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標準型電子カルテとは?医療DXで外注に必要な視点
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- 標準型電子カルテと電子カルテ情報共有サービスは、国が進める全国医療情報プラットフォームを構成する中核施策で、デジタル庁と厚生労働省が連携して開発を進めています。
- 情報連携の土台には、HL7 FHIRという国際標準規格に基づく厚生労働省標準規格が採用されており、電子カルテを持つ医療機関・ベンダーには標準規格への対応が求められます。
- 既存の電子カルテがオンプレミス型かクラウド型かによって求められる対応が異なるため、内製と外注のどちらで進めるかを費用・スキル・スケジュールの面から判断する必要があります。
目次
医療DXが目指す全国医療情報プラットフォームとは
医療DXとは、厚生労働省の説明によれば「医療分野でのDX(デジタルトランスフォーメーション)を通じたサービスの効率化・質の向上を実現することにより、国民の保健医療の向上を図るとともに、最適な医療を実現するための基盤整備を推進」する取り組みです*1。この取り組みの中核に位置づけられているのが、全国医療情報プラットフォームです。
厚生労働省の資料が示す全国医療情報プラットフォームの全体像では、電子処方箋管理サービスや電子カルテ情報共有サービス、オンライン資格確認等システムなどを土台に、医療機関・薬局・介護事業所・自治体・国民をつなぐことが想定されています*2。活用目的としては、①救急・医療・介護現場の切れ目ない情報共有、②医療機関・自治体サービスの効率化・負担軽減、③健康管理・疾病予防・適切な受診等のサポート、④公衆衛生・医学・産業の振興に資する二次利用、という4点が掲げられています*2。医療機関やベンダーがシステムを開発・改修する際は、この全体像のどこに自社のシステムが位置づけられるかを踏まえた設計が欠かせません。
電子カルテ情報共有サービスが共有する情報の中身
電子カルテ情報共有サービスは、全国医療情報プラットフォームの仕組みの一つであり、「全国の医療機関や薬局などで患者の電子カルテ情報を共有するための仕組み」と位置づけられています*3。厚生労働省の公式ページによれば、提供されるサービスは次の4つです*3。第一に、診療情報提供書を電子で共有できるサービス(退院時サマリーは診療情報提供書に添付)。第二に、各種健診結果を医療保険者及び全国の医療機関等や本人等が閲覧できるサービス。第三に、患者の臨床情報を全国の医療機関等や本人等が閲覧できるサービス。第四に、患者サマリーを本人等が閲覧できるサービスです*3。
共有される臨床情報の代表例として、厚生労働省の資料では傷病名・アレルギー・薬剤禁忌・感染症・検査情報・処方情報が挙げられています*2。これらの文書・情報は「3文書6情報」という略称で呼ばれることが業界内で一般的ですが、対象範囲や名称は制度の見直しに伴い変わり得るため、正確な最新の定義は厚生労働省の公式情報で確認することが望ましいでしょう。本格運用に向けては、一部の医療機関でモデル事業が実施されており、必要な法制上の措置を規定した医療法等の一部を改正する法律案が国会に提出されています*4。
標準型電子カルテとは?対象医療機関と開発の現在地
標準型電子カルテは、デジタル庁が開発を進めているシステムです*4。厚生労働省の資料によれば、主な対象は電子カルテを未導入の医科無床診療所(2023年医療施設調査で47,232施設)であり、一部医療機関でモデル事業が実施されています*4。小規模な医療機関でも過度な負担なく導入できるよう、要件として、①共有サービス・電子処方箋管理サービスへの対応、②ガバメントクラウドに対応し、複数の医療機関で共同利用することで廉価なサービス提供が可能となるマルチテナント方式(いわゆるSaaS型)のクラウド型サービスとすること、③関係システムへの標準APIの搭載、④データ引き継ぎが可能な互換性の確保、という4点が示されています*4。
スケジュールについては、本格運用の具体的内容を示した上で2026年度中目途の完成を目指す方針が示されていますが、この情報は令和7年8月時点の厚生労働省資料に基づくものです*4。また、標準型電子カルテの要件を参考に、医科診療所向け電子カルテの標準仕様(基本要件)を策定し、これに準拠した電子カルテの開発を民間事業者に促したうえで、厚生労働省又は社会保険診療報酬支払基金等が認証する方向性も示されています*4。開発の進捗やスケジュールは今後見直される可能性があるため、最新情報は厚生労働省・デジタル庁の公式発表で確認する必要があります。
