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2026.07.13 らしくコラム

需要予測システムの開発を外注する進め方

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム開発・保守運用を受託

需要予測のイメージ

この記事のポイント

  • 需要予測システムは、過去の販売実績など時系列データと、価格・天候・イベントといった複数要因から将来需要を推計し、在庫最適化や発注の意思決定につなげる仕組みです。
  • 予測精度はMAPEなどの誤差指標で測りますが、対象商品や評価期間によって妥当な水準は変わり、単一の目標値を一律には置けません。
  • 外注では、データ整備と前処理、精度検証の設計、既存の在庫・発注システムとの連携まで含めて委託範囲を切り分けることが判断材料になります。

需要予測システムとは、時系列データと複数要因から将来需要を推計する仕組み

販売トレンドのイメージ

需要予測システムとは、過去の販売実績などの時系列データに、価格・天候・イベント・市場トレンドといった複数の要因を組み合わせ、将来の需要量を推計するための仕組みを指します。推計結果は、需給計画の立案や在庫の最適化、発注量の決定といった意思決定の土台になります。担当者の勘や経験だけに頼る方法と違い、統計モデルや機械学習を用いて再現性のある推計を出せる点が特徴です。

図
図:需要予測システムの基本的な流れ(データ収集→前処理→予測モデル→精度評価→需給計画・在庫最適化への連携)

予測の対象は、日次・週次・月次といった時間軸で並ぶ販売数量が中心になります。ここへ、値引きやキャンペーンの有無、気温、曜日、季節性、競合や市場の動きといった説明変数を加え、将来の数量を導きます*4。推計した数量がどれだけ実績に近かったかは、後述するMAPEなどの誤差指標で継続的に確かめる必要があります*1*4

ここで押さえておきたいのは、需要予測システムは「将来の数量を作り出す」役割に特化しているという点です。作られた数量を実際の在庫や生産、発注へどう渡すかは、隣接する別のシステムが担います。まずはこの役割分担を整理しておきましょう。

在庫管理・生産管理・BIとの違い——需要予測は「将来の数量」を作る側

需要予測システムは、在庫管理システムや生産管理システム、BIツールと混同されがちです。しかし担う機能は異なります。ここを曖昧にしたまま外注要件を書くと、既存システムと重複した機能を作ってしまいかねません。

在庫管理システムとの違い——予測は発注点や適正在庫のインプット

在庫管理システムは、現在の在庫数の記録、入出庫や引当、棚卸といった「今ある在庫」の管理を担います。一方の需要予測は、将来どれだけ売れるかを推計し、適正在庫や発注点を決めるためのインプットを供給する役割です。予測精度が低いと、過剰在庫や欠品による機会損失につながりやすくなります*4。両者は連携して初めて在庫最適化に寄与します。

生産管理・BI・予実管理との違い——実績を見るのか、将来を推計するのか

生産管理システムは、生産計画や工程、部品構成をもとに「どう作るか」を管理します。需要予測はその生産計画の起点となる数量を提供する立場です。またBIツールや予実管理システムは、過去から現在までの実績を可視化し、予算との差を追うことに主眼があります。将来の数量そのものを統計的・機械学習的に推計するのは需要予測システムの領分であり、両者は補完関係にあると捉えると整理しやすくなります。

ルールベースと統計モデル・機械学習——精度と説明可能性のトレードオフ

予測の手法は、大きくルールベース、統計モデル、機械学習の3系統に分けて考えると理解しやすくなります。どれか一つが常に優れているわけではなく、対象データの性質に応じて選ぶものだという点をまず押さえてください。

ルールベースと単純な手法——ベンチマークとしての価値

移動平均や、直近の実績をそのまま将来値とする素朴な方法は、実装が軽く結果を説明しやすいのが利点です。こうした単純な手法は、より高度なモデルの成果を測るための基準(ベンチマーク)として重要な意味を持ちます*2。高度な手法を導入する際は、単純な手法を上回っているかどうかを欠かさず確かめる姿勢が求められます*2

統計モデルと機械学習——取り込める要因と説明可能性の兼ね合い

統計モデルには、指数平滑法(ETS)やARIMA、季節性を分解する手法などがあります*2。これらは季節性やトレンドを構造的に扱える点が強みです。機械学習は、価格や天候といった多数の要因をまとめて取り込みやすく、複雑なパターンを捉えられる可能性があります。

ただし、モデルが複雑になるほど、なぜその数量が出たのかを人が説明しにくくなる傾向があります。予測精度と説明可能性の間には、しばしばトレードオフが生じるのです。需給計画は関係部門の合意を経て動くため、説明のしやすさが軽視できない場面もあります。精度の数値だけで手法を決めず、運用の現場で結果を説明できるかまで見て選ぶとよいでしょう。過度な精度の期待を前提にした設計は避けるべきです。

