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2026.07.13 らしくコラム

MES(製造実行システム)開発の外注の進め方

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム開発・保守運用を受託

工場自動化のイメージ

この記事のポイント

  • MES(製造実行システム)は、国際標準ISA-95(IEC 62264)のレベル3に位置づけられ、製造現場の作業指示と実績収集を担います。
  • 計画を扱う生産管理・ERPと、実行と実績を扱うMESは役割が異なり、両者の連携設計が導入の要点になります。
  • 多様な設備からの実績収集、既存の生産・ERPとの連携、現場のリアルタイム性が、外注先を見極める確認点です。

MES(製造実行システム)とは——製造現場の実行と実績収集を担うISA-95レベル3

製造ラインのイメージ

MES(製造実行システム。Manufacturing Execution System)とは、工場の製造現場で「何を・どの順で・どう作るか」という作業指示を出し、その実行結果である実績を設備や作業者から収集する仕組みです。製造業の情報システムを階層化した国際標準ISA-95(ANSI/ISA-95、国際規格ではIEC 62264)では、MESはレベル3に位置づけられています*1*2。レベル3は「希望する最終製品を生産するためのワークフローのアクティビティを定義する」層であり、生産運用・保守・品質・在庫といった製造オペレーションを管理する役割を担います*1

図
図:ISA-95の階層モデルとMESの位置づけ(レベル3=製造実行)。各レベルの定義はISA-95の記述に基づく*1

言い換えると、MESはERPなど上位の計画層(レベル4)と、PLCやSCADAといった制御層(レベル2)の橋渡しをする実行層です*1。上位からは製造すべき品目や数量、納期の情報を受け取り、現場では実際の生産進捗や品質、設備の稼働状況を実績として吸い上げます。この「計画を現場の実行につなぎ、現場の実績を上位へ返す」双方向の流れが、MESの本質的な役割といえます。

ISA-95を発行するISA(国際計測制御学会)は、この標準を企業システムと製造制御システムを統合するための枠組みと位置づけ、特にレベル3(製造オペレーション管理、MESを含む)とレベル4(事業計画・ロジスティクス)の境界を扱うと説明しています*2。工場のデジタル化を検討する際、まず自社のどの活動がどのレベルに当たるのかを整理しておくと、MESに任せる範囲を見極めやすくなります。

生産管理システムとの違い——「計画」と「実行・実績」の分担

MESの検討で最初につまずきやすいのが、生産管理システムとの違いです。両者は扱う対象こそ製造ですが、時間軸と担う工程が分かれています。ざっくり言えば、生産管理システムは「いつ・何を・どれだけ作るか」を決める計画寄りの仕組みであり、MESは「決まった計画をどう実行し、結果がどうだったか」を扱う実行・実績寄りの仕組みです。

生産管理システムは、受注や需要予測をもとに生産計画を立て、部品表(BOM)や所要量計算(MRP)を通じて必要な材料や工程を割り付けます。ここで出力されるのは、あくまで計画上の指示です。一方でMESは、その計画を現場の作業指示(製造指図)に落とし込み、実際に流れたロット、使われた設備、かかった時間、発生した不良といった生の実績を収集します。ISA-95の階層で見ると、両者はいずれもレベル3〜レベル4の活動に関わりますが、MESは特に現場に近い実行と実績収集に軸足を置いている点が特徴です*1

この違いは、リアルタイム性の要求にも顕著です。生産計画は日次や週次で更新されることが多いのに対し、MESが扱う実績収集や進捗の把握は、秒単位・分単位で現場の状態を反映する必要があります。設備が止まった、想定より歩留まりが落ちた、といった変化を即座に捉えられなければ、実行層としての価値は薄れてしまいます。したがってMESの開発では、計画系のシステムとは異なる非機能要件——現場端末の応答速度や設備との通信頻度——が重視されるのです。

