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レガシーEDIのインターネットEDI移行を外注で進める
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- NTT東日本・西日本はISDN(INSネット)の「ディジタル通信モード」を2024年1月から地域ごとに段階的に終了し、サービス全体は2028年12月31日に提供終了する予定です。
- 全銀協標準通信プロトコルは「ベーシック手順」「TCP/IP手順」のサポートを2023年12月末で終え、現行はIP網対応の「TCP/IP手順・広域IP網」のみです。
- 移行先には全銀TCP/IP手順・JX手順・ebXML MS・AS2など複数の選択肢があり、取引先数が多いほど手順統一と並行稼働の調整が移行の負荷を左右します。
目次
レガシーEDIとは何か——JCA手順・全銀手順とISDN回線に依存する仕組み
EDI(Electronic Data Interchange。受発注や決済に関するデータを、企業間で標準化された形式に沿って電子的にやり取りする仕組み)のうち、ISDN回線を通信経路とする従来型の方式を、本稿ではレガシーEDIと呼びます。代表的な手順にはJCA手順(全国銀行協会が制定した、主に商取引データの交換に使われる通信手順)や、全銀協標準通信プロトコルの「ベーシック手順」「TCP/IP手順」があります*3。いずれもPSTN(公衆交換電話網)またはISDNを前提とした手順です*3。EDIそのものは受発注書・請求書・出荷案内などの帳票データを、企業間で決めたフォーマットと通信手順に沿って自動的に交換する仕組みであり、手作業でのFAXや電話連絡に比べて入力ミスや確認の手間を減らせる点が導入の狙いでした。
これらの手順は、企業間で個別に構築された専用線やISDN回線の上に成り立っています。通信方式そのものが古いだけでなく、回線の維持コストや、拠点ごとに異なる設定が保守負担として積み重なっている点も特徴です。NTT東日本・西日本はISDN(INSネット)のサービス全体を2028年12月31日に終了する予定で、これに先立ちISDNの「ディジタル通信モード」を2024年1月から地域ごとに段階的に終了しています*1*2。この一連の動きは「EDI2024年問題」と呼ばれ、レガシーEDIを使う企業に移行対応を迫っています。製造業・卸売業・小売業をはじめ、取引先と定型データを継続的に交換している業種であれば、程度の差はあれこの対応が関わってくるテーマです。
2024年1月から段階的に終了するISDNディジタル通信モード——EDI2024年問題の実像
ISDNには「ディジタル通信モード」と「アナログ通信モード」の2種類の通信方式があり、EDIやFAX通信の多くはディジタル通信モードを使っています。NTT東日本の案内では、ディジタル通信モードのサービス提供は2024年1月から地域ごとに段階的に終了すると説明されています*1。あわせてINSネットの新規申込受付は2024年8月31日に終了し、INSネット64・INSネット64ライト・INSネット1500を含むサービス全体は2028年12月31日に提供を終了する予定です*2。
利用者数の減少に伴い、2029年以降のサービス提供に必要な設備部材の確保が難しくなる見込みであることが、終了の背景として挙げられています*2。ディジタル通信モードの終了に合わせて、メタルIP電話上でのデータ通信を提供する補完策も用意されていますが、既存のディジタル通信モードに比べて伝送遅延が生じるため、EDI用途では処理時間の増大につながる場合があります*1。補完策はあくまで移行までの時間を確保するための措置であり、恒久的な代替とは位置づけられていません。
この状況は、単に電話回線が変わるという話では済みません。ISDN回線の上で稼働しているレガシーEDIのシステムそのものが、通信経路の変更に合わせた見直しを迫られる点が実務上の課題です。対象となるのは受発注データや決済データを取引先とやり取りしている企業で、業種を問わず影響が及びます。
レガシーEDIとインターネットEDIの違い——手順・回線・セキュリティの比較
レガシーEDI——ISDN回線を前提にした専用の通信手順
レガシーEDIは、ISDNやPSTNといった回線交換網の上で、決められた通信手順に沿ってデータをやり取りする方式です。全銀協標準通信プロトコルのうち「ベーシック手順」と「TCP/IP手順」は、いずれもPSTNまたはISDNを想定した手順で、全銀協はこの2手順のサポート(改正および会員・利用者からの照会対応)を2023年12月末で終了しています*3。回線調達や機器の維持にコストがかかる一方、長年運用されてきた実績があり、取引先との接続設定が固定化している点が特徴です。
インターネットEDI——IP網を通信経路にする複数の標準手順
インターネットEDIは、インターネットやIP-VPNなどの広域IP網を通信経路として使う方式です。全銀協標準通信プロトコルの「TCP/IP手順・広域IP網」はIP網対応の現行手順で、暗号化を前提としています*3*4。ほかにもJX手順、ebXML MS、AS2(EDIINT AS2)など複数の標準が併存しており、業界慣行や取引先の対応状況に応じて選ぶことになります*4。
