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生産管理システムMES開発、外注の進め方と勘所
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム開発・保守運用を受託
この記事のポイント
- MESA International(MESA-11モデル)は、生産実行に関わる11の中核機能を定義しています。
- 国際規格ISA-95は、経営(ERP)から現場制御までを5階層に整理し、MESはそのレベル3に位置づけられます。
- 生産管理システムとMESは重なる部分もありますが、計画系と実行系という役割の違いを踏まえた設計判断が導入の成否を左右します。
目次
生産管理システムとMESとは——ERPから現場までのレイヤーを整理する
生産管理システムとは、製造業における生産計画の立案から工程管理、進捗把握までを担う仕組みの総称です。MES(Manufacturing Execution System。製造実行システム)は、その中でも現場の実行段階に焦点を当てたシステムを指します。国際的な非営利団体MESA Internationalは1996年、MESの中核機能を体系化した「MESA-11」モデルを発表しました*1。
実務では「生産管理システム」という言葉が、経営に近い計画系の機能から現場の実行系機能までを幅広く含む形で使われることが多く、MESという呼び方は現場実行に近い機能を指す場面で使われる傾向があります。両者の線引きを定めた共通の定義があるわけではなく、企業やベンダーによって指す範囲が異なる点には注意が必要です。
本稿では、生産計画や工程管理を含む広い意味での「生産管理システム」と、現場の実行・実績収集を担う「MES」の両方を対象に、役割の違いと導入・外注の勘所を整理します。
ISA-95が示す5階層とMESA-11の11機能——生産管理システムの位置づけ
MESと基幹システム(ERP)の境界を理解するうえで参照されるのが、国際標準化団体ISA(International Society of Automation)が策定したISA-95規格です。ISA-95は企業システムと制御システムの統合を目的とした国際規格で、製造業のIT構造をレベル0からレベル4までの5階層で整理しています*2。
レベル0は実際の物理的な生産プロセス、レベル1はセンサーやアクチュエータによるセンシングと操作、レベル2はPLC(Programmable Logic Controller。機械の動作を制御する装置)やDCSによる監視・制御を担います*2。レベル3が製造実行管理にあたり、MESやSCADAが該当します*2。そしてレベル4が事業計画・ロジスティクスを担うERPの領域です*2。ISA-95が主な対象とするのは、レベル3(MES)とレベル4(ERP)の間の情報連携です*2。
MESの機能面を体系化したものがMESA-11モデルです。MESA Internationalは1996年、生産のスケジューリング・資源配分、作業指示、文書管理、実績データの収集、労務管理、品質管理、工程管理、保全管理、製品トレーサビリティ、実績分析といった機能領域を、MESの中核機能として整理しました*1。この考え方は現在のMES製品にも通じており、自社に必要な機能を洗い出す際のチェックリストとして参照できます。
生産管理システムの主な機能——生産計画・工程管理・進捗/実績収集
生産計画——需要と能力をすり合わせる計画系機能
生産管理システムの計画系機能は、受注情報や需要予測をもとに、いつ・何を・どれだけ作るかを決める役割を担います。生産能力や資材の手配状況とすり合わせながら、日程計画・工程順序を組み立てる点が特徴です。ERPの受発注データと連携させる設計が多く、この部分は基幹システムに近い性質を持ちます。
工程管理と進捗/実績収集——現場の状況を可視化する実行系機能
工程管理は、計画した作業を各工程に割り当て、進捗状況を追跡する機能です。バーコードやハンディターミナル、設備からの信号を通じて実績データを収集し、計画と実績の差異を把握します。ここは前章で触れたMESA-11のうち、データ収集・実績分析にあたる領域と重なります*1。
紙の日報やExcelで進捗を管理している現場では、記入から集計までにタイムラグが生じ、問題の発見が遅れがちです。生産管理システムを導入する主な狙いは、この可視化と情報共有のタイムラグを縮めることにあります。
MESに求められる機能——部品表(BOM)・品質・トレーサビリティ・設備連携
より現場実行寄りの機能として、MESには次のような領域が求められます。部品表(BOM。Bill of Materials。製品を構成する部品や数量の一覧)は、生産指示や資材引当の起点になる情報です。品質管理機能は、検査結果の記録や不良の発生工程の特定を担います。製品トレーサビリティは、原材料のロットから最終製品までの生産履歴を追跡できるようにする機能で、MESA-11でも独立した機能領域として位置づけられています*1。
