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2026.07.23 らしくコラム

保険引受・保険金査定システム|査定業務の高度化要件

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)として基幹業務システムの開発・運用を受託

保険業務のイメージ

この記事のポイント

  • 保険会社の引受査定(アンダーライティング)と保険金支払査定は、告知・診査データに基づくリスク評価と、事故受付後の支払可否判断を担う基幹業務であり、保険業法が求める業務運営の適切性確保と直結します。
  • 保険代理店システムが契約・満期・募集人管理という「販売側」の基盤であるのに対し、本稿が扱う引受査定・支払査定システムは、保険会社内部でリスクを評価し支払可否を判定する「引受側」の基幹業務システムであり、対象領域が異なります。
  • 生命保険協会・日本損害保険協会の公表ガイドラインは、告知受領権の所在や支払査定態勢の整備、不当・不正請求への対応態勢を具体的に定めており、システム要件を検討するうえでの一次情報になります。

引受査定・支払査定が「熟練者依存」で立ち行かなくなる――保険会社が抱える課題

リスク評価・査定のイメージ

保険会社の引受査定部門・支払査定部門では、契約引受時の告知内容の評価や、事故発生後の支払可否判断を、経験の長い査定担当者の知見に頼って進めている現場が少なくありません。日本損害保険協会の「損害保険の保険金支払に関するガイドライン」は、保険金の適時・適切な支払についての管理態勢が、損害保険会社としての基本的かつ最も重要な機能であると位置づけています*2。裏を返せば、この機能が特定の担当者の経験と勘に依存したままでは、退職や異動によって査定品質が揺らぐリスクを常に抱えることになります。

生命保険協会が公表する「正しい告知を受けるための対応に関するガイドライン」も、告知義務違反が生じる原因として、告知制度の周知不足や告知の仕方に関する問題など複数の類型を挙げ、各社に継続的な対応策を求めています*1。告知・診査から引受判定、事故受付から支払判定までの一連のプロセスは、紙の台帳やExcelでの個別管理を続けている限り、属人化と対応遅延から抜け出しにくいのが実情です。

図
図:引受査定と保険金支払査定の基本フロー(告知・診査からの引受判定、事故受付からの支払判定)

引受査定(アンダーライティング)と保険金支払査定とは――保険業法が求める内部管理態勢

引受査定(アンダーライティング)とは、契約申込時に告知内容や医的診査の結果に基づいて契約者・被保険者のリスクを評価し、引受の可否・保険料率・条件を判定する業務です。生命保険協会のガイドラインでは、告知受領権は保険会社(告知書)および会社が指定した医師のみが有し、生命保険募集人や生命保険面接士には告知受領権がないことが明記されています*1。また、傷病歴等がある場合でも、保険料の割増や保険金の削減、特定部位の不担保といった特別な条件を付けたうえで引受ける「特別条件付引受制度」を備える会社があることも紹介されています*1

一方、保険金支払査定(クレーム査定)とは、事故や保険事故の発生後、契約内容や損害調査結果に基づいて保険金の支払可否・支払額を判定する業務です。日本損害保険協会の「損害保険の保険金支払に関するガイドライン」は、保険金支払態勢の整備に経営陣が関与すること、損害調査態勢や支払査定基準・マニュアル類を整備すること、そして不当・不正な保険金請求事案に厳正に対応する態勢を整えることを、会員会社に求めています*2。同ガイドラインでは、保険金支払管理部門と保険金支払担当部門という呼称で組織上の役割分担にも触れており、両部門が事後検証や内部監査の対象になる点も示されています*2

これら引受査定・支払査定という基幹業務の適切性は、保険業法上も無関係ではありません。同法第100条の2「業務運営に関する措置」は、保険会社に対し、内閣府令で定めるところにより健全かつ適切な運営を確保するための措置を講じることを求めています。金融庁の「保険会社向けの総合的な監督指針」も、この規定を踏まえた保険監督上の評価項目を定めており、日本損害保険協会のガイドラインはこうした監督指針の内容を踏まえて策定されたものと明記しています*2。引受査定・支払査定システムを検討する際は、こうした一次情報を出発点に要件を整理することが欠かせません。

