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人事評価・タレントマネジメントシステム開発を外注
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム開発を受託
この記事のポイント
- 人事評価・タレントマネジメントシステムは、目標管理や評価ワークフロー、人材データ分析までを担う仕組みで、勤怠・給与を扱う人事管理システムとは役割が異なります。
- 経済産業省は2020年9月に「人材版伊藤レポート」を、2022年5月に2.0版を公表し、人的資本経営の実践を促してきました*1。
- 有価証券報告書では2023年3月期決算以降、人材育成方針や女性管理職比率などの記載が必須になっています*3。
目次
人事評価・タレントマネジメントシステムとは——目標管理と人材データ活用を担う仕組み
人事評価・タレントマネジメントシステムとは、従業員の目標設定・評価・スキル・キャリアといった人材情報を一元管理し、育成や配置の判断に活用するための仕組みを指します。単に評価点を記録するだけでなく、目標管理(MBO・OKR)、評価ワークフロー、スキル・資格管理、配置・後継者計画、1on1やフィードバックの記録、従業員サーベイ、人材データ分析までを対象とする点が特徴です。
従来の人事評価は紙やExcelでの管理、あるいは年に1〜2回の考課シートのやり取りにとどまるケースが少なくありませんでした。これに対しタレントマネジメントシステムは、評価データを継続的に蓄積し、配置転換や後継者育成の判断材料として活用できる形に整えます。次章では、混同されやすい人事管理システムとの違いを整理します。
人事管理(勤怠・給与)システムとの違い——「動かす」データと「活かす」データ
人事評価・タレントマネジメントシステムは、勤怠管理や給与計算を担う人事管理システムとしばしば同じ枠組みで語られますが、扱うデータの性質と役割は異なります。勤怠・給与システムは、出退勤の記録や賃金計算といった定型データを、法令に沿って正確に処理することが主目的です。一方でタレントマネジメントシステムは、目標達成度・スキル・評価履歴・キャリア志向といった非定型な人材情報を蓄積し、配置や育成の判断に活かすことを目的としています。
両者は独立して存在するのではなく、従業員マスタを介して連携する場面が多くあります。具体的な違いは次の表の通りです。
| 項目 | 人事管理システム(勤怠・給与) | 評価・タレントマネジメントシステム |
|---|---|---|
| 主な目的 | 出退勤・賃金計算の正確な処理 | 目標管理・評価・育成・配置の意思決定支援 |
| 扱うデータ | 打刻・勤務時間・賃金・控除額 | 目標・評価点・スキル・面談記録 |
| 更新頻度 | 日次〜月次 | 随時(1on1)〜半期・年次(評価期) |
| 主な利用者 | 全従業員・給与担当 | 従業員・上長・人事企画部門 |
| 代表的な機能 | 打刻・シフト管理・年末調整 | 目標管理・評価ワークフロー・後継者計画 |
人的資本経営の潮流——人材版伊藤レポートとISO30414、情報開示の義務化
タレントマネジメントシステムへの関心が高まっている背景には、人的資本経営を巡る一連の制度整備があります。経済産業省は2020年9月に「人材版伊藤レポート」を公表し、2022年5月には「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書(人材版伊藤レポート2.0)」を公表しました*1。人的資本経営とは、経営戦略と人材戦略を連動させ、人材の価値を引き出す経営のあり方として整理されています*1。
国際的な物差しとしては、ISO(国際標準化機構)が人的資本報告に関する規格ISO30414を定めています。同規格は2018年に発行され、2025年8月には改定版が公表されました。離職率や生産性、労働安全衛生、リーダーシップなど11の領域にわたる指標群を示している点が特徴です*2。
