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2026.07.13 らしくコラム

OMS(注文管理システム)開発の外注の進め方

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム開発・運用を受託

EC受注のイメージ

この記事のポイント

  • OMS(注文管理システム)は、複数モールや自社EC・店舗に分散した受注を一元化し、在庫引当から出荷指示・入金確認までを束ねる仕組みです。
  • 在庫数を記録する在庫管理、倉庫内作業を統制するWMS、法人間取引を担う受発注管理とは役割が異なり、これらと連携させて使います。
  • 外注では、多モールのAPI変更への追随、在庫引当のリアルタイム性、WMS・配送との連携範囲が判断の分かれ目になります。

OMS(注文管理システム)とは——複数チャネルの受注を一元化し出荷指示までつなぐ仕組み

通販物流のイメージ

OMS(注文管理システム。Order Management System)とは、複数の販売チャネルに分散して入ってくる受注を一つに集約し、在庫の引当から出荷指示、入金の確認までを一気通貫で処理する仕組みを指します。EC事業では、自社ECサイトに加えて複数のモール(楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングなど)、さらに実店舗と、注文の入り口が同時に複数存在するのが一般的です。この分散した注文を人手やExcelで束ねようとすると、在庫の二重販売や出荷漏れが起きやすくなります。

図
図:OMSは複数チャネルの受注を一元化し、在庫引当・出荷指示を経て後工程へつなぐ

OMSの中心的な役割は、チャネルごとにバラバラな注文データを共通の形式へそろえ、在庫を横断的に引き当てたうえで、出荷や決済といった後工程へ渡すことにあります。言い換えると、販売の入り口と物流・決済の出口の間に立つ「調整役」です。この調整をシステム化できれば、在庫の同期ずれや手作業の転記ミスを抑えられます。

本稿では、EC・通販の受注一元化に軸足を置き、OMSと近接システムの違い、開発方式の選び方、そして外注時に確認すべき点を、公的な調査資料をもとに整理していきます。

EC市場の拡大と多チャネル販売——受注が分散する課題とOMSが必要になる背景

OMSの必要性が高まっている背景には、EC市場そのものの成長があります。経済産業省の令和6年度電子商取引に関する市場調査(2025年8月公表)によると、2024年の物販系分野のBtoC-EC市場規模は15兆2,194億円で、物販系のEC化率は9.8%に達しました*1。取引の電子化は年々進み、販売機会は複数チャネルへ広がっています。

決済手段の多様化も、受注管理を複雑にする一因です。総務省の令和7年版情報通信白書は、2024年のキャッシュレス決済比率が42.8%になったと報告しています*2。クレジットカードやコード決済など支払い方法が増えるほど、注文ごとに入金ステータスを正しく突き合わせる負荷は増していきます。

加えて、販売チャネルとして大規模なオンラインモールの存在は無視できません。経済産業省はデジタルプラットフォーム取引透明化法に基づき、大規模なオンラインモールを規制対象として指定しています*4。多くのEC事業者にとって、モール出店は売上の柱であると同時に、モールごとに異なる仕様への対応を迫られる要因でもあります。

チャネルが増えるほど、受注データは入り口ごとに散らばりがちです。モールAで売れた在庫がモールBの在庫表に反映されなければ、実在庫を超える注文を受けてしまう恐れが生じます。こうした「受注の分散」と「在庫の同期ずれ」を解消する土台がOMSであり、多チャネル販売を前提とするEC事業では中核的な位置づけになりつつあります。

OMSと受発注管理・在庫管理・WMS・BtoB ECの違いと連携の勘所

OMSはしばしば周辺システムと混同されます。ただ、それぞれが担う範囲は明確に異なります。役割の重なりと違いを押さえておくと、外注時の要件定義でも認識のずれを防げるでしょう。

受発注管理システムは、主に企業間(BtoB)の受注と発注という双方向のトランザクションを扱う仕組みです。一方のOMSは、消費者向けの多チャネル受注を集約し、出荷や決済へつなぐ点に重心があります。在庫管理システムは在庫の数量や入出庫を記録する台帳の役割を担い、OMSはその在庫データを参照して「どの注文にどの在庫を割り当てるか」を判断します。

WMS(倉庫管理システム)は、入荷・格納・ピッキング・出荷といった倉庫内の現場作業を統制するもので、OMSが出した出荷指示を受け取って実行に移す後工程にあたります。BtoB EC(法人向けECサイト)は取引先ごとの価格や掛け売りに対応した受注の入り口であり、OMSから見れば数あるチャネルの一つと捉えられます。以下、代表的な違いの整理です。

システム 主な役割 OMSとの関係
OMS(注文管理) 多チャネル受注の一元化・在庫引当・出荷指示・決済ステータス管理 本記事の主役。販売と物流・決済の間を調整する
受発注管理 企業間の受注・発注という双方向トランザクションの処理 BtoB領域が中心。OMSはBtoCの多チャネル受注に重心
在庫管理 在庫数量・入出庫の記録と可視化 OMSが引当の判断に参照するデータの提供元
WMS(倉庫管理) 入荷・ピッキング・出荷など倉庫内作業の統制 OMSの出荷指示を受けて実行する後工程
BtoB EC 取引先別価格・掛け売りに対応した法人向け受注 OMSから見た受注チャネルの一つ