設備連携も欠かせない要素です。IoT(Internet of Things。センサーなどをネットワークに接続し情報をやり取りする仕組み)やPLCと接続し、設備の稼働状況や異常発生をリアルタイムに収集する構成が広がっています。経済産業省中部経済産業局が2017年5月に公表した「スマートファクトリーロードマップ」では、IoTなどを活用したものづくりのスマート化を、データの収集・蓄積、分析・予測、制御・最適化という段階で捉える考え方が示されています(出典は本文末尾に記載)。
これらの機能を整理すると、次のように役割分担できます。
| 機能領域 | 主な役割 | ISA-95での位置づけ |
|---|---|---|
| 生産計画・日程計画 | 受注・需要予測をもとに生産順序を組み立てる | レベル3〜4の境界*2 |
| 工程管理・進捗収集 | 作業割当と実績データの収集・差異把握 | レベル3*2 |
| 部品表(BOM)管理 | 製品構成部品の一覧を管理し生産指示に反映する | レベル3*2 |
| 品質・トレーサビリティ | 検査結果の記録とロット単位の履歴追跡 | レベル3*1*2 |
| 設備連携(IoT・PLC) | 稼働状況・異常のリアルタイム収集 | レベル1〜2との接点*2 |
パッケージ導入かスクラッチ開発か——選定の分かれ目
生産管理システム・MESの導入方式は、大きくパッケージ製品の採用と、スクラッチ(個別開発)によるフルオーダーメイドに分かれます。パッケージ製品は標準機能があらかじめ用意されており、他社での導入実績をもとにした運用ノウハウが蓄積されている点が利点です。一方で、自社固有の生産方式や工程の順序が、パッケージの標準機能と合わない場合は、アドオン開発や運用側での工夫が必要になります。
スクラッチ開発は、自社の生産方式に合わせて機能を一から設計できる点が利点です。ただし要件定義から設計・開発・テストまでの工数がかかり、開発を担うベンダーの製造業務理解が浅いと、現場の実態と合わない仕様になりやすいという難しさもあります。
実務では、標準機能で対応できる部分はパッケージを活用し、自社固有の工程やBOM構造に関わる部分だけをアドオンやスクラッチで補う、いわゆるハイブリッド型を選ぶ企業も見られます。どちらを選ぶにしても、自社の生産方式の特徴(個別受注生産か、見込み生産か、多品種少量かなど)を先に言語化しておくことが、選定のずれを防ぐ前提になります。
基幹システム(ERP)連携と現場定着で起きやすい課題
生産管理システム・MESを単独で導入しても、基幹システム(ERP)との連携が取れていなければ効果は限定的です。受注情報や原価データがERP側にあり、生産計画や実績データがMES側にある場合、両者のデータ連携が滞ると、二重入力や情報の食い違いが発生します。ISA-95が主眼とするレベル3・レベル4間の情報連携は、まさにこの部分の設計指針にあたります*2。
もう一つの壁が、現場への定着です。生産管理システムを新しく導入しても、現場の作業員が入力を後回しにしたり、従来の紙の帳票と併用してしまったりすると、データの精度が下がり、可視化の効果が薄れます。経済産業省・厚生労働省・文部科学省が2025年5月にまとめた「2025年版ものづくり白書」では、IoTとクラウドを活用して生産性を可視化し、改善サイクルを現場に定着させた取り組みが事例として紹介されています(出典は本文末尾に記載)。同白書は、製造業における人手不足の水準が新型コロナウイルス流行前の水準に戻りつつある状況にも触れています(出典は本文末尾に記載)。人手が限られるなかで新しい入力作業を現場に受け入れてもらうには、operator目線での画面設計や、入力負荷を抑える工夫が欠かせません。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2025年6月に公表した調査レポート「DX動向2025」は、日本企業のDXについて「内向き・部分最適」から「外向き・全体最適」への転換が必要だと指摘しています*3。生産管理システム・MESの刷新も、工場単体の効率化にとどめず、ERPや他拠点とのデータ連携まで見据えて設計することが、投資対効果を高める観点になります。
内製と外注の分かれ目——外注時に確認したいポイント
生産管理システム・MESの構築を内製で担うには、生産管理の業務知識、ERP連携の設計力、設備通信プロトコルの知識など、複数領域の専門性が求められます。社内に製造業務とITの両方に精通した人材が揃っている場合を除き、外部パートナーへの委託を検討する企業が多いのが実情です。
外注先を選ぶ際は、次のような点を確認すると判断がしやすくなります。第一に、パッケージ製品の導入支援だけでなく、自社の工程に合わせたアドオン開発やスクラッチ部分にも対応できるかどうかです。第二に、ERPや既存の基幹システムとの連携実績も重要な確認ポイントになります。第三に、設備メーカーの異なるPLCやセンサーとの接続実績があるかどうかです。そして第四に、導入後の運用保守やデータ活用の相談まで、継続して伴走できる体制があるかどうかを確認します。