国内では情報開示の制度化も進んでいます。金融庁は2023年1月31日、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正を公布し、令和5年3月31日以後に終了する事業年度の有価証券報告書から、人材育成方針や社内環境整備方針、女性管理職比率などの記載を必須としました*3。あわせて金融庁は「人的資本可視化指針」を公表・改訂しており、経営戦略と連動した人材戦略を策定し、企業価値向上につながる人的資本投資を実践・開示するための考え方を示しています*4。
こうした流れの中で、タレントマネジメントシステムは評価業務を効率化するためだけの道具ではなく、人材データを可視化し開示につなげるための基盤としての役割も担うようになっています。有価証券報告書の記載義務は上場企業を中心とした制度です。ただし人的資本経営への関心は、非上場の中堅企業にも広がりつつあります。採用市場での競争が厳しくなるなか、評価制度や育成方針を可視化できる体制を整えておくことは、求職者や取引先への説明材料としても役立つと考えられています。
タレントマネジメントシステムの主要機能——目標管理から後継者計画まで
目標管理(MBO・OKR)と評価ワークフロー
目標管理機能は、個人やチームの目標設定から進捗の可視化、達成度の記録までを扱います。MBO(目標管理制度)による年次・半期の目標運用に加え、OKR(Objectives and Key Results)のような短いサイクルで目標を見直す運用にも対応する製品が増えています。評価ワークフローは、一次評価・二次評価・最終調整という多段階の承認プロセスや、上司だけでなく同僚・部下からも評価を集める多面評価(360度評価)の運用を支える機能です。
スキル・資格管理と配置・後継者計画
スキル・資格管理機能は、保有スキルや資格、語学力、業務経験をデータベース化し、育成計画や案件アサインの判断材料とする仕組みです。配置・後継者計画(サクセッションプラン)機能は、後継者候補の選定状況や人材ポートフォリオを可視化し、重要ポジションの空白リスクを事前に把握する目的で使われます。
1on1・フィードバック、人材データ分析、従業員サーベイ
1on1・フィードバック機能は、定期面談の記録やコメント履歴を蓄積し、評価期だけに閉じない継続的なコミュニケーションを支えます。人材データ分析機能は、評価・スキル・異動歴といった情報を横断的に分析し、離職の兆候やハイパフォーマー層の傾向を把握する用途です。従業員サーベイ機能は、エンゲージメント調査やパルスサーベイの配信・集計を担い、組織状態の定点観測に役立ちます。
どの機能をどこまで実装するかは、評価制度の複雑さや従業員規模によって変わってきます。次章では、パッケージ型とスクラッチ開発という導入形態の選び方を整理します。
パッケージ(HRテック)かスクラッチか——導入形態と既存人事DBとの連携
タレントマネジメントシステムの導入形態は、大きくパッケージ型(HRテックと呼ばれるSaaS製品)とスクラッチ開発の二択に分かれます。パッケージ型は、目標管理や評価ワークフローのテンプレートがあらかじめ用意されており、短期間で運用を開始しやすい点が利点です。一方でスクラッチ開発は、自社固有の評価制度やグレード制度、承認フローの細部まで作り込める自由度を持ちます。
| 項目 | パッケージ型(HRテック) | スクラッチ開発 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 比較的抑えやすい | 要件次第で変動しやすい |
| 導入期間 | 短期間で開始しやすい | 要件定義から時間を要する |
| 自社制度への適合 | 標準機能の範囲に依存 | 自社固有の評価制度に合わせ込める |
| 既存人事DBとの連携 | 用意されたAPI・CSV連携の範囲 | 連携方式を柔軟に設計できる |
| 運用・保守 | ベンダーのアップデートに追随 | 自社(または委託先)で継続運用 |
多くの企業では、勤怠・給与は既存の基幹人事システムをそのまま利用し、評価・タレントマネジメントの部分だけを新規導入または刷新するケースが目立ちます。この場合、従業員マスタや組織情報を既存の人事データベースとAPIやCSVで同期させる設計が前提です。連携の設計が甘いと、異動や入退社のたびに手作業でのデータ突き合わせが発生し、運用負荷が増える原因になります。