MESの中核機能——作業指示・実績収集・進捗・品質・トレーサビリティ

MESが備えるべき機能の全体像は、業界団体MESAインターナショナル(Manufacturing Enterprise Solutions Association)が1990年代後半に整理した機能モデル(通称MESA-11)が広く参照されています*3。MESA-11は、MESの機能を11の領域に分類した参照モデルです*4。ここでは製造現場の実行と実績収集という観点から、特に中核となる機能を取り上げます。

作業指示・製造指図とディスパッチング

上位の生産計画を、現場が実行できる粒度の作業指示(製造指図)に展開し、どの製造単位をどの設備・ラインに割り当てるかを制御する機能です。MESA-11では「Operations/Detail Scheduling(詳細スケジューリング)」や「Dispatching Production Units(製造単位のディスパッチング)」として位置づけられています*4。段取り替えや優先順位の変更に応じて、現場への指示を組み替える役割を担います。

実績収集(設備・作業者)とデータ収集

MESの心臓部にあたるのが、製造の実績をリアルタイムに集める機能です。MESA-11の「Data Collection/Acquisition(データ収集)」に相当し、設備からの信号や作業者の入力を通じて、生産数・良品数・不良数・作業時間などを取得します*4。設備からの自動収集と、現場端末(POP、Point of Production)を介した作業者の手入力を組み合わせる構成が一般的です。この収集の網羅性と正確さが、後段の分析や改善の土台になります。

進捗・仕掛管理と設備稼働の可視化

収集した実績をもとに、どの工程がどこまで進んだか、仕掛品(WIP)がどこにどれだけ滞留しているかを把握する機能です。あわせて設備の稼働状況を監視し、停止や段取り、チョコ停といった状態を記録します。MESA-11では「Resource Allocation & Status(資源の割付と状態)」や「Performance Analysis(実績分析)」が近い領域にあたります*4。稼働率や設備総合効率(OEE)といった指標の算出も、この機能が集めたデータが起点になります。

品質データ収集とトレーサビリティ

検査値や測定値を製造の流れのなかで記録するのが品質データ収集(MESA-11の「Quality Management」)です*4。さらに、どのロットやシリアル番号の製品に、どの材料・どの設備・どの作業者が関わったかをひも付けて追跡できるようにするのがトレーサビリティ(MESA-11の「Product Tracking & Genealogy」)です*4。不具合が発生した際に、影響範囲を絞り込んで回収や原因究明を進めるうえで欠かせない機能といえます。

電子作業標準・作業手順の提示(ペーパーレス)

紙の作業手順書や図面を電子化し、現場端末に作業標準を提示する機能も、実行支援として重要です。MESA-11の「Document Control(文書管理)」に対応します*4。最新版の手順を漏れなく現場へ届け、古い版の混在を防ぐことで、作業品質のばらつきを抑えます。承認済みの手順に沿った作業を促す運用は、後述する品質記録とも連動します。

ERP・品質管理・設備保全・IoT基盤との階層と連携

MESは単独で完結するシステムではありません。ISA-95の階層に沿って、上位・下位・周辺のシステムと連携してはじめて価値を発揮します*1。ここでMES単体の守備範囲を欲張りすぎると、開発が肥大化し、既存システムとの機能重複を招きがちです。

上位のレベル4では、ERP・基幹システムと連携します。ERPから品目・BOM・生産オーダー・納期を受け取り、MESからは生産実績・消費した材料・原価計算のもとになる実績データを返します。ISA-95が主眼に置くのも、このレベル3とレベル4の境界のインターフェースです*2。どの情報を、どちらのシステムが正(マスター)として持つのかを最初に決めておかないと、二重入力やデータ不整合の温床になります。

下位のレベル2では、SCADAやPLC、DCSといった制御システムと接続し、設備からの信号を実績として取り込みます*1。近年は、この現場データをIoT基盤やデータ収集基盤に集約し、MESと役割分担する構成も増えています。周辺システムとの関係では、品質管理システム(QMS)や設備保全管理システム(CMMS/EAM)との切り分けが論点になります。MESA-11には品質管理や保全管理も含まれますが、実務ではこれらを専用システムに委ね、MESとはデータ連携する構成が選ばれることも少なくありません*4