保険代理店システムとの違い――「販売側」ではなく「引受側」の基幹業務

保険契約に関わるシステムというと、契約・満期・募集人管理を担う「保険代理店システム」と混同されることがあります。しかし両者が扱う領域は異なります。保険代理店システムは、募集人による契約獲得や満期管理、意向把握と比較推奨の記録といった「販売側」の業務基盤です。これに対して本稿が扱う引受査定・支払査定システムは、保険会社の内部でリスクを評価し支払可否を判定する「引受側」の基幹業務システムであり、代理店の募集実務や体制整備義務には深入りしません。両者は連携しつつも、担う役割と法令上の論点が異なる点を押さえておく必要があります。

引受査定システムの要件――告知・診査データ、リスク評価、料率適用

引受査定システムに求められる主な要件は、次の4点に整理できます。第一に、告知書や医的診査の結果、健康診断データといった告知・診査情報を、紙やExcelに頼らずデジタルで一元管理し、検索・参照できる仕組みです。生命保険協会のガイドラインは、告知内容が募集人に知られたくない場合に備え、告知書の封緘提出など、告知内容を保護する運用の重要性も指摘しています*1。システム側でも、告知情報へのアクセス権限を査定担当者に限定するといった設計が求められます。

第二に、告知内容から標準体・特別条件付・謝絶のいずれで引受けるかを判定するリスク評価のロジックです。第三に、年齢・性別・職業・保険種類等に応じた料率テーブルを適用する仕組みです。第四に、特別条件付引受を選択した場合の保険料割増率や保険金削減期間、特定部位の不担保といった条件を契約情報に正確に反映し、以後の支払査定の場面でも参照できるようにする仕組みです*1。これらを人手の突合に頼ると、条件の反映漏れが契約後のトラブルに直結しかねません。

保険金支払査定システムの要件――受付、支払可否判断、不正検知連携

保険金支払査定システムに求められる要件も、事故受付から支払完了までの流れに沿って整理できます。まず、契約者からの事故連絡を受け付け、契約内容・重複契約の有無・事故状況など必要事項を確認する受付機能です*2。次に、鑑定人やアジャスターといった専門家による損害調査の結果を記録し、支払査定基準・保険約款の条項に照らして支払可否を判定する機能です。告知義務違反による解除の要否を判断する場面では、告知義務違反となる事項と保険事故との間に因果関係があるかどうかも確認事項になります*2

さらに重要になるのが、不当・不正な保険金請求への対応です。日本損害保険協会は、不正の事実の立証可否を慎重に判断し適切な調査を実施できる態勢や、事案に応じて上位の決裁権限者や専門知見を持つ社員が関与する態勢の整備を求めています*2。加えて、支払備金の計上・進捗管理、支払済み事案の点検・再審査・事後検証、そして保険金支払に関する苦情の記録・分析といった機能も、支払査定システムが担うべき範囲に含まれます*2

データ・AI活用による査定業務の高度化

査定業務の高度化を語るうえで欠かせないのが、業界横断のデータ連携基盤です。日本損害保険協会は、複数の損害保険会社・共済組合から収集した保険金請求に関する情報をAIが分析し、不正請求を早期に検知するシステムを構築し、2020年4月から運用を開始しました。制度参加会社は26社にのぼり、不正請求の疑義を自動検知する機能に加え、保険金詐欺グループの相関図を作成する機能も備えています*4。同協会は、保険金不正請求対策室や保険金不正請求ホットラインといった通報窓口も設置し、寄せられた情報を業界の不正防止対策に活用しています*3

こうしたAI活用は、熟練査定者が培ってきた「怪しさの勘所」をルール化・データ化し、査定水準の標準化とスピードアップにつなげる取り組みといえます。ただし、業界の情報交換制度や共同システムとの連携を前提とする機能もあるため、自社システムだけで完結させようとせず、どこまでを自社の引受査定・支払査定システムで担い、どこから業界共同の仕組みと接続するかを、開発の初期段階で切り分けておくことが重要です。

内製と外注の判断軸――保険ドメイン知識・基幹連携・保守体制

引受査定・支払査定システムの開発を内製で進めるか外注するかを判断する際は、以下の観点で比較整理すると論点が明確になります。

判断軸 内製で進める場合 外注で進める場合
保険ドメイン知識 告知・診査、支払査定基準、保険業法や監督指針の理解を社内で継続的に育成する必要があります 保険会社向けシステムの開発実績を持つパートナーの知見を初期段階から活用できます
基幹系との連携 契約管理システムや会計システムとの接続仕様を自社で整理・維持する必要があります 既存の基幹系連携の実績があれば、接続設計を短期間で整理しやすくなります
保守・改修体制 監督指針の改正や約款改定への追随、内部監査対応を継続的に担う体制が必要です 改正動向の把握を含め、保守・改修まで一体で依頼できます