。要件定義の段階から現場の運用担当者を巻き込み、パッケージの標準機能とのギャップを早期に洗い出すことが、外注を成功させる実務上のポイントになります。
まとめ:生産管理システム・MES導入で押さえる3つの視点
本稿では、生産管理システムとMESの役割の違いを、公的な定義・規格をもとに整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、MESA-11モデルはMESの中核機能を体系化しており、ISA-95規格はERP(レベル4)とMES(レベル3)を含む5階層でシステムの位置づけを整理しています*1*2。第二に、生産管理システムの機能は生産計画などの計画系と、工程管理・BOM・品質・トレーサビリティ・設備連携などの実行系に分かれ、パッケージとスクラッチのどちらを選ぶかは自社の生産方式次第です。第三に、ERP連携と現場定着の設計を誤ると効果が出にくく、内製・外注のいずれを選ぶ場合でも、この2点を確認できる体制づくりが導入の成否を分けます。
よくある質問
生産管理システムとMESは何が違うのですか。
線引きを定めた共通の定義があるわけではありませんが、一般に生産管理システムは生産計画などの計画系機能を含む広い概念として使われ、MESは現場の実行・実績収集に近い機能を指す場面で使われる傾向があります。ISA-95規格では、MESはレベル3の製造実行管理として位置づけられています*2。
MESの導入で最初に整理すべき機能はどれですか。
MESA Internationalが体系化したMESA-11モデルの機能領域を出発点にすると整理しやすくなります*1。自社にとって優先度の高い機能領域から着手し、部品表(BOM)や品質管理、トレーサビリティなど、現場の課題に直結する部分から検討することが実務的です。
パッケージとスクラッチはどちらを選ぶべきですか。
標準機能で自社の生産方式をカバーできる場合はパッケージが向いています。個別受注生産や特有の工程順序があり、標準機能では対応しきれない場合は、アドオン開発やスクラッチ開発を組み合わせる選択肢が現実的です。まずは自社の生産方式の特徴を言語化してから比較することをおすすめします。
ERPとの連携でつまずきやすいのはどのような点ですか。
受注情報や原価データをERP側で管理し、生産計画や実績データをMES側で管理する構成では、両者のデータ連携設計が不十分だと二重入力や情報の食い違いが起こりやすくなります。ISA-95が扱うレベル3・レベル4間の情報連携の考え方は、この設計の参考になります*2。
生産管理システム・MESの開発を外注する際、何を確認すればよいですか。
パッケージ導入支援だけでなく自社工程に合わせたアドオン・スクラッチ対応の可否、ERP連携の実績、設備通信の対応範囲、導入後の運用保守までの伴走体制を確認することが実務的な進め方です。契約前に、自社の生産方式や現場の運用担当者を交えたヒアリングの範囲を明確にしておくと、導入後のギャップを抑えやすくなります。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:MESA International「History of the MESA Models」(MESA-11モデル、1996年発表)(https://mesa.org/topics-resources/mesa-model/history-of-the-mesa-models/)
- *2 出典:ISA「ISA-95 Standard: Enterprise-Control System Integration」(https://www.isa.org/standards-and-publications/isa-standards/isa-95-standard)
- *3 出典:IPA(独立行政法人情報処理推進機構)「DX動向2025」(2025年6月26日公表)(https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/dx-trend-2025.html)
- *4 出典:経済産業省中部経済産業局「スマートファクトリーロードマップ」(2017年5月公表、bot拒否のためURL到達不可・プレーンテキスト表記:www.chubu.meti.go.jp/b21jisedai/report/smart_factory_roadmap/)
- *5 出典:経済産業省・厚生労働省・文部科学省「2025年版ものづくり白書」(2025年5月30日公表、bot拒否のためURL到達不可・プレーンテキスト表記:www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2025/)