予測精度の測り方——MAPEなどの指標と検証設計、新商品・間欠需要の難しさ

需要予測システムを評価するうえで欠かせないのが、精度をどう測るかという観点です。代表的な指標がMAPE(平均絶対パーセント誤差)で、予測が実績から平均して何パーセントずれているかを表します*1*4。割合で表せるため、商品や規模が異なるデータどうしでも比較しやすい利点があります*1。ビジネスの現場で直感的に伝えやすい点も、広く使われる理由です*4

一方でMAPEには弱点もあります。実績値がゼロ、あるいはゼロに近い期間があると、値が定義できなくなったり極端に大きくなったりします*1。そのため、MAE(平均絶対誤差)やRMSE(二乗平均平方根誤差)、MASE(平均絶対スケール化誤差)といった指標もあわせて確認し、単一の指標だけに頼らない評価が望ましいとされています*1

検証設計——学習期間と評価期間を分ける

精度を正しく測るには、モデルに学習させる期間と、成果を評価する期間を分ける設計が前提になります。一度きりの予測ではなく、少なくとも1年分の各月について予測結果を評価する進め方が推奨されます*4。同じ学習条件で複数の手法を比較し、結果を総合して採用する手法を選ぶとよいでしょう*4。この検証の枠組みを外注前に決めておくことが、後のトラブルを避けるうえで効いてきます。

新商品と間欠需要——実績が乏しい対象の難しさ

予測が難しいのは、実績データが乏しい新商品や、需要が不定期にしか発生しない間欠需要の商品です。間欠需要はゼロの期間が多く、通常の手法では扱いにくいため、Croston法のような専用の手法が知られています*3。ただしCroston法による予測は偏りを持つことが指摘されており、万能ではありません*3。新商品については類似商品の実績で補うなどの工夫が要り、こうした対象をどう扱うかは外注要件で明確にしておく必要があります。

パッケージ(需要予測SaaS)とスクラッチ・内製MLの判断軸

需給計画のイメージ

需要予測システムを用意する手段は、大きくパッケージ(需要予測SaaS)の活用と、スクラッチ開発や内製での機械学習構築に分かれます。それぞれ得手不得手があるため、自社の状況に照らして選ぶ必要があります。

パッケージ(需要予測SaaS)——早く始められる反面、独自要因への対応に限界

需要予測SaaSやパッケージは、標準的な予測手法があらかじめ組み込まれており、比較的短期間で使い始められます。運用や保守もベンダー側に任せやすいのが利点です。半面、自社固有の説明変数や業務ロジックを細かく反映させたい場合には、対応の幅に限界が出ることもあります。

スクラッチ・内製ML——自社データに最適化できる反面、体制が要る

スクラッチ開発や内製の機械学習は、自社のデータや独自要因に合わせて予測ロジックを作り込めます。その代わり、データ基盤の整備やモデルの再学習を回す運用体制、保守を担う人材が欠かせません。判断軸としては、予測対象の性質(季節性の強さ、新商品比率、間欠性の有無)、既存システムとの連携の深さ、社内に確保できるデータ人材、そして求める精度と説明責任の重さを並べて比較するとよいでしょう。どちらか一方が常に正解というわけではありません。

外注で確認すべき点——データ整備・精度検証・在庫連携・S&OP

需要予測システムの開発を外注する際は、一般的なシステム開発とは異なる確認点があります。予測という性質上、データと検証の設計が成否を大きく左右するためです。以下の観点を委託先とすり合わせておきましょう。

第一に、データ整備と前処理の範囲です。実績データの粒度、欠測や外れ値の扱い、商品マスタの整合といった前処理は、予測精度を左右する土台になります。ここを誰が担うのかを曖昧にしないことが大切です。第二に、精度検証の設計です。評価指標(MAPEなど)、評価期間、単純な手法をベンチマークとした比較の進め方を、契約前に合意しておきます*1*2*4

第三に、既存の在庫・発注システムとの連携仕様です。予測した数量を適正在庫や発注点、生産計画へどう引き渡すかを具体化しておかないと、予測が現場で使われないまま終わりかねません。第四に、予測のヒューマン調整とS&OPへの接続です。S&OPは、統計的な需要予測に営業や市場の情報を加え、部門横断で合意(コンセンサス)を形成する経営プロセスであり、需要予測はその土台となります*5。システムが調整の履歴を残せるか、合意形成の場に数値を提供できるかを確かめておくとよいでしょう。