連携範囲の設計は、MES開発の成否を左右する上流工程です。自社の既存システムを棚卸しし、MESに集約する機能と、既存システムに残して連携する機能を線引きすること。この整理が曖昧なまま開発に着手すると、後工程での手戻りが避けられません。

スクラッチMESとパッケージMES——開発方式の判断軸

製造監視のイメージ

MESの開発方式は、大きくスクラッチ開発とパッケージ導入の二つに分かれます。どちらが適するかは、現場の作業や製造プロセスがどれだけ標準的か、あるいは自社固有かで判断します。

パッケージMESは、MESA-11が示すような一般的な機能をあらかじめ備えており、導入期間を短縮しやすい選択肢です*4。作業や実績収集の流れが業界標準に近い場合や、まず標準機能で早く効果を出したい場合に向いています。一方で、パッケージの想定と自社の運用が食い違う部分は、設定(パラメータ)での吸収に限界があり、カスタマイズや業務側の見直しが必要になります。

スクラッチMESは、自社固有の製造プロセスや、特殊な設備・作業手順に合わせて作り込める点が強みです。多品種少量生産や、特有の工程・検査を持つ現場では、パッケージに合わせるより自社要件に沿って設計したほうが定着しやすい場合があります。ただし開発期間と費用は大きくなりやすく、要件定義の精度が品質を大きく左右します。両者の判断軸を整理すると次の通りです。

判断軸 パッケージMES スクラッチMES
適する現場 作業・実績収集が標準的な現場 固有の工程・設備・検査を持つ現場
導入までの期間 比較的短くしやすい 要件定義から作り込むため長くなりやすい
現場への適合 運用を製品に寄せる調整が要る場合がある 自社要件に沿って設計できる
設備連携の自由度 対応済みの範囲に依存 多様な設備に個別対応しやすい
主なリスク 想定外の運用が吸収しきれない 費用・期間の増大と要件定義の負荷

実際には、パッケージを基盤にしつつ設備連携や現場端末の一部をスクラッチで補うといった折衷も一般的です。いずれの方式でも、現場の作業と実績収集の流れを正確に描き出せているかが、判断の前提になります。

外注で確認すべき点と、内製との分かれ目

MES開発を外部に委託する場合、汎用的なシステム開発力だけでなく、製造現場と設備を理解した実装力が問われます。とりわけ次の3点は、外注先を見極めるうえで確認しておきたい観点です。

第一に、多様な設備からの実績収集への対応力です。工場の設備は世代もメーカーもばらばらで、信号の取り出し方も一様ではありません。PLCやSCADA経由の収集、旧式設備への外付けセンサー、作業者による現場端末入力など、現実の設備構成に合わせて実績を集めきれるかを確認します*1*4。標準的なプロトコルへの対応可否だけでなく、非対応設備をどう扱うかまで具体化できる相手が望ましいといえます。

第二に、既存の生産管理・ERPとの連携設計です。前述の通り、MESはレベル4のERPやレベル2の制御システムとつないではじめて機能します*1*2。どのデータをどちらがマスターとして持ち、どの頻度で同期するのか——このインターフェース設計を要件定義の段階で描ける外注先かどうかが分かれ目です。連携を後回しにする提案には注意したいところです。

第三に、現場のリアルタイム性への理解です。実績収集や進捗把握は秒・分単位の応答が求められる領域で、計画系システムとは非機能要件の考え方が異なる点に注意が必要です。現場端末の応答性能や、収集データの欠損時の扱いまで踏み込んで設計できるかを見極めます。あわせて、稼働後の保守運用を誰が担うのかも、契約前に確認しておく必要があります。

内製と外注の分かれ目は、これらを担う体制と工数を自社内で確保できるかにあります。既存の生産技術・情シス部門が通常業務と並行して対応する場合、設備連携の検証や現場定着に割ける時間が限られがちです。元請(プライムベンダー)として要件定義から設備連携、現場展開、保守運用までを一貫して担える相手であれば、社内の負荷を抑えながら進めやすくなります。

