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2026.07.13 らしくコラム

ESG・GHG算定システム開発の外注の進め方

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム開発・保守運用を受託

カーボン排出のイメージ

この記事のポイント

  • GHG算定システム(カーボンアカウンティング)は「活動量×排出係数」でScope1・2・3の排出量を算定し、拠点やサプライチェーン別に集計する基盤です。
  • SSBJは2025年3月5日にサステナビリティ開示基準を公表し、有価証券報告書でのサステナビリティ情報開示に向けた整備が進んでいます。
  • 排出係数マスタの更新追随、拠点・取引先からのデータ収集、監査証跡と第三者保証への対応が、外注先を選ぶ際の確認点になります。

ESG・GHG算定システムとは——Scope1・2・3の排出量を可視化する基盤

ESG報告のイメージ

ESG・GHG算定システム(カーボンアカウンティングとも呼ばれます)とは、企業活動に伴う温室効果ガス(GHG)の排出量を算定し、拠点別やサプライチェーン別に集計・可視化するための情報システムです。算定の基本式は「温室効果ガス排出量=活動量×排出係数」で表され、燃料使用量や電力使用量といった活動量に、それぞれの排出係数を掛け合わせて求めます*1

図
図:GHG算定システムのデータの流れ(活動量収集→排出係数の乗算→Scope別算定→集計→開示・保証対応)

算定の対象は、事業者自らの燃料燃焼などによる直接排出(Scope1)、購入した電気・熱・蒸気の使用に伴う間接排出(Scope2)、そしてそれ以外の間接排出(Scope3)の3区分です*2。これら3つを合計したものがサプライチェーン排出量と定義されており、サプライチェーン排出量はScope1・Scope2・Scope3の各排出量の和で表されます*2

Scope3はさらに、原材料の調達から製品の廃棄までのバリューチェーン全体を15のカテゴリに分類して算定します*2。取引先や物流、出張、廃棄物など幅広い活動が対象になるため、社内だけで完結しないデータをどう集めるかが、算定システムの設計上の大きな論点となります。

導入背景——SSBJ基準と有価証券報告書でのサステナビリティ情報開示

算定システムをあらためて整備する動きが広がっている背景には、開示制度の進展があります。サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は2025年3月5日、サステナビリティ開示ユニバーサル基準「サステナビリティ開示基準の適用」、テーマ別基準第1号「一般開示基準」、テーマ別基準第2号「気候関連開示基準」の3つを公表しました*5。国際的な比較可能性を確保するため、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)のIFRSサステナビリティ開示基準をベースに開発されています*5

この基準は、ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標という4つの構成要素に沿った開示を求めるものです*5。気候関連の指標にはGHG排出量が含まれ、有価証券報告書のサステナビリティ情報開示への活用が見込まれています。金融庁の作業部会では、プライム市場の時価総額が大きい企業から段階的に適用する方向で検討が進められています*6

制度面ではもう一つ、温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)に基づく温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(SHK制度)があります。平成18年4月1日から、温室効果ガスを多量に排出する特定排出者に対し、自らの排出量を算定して国に報告することが義務付けられてきました*1。エネルギー起源CO2では、全事業所のエネルギー使用量の合計が原油換算で年間1,500kl以上の事業者が対象です*1

開示と報告では求められる粒度が異なるものの、いずれも算定の裏付けとなるデータの正確性が問われます。制度対応を人手の表計算だけで続けると、集計ミスや更新漏れが起きやすくなります。そこでシステム化によって、算定ロジックとデータの出所を一元管理する必要性が高まっているのです。

GHG算定システムに求められる機能——活動量収集・排出係数・拠点別集計

GHG算定システムに共通して求められる機能は、大きく4つの層に整理できます。順に見ていきましょう。

活動量データの収集

第一の層は、算定のもとになる活動量データの収集です。電力使用量や燃料使用量、購買金額、輸送距離といった多様なデータを、拠点や部門から集めます。データの形式は請求書、検針票、購買システムの明細など多岐にわたるため、入力の負荷をどう下げるかが設計のポイントになります。Scope3のカテゴリでは取引先からの一次データ取得も課題です。

排出係数マスタの管理

第二の層は、活動量に掛け合わせる排出係数の管理です。排出係数は制度や年度によって更新されるため、マスタとして一元管理し、改定時に速やかに反映できる仕組みが欠かせません。電力のScope2排出量では、実際に契約している電力メニューに基づくマーケット基準と、地域の平均係数を用いるロケーション基準という2つの考え方があり、GHGプロトコルのScope2ガイダンスで整理されています*3。どちらの基準で算定するかを切り替えられる設計が望まれます。

