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2026.07.13 らしくコラム

原価管理システムの開発を外注する進め方

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)として基幹システムの開発・保守を受託

原価計算のイメージ

この記事のポイント

  • 原価管理システムの中核は、材料費・労務費・経費という原価の3要素を集計し、標準原価と実際原価の差異を可視化する仕組みです。分類は原価計算基準に基づきます。
  • 製造業は総合原価計算、建設業の工事原価や受託開発のプロジェクト原価は個別原価計算が主体となり、業種によって求める要件が変わってきます。
  • 外注時は配賦ロジックの柔軟性、既存の生産・会計システムとの連携、月次締め処理の性能を早い段階で確認しておくと、要件のズレを抑えやすくなります。

原価管理システムとは、標準原価と実際原価の差異を管理する仕組み

製造原価のイメージ

原価管理システムとは、製品やプロジェクトごとに発生した原価を集計し、あらかじめ設定した目標(標準原価)と実績(実際原価)を突き合わせて差異を管理するための業務システムです。原価計算のルールは、企業会計審議会が昭和37年11月8日に中間報告として公表した「原価計算基準」が土台になっています*1。この基準では、原価計算の目的として財務諸表の作成、価格計算、原価管理、予算の編成などが挙げられています*1

図
図:原価管理システムが担う一連の流れ(標準原価の設定→実際原価の集計→間接費の配賦→製番別集計→差異分析)

会計システムが決算のために全社の費用を集計するのに対し、原価管理システムは製品やプロジェクトという単位まで原価を掘り下げます。この粒度の違いが、両者を分ける要点です。標準原価をあらかじめ決めておき、月次で実際原価と比べれば、どの案件のどの費目でブレが出ているのかが見えてきます。

差異が見えれば、値上げ交渉や工程改善といった打ち手につなげられます。原価管理システムの導入や刷新を検討するときは、この「差異を追える粒度」をどこまで求めるかが最初の論点になるでしょう。以降の章では、システムが扱う原価の中身と、業種ごとの要件差を順に整理していきます。

原価管理システムが扱う中身——3要素・直接費/間接費・配賦

原価管理システムの要件を考えるうえで避けて通れないのが、原価の分類です。原価計算基準では、製造原価の要素を「材料費、労務費および経費」の3つに分類すると定めています*1。材料費は原材料や部品の費用、労務費は製造にかかる人件費、経費は外注加工費や減価償却費などのその他の費用を指します*1。この3要素をどう入力し、どう集計するかがシステムの土台になります。

もう一つの軸が、直接費と間接費の区分です。直接費は特定の製品や案件に紐づけられる費用で、間接費は工場全体の管理費のように複数の対象にまたがる費用を指します。間接費は特定の案件に直接ぶら下げられないため、一定の基準で各案件へ割り当てる処理が必要になります。この割り当てが「配賦」です*1

配賦の基準には、直接作業時間や機械稼働時間、材料費の比率などが使われます。どの基準を採るかで案件ごとの原価が変わるため、配賦ロジックは原価管理システムの心臓部です。業種や製品構成によって適切な配賦基準は異なり、運用のなかで見直しが入ることも珍しくありません。だからこそ、配賦ルールを柔軟に設定・変更できるかどうかが、システムを評価する重要な観点になります。

加えて、原価をいつの時点の値で捉えるかという論点もあります。標準原価は科学的・統計的な調査に基づいてあらかじめ設定した目標値で、実際原価は実績として発生した値です*1。予定価格や見積りと実績を対比できる設計にしておくと、見積精度の検証にもつながっていきます。

個別原価計算と総合原価計算——製番別かプロセス別か

個別原価計算——製造指図書ごとに原価を積み上げる方式

実際原価の集計方法は、大きく個別原価計算と総合原価計算に分かれます。個別原価計算は、種類を異にする製品を個別的に生産する形態に適用される方式です*1。製造指図書(製番)ごとに材料費・労務費・経費を集計し、案件単位で原価を確定させます。受注生産の機械製造、建設工事、システムの受託開発などが典型例です。

この方式では、案件ごとに原価が積み上がるため、製番別・プロジェクト別の採算を把握しやすくなります。一方で、案件をまたぐ間接費をどう配賦するか、仕掛かり中の案件をどう評価するかといった論点が生じるのも特徴です。原価管理システムには、製番をキーにした集計軸と、期をまたぐ仕掛品の管理が求められます。

総合原価計算——期間の製造費用を生産量で割る方式

総合原価計算は、同種製品を反復連続的に生産する形態に適用される方式です*1。一定期間に発生した製造費用を、その期間の生産量で割って製品1単位あたりの原価を求めます。食品や化学品のように、標準化した製品を大量に生産する現場で用いられます。

総合原価計算では、期末に仕掛品が残る場合の完成品と仕掛品への費用配分(進捗度に応じた按分)が計算の焦点です。製造工程が複数に分かれる場合は、工程別に原価を集計する設計も検討します。個別原価計算とは集計の考え方そのものが違うため、両方を扱う企業では、システムがどちらの方式に対応しているかを最初に確認しておく必要があります。