まとめ:MES開発の外注で押さえる3つの判断軸

本稿では、MES(製造実行システム)の位置づけと機能、外注時の確認点を、ISA-95やMESA-11といった標準情報をもとに整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、MESはISA-95のレベル3に位置づけられ、作業指示と実績収集で製造現場の実行を担う仕組みです*1。計画を扱う生産管理・ERPとは役割が異なります。第二に、中核機能は作業指示・実績収集・進捗/仕掛管理・品質データ収集・トレーサビリティ・電子作業標準であり、周辺システムとの連携範囲の設計が導入の要点になります*4。第三に、多様な設備からの実績収集、既存の生産・ERP連携、現場のリアルタイム性の3点が、外注先を見極める確認軸です。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、システム開発・保守運用を元請(プライムベンダー)として受託しています。MESの要件定義から、多様な設備からの実績収集、既存の生産管理・ERPとの連携設計、現場端末の展開、稼働後の保守運用まで、一貫して対応する体制を整えています。スクラッチとパッケージの切り分けに迷う段階からでも、現状の設備構成とシステム構成の診断を起点にご相談いただけます。

よくある質問

MESと生産管理システムは何が違うのですか。

生産管理システムは受注や需要予測から「いつ・何を・どれだけ作るか」を決める計画寄りの仕組みで、MESはその計画を現場の作業指示に落とし込み、実績を収集する実行寄りの仕組みです。ISA-95の階層でみると、MESはレベル3で製造現場の実行と実績収集に軸足を置きます*1。両者は競合するものではなく、連携させて使うのが基本です。

MESはどのシステムと連携する必要がありますか。

上位ではERP・基幹システム(ISA-95のレベル4)から品目や生産オーダーを受け取り、実績を返します。下位ではPLCやSCADAなどの制御システム(レベル2)と接続して設備データを取り込みます*1。ISA-95はとくにレベル3とレベル4のインターフェースを主眼に置いており*2、どのデータをどちらがマスターとして持つかを最初に決めることが重要です。

MESの開発はパッケージとスクラッチのどちらがよいですか。

作業や実績収集の流れが標準的であればパッケージが導入期間を短縮しやすく、固有の工程・設備・検査を持つ現場ではスクラッチが適合しやすい傾向があります。パッケージを基盤に一部をスクラッチで補う折衷も一般的です。いずれの場合も、現場の作業と実績収集の流れを正確に描けているかが判断の前提になります。

既存の古い設備からも実績を収集できますか。

設備の世代やメーカーによって信号の取り出し方は異なります。PLCやSCADA経由の自動収集に加え、旧式設備への外付けセンサーや、現場端末(POP)を介した作業者の手入力を組み合わせて収集する構成が一般的です*4。非対応設備をどう扱うかまで具体化できるかが、外注先を見極める確認点になります。

MES開発を外注する際、最初に確認すべきことは何ですか。

多様な設備からの実績収集への対応力、既存の生産管理・ERPとの連携設計、現場のリアルタイム性への理解の3点をまず確認します。加えて、要件定義から設備連携、現場展開、稼働後の保守運用までを一貫して担える体制かどうかも重要です。連携設計を後回しにする提案には注意し、契約前に検証範囲を明確にしておくとトラブルを抑えやすくなります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:シーメンス「ISA-95のフレームワークと階層」(https://www.siemens.com/ja-jp/technology/isa-95-framework-layers/
  2. *2 出典:ISA(国際計測制御学会)「ISA-95 Standard: Enterprise-Control System Integration」(https://www.isa.org/standards-and-publications/isa-standards/isa-95-standard
  3. *3 出典:MESA International「History of the MESA Models」(https://mesa.org/topics-resources/mesa-model/history-of-the-mesa-models/
  4. *4 出典:SYMESTIC「The 11 Core MES Functions Explained (MESA 11)」(https://www.symestic.com/en-us/what-is/mesa-11


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