Scope別・拠点別の集計

第三の層は、算定結果をScope1・2・3別、拠点別、サプライチェーン別に集計する機能です。温室効果ガスはCO2以外にもメタンやN2Oなど複数のガスが対象となり、それぞれ地球温暖化係数(GWP)を掛けてCO2換算で合算します*1。原単位(売上高や生産量あたりの排出量)での按分計算に対応すると、拠点間の比較や削減目標の進捗管理がしやすくなります。

開示レポートと監査証跡

第四の層が、開示・報告用のレポート出力と監査証跡の保持です。算定に用いた活動量の値や排出係数、計算過程を記録し、後から検証できる状態にしておくと、第三者保証や社内監査に耐える根拠を示せます。削減目標(SBTなど)の進捗を時系列で追える機能もあると、経営層への報告に活用できます。

会計システム・予実管理・BIとの違いと連携

GHG算定システムは、金額ではなく排出量という物量を扱う点で、既存の基幹システムとは性格が異なるシステムです。とはいえ入力データや集計の考え方には共通点も多く、連携の設計が導入の成否を左右します。既存システムとの関係を整理しておきましょう。

システム 主に扱う対象 GHG算定との関係
会計システム 取引の金額・仕訳 購買金額をScope3の活動量として連携できる
予実管理 予算と実績の金額差異 排出量の目標と実績を同じ考え方で管理できる
BIツール 各種データの可視化 算定結果のダッシュボード表示に活用できる
GHG算定システム 物量(排出量)と排出係数 活動量×排出係数で排出量を算定し集計する

会計システムの購買明細は、Scope3の一部(購入した製品・サービスなど)の活動量として再利用できます。金額に排出原単位を掛けて概算できるためです。予実管理の発想は、排出削減目標に対する進捗管理にそのまま応用できます。BIツールは算定結果の可視化に向く一方、算定ロジックや排出係数の管理までは担わない点に留意すべきです。役割分担を踏まえ、どこまでを新規開発し、どこを既存資産と連携させるかを見極めることが、投資対効果を高める鍵になります。

パッケージ(GHG算定SaaS)とスクラッチ開発の判断軸

開発方式には、GHG算定に特化したSaaS(パッケージ)を利用する道と、自社要件に合わせてスクラッチ開発する道があります。どちらが適しているかは、算定範囲の広さと既存システムとの連携要件で決まります。

パッケージ型は、排出係数マスタがあらかじめ整備され、係数の更新がベンダー側で追随される点が強みです。標準的なScope1・2の算定や、代表的なScope3カテゴリの概算であれば、短期間で立ち上げられる場合が多いといえます。一方で、自社固有の拠点区分や社内の按分ルール、基幹システムとの細かな連携には制約が出ることもあります。

スクラッチ開発は、拠点構成やデータ収集の経路、原単位の定義を自社の実態に合わせて作り込める点が利点です。複数の基幹システムからデータを自動連携したい場合や、Scope3の一次データ収集を独自フローで回したい場合に向きます。ただし排出係数の更新追随や制度改定への対応を、運用として自社側で担保する必要があります。

実務では、標準機能はパッケージに任せ、自社固有の連携や集計だけを追加開発するハイブリッド構成も選択肢になります。いずれの方式でも、制度改定に追随できる保守体制を前提に置くことが重要です。

外注時に確認すべき点——排出係数の更新・データ収集・保証対応

ESG・GHG算定システムを外注する際は、一般的なシステム開発の確認項目に加えて、算定領域に固有の観点を押さえる必要があります。委託先の力量を見極めるうえで、次の3点が要になります。

第一に、排出係数の更新への追随です。温対法の算定・報告マニュアルは改定され、令和7年度の報告から適用される版では算定方法などが見直されました*1。サプライチェーン排出量の基本ガイドラインも、環境省・経済産業省によって継続的に改定されています*4。係数や算定方法の改定を、誰がどのように反映するのかを契約段階で明確にしておくべきです。

第二に、拠点や取引先からのデータ収集の設計です。Scope3では自社外のデータが必要になるため、入力フォームやテンプレートの配布、収集状況の進捗管理といった運用面の作り込みが品質を左右します。データの欠損時に概算値へ切り替える扱いを、システムとして許容するかどうかも決めておきましょう。