いずれの進め方を選ぶ場合も、まずは自社の引受基準・支払査定基準がどこまで明文化されているかを棚卸しすることが出発点になります。基準が担当者の頭の中にしかない状態でシステム化を進めると、要件定義の段階で手戻りが発生しやすくなるためです。

まとめ:引受査定・保険金査定システムを見直す3つの視点

本稿では、保険会社の引受査定(アンダーライティング)と保険金支払査定を支えるシステムについて、生命保険協会・日本損害保険協会の公表ガイドラインと保険業法の規定に基づいて整理しました。要点は次の3つに集約されます。第一に、引受査定は告知・診査データに基づくリスク評価と料率適用、特別条件付引受の管理を核とし、告知受領権の所在を踏まえた設計が求められます*1。第二に、支払査定は事故受付から支払可否判断、不正請求への対応、支払管理・苦情記録までを一連の業務として捉える必要があります*2。第三に、両業務とも保険業法が求める業務運営の適切性確保と結びついており、内製・外注いずれを選ぶ場合も保険ドメイン知識と保守体制の確保が判断の軸になります。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、保険会社の基幹業務システムを含む業務システムの開発・保守を元請(プライムベンダー)として受託しています。引受査定における告知・診査データ管理やリスク評価ロジックの設計、保険金支払査定における損害調査結果の反映や不正検知連携、契約管理システムとの基幹連携まで、要件整理の段階から伴走します。まずは現行の引受基準・支払査定基準の棚卸しからご相談ください。

よくある質問

引受査定システムと保険代理店システムはどう違いますか。

保険代理店システムは契約・満期・募集人管理を担う「販売側」の業務基盤です。これに対し引受査定システムは、保険会社内部で告知・診査内容からリスクを評価し引受可否を判定する「引受側」の基幹業務システムであり、対象領域が異なります。

告知受領権とは何ですか、システム設計にどう影響しますか。

告知受領権とは、契約者からの告知を正式に受け取る権限のことで、生命保険協会のガイドラインでは保険会社(告知書)と会社指定の医師のみが有し、募集人や面接士にはこの権限がないとされています*1。システム設計では、告知情報へのアクセス権限を査定担当者に限定し、募集人が告知内容を閲覧できないようにする配慮が必要です。

支払査定システムに不正検知機能は必須ですか。

必須かどうかは自社の事案規模やリスクによりますが、日本損害保険協会は不当・不正な保険金請求事案への厳正な対応態勢の整備を求めており*2、業界レベルではAIによる不正請求早期検知システムも稼働しています*4。自社の支払査定システムでどこまでを担い、業界共同の仕組みとどう連携するかを整理しておくことが望まれます。

開発を外注する際にまず確認すべきことは何ですか。

まずは自社の引受基準・支払査定基準がどこまで明文化されているかを棚卸しすることが出発点です。そのうえで、委託先が保険業法や監督指針を踏まえた業務理解を持っているか、契約管理システムなど既存の基幹系との連携実績があるか、監督指針改正や約款改定への追随を含めた保守体制を提供できるかを確認することが重要です。

AIによる査定支援は保険業法上問題ありませんか。

AIの活用自体を一律に制限する規定は本稿で確認した範囲では見当たりませんが、保険業法第100条の2は保険会社に健全かつ適切な業務運営を確保するための措置を求めており、AIを用いる場合も判定結果の説明責任や検証態勢をどう確保するかは自社の業務運営として整理しておく必要があります。具体的な取扱いは金融庁の公式情報で個別にご確認ください。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:生命保険協会「正しい告知を受けるための対応に関するガイドライン」(https://www.seiho.or.jp/activity/guideline/pdf/announce.pdf
  2. *2 出典:日本損害保険協会「損害保険の保険金支払に関するガイドライン」(https://www.sonpo.or.jp/about/guideline/ev7otb0000000cjp-att/shiharai_guideline.pdf
  3. *3 出典:日本損害保険協会「保険金不正請求への対応」(https://www.sonpo.or.jp/about/efforts/reduction/fuseiseikyu/index.html
  4. *4 出典:日本損害保険協会「保険金不正請求の早期検知システムを構築」(https://www.sonpo.or.jp/news/release/2020/2004_01.html
  5. *5 出典:金融庁「保険会社向けの総合的な監督指針」(https://www.fsa.go.jp/common/law/guide/ins/index.html


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