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2026.07.16 らしくコラム

記録管理システムの要件|文書の保存年限と証拠性を担保

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)として業務システムの開発・保守を受託

記録管理のイメージ

この記事のポイント

  • 記録管理(レコードマネジメント)は、記録の作成・受領から維持・使用・処分までを体系的に統制する管理領域で、国際標準ISO 15489-1(JIS X 0902-1)が概念と原理を定めています。文書の共有・検索を主目的とする文書管理システム(DMS)とは、保存年限と廃棄の統制に特化する点が異なります。
  • 保存年限は法令ごとに定められています。会計帳簿は帳簿の閉鎖の時から10年、計算書類は作成した時から10年(会社法第432条第2項・第435条第4項)、法人税法上の帳簿書類は原則7年(欠損金が生じた事業年度は10年)です。
  • 記録管理システムの核は、(1)保存年限(リテンション)の設定と管理、(2)証拠性・真正性の担保、(3)保存期間満了後の廃棄(ディスポジション)の統制、(4)法定保存文書の分類とアクセス統制の4要素にあります。

保存年限の属人管理と証拠性の欠落——記録をめぐる法人の課題

文書保管のイメージ

企業は、会計帳簿や契約書、稟議書、各種申請書など、法令が保存を求める文書を数多く抱えています。これらの多くは「いつまで保存し、いつ廃棄してよいか」が法令で定められているものです。ところが実務では、保存年限の管理が担当者の記憶や個別のExcel台帳に依存し、部門ごとにばらついているケースが少なくありません。担当者の異動や退職を機に、保存年限の根拠がたどれなくなる事態も起こりがちです。

図
図:記録管理が対象とするライフサイクル。作成・取得→分類→保存→評価→廃棄を通して年限と証拠性を統制する

管理が緩むと、二つの方向にリスクが生じます。一つは、保存すべき記録を年限より早く廃棄してしまい、税務調査や訴訟の場面で提出できないという事態です。もう一つは、廃棄してよい記録を延々と保持し続け、保管コストや情報漏えいの面で負担が膨らむという問題です。前者は法令違反や証拠の欠落に、後者は不要データの滞留につながります。

さらに、記録が「本物であること」を示せるかどうかも問われます。後から内容を差し替えられる状態では、記録は証拠としての価値を持ちにくくなります。こうした課題に体系立てて向き合う枠組みが記録管理(レコードマネジメント)であり、それをシステムとして支えるのが記録管理システムです。本稿では、記録管理の考え方と、それを担うシステムの機能要素、そして開発を外部に委託する際の確認点を、公的情報に基づいて整理します。

記録管理(レコードマネジメント)とは——ISO 15489が定める管理領域

記録管理(レコードマネジメント)は、組織が業務のなかで作成・受領した記録を、規定に基づいて体系的に管理する取り組みを指します。その国際標準がISO 15489-1で、日本ではJIS X 0902-1として規格化されています。JIS X 0902-1は記録管理を「記録の作成、受領、維持、使用及び処分の効率的で体系的な統制に責任をもつ管理領域」と定義し、記録形式で業務活動の証拠及び情報を捕捉・維持する一連の作業を含むと位置づけています*2

ここで鍵になるのが「記録」という言葉の意味です。同規格は記録を「法的な義務の遂行において又は業務の処理において、組織又は個人によって証拠及び資産として作成、受領及び維持された情報」と定義しています*2。単なるファイルやデータではなく、証拠となり資産となる情報が記録である、というとらえ方です。国立公文書館の解説でも、2016年に改定された第2版で、記録を現在および将来の活動を支える「資産」として認識する点が第1版との違いとして挙げられています*1

記録が証拠として信頼されるためには、備えるべき特性があります。JIS X 0902-1は、正式な記録の特性として次の四つを挙げています*2

特性 意味(JIS X 0902-1)
真正性 記録が「何々であると主張しているもの」であり、正当な作成者により、主張される日時で作成されたと証明できること*2
信頼性 記録の内容が、それらが証言する処理・活動・事実の十分かつ正確な表現として信頼できること*2
完全性 完全であり、かつ、変更されていないものであること*2
利用性 所在が分かり、検索でき、提示され、読み取ることができること*2