生産管理・会計システム・プロジェクト管理との違いと連携

原価管理システムは単独で完結するものではなく、隣接するシステムとデータをやり取りしながら動きます。役割の違いを整理すると、要件定義の解像度が上がっていきます。

システム 主な役割 原価管理との関係
会計システム(財務会計) 決算書の作成、仕訳・総勘定元帳の管理 全社の費用を科目別に集計。案件単位の内訳までは持たない
生産管理システム 生産計画、在庫・工程・資材の管理 材料の使用量や作業実績など、原価計算の入力データを供給する
プロジェクト管理システム タスク・工数・進捗の管理 工数実績が労務費の源泉。受託開発では特に連携が重要になる
原価管理システム 製品・案件別の原価集計、標準と実績の差異分析 上記から実績を受け取り、配賦して案件別の採算を可視化する

会計システムが「いくら使ったか」を科目別に押さえるのに対し、原価管理システムは「どの案件でいくら使ったか」を追います。財務会計の数字と原価の数字は、締めのタイミングや集計軸が異なるため、そのままでは一致しないことがあります。両者をどう突合させるかは、設計時に決めておきたい論点です。

生産管理システムやプロジェクト管理システムは、原価計算の入力データの供給元になります。材料の払い出し実績や作業工数がここで発生するため、これらと原価管理システムがどう連携するかで、入力の手間とデータの鮮度が変わってきます。既存システムがある場合は、その連携方式を外注の要件に含めておくとよいでしょう。

業種で変わる要件——製造業・建設業(工事原価)・受託開発

コスト分析のイメージ

同じ原価管理システムでも、業種によって求める中身は大きく異なります。ここでは代表的な3業種の要件差を整理します。

製造業——総合原価計算と標準原価による差異管理

量産型の製造業では、総合原価計算をベースに、標準原価との差異を管理する運用が中心になります。材料費差異や作業時間差異を費目ごとに分解し、どの工程でコストがブレたかを追う仕組みが要ります*1。多品種少量生産の現場では、製番別の個別原価計算を併用することもあり、両方式に対応できる柔軟性が問われます。BOM(部品表)や工程データを持つ生産管理システムとの連携も欠かせません。

建設業——工事原価を工事番号ごとに管理する

建設業では、工事番号(工番)ごとに材料費・労務費・外注費・経費を集計する個別原価計算が基本です。工期が複数年度にまたがることも多く、期をまたぐ工事の収益と原価の対応づけが論点になります。収益認識に関する会計基準では、一定の期間にわたり充足される履行義務について、進捗度に応じて収益を認識する考え方が示されています*2。法人税の取り扱いでも、進捗度に応じた収益計上が整理されています*3。工事の進捗をどう測り、原価とどう対応させるかがシステム要件に反映されます。

受託開発——プロジェクト原価と工数の紐づけ

システムの受託開発では、プロジェクト単位の個別原価計算になり、労務費の比重が高いという特徴があります。原価の中心はエンジニアの工数であり、勤怠・工数管理のデータをいかに正確に取り込めるかが精度を左右します。建設業と同様に、長期のプロジェクトでは進捗度に応じた収益と原価の対応が課題になります*2。見積り時の予定工数と実績工数の差を追える設計にしておくと、次の見積りの精度向上にもつながっていくでしょう。

パッケージかスクラッチか——原価管理システム開発の判断軸

原価管理システムをどう手当てするかは、パッケージ(既製品)の導入と、スクラッチ(個別)開発の二択に整理できます。それぞれに向き不向きがあり、自社の原価計算の複雑さと照らして選ぶことになります。

パッケージは導入期間が短く、初期費用を抑えやすい点が利点です。業種別のテンプレートを備えた製品も多く、標準的な原価計算であれば十分に対応できます。一方で、自社固有の配賦ルールや特殊な締め処理が必要な場合は、パッケージの制約に業務を合わせる調整が生じます。カスタマイズで対応する場合、その範囲と費用を事前に見極めておくことが肝心です。

スクラッチ開発は、自社の原価計算をそのままシステムに落とし込める自由度が持ち味です。複雑な配賦や、既存システムとの密な連携が求められる場合に向いています。反面、開発期間と費用がかさみやすく、要件定義の巧拙が成否を分けます。パッケージをベースに不足部分だけを追加開発する折衷案も、現実的な選択肢の一つです。

判断の分かれ目は、自社の原価計算がどれだけ標準から外れているかにあります。標準的な計算で足りるならパッケージ、独自ルールが多いならスクラッチや折衷、という切り分けが一つの目安になるでしょう。どちらを選ぶにせよ、要件を明文化してから外注先に相談する順序を守りたいところです。

