイムで可視化し、閾値に近づいた時点で管理者へ通知する設計が求められます。

シフト管理・有給休暇管理・申請ワークフロー

複数の勤務パターンを持つ企業では、シフトの作成・公開・変更を一元管理する機能が不可欠です。飲食・小売・製造など複数シフトが混在する業態では、シフト組みロジック自体をシステムに組み込む要件が生じることもあります。

有給休暇管理については、労働基準法の改正(2019年施行)により年5日の年次有給休暇の確実な取得が義務付けられています。取得状況の管理・残日数計算・自動付与処理など、法令に即した機能設計が必要です。

申請ワークフローは、残業申請・休暇申請・振替申請などを上長が承認する一連の流れをシステム化します。承認経路・代理承認・差し戻し処理まで要件として定義しておかないと、後から追加開発が必要になります。

給与・会計システム連携と法改正対応

勤怠データは給与計算の元データとなるため、給与システムへのデータ連携は開発段階で検討すべき主要な要件です。人事給与システムとのリアルタイム連携や定期バッチ処理の仕様は、連携先のAPI仕様や出力フォーマットに依存します。連携先のシステムが複数ある場合、各仕様の調査に相応の工数がかかります。

法改正への継続対応も、スクラッチ開発を外注する際の重要な考慮点です。労働基準法・労働安全衛生法などの改正は定期的に発生するため、保守フェーズでのアップデート体制を開発契約時に合意しておく必要があります。

勤怠管理システム開発費用の市場参考値——スクラッチ開発の費用構造

スクラッチ開発の費用は機能の複雑度・規模・連携先の数によって大きく変わります。以下の参考値はあくまで市場調査に基づく目安であり、一次資料ではありません。実際の費用は個別の要件定義を踏まえた見積もりで確認してください。

機能規模別の費用目安(市場参考値・一次資料ではない)

勤怠管理システムのフルスクラッチ開発費用の概況は次の通りです。

機能規模 開発費用の目安(市場参考値) 主な機能範囲
最小限(基本打刻・集計のみ) 200〜400万円程度 Web打刻・基本集計・CSV出力
標準(申請・承認・有給管理含む) 400〜900万円程度 ワークフロー・有給自動付与・外部システム連携
大規模(多打刻方式・複数シフト・API連携) 900〜1,800万円以上 生体認証・GPS打刻・複雑な計算ロジック・ERP連携

開発費用のほかに、導入後の保守・運用費用も考慮が必要です。スクラッチ開発では、バグ修正・法改正対応・機能追加のために継続的な保守委託費用が発生します。保守費用の目安は年間開発費の15〜20%程度が市場参考値として示されることがありますが、保守範囲・対応SLAによって変わります。

費用に影響する要素——打刻方式・連携システム数・法対応複雑度

同じ「勤怠管理システム」でも、以下の要素によって開発費用は大きく変動します。

  • 打刻方式の種類:ICカード・生体認証・GPS打刻を複数組み合わせるほど、ハードウェア連携・テスト工数が増加します
  • 連携システム数:給与システム・ERP・会計システムなど連携先が多いほど、各APIの調査・実装・テストが必要になります
  • 勤務形態の複雑度:変形労働時間制・裁量労働制・フレックスタイム制が混在する場合、計算ロジックの実装が複雑になります
  • 従業員規模・拠点数:大規模組織では負荷試験・セキュリティ要件・ロール設計の工数が増えます

要件定義工程に全体開発費の20〜25%程度の工数をかけることが、後工程での手戻りを防ぐ目安として挙げられています。1,000万円規模のプロジェクトであれば200〜250万円程度が要件定義に充てられる計算になります。この段階で機能の優先度を明確にしておくと、後から発生する追加費用を抑えやすくなります。

開発外注で失敗しない委託先選定のポイント

勤怠管理システムの開発外注では、技術力だけでなく「労働法令の理解」「保守の継続体制」「プロジェクト管理力」の3軸で委託先を評価することが重要です。

勤務規則の理解力と法改正対応実績

勤怠管理システムは労働基準法・労働安全衛生法・パート・有期雇用労働法など複数の法令に基づいて機能を設計する必要があります。技術的な開発力があっても、労務の知識が不足していると「法令上必要なアラートが実装されていない」「有給付与の計算ロジックが誤っている」といった問題が発生するリスクがあります。

委託先候補に対しては、過去の勤怠管理システム開発実績と、法改正対応(36協定上限規制・有給取得義務化など)をシステムに反映した経験があるかを確認することが重要です。保守フェーズでの法改正対応を契約に含められるかも確認しておきましょう。