また第2版では「評価(アプレイザル)」の概念が国際標準に組み込まれました。これは、どの記録が必要か、どの期間保存するかを決定するプロセスとされています*1。保存年限の設定と、期間満了後の扱いを判断する営みが、記録管理の中核に位置づけられているわけです。記録管理システムは、こうした標準が示す原理を、日々の業務のなかで運用できる形に落とし込む仕組みだといえます。

文書管理(DMS)・エンタープライズ検索との違い——保存年限と廃棄の統制に特化

「文書をシステムで管理する」という言い方は、文書管理システム(DMS)やエンタープライズ検索と重なって聞こえます。ただし記録管理システムは、これらと目的の重心が異なる仕組みです。ここを取り違えると、必要な統制を欠いたまま「記録を管理しているつもり」になりかねないため、違いを明確にしておきましょう。

文書管理システムは、社内の文書やデータを保管・共有・検索し、業務の効率を高めることに主眼を置きます。エンタープライズ検索は、社内に散在する情報を横断的に探し出す仕組みです。いずれも「必要な文書へ素早くたどり着く」ことに価値があります。一方の記録管理は、記録の作成から処分までのライフサイクルを統制し、保存年限を守り、証拠性を維持し、満了後は統制のもとで廃棄することに重心を置きます*2。つまり、共有・検索が主目的の文書管理に対し、記録管理は保存年限と廃棄の統制に特化する領域です。

観点 文書管理(DMS)・検索 記録管理システム
主な目的 文書の保管・共有・検索による業務効率化 記録のライフサイクル統制と保存年限・証拠性の維持*2
保存期間の扱い 任意に設定・随時更新 法令等に基づく保存年限を分類ごとに管理*3*4
改ざん・証拠性 版管理が中心で、必須要件ではない場合が多い 真正性・完全性の担保が要件(改ざん検知・監査証跡)*2
満了後の処理 明確なルールがない場合が多い 廃棄(ディスポジション)を統制し記録に残す*1
重視される特性 検索性・共有のしやすさ 真正性・信頼性・完全性・利用性*2

もちろん両者は排他的なものではありません。既存の文書管理基盤の上に、保存年限と廃棄の統制、証拠性の担保という記録管理の機能を重ねる構成も考えられます。大切なのは、共有・検索の延長線上でとらえず、記録管理に固有の要件をどう満たすかを設計の出発点に据えることです。

記録管理システムの機能要素——保存年限・証拠性・廃棄・分類

保存年限のイメージ

記録管理システムに求められる機能は、大きく四つの要素に整理できます。すなわち、(1)保存年限(リテンション)の設定と管理、(2)証拠性・真正性の担保、(3)保存期間満了後の廃棄(ディスポジション)の統制、(4)法定保存文書の分類とアクセス統制です。順に見ていきましょう。

保存年限(リテンション)の設定と管理

保存年限は、記録の種類ごとに法令等で定められています。会社法では、会計帳簿は帳簿の閉鎖の時から10年間(会社法第432条第2項)、計算書類は作成した時から10年間(会社法第435条第4項)の保存が求められます*3。法人税法上は、帳簿と取引に関して作成・受領した書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存する必要があり、青色申告で欠損金が生じた事業年度などは10年間の保存が求められます*4

同じ「帳簿」でも、根拠となる法令によって起算点や年数が変わる点に注意したいところです。記録管理システムには、記録の分類ごとに保存年限のルールを定義し、起算日から満了日を自動的に算出して管理する機能が求められます。年限を担当者の記憶や個別台帳に委ねる運用から、システムに基づく運用へ移すことが出発点になります。

証拠性・真正性の担保

記録が証拠として通用するには、内容が作成後に改変されていないことを示せる仕組みが要ります。ISO 15489-1(JIS X 0902-1)が挙げる真正性・完全性は、まさにこの点に関わる特性です*2。電子データの分野では、電子帳簿保存法が真実性の確保のための措置として、タイムスタンプの付与、訂正・削除の履歴が残る(または訂正・削除ができない)システムの利用、事務処理規程の備え付けといった方法を示しています*5