外注先の選定と発注時に確認したい3つの点

原価管理システムの開発を外注する際は、価格や納期だけでなく、原価計算の実務を理解した相手かどうかを見極めることが重要です。とりわけ次の3点は、契約前にすり合わせておきたい観点です。

第一に、配賦ロジックの柔軟性です。間接費の配賦基準は業種や製品構成で変わり、運用のなかで見直しも発生します。配賦基準を画面から設定・変更できるのか、それとも改修が必要になるのかは、要確認のポイントです。ここが硬直的だと、業務が変わるたびに追加費用が積み上がりかねません。

第二に、既存の生産管理・会計システムとの連携です。原価の入力データは、多くが他システムから流れてきます。連携の方式(API連携かファイル連携か)、データの受け渡し頻度、項目のマッピングをどこまで担ってもらえるのかは、発注範囲として明確にすべき点です。既存システムの仕様書を早い段階で共有できると、見積りの精度も上がっていきます。

第三に、月次締め処理の性能です。原価管理は月次の締めで大量のデータを一括処理するため、締め日にバッチが時間内に終わるかどうかが運用に直結します。想定するデータ量での処理時間を、要件として事前に確認しておくとよいでしょう。案件数が増えたときの拡張性もあわせて質問しておくと、将来の負荷にも備えられます。

まとめ:原価管理システムの開発外注で押さえる判断軸

本稿では、原価管理システムの中身と、開発を外注する際の判断軸を、原価計算基準などの公的情報をもとに整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、原価管理システムの核は、材料費・労務費・経費の3要素を集計し、間接費を配賦したうえで、標準原価と実際原価の差異を可視化することにあります*1。第二に、集計方式は個別原価計算と総合原価計算に分かれ、製造業・建設業・受託開発という業種によって求める要件が変わってきます*1。長期の工事やプロジェクトでは、進捗度に応じた収益と原価の対応も論点になります*2。第三に、外注時は配賦ロジックの柔軟性、既存システムとの連携、月次締め処理の性能という3点を、契約前に確認しておくことが実務的です。自社の原価計算を明文化したうえで、パッケージとスクラッチの切り分けを検討していくとよいでしょう。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、基幹システムの開発・保守を元請(プライムベンダー)として受託しています。原価管理システムについても、業務要件の整理から配賦ロジックの設計、既存の生産・会計システムとの連携、月次締めを見据えた性能検証まで、一貫して対応する体制を整えています。パッケージとスクラッチの切り分けから迷っている企業様は、現状の業務フローの整理からご相談いただけます。

よくある質問

会計システムがあれば、原価管理システムは別に必要ないのでは。

会計システムは全社の費用を科目別に集計しますが、案件や製品単位の内訳までは持たないのが一般的です。どの案件でいくらの原価がかかったかを追い、標準原価との差異を分析するには、粒度の細かい原価管理の仕組みが別途要ります。原価計算基準でも、原価管理は原価計算の目的の一つとして位置づけられています*1

個別原価計算と総合原価計算は、どちらを選べばよいのですか。

生産形態で決まります。受注生産のように種類の異なる製品を個別に作る場合は個別原価計算、同種製品を反復連続で大量生産する場合は総合原価計算が原則です*1。多品種少量生産などで両方が混在する企業もあり、その場合はシステムが両方式に対応できるかを確認します。

パッケージ製品とスクラッチ開発では、どちらが向いていますか。

自社の原価計算が標準的なルールで足りるならパッケージ、自社固有の配賦ルールや既存システムとの密な連携が必要ならスクラッチや折衷案が向きます。判断の起点は、自社の原価計算がどれだけ標準から外れているかの見極めです。要件を明文化してから外注先に相談する順序をおすすめします。

建設業や受託開発で、長期案件の原価はどう扱うのですか。

工期やプロジェクトが期をまたぐ場合、進捗度に応じて収益と原価を対応させる考え方があります。収益認識に関する会計基準では、一定の期間にわたり充足される履行義務について進捗度に応じた収益認識が示されており*2、法人税の取り扱いでも整理されています*3。工事番号やプロジェクト単位で進捗と原価を追える設計が求められます。

開発を外注するとき、最初に確認すべきことは何ですか。

配賦ロジックを柔軟に設定・変更できるか、既存の生産・会計システムとどう連携するか、月次締めが想定データ量で時間内に終わるか、の3点をまず確認します。あわせて、原価計算の実務を理解した相手かどうかも見極めたい点です。自社の要件を整理した資料を用意してから相談すると、見積りの精度が上がります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:企業会計審議会「原価計算基準」(大蔵省企業会計審議会中間報告、昭和37年11月8日)(企業会計基準委員会 会計基準検索システム)(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=156
  2. *2 出典:企業会計基準委員会「企業会計基準第29号『収益認識に関する会計基準』等の公表」(2018年3月30日)(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards/y2018/2018-0330.html
  3. *3 出典:国税庁「『収益認識に関する会計基準』への対応について」(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2018/02.htm


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