第三に、監査証跡と第三者保証への対応です。金融庁の作業部会では、サステナビリティ情報について保証を導入する方向で議論が進められており、保証の水準を限定的保証とし、範囲を当初はScope1・2ならびにガバナンスおよびリスク管理とする案が示されています*6。算定の根拠データと計算過程を追跡できる仕組みが、保証対応の土台になります。

これらを一括して依頼できるか、それとも要件定義だけを支援してもらうのかで、必要な体制は変わります。元請(プライムベンダー)として要件定義から開発・保守までを通して担える委託先であれば、制度改定への追随も含めて相談しやすくなります。

まとめ:ESG・GHG算定システム開発の外注で押さえる3つの判断軸

本稿では、ESG・GHG算定システム(カーボンアカウンティング)の外注について、公式情報をもとに整理してきました。要点は3つに集約されます。第一に、算定システムは「活動量×排出係数」でScope1・2・3を求め、サプライチェーン排出量として集計する基盤であるという点です*1*2。第二に、SSBJが2025年3月5日に公表した開示基準や温対法など、制度対応がシステム化を後押ししている点です*5。第三に、排出係数の更新追随・データ収集・監査証跡と保証対応という算定固有の観点が、外注先を選ぶ判断軸になる点です*4*6。自社の算定範囲と既存システムを棚卸ししたうえで、開発方式と委託範囲を検討することをおすすめします。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、業務システムの開発・保守運用を元請(プライムベンダー)として受託しています。基幹システムとのデータ連携設計から、排出係数マスタの管理、拠点・サプライチェーン別の集計、開示・保証に耐える監査証跡の設計まで、要件定義から一貫して対応する体制を整えています。制度改定への追随を見据えたシステム化をご検討の企業様は、現状の算定業務の棚卸しからご相談いただけます。

よくある質問

GHG算定システムとカーボンアカウンティングは同じものですか。

おおむね同じ意味で使われます。いずれも温室効果ガスの排出量を「活動量×排出係数」で算定し、Scope1・2・3に区分して集計・可視化する仕組みを指します*1*2。金額を扱う会計に対し、排出量という物量を会計的な手法で管理するイメージから、カーボンアカウンティングと呼ばれます。

Scope3まで算定するにはどのようなデータが必要ですか。

Scope3は原材料調達から製品廃棄までのバリューチェーンを15カテゴリに分けて算定するため、自社の購買明細や物流データに加え、取引先からの一次データが必要になる場合があります*2。すべてを一次データで揃えるのは難しいため、購買金額に排出原単位を掛ける概算と、一次データの取得を組み合わせる設計が現実的です。

排出係数が改定されたとき、システムはどう対応すべきですか。

排出係数や算定方法は制度改定で見直されます。温対法の算定・報告マニュアルも改定されており、令和7年度の報告から適用される版で算定方法などが見直されました*1。係数をマスタとして一元管理し、改定時に過去データの再計算方針もあわせて決めておくと、開示の一貫性を保ちやすくなります。

SSBJ基準に対応するために、すぐシステムを刷新する必要がありますか。

SSBJは2025年3月5日に開示基準を公表しましたが、有価証券報告書での適用は時価総額の大きい企業から段階的に進む方向で検討されています*5*6。自社の適用時期の見通しを踏まえ、まずは算定範囲とデータの出所を棚卸しし、必要な機能から段階的に整備する進め方が無理のない選択です。

開発を外注する場合、何を最初に決めておくべきですか。

算定の対象範囲(Scope1・2のみか、Scope3のどのカテゴリまでか)、既存の会計・購買システムとの連携範囲、そして排出係数の更新や制度改定への対応をどちらが担うかを、契約前に明確にしておきます。監査証跡と第三者保証への対応方針も含めてすり合わせておくと、後工程での手戻りを抑えられます*6

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:環境省「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度 制度概要」(https://policies.env.go.jp/earth/ghg-santeikohyo/about.html
  2. *2 出典:環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム「サプライチェーン排出量全般」(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/estimate.html
  3. *3 出典:環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム「Scope1、2排出量とは」(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/estimate_02.html
  4. *4 出典:環境省・経済産業省「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(ver.2.7)」(2025年3月)(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/tools/GuideLine_ver.2.7.pdf
  5. *5 出典:サステナビリティ基準委員会(SSBJ)「サステナビリティ基準委員会がサステナビリティ開示基準を公表」(2025年3月5日)(https://www.ssb-j.jp/jp/ssbj_standards/2025-0305.html
  6. *6 出典:金融庁「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」資料(2025年7月17日)(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20250717/02.pdf


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