重要なのは、これらを競合ではなく連携相手として捉えることです。OMSを新規に開発・刷新する際は、既存の在庫管理やWMS、会計システムとどこまでデータを連携させるかが設計の勘所になります。連携の線引きが曖昧なままだと、機能の重複や責任範囲の空白が生まれかねません。

OMSの主要機能——受注一元化・在庫引当・フルフィルメント指示・決済ステータス

OMSに求められる機能は多岐にわたりますが、EC・通販の受注一元化という観点では、次の要素が中核になります。自社の販売形態に照らして、どこまでを対象にするかを見極めることが要件定義の出発点です。

受注の一元化とステータス管理

各モールや自社ECから届く注文を取り込み、共通のデータ形式に整えたうえで、受注ステータス(受付・確認済み・出荷準備・出荷済みなど)を一元的に管理します。注文の入り口が違っても、担当者は一つの画面で進捗を追える状態が理想です。手作業での取り込みが残ると、更新の遅れや転記ミスの温床になります。

在庫の複数チャネル引当

複数チャネルで同じ商品を販売する場合、限られた在庫をどのチャネルの注文に割り当てるかという「引当」の制御が肝になります。ある注文で在庫を引き当てたら、他チャネルの販売可能数へ即座に反映させる仕組みが求められます。引当のリアルタイム性が低いと、在庫の二重販売やキャンセル対応の増加につながるでしょう。

フルフィルメント指示とWMS・配送連携

確定した注文について、どの倉庫からどう出荷するかを指示するのがフルフィルメント機能です。OMSはWMSや配送会社のシステムへ出荷情報を渡し、送り状の発行や配送状況の取得と連動させます。店舗在庫を引き当てて出荷するOMO(オンラインとオフラインの融合)型の運用に対応させるケースもあります。

決済・入金ステータスと返品・交換

クレジットカードやコード決済など、支払い方法ごとに入金の確定タイミングは異なるのが実情です。OMSは決済のステータスを受注情報にひもづけ、入金確認が取れた注文だけを出荷対象とする制御を担います。あわせて、返品・交換や、住所不備・与信エラーといった例外注文の処理フローも設計しておくと、現場の判断負荷を下げられるでしょう。定型の注文は自動処理し、例外だけを人が確認する切り分けが運用効率を左右します。

パッケージ(OMS/受注管理SaaS)とスクラッチの判断軸

多チャネル販売のイメージ

OMSの実現方法は、大きくパッケージ・SaaSの活用と、スクラッチ開発に分かれます。どちらが適するかは、業務の標準化度合いと、モールAPIへの追随をどこまで自社で抱えるかで決まってきます。

受注管理SaaSやOMSパッケージの強みは、主要モールとの連携があらかじめ用意され、モール側の仕様変更にもベンダーが追随してくれる点にあります。多くのEC事業者に共通する定型業務であれば、パッケージの標準機能でカバーできる範囲は広いでしょう。一方で、個別の引当ロジックや、既存基幹システムとの複雑な連携が必要な場合には、標準機能だけでは収まらないこともあります。

スクラッチ開発は、自社の業務フローに合わせて自由に設計できる反面、モールAPIの変更への追随を含めて、開発と保守を自前で担い続ける負担が生じます。近年は、パッケージを土台にしつつ差分だけを個別開発する折衷的な進め方も一般的です。判断の軸を整理すると次のようになります。

判断軸 パッケージ/SaaS向き スクラッチ向き
業務の標準化度合い 一般的な多チャネル受注が中心 個別の引当・出荷ルールが多い
モールAPI追随 ベンダーの標準対応に任せたい 連携仕様まで自社で制御したい
基幹連携の複雑さ 標準コネクタで足りる 既存基幹と密な連携が必要
保守体制 自社で運用要員を抱えにくい 継続的な開発体制を確保できる

OMS開発を外注する進め方と確認すべき3点

OMSの開発を外部に委託する場合、進め方はおおむね、現状の受注業務とチャネルの棚卸し、要件定義、連携先(モール・在庫・WMS・決済)の設計、開発・テスト、そして繁忙期を見据えた本稼働という流れをたどります。とりわけEC・通販の受注一元化では、次の3点を委託先とすり合わせておくと、稼働後のトラブルを抑えやすくなります。

1. 多モールのAPI変更への追随体制

モール各社は、注文・商品・在庫を扱うAPIの仕様を随時更新します。外注先が、どのモールに対応し、仕様変更が起きたときにどの範囲・どの速度で追随してくれるのかは、契約前に確認しておきたい点です。追随の責任範囲が曖昧だと、モール側の変更のたびに受注取り込みが止まるリスクを抱えることになります。