システムの機能に置き換えると、いつ誰がどの記録に対して何をしたかを記録する監査証跡(操作ログ)、内容の改ざんを検知する仕組み、更新履歴の保持などが該当します。これらを備えておくと、記録が主張どおりのものであること、途中で変更されていないことを示しやすくなるでしょう。証拠性は後から付け足しにくい特性であるため、設計の初期段階から織り込むことが望まれます。

保存期間満了後の廃棄(ディスポジション)の統制

記録管理は「保存し続けること」だけを目的にするものではありません。ISO 15489-1の第2版が組み込んだ評価(アプレイザル)は、どの記録をどの期間保存するかを決めるプロセスであり、そこには保存期間が満了した記録の扱いも含まれます*1。保存年限を過ぎた記録を統制なく残し続けると、保管コストや情報漏えいの面で負担が増します。逆に無秩序な削除は、必要な記録の喪失につながります。

そのため記録管理システムには、満了した記録を抽出し、廃棄の可否を承認する手続きを経たうえで処分し、その処分の事実を記録として残す機能が求められます。訴訟や調査に備えて特定の記録を一時的に廃棄対象から外す運用(保留)も、実務では想定しておきたい観点です。廃棄を「気づいた人が手作業で消す」状態から、統制されたプロセスへ移すことが要になります。

法定保存文書の分類とアクセス統制

保存年限も証拠性も廃棄も、記録が適切に分類されていることが前提になります。JIS X 0902-1が記録の特性として利用性(所在が分かり、検索でき、読み取れること)を挙げているとおり、分類は記録を後から漏れなくたどるための基盤です*2。記録の種類、根拠法令、保存年限、管轄部門といった属性(メタデータ)を記録に紐付けて管理します。

あわせて、記録の内容に応じたアクセス統制も欠かせません。人事・法務・経理などの機微な記録は、閲覧・編集できる範囲を役割に応じて制限したいところです。分類とアクセス統制は、証拠性の担保とも密接に関わります。誰がアクセスできるかを制御し、その履歴を残すことが、記録の真正性を支える一助になるためです。

記録管理システムを外注する前に確認したい点

記録管理システムを自社向けに開発して外部委託する場合、既製パッケージをそのまま使うのとは違い、自社の文書分類や業務フロー、既存の文書管理基盤に合わせて設計できる利点があります。一方で、法令が求める保存年限や証拠性を運用として担保できなければ、記録管理としての意味は薄れてしまうでしょう。委託前に確認しておきたい点を挙げます。

第一に、保存年限ルールの表現力です。会社法の10年、法人税法の7年・10年のように、根拠法令ごとに起算点や年数が異なる保存年限を、分類ごとに柔軟に定義・変更できるかを確認します*3*4。法改正への追従も見据え、ルールをコードに埋め込むのではなく設定として管理できる設計が望まれます。第二に、証拠性の担保です。監査証跡の粒度、改ざん検知の方式、更新履歴の保持範囲を要件定義の段階で具体化し、電子帳簿保存法などが求める真実性の確保にどう対応するのかを整理しておきましょう*5

第三に、廃棄プロセスの統制です。満了記録の抽出、承認フロー、廃棄記録の保持、訴訟等に備えた保留の仕組みを、どこまで委託先が担うのかを明確にします*1。第四に、既存システムとの連携と分類設計です。文書管理システムや基幹システムとの役割分担、記録に付与するメタデータの設計、アクセス統制の権限モデルを、自社の組織構造に照らして詰めておくと、導入後の運用が定着しやすくなります*2

加えて、委託の範囲を要件定義から設計・構築、運用・保守までのどこまでとするかを明確にし、元請(プライムベンダー)として一貫して担える体制かどうかを見極めることが、外注先を選ぶ際の実質的な分かれ目になります。制度が求める要件と自社の文書運用を突き合わせたうえで、内製と外注の切り分けを検討することが実務的だといえるでしょう。