HL7 FHIRという標準規格で情報をやり取りする仕組み
HL7 FHIRは、厚生労働省が調査研究を進めてきた、医療情報交換のための実装しやすい新しい標準規格です*5。オープンなWeb技術を採用し、相互運用性を確保しやすい点が特徴として挙げられています*5。厚生労働省は保健医療分野の適切な情報化を目的に厚生労働省標準規格を制定しており、公式ページによれば現在43の標準規格が認定されています*6。その中には、HS036からHS039として、処方情報・健康診断・診療情報提供書・退院時サマリーに関するHL7 FHIR記述仕様が位置づけられています*6。
電子カルテ情報共有サービスにおける情報連携は、こうした標準規格に沿ったデータ形式で行われる設計です。どの規格を採用するかは、民間主導の協議会と保健医療情報標準化会議が産官学で協力して選定する仕組みになっています*6。電子カルテやレセプトコンピュータを開発・改修するベンダーにとっては、HL7 FHIRの記述仕様に沿った実装ができるかどうかが、標準規格対応の実務上のポイントになるでしょう。なお、国際規格そのものの詳細な技術仕様は、必要に応じてHL7関連団体の情報を参照しつつ、日本国内での適用は厚生労働省標準規格の公式情報を優先して確認することをおすすめします。
既存の電子カルテからの移行で医療機関に求められる対応
厚生労働省の資料では、電子カルテの普及率は医科診療所で約55%、一般病院で約65%(2023年医療施設調査)とされています*4。導入済みの医療機関のうち、オンプレミス型システムを使う医科診療所については、次回のシステム更改時に標準型電子カルテに準拠したクラウド型電子カルテへの移行を促す方針が示されており、既にクラウド型を使う診療所についても標準型電子カルテに準拠したクラウド型への移行を図りつつ、共有サービス・電子処方箋に対応したアップデートを進める方向です*4。電子カルテ未導入の医療機関には、共有サービス・電子処方箋に対応できる標準化された電子カルテの導入を進める方針とされています*4。
病院についても、カスタマイズによる高コスト構造のオンプレミス型システムから、クラウド・ネイティブなシステムへ移行する方向性が示されています*4。移行にあたっては、標準規格への対応に加え、厚生労働省が定める医療情報システムの安全管理に関するガイドラインへの適合確認も欠かせません*7。ガイドラインは改定が重ねられているため、対応すべき版数は厚生労働省の公式情報で確認することをおすすめします。既存システムの構成やベンダーとの契約形態によって移行の難易度は大きく変わるため、早い段階での現状把握が重要になります。
内製と外注、システム開発をどちらで進めるかの判断軸
標準規格対応や既存システムからの移行は、社内の情報システム部門だけで完結させるには専門性が高い作業です。内製と外注では、必要なスキルとリスクの重心が異なります。以下の表に主な違いを整理しました。
| 比較項目 | 内製で進める場合 | 外注委託する場合 |
|---|---|---|
| HL7 FHIRなど標準規格への対応 | 厚労省標準規格の記述仕様を自社で読み解き、実装ノウハウを一から蓄積する必要があります*6 | 標準規格対応の実装経験を持つパートナーの知見を活用できます |
| 既存システムからの移行判断 | オンプレミス型・クラウド型それぞれの移行方針を自社で見極める必要があります*4 | 現行システムの構成診断から移行計画の策定まで任せられます |
| 安全管理ガイドラインへの適合 | 改定内容を継続的に追いかけ、自社で適合状況を確認します*7 | 最新版への適合確認を含めて対応を委託できます |
| 制度改定への追随 | 本格運用時期や要件の見直しを自社で継続的に追跡する必要があります*4 | 複数の医療機関案件を扱うパートナーの動向把握力を活用できます |
自社で全てを賄う体制を整えるか、専門パートナーに一部または全体を委託するかは、現在使用しているシステムの構成、社内エンジニアのHL7 FHIR実装経験の有無、対応までに残された時間によって最適解が変わります。特に電子カルテ未導入の医療機関や、オンプレミス型からの移行を検討する医療機関では、標準規格対応の実装経験を持つ外部パートナーに相談する価値は大きいでしょう。
まとめ:標準型電子カルテと医療DX対応の3つの判断軸