2. 在庫引当のリアルタイム性

複数チャネルで在庫を共有する以上、引当と在庫反映のタイムラグは二重販売に直結します。どの程度の頻度・遅延で在庫が同期されるのか、セール時のアクセス集中でも引当が破綻しないかを、性能要件として明文化しておくことが望ましいでしょう。バッチ処理での定期同期か、注文ごとの即時引当かで、設計の難易度は大きく変わります。

3. WMS・配送との連携範囲

出荷指示をどの形式でWMSや配送会社へ渡すか、送り状発行や配送状況の取得までを含めるかは、事前に線引きが必要です。ここで、物流の「2024年問題」も無視できません。全日本トラック協会は、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働に年960時間の上限規制が適用され、対策を講じない場合には輸送能力が2024年に14.2%、2030年には34.1%不足する可能性があると示しています*3。配送リードタイムに余裕がなくなるほど、出荷指示の正確さと効率が問われます。OMSと物流側の連携精度は、事業継続の観点からも軽視できないでしょう。

。対象チャネル数や既存システムとの連携範囲によって、必要な工数は変わってきます。現状の受注業務を棚卸ししたうえで、パッケージ活用とスクラッチの切り分けを検討することが実務的です。

まとめ:OMS開発の外注で押さえる3つの判断軸

本稿では、EC・通販の受注一元化に軸足を置き、OMS開発を外注する際の考え方を整理しました。要点は3つです。第一に、OMSは複数モール・自社EC・店舗に分散した受注を一元化し、在庫引当から出荷指示・決済確認までをつなぐ仕組みであり、在庫管理やWMS、受発注管理とは役割が異なるものの、これらと連携させて機能します。第二に、開発方式はパッケージ・SaaSとスクラッチで一長一短があり、業務の標準化度合いとモールAPI追随をどこまで自社で抱えるかが選定の分かれ目です。第三に、外注時は多モールのAPI追随体制、在庫引当のリアルタイム性、WMS・配送との連携範囲という3点を、契約前に明確にすり合わせることが欠かせません。EC市場は拡大を続けており*1、受注の分散を放置しない土台づくりが競争力に直結します。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、EC・通販事業者向けの受注管理や基幹連携の開発を、元請(プライムベンダー)として受託しています。複数モールと自社ECの受注一元化、在庫引当ロジックの設計、WMSや決済との連携まで、業務の棚卸しから一貫して支援できる体制です。既存システムを活かしながら段階的にOMSを構築したい企業様は、現状の受注業務の診断からご相談いただけます。

よくある質問

OMSと在庫管理システムは何が違うのですか。

在庫管理システムは在庫の数量や入出庫を記録する台帳の役割を担います。OMSはその在庫データを参照し、どの注文にどの在庫を割り当てるかという引当を判断したうえで、出荷指示や決済確認へつなぐ点が異なります。両者は競合ではなく、連携させて使うのが一般的です。

OMSはパッケージとスクラッチのどちらを選ぶべきですか。

業務が一般的な多チャネル受注中心で、モールAPIの追随もベンダーに任せたい場合はパッケージやSaaSが向きます。個別の引当ルールや既存基幹との密な連携が必要なら、スクラッチや折衷型が選択肢になります。標準化の度合いと自社の保守体制から判断するのが実務的です。

複数モールに出店していますが、在庫の二重販売を防げますか。

OMSで在庫を横断的に引き当て、ある注文で引き当てた分を他チャネルの販売可能数へ即座に反映できれば、二重販売のリスクを抑えられます。ポイントは引当のリアルタイム性で、同期の頻度や遅延を性能要件として明文化しておくことが大切です。

OMSの開発を外注する際、まず何を確認すべきですか。

対応する多モールのAPI変更への追随体制、在庫引当のリアルタイム性、WMSや配送との連携範囲の3点をまず確認します。あわせて、返品・交換や与信エラーなど例外注文の処理フローをどこまで設計に含めるかも、契約前にすり合わせておくとよいでしょう。

既存の基幹システムや会計システムと連携できますか。

多くのOMSは受注・在庫・出荷のデータを基幹や会計、WMSと連携させる前提で設計します。連携の範囲と方式(API・CSV・データベース連携など)を要件定義の段階で線引きしておくと、機能の重複や責任範囲の空白を防げるでしょう。既存システムの仕様調査が出発点になります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」(2025年8月公表。物販系分野のBtoC-EC市場規模15兆2,194億円、物販系EC化率9.8%)
  2. *2 出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」(買物、決済。2024年のキャッシュレス決済比率42.8%)(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd111150.html
  3. *3 出典:全日本トラック協会「知っていますか?物流の2024年問題」(2024年4月からの年960時間上限規制、対策を講じない場合の輸送能力不足の試算2024年14.2%・2030年34.1%)(https://jta.or.jp/logistics2024-lp/
  4. *4 出典:経済産業省「デジタルプラットフォーム」(特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律に基づく大規模オンラインモールの指定)


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