加えて、運用と再学習の体制も確認します。市場が変わればモデルの精度は落ちていくため、再学習の頻度や監視の仕組みが要ります。最後に委託範囲です。要件定義からデータ基盤、モデル構築、既存システム連携、運用までのどこまでを一括で任せられるかは、外注先を選ぶうえで大きな分かれ目になります。

まとめ:需要予測システムの開発を外注する3つの判断軸

本稿では需要予測システムの仕組みと、開発を外注する際の進め方を整理しました。要点は次の3つです。第一に、需要予測は時系列データと複数要因から将来の数量を推計する仕組みであり、在庫管理や生産管理、BIとは役割が異なります。手法はルールベース・統計モデル・機械学習から、対象データの性質に応じて選びます*2。第二に、精度はMAPEなどの指標で測りますが、ゼロ近傍での不安定さなど弱点もあるため複数の指標と適切な検証設計で管理します*1*4。第三に、外注ではデータ整備・前処理、精度検証の設計、在庫や発注との連携、S&OPへの接続、そして委託範囲を早い段階で切り分けることが判断材料になります*5

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、元請(プライムベンダー)としてシステム開発から保守運用までを一貫して受託しています。需要予測システムでは、実績データの整備・前処理から予測手法の選定、MAPEなどの指標を用いた精度検証の設計、既存の在庫・発注システムとの連携まで、要件定義から運用まで通して対応する体制を整えています。予測対象の商品特性や既存システムの構成によって必要な工数は変わるため、現状の整理からご相談いただけます。

よくある質問

需要予測システムと在庫管理システムはどう違いますか。

在庫管理システムは、現在の在庫数の記録や入出庫、棚卸といった「今ある在庫」の管理を担います。これに対し需要予測システムは、将来どれだけ売れるかを推計し、適正在庫や発注点を決めるインプットを供給する役割です。予測精度が低いと過剰在庫や欠品につながるため、両者は連携させて初めて在庫最適化に寄与します*4

予測精度はどのくらいを目安にすればよいですか。

MAPE(平均絶対パーセント誤差)などの指標で測るのが一般的ですが、妥当な水準は業種や商品特性、需要の変動の大きさによって変わります。そのため一律の目標値を置くのは適切ではありません。単純な手法をベンチマークとして比較し、それを上回る精度が出ているかで判断する進め方が現実的です*1*2

新商品や需要が不定期な商品でも予測できますか。

実績データが乏しい新商品や、需要が不定期にしか発生しない間欠需要は、通常の手法では扱いにくい対象です。間欠需要にはCroston法などの専用手法が知られていますが、偏りを持つことも指摘されており万能ではありません*3。新商品は類似商品の実績で補うなどの工夫が要るため、こうした対象の扱いを外注要件で明確にしておくことをおすすめします。

パッケージ(需要予測SaaS)と内製・スクラッチのどちらがよいですか。

パッケージやSaaSは標準的な手法が組み込まれ、短期間で使い始めやすい反面、自社固有の説明変数や業務ロジックへの対応に限界が出ることがあります。スクラッチや内製の機械学習は自社データに最適化できますが、データ基盤や再学習を回す運用体制が要ります。予測対象の性質や既存システム連携、社内人材を並べて比較して選ぶとよいでしょう。

需要予測システムの開発を外注する際、まず何を確認すべきですか。

データ整備と前処理の担当範囲、精度検証の設計(評価指標・評価期間・ベンチマーク比較)、既存の在庫・発注システムとの連携仕様の3点をまず確認します*1*4。あわせて、統計予測に市場情報を加えて合意を形成するS&OPへどう接続するか、運用と再学習を誰が担うかもすり合わせておくと、導入後に予測が使われないまま終わる事態を避けやすくなります*5

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:Rob J Hyndman & George Athanasopoulos「Forecasting: Principles and Practice (3rd ed)」5.8 Evaluating point forecast accuracy(https://otexts.com/fpp3/accuracy.html
  2. *2 出典:Rob J Hyndman & George Athanasopoulos「Forecasting: Principles and Practice (3rd ed)」5.2 Some simple forecasting methods(https://otexts.com/fpp3/simple-methods.html
  3. *3 出典:Rob J Hyndman & George Athanasopoulos「Forecasting: Principles and Practice (3rd ed)」13.3 Forecasting counts / Croston’s method(https://otexts.com/fpp3/counts.html
  4. *4 出典:OpenSCM(Zionex)「その方法合ってる?需要予測の精度の測り方と指標」(https://zionex.co.jp/media/openscm/category/demand/forecast_accuracy/
  5. *5 出典:AI CROSS「S&OPとは?基礎知識、SCMとの違いや導入成功のポイントを解説」(Deep Predictorブログ)(https://aicross.co.jp/deep-predictor/blog/blog-767/


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