まとめ:記録管理システムで押さえる3つの視点

本稿では、記録管理(レコードマネジメント)の考え方と、それを支えるシステムの機能要素、開発を外注する際の確認点を、ISO 15489や会社法・法人税法などの公的情報に基づいて整理しました。要点は次の3つに集約できます。第一に、記録管理は記録の作成から処分までのライフサイクルを体系的に統制する管理領域であり、共有・検索を主目的とする文書管理(DMS)とは、保存年限と廃棄の統制に特化する点で異なります*2。第二に、保存年限は法令ごとに定められ、会計帳簿・計算書類は10年、法人税法上の帳簿書類は原則7年(欠損金の生じた事業年度は10年)です*3*4。第三に、記録管理システムの核は、保存年限の管理・証拠性の担保・廃棄の統制・分類とアクセス統制の4要素にあり、これらを運用として担保できる設計が問われます*1*5。自社の文書と保存実務を棚卸ししたうえで、必要な要件に優先順位を付けて検討することをおすすめします。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、業務システムの開発・保守を元請(プライムベンダー)として受託しています。記録管理システムについても、記録の分類設計と保存年限ルールの定義から、監査証跡・改ざん検知による証拠性の担保、保存期間満了後の廃棄(ディスポジション)の統制、既存の文書管理基盤とのすみ分けまでを一貫して支援できる体制を整えています。自社の文書運用に合わせて内製と外注の切り分けを検討したい企業様は、現状の整理からご相談いただけます。

よくある質問

記録管理システムと文書管理システム(DMS)はどう違いますか。

文書管理システムは文書の保管・共有・検索による業務効率化を主な目的とします。一方、記録管理システムは記録の作成から処分までのライフサイクルを統制し、保存年限の管理・証拠性の担保・保存期間満了後の廃棄に重心を置く点が異なります*2。共有・検索の延長ではなく、保存年限と廃棄の統制に特化する領域だととらえると分かりやすいでしょう。

帳簿や計算書類の保存年限は何年ですか。

会社法では、会計帳簿は帳簿の閉鎖の時から10年間(第432条第2項)、計算書類は作成した時から10年間(第435条第4項)の保存が求められます*3。法人税法上は、帳簿書類を確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間保存する必要があり、青色申告で欠損金が生じた事業年度などは10年間とされています*4。同じ帳簿でも根拠法令により起算点や年数が変わる点に注意が必要です。

記録の証拠性(真正性)はどのように担保しますか。

ISO 15489-1(JIS X 0902-1)は記録の特性として真正性・完全性を挙げており、作成後に改変されていないことを示せる仕組みが求められます*2。電子データでは、電子帳簿保存法が真実性の確保の措置として、タイムスタンプの付与、訂正・削除の履歴が残るシステムの利用、事務処理規程の備え付けなどを示しています*5。システムでは監査証跡や改ざん検知、更新履歴の保持が該当します。

保存期間が満了した記録はどう扱えばよいですか。

ISO 15489-1の第2版が組み込んだ評価(アプレイザル)は、どの記録をどの期間保存するかを決めるプロセスで、満了後の扱いも含まれます*1。満了した記録を統制なく残すと保管コストや漏えいの負担が増し、無秩序な削除は必要な記録の喪失を招きます。満了記録の抽出、承認を経た廃棄、処分の記録化、訴訟等に備えた保留までを、統制されたプロセスとして設計することが望まれます。

記録管理システムの開発を外部に委託する場合、何を確認すればよいですか。

根拠法令ごとに異なる保存年限を分類単位で柔軟に定義・変更できるか、監査証跡や改ざん検知による証拠性を担保できるか、満了記録の廃棄と保留を統制されたプロセスとして扱えるかをまず確認します*3*4*5。加えて、既存の文書管理基盤とのすみ分け、メタデータの分類設計、アクセス統制の権限モデル、法改正への追従、委託範囲を要件定義から運用・保守までどこまでとするかを明確にすると、導入後の運用が定着しやすくなります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:国立公文書館「記録管理の国際標準ISO15489-1の改定について」( https://www.archives.go.jp/publication/archives/no061/5131 )
  2. *2 出典:JIS X 0902-1:2005「情報及びドキュメンテーション-記録管理-第1部:総説」(ISO 15489-1)(http://kikakurui.com/x0/X0902-1-2005-01.html
  3. *3 出典:e-Gov法令検索「会社法(平成十七年法律第八十六号)」第432条・第435条( https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 )
  4. *4 出典:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」( https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5930.htm )
  5. *5 出典:国税庁「電子帳簿保存法 Ⅱ 適用要件【基本的事項】」( https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07denshi/02.htm )


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