両者の違いを整理すると次の通りです。
| 項目 | レガシーEDI | インターネットEDI |
|---|---|---|
| 主な手順 | JCA手順・全銀ベーシック手順・全銀TCP/IP手順(ISDN)*3 | 全銀TCP/IP手順(広域IP網)・JX手順・ebXML MS・AS2*3*4 |
| 通信経路 | ISDN・PSTN(回線交換網) | インターネット・IP-VPN等の広域IP網*3 |
| 暗号化の位置づけ | 回線側の閉域性に依存 | TLS等の暗号化が前提*3 |
| サポート状況 | 全銀協の2手順は2023年12月末でサポート終了*3 | 広域IP網対応手順が現行*3 |
| 回線終了の影響 | ISDNは2028年12月末に提供終了予定*2 | 既存の公衆インターネット・専用線を利用 |
移行先の選択肢——全銀TCP/IP手順・JX手順・ebXML MS・AS2の特徴
インターネットEDIへの移行先は一つではありません。取引先の業界や規模によって、選ぶべき手順が変わってきます。
全銀TCP/IP手順(広域IP網)は、既存の全銀協標準通信プロトコルの流れを引き継ぐ手順で、金融・化学・医薬品・鉄鋼業界など、従来から全銀手順を使ってきた取引に馴染みやすい選択肢です*4。メッセージのシーケンスや制御メッセージの仕組みは既存の全銀TCP/IP手順を踏襲しているため、既存の運用ノウハウを転用しやすい面があります。
JX手順は、中小企業共通EDI標準に基づいて日本国内で策定された手順です*5。SOAP-RPCをベースとし、クライアント側の中小企業が処理の起点となるPULL型の通信を採用している点が特徴です*4。従来のJCA手順の後継として位置づけられており、電話回線に比べて高速な通信が可能で、利用コストも抑えやすいことから、小売・流通業を中心とした中小企業で採用が進んでいます*4。
ebXML MSは、UN/CEFACT(国連CEFACT)とOASISが開発した国際標準の通信プロトコルで、日本では流通業界や医療機器業界、産業環境管理業界などで採用が広がっています*4。AS2(EDIINT AS2)はHTTPとMIMEをベースにセキュアなデータ交換を実現する手順で、海外の大手流通業を中心に普及しており、大量データをリアルタイムに送受信したい企業に向いています*4。欧州の自動車業界を中心に使われるOFTP2や、OSに標準実装されているSFTPも、グローバルEDIやシステム間連携の場面で選択肢に入ります*4。海外拠点との取引が多い企業では、国内向けの手順だけでなくOFTP2やAS2への対応可否も確認材料になります。
手順の選定は自社だけでは決められません。取引先がどの手順に対応しているか、あるいはどの手順への統一を求めているかによって、実質的に選択肢が絞られる場面が多くあります。
取引先が多いほど難しくなる移行計画——棚卸しから並行稼働までの流れ
レガシーEDIの移行が難しくなる大きな要因は、技術的な手順変換そのものではなく、取引先との調整です。自社のシステムを新しい手順に対応させても、取引先側の対応が揃わなければ切替は完了しません。
最初のステップは、現在使っている通信手順・回線・取引先の棚卸しです。どの取引先とどの手順・回線でやり取りしているか、EDIシステムがどのアプリケーションと連携しているかを一覧化します。取引先数が数十社を超える企業では、この棚卸しだけでも相応の工数がかかります。
次に、移行先の手順を選定し、取引先ごとの対応スケジュールを組み立てます。全取引先が同時に切り替わるとは限らないため、旧手順と新手順を一定期間並行稼働させる計画が欠かせません。並行稼働の期間中は、システム側で両方の通信方式を扱える構成にしておくことが前提です。
そのうえで、取引先への個別調整に進みます。大手取引先が主導する業界では、取引先側の指定手順に合わせるケースが多く、中小の取引先が多い業界では、JX手順のような低コストな手順への統一が進みやすい傾向があります*4。切替のタイミングを取引先ごとにすり合わせ、テスト環境での接続確認を経てから本番切替に移るという流れが一般的です。
最後に、旧回線・旧手順の停止判断です。全取引先の切替が完了したことを確認し、ISDN回線の解約やレガシーEDIシステムの停止に進みます。この判断を誤ると、切替漏れの取引先との通信が突然途絶するおそれがあるため、切替完了の確認手順を事前に明確にしておくことが実務上の要点になります。
内製と外注の分かれ目——手順変換・取引先展開の工数で判断する
レガシーEDIの移行は、システム改修と業務調整の両方が絡む取り組みです。取引先数が少なく、移行先の手順も一つに絞れる場合は、自社の情報システム部門で対応できる場合もあります。
判断が分かれるのは、取引先数が多い、複数の手順が混在している、あるいは既存のEDIシステムが古い言語やミドルウェアで構築されていて改修そのものに専門知識が要る場合です。こうした環境では、手順変換の実装だけでなく、取引先への説明・調整・テスト支援まで含めた外部リソースの活用が検討材料になります。