本稿では、国の医療DXにおける標準型電子カルテと電子カルテ情報共有サービスについて、厚生労働省の公式情報に基づいて整理しました。要点は次の3つに集約されるでしょう。第一に、標準型電子カルテと電子カルテ情報共有サービスは、全国医療情報プラットフォームを構成する中核施策であり、デジタル庁と厚生労働省が連携して開発・制度整備を進めています*2*4。第二に、情報連携の土台にはHL7 FHIRに基づく厚生労働省標準規格が採用されており、電子カルテやレセプトコンピュータの開発・改修にはこの標準規格への対応が求められます*6。第三に、既存システムがオンプレミス型かクラウド型かによって求められる移行対応が異なり、標準規格対応・安全管理ガイドライン適合・制度改定への追随を含めて、内製と外注のどちらで進めるかを早期に判断する必要があります*4*7。
よくある質問
標準型電子カルテと電子カルテ情報共有サービスはどう違いますか。
標準型電子カルテは、デジタル庁が開発している電子カルテ未導入の医科無床診療所向けのクラウド型システムです*4。一方、電子カルテ情報共有サービスは、全国の医療機関や薬局が患者の電子カルテ情報を共有する仕組みで、既に電子カルテを導入している医療機関も対象に含まれます*3。両者は別々の施策ですが、いずれも全国医療情報プラットフォームを構成する要素です*2。
本記事は電子処方箋への対応そのものを扱っていますか。
本記事は標準型電子カルテ・電子カルテ情報共有サービス・HL7 FHIRを中心に扱っており、電子処方箋そのものの対応や医療分野システム開発の規制・個人情報保護の総論には深く立ち入っていません。それらのテーマは別記事で解説していますので、そちらもあわせてご参照ください。
HL7 FHIRへの対応は既存の電子カルテシステムにも必要ですか。
電子カルテ情報共有サービスに対応する場合、既存のオンプレミス型・クラウド型を問わず、厚生労働省標準規格に基づくHL7 FHIR記述仕様への対応が必要になります*6。次回のシステム更改時期に合わせて対応を検討する医療機関が多い状況です*4。
標準型電子カルテの提供時期はいつ頃ですか。
令和7年8月時点の厚生労働省資料では、本格運用の具体的内容を示した上で2026年度中目途の完成を目指すとされています*4。ただしスケジュールは今後見直される可能性があるため、最新情報は厚生労働省・デジタル庁の公式発表で確認することをおすすめします。
システム開発を外注する場合、何を基準に委託先を選べばよいですか。
HL7 FHIRなど標準規格への実装経験、既存システムの移行計画策定の実績、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインへの対応力の3点を確認することが目安になります*6*7。制度改定の動向を継続的に把握しているかどうかも、委託先選定の重要な判断材料です。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:厚生労働省「医療DX」(https://www.mhlw.go.jp/stf/iryoudx_links.html)
- *2 出典:厚生労働省「全国医療情報プラットフォームの全体像(イメージ)」資料(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001140173.pdf)
- *3 出典:厚生労働省「電子カルテ情報共有サービスについて」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/denkarukyouyuu.html)
- *4 出典:厚生労働省「電子処方箋・電子カルテの目標設定等について」第7回「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム資料2/第196回社会保障審議会医療保険部会資料3(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001549830.pdf)
- *5 出典:厚生労働省「HL7 FHIRに関する調査研究の報告書」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15747.html)
- *6 出典:厚生労働省「医療分野の情報化の推進について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/index.html)
- *7 出典:厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/000936160.pdf)