開発体制・工程管理・保守継続性の確認

プロジェクトを円滑に進めるために、委託先の開発体制と工程管理の方法を事前に把握します。確認すべきポイントは次の通りです。

  • 専任PMとエンジニアの有無:兼任が多い小規模ベンダーでは、リソース不足によるスケジュール遅延が起こりやすくなります
  • 開発工程の透明性:進捗報告の頻度・課題管理ツールの共有・仕様変更時の費用算定プロセスを確認します
  • 保守・運用の継続体制:担当エンジニアの引き継ぎ方針・障害対応SLA(応答時間・復旧時間)・バージョンアップの提供方針を明確にします
  • 二次委託(外注の再委託)の可否:重要な設計・実装工程が不透明な再委託先に流れていないか確認します

保守フェーズを別会社に移管する「マルチベンダー」の形態もありますが、勤怠管理システムは業務への影響度が高いため、開発した会社が保守まで担う「一気通貫体制」の方がリスクを抑えやすいです。

RFP作成と見積もり比較の進め方

複数の委託先から適切な見積もりを取るためには、RFP(提案依頼書)を整備することが有効です。機能要件・非機能要件(可用性・セキュリティ・パフォーマンス)・連携先のシステム情報・納期を明記することで、各社から比較可能な見積もりを得られます。

見積もり比較の際は、初期開発費用だけでなく「保守費用(年間)」「法改正対応費用」「追加機能開発の単価」も含めた総所有コスト(TCO)で評価することが大切です。初期費用が安くても保守費用が高額になるケースや、法改正のたびに高額な追加費用が発生するケースがあります。

なお、勤怠管理システムの開発を内製で進めるには、フロントエンド・バックエンド・データベース設計・労務知識・セキュリティ・インフラの幅広いスキルが必要です。これらを兼ね備えたエンジニアを短期間で確保することは容易ではなく、外注と内製のコスト・リスクを比較したうえで判断することが現実的です。

まとめ——勤怠管理システム開発外注の3つの判断軸

本稿では、勤怠管理システムのスクラッチ・カスタム開発を外注する際の検討ポイントを整理しました。要点を3つにまとめます。

第一に、「スクラッチか既製品か」の判断です。独自の就業規則・複雑なシフト管理・複数システムとのAPI連携が必要な場合はスクラッチ開発が適します。標準的な就業形態であればSaaSやパッケージで対応できる可能性があります。

第二に、「機能要件の網羅性」です。打刻方式の選択、36協定アラート・残業上限管理、有給休暇管理、申請ワークフロー、給与システム連携は開発前に要件定義で確定させる必要があります。要件の漏れは後工程での追加費用につながります。

第三に、「委託先の選定基準」です。技術力に加えて、労働法令の理解力・法改正対応の実績・保守の継続体制を評価することが重要です。開発から保守まで一気通貫で対応できる体制を持つ委託先を選ぶことで、長期的なリスクを抑えられます。

よくある質問

勤怠管理システムをスクラッチ開発する場合、どれくらいの期間がかかりますか?

機能規模によりますが、フルスクラッチ開発では2か月〜10か月以上かかるケースがあります。要件定義・設計に全体工数の20〜25%程度をかけることが後工程の手戻り防止につながります。打刻方式や連携システムが多いほど期間は長くなりますので、早期に要件を固めることが重要です。

勤怠管理システムの開発で36協定・残業上限規制に対応するには何が必要ですか?

厚生労働省が定める時間外労働の上限(原則:月45時間・年360時間、特別条項あり:年720時間以内・月100時間未満等)*2に対応するため、従業員ごとの残業累計時間をリアルタイムで集計し、閾値に近づいた時点で管理者へ自動通知する機能が必要です。特別条項の複数月平均80時間の計算ロジックも開発要件として明示することが重要です。

パッケージ型SaaSとスクラッチ開発、どちらを選べばよいですか?

標準的な就業形態であればクラウドSaaS型が初期費用を抑えやすく、運用負担も軽くなります。一方、変形労働時間制・複数シフト・独自の手当計算・複数の基幹システムとのリアルタイム連携が必要な場合はスクラッチ開発が現実的です。まず現行の就業規則と連携要件を整理し、既製品で対応できる範囲を確認したうえで判断することをお勧めします。

委託先を選ぶ際に確認すべきポイントはどこですか?

技術力に加えて、「労働法令の理解・法改正対応実績があるか」「開発から保守まで一気通貫で対応できるか」「RFP(提案依頼書)をもとに総所有コストで見積もりを比較できるか」の3点が重要です。特に法改正のたびに追加費用が高額になるケースがあるため、保守費用と法改正対応の契約条件を事前に確認しましょう。

勤怠管理システムの開発外注費用を抑えるにはどうすればよいですか?

費用を抑えるには、まず「本当にスクラッチが必要な機能」と「パッケージで代替できる機能」を分けることが有効です。すべてをスクラッチで作らず、一部機能はSaaSのAPIと連携する「ハイブリッド型」も検討できます。また、要件定義を十分に行い、後工程での仕様変更を減らすことが、最終的なコスト削減につながります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑

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  1. *1 出典:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(2017年1月20日)
  2. *2 出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制」(働き方改革特設サイト)


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