外注先を選ぶ際は、対応できる手順の幅(全銀TCP/IP手順・JX手順・ebXML MS・AS2など)と、取引先展開の支援体制を確認することが大切です。単に通信モジュールを実装するだけでなく、並行稼働期間の設計や、切替漏れを防ぐ確認プロセスまで一括して依頼できるかどうかが、委託範囲の分かれ目になります。過去に扱った手順の種類や、取引先向けの説明資料・接続テストの支援経験があるかどうかも、依頼前に確認しておきたい項目です。
内製で対応する場合は、既存の情報システム部門の担当者が通常業務と並行して棚卸し・調整・テストを進めることになり、取引先数が多いほど工期が延びやすくなります。加えて、古い言語で書かれたEDIシステムの改修経験を持つ人材が社内に限られている企業も少なくありません。自社の対応体制と取引先数を照らし合わせたうえで、内製・外注の切り分けを検討することが実務的な進め方です。
まとめ:レガシーEDI移行で押さえる3つの判断軸
本稿ではレガシーEDIからインターネットEDIへの移行について、公式情報をもとに整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、ISDNの「ディジタル通信モード」は2024年1月から段階的に終了しており、ISDN(INSネット)全体も2028年12月31日に提供終了する予定です*1*2。第二に、移行先には全銀TCP/IP手順・JX手順・ebXML MS・AS2など複数の標準があり、取引先の業界や規模によって適した手順が異なります*3*4*5。第三に、移行の難しさは技術面よりも取引先調整に表れやすく、取引先数や手順の混在状況が内製と外注の判断材料になります。
よくある質問
ISDNのディジタル通信モードが終了すると、レガシーEDIはすぐに使えなくなりますか。
ディジタル通信モードは2024年1月から地域ごとに段階的に終了しており、終了に合わせてメタルIP電話上でのデータ通信という補完策が用意されています*1。ただし補完策は伝送遅延が生じるため、恒久的な代替ではなく、移行までの時間を確保する位置づけです。ISDN(INSネット)自体も2028年12月31日に提供終了する予定のため、早めの移行計画が求められます*2。
全銀TCP/IP手順とJX手順のどちらに移行すべきですか。
取引先の業界や規模によって適した手順は異なります。全銀TCP/IP手順(広域IP網)は既存の全銀手順の運用を引き継ぎやすく、金融・化学・鉄鋼業界などで使われています*4。JX手順はSOAP-RPCベースのPULL型で、利用コストを抑えやすく、中小企業を中心とした流通・小売業で採用が進んでいます*4。最終的には主要な取引先の対応状況に合わせて決める場面が多くなります。
取引先が多い場合、移行はどのくらいの期間がかかりますか。
取引先数や手順の混在状況によって工期は変わります。現状棚卸し、移行先手順の選定、取引先ごとの調整、並行稼働、旧回線の停止という流れをたどるため、取引先数が数十社を超える場合は、調整だけで相応の期間を要する場合があります。並行稼働期間を含めた計画を早期に立てることが、切替漏れを防ぐうえで大切です。
EDIの移行作業を外部に委託する場合、何を確認すればよいですか。
対応できる通信手順の幅(全銀TCP/IP手順・JX手順・ebXML MS・AS2など)と、取引先への説明・調整・テスト支援まで対応できるかを確認します。加えて、並行稼働期間の設計や切替完了の確認プロセスを委託先とすり合わせておくことが大切です。契約前に検証環境での接続確認範囲を明確にしておくと、切替後のトラブルを抑えやすくなります。
JCA手順を使っている場合も同じように移行が必要ですか。
JCA手順もISDN回線を前提とした手順のため、ISDN(INSネット)の提供終了に合わせて移行対応が必要です。JCA手順の後継として位置づけられているJX手順への移行が選択肢の一つになりますが、取引先の対応状況によっては他のインターネットEDI手順を選ぶ場合もあります*4。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:NTT東日本「ISDNサービス(INSネット)の提供が2028年12月にすべて終了。企業への影響とは」(コラム)(https://business.ntt-east.co.jp/column/denwa/isdn.html)
- *2 出典:NTT東日本「INSネットの新規申込受付・提供終了について」(ニュースリリース、2024年3月7日)(https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20240307_02.html)
- *3 出典:一般社団法人全国銀行協会「全銀協標準通信プロトコル」(https://www.zenginkyo.or.jp/abstract/efforts/system/protocol/)
- *4 出典:株式会社データ・アプリケーション「インターネットEDIを支える6大通信プロトコルを簡単解説」(https://www.dal.co.jp/acms/protocol/)
- *5 出典:中小企業庁「中小企業共通EDI」(経済産業省)(2026年7月時点、ウェブサイトのbotアクセス制限のためURL非掲載)