外注時の勘所——導入の進め方とパートナー選定のポイント
導入の進め方は、おおむね企画・要件定義、評価制度の要件整理、開発、既存データの移行、ロールアウト、定着支援という流れをたどります。特に評価制度の要件整理は、人事企画部門が持つグレード制度や評価基準の設計思想を、システム要件に落とし込む工程であり、外部パートナーとの意思疎通が最も問われる部分です。
外注先を選ぶ際は、評価制度・グレード制度の設計を理解したうえで要件定義を支援できるか、既存の人事給与システムとのAPI連携実績があるか、という2点をまず確認します。人事考課の情報は機微性の高い個人情報を含むため、アクセス権限の設計や履歴管理の考え方についても、委託前にすり合わせておくと導入後の手戻りを抑えられます。
導入時にはシステムの機能面だけでなく、現場への浸透も課題になりやすい部分です。評価者となる管理職への操作研修や、評価基準の運用ルールの周知が不足すると、システムを導入しても紙やExcelでの運用が並行して残ってしまう場合があります。外注先に定着支援まで含めて依頼できるかどうかも、選定時の確認ポイントの一つです。
。従業員規模や評価制度の複雑さによって必要な工数は変わってきます。現状の評価運用と既存システムの構成を整理したうえで、パッケージとスクラッチ、内製と外注の切り分けを検討することが実務的です。
まとめ:人事評価・タレントマネジメントシステム開発外注の判断軸
本稿では人事評価・タレントマネジメントシステムの位置づけと開発外注の勘所を整理しました。要点は次の3点です。第一に、本システムは目標管理・評価ワークフロー・人材データ分析までを担う仕組みであり、勤怠・給与を扱う人事管理システムとは役割が異なります。第二に、経済産業省の人材版伊藤レポートやISO30414、有価証券報告書の開示義務化といった人的資本経営の潮流が、タレントマネジメントシステムの重要性を高めている点です*1*2*3。第三に、パッケージとスクラッチのどちらを選ぶにせよ、既存の人事データベースとの連携設計と、評価制度の要件整理を担える外注先の見極めが導入の成否を分けます。
よくある質問
人事評価システムとタレントマネジメントシステムは同じものですか。
重なる部分はありますが、範囲が異なります。人事評価システムは評価点の記録や評価ワークフローが中心であるのに対し、タレントマネジメントシステムはこれに加えてスキル・資格管理、配置・後継者計画、人材データ分析までを含む、より広い概念として使われることが一般的です。
勤怠管理システムとの違いは何ですか。
勤怠管理システムは出退勤の記録や労働時間の集計といった定型データの正確な処理を目的とします。一方で人事評価・タレントマネジメントシステムは、目標達成度や評価履歴、スキルといった非定型な人材情報を蓄積し、配置や育成の判断に活かすことを目的としており、扱うデータの性質が異なります。
パッケージ型とスクラッチ開発、どちらを選ぶべきですか。
標準的な評価制度で運用しており早期に導入したい場合はパッケージ型が選ばれやすく、自社固有のグレード制度や複雑な承認フローを持つ場合はスクラッチ開発が検討されやすい傾向にあります。既存の人事データベースとの連携要件も、選定を左右する要素になります。
既存の人事給与システムと連携できますか。
多くの場合、従業員マスタや組織情報をAPIまたはCSVで同期させる設計によって連携が可能です。ただし既存システム側が提供する連携方式によって実現できる範囲は変わるため、導入前に既存システムのインターフェース仕様を確認しておく必要があります。
外注する際に何を確認すればよいですか。
評価制度・グレード制度の設計思想を理解したうえで要件定義を支援できるか、既存の人事給与システムとの連携実績があるかをまず確認します。人事考課情報は機微性が高いため、アクセス権限の設計や履歴管理の方針についても契約前にすり合わせておくと、導入後のトラブルを抑えやすくなります。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:経済産業省「人的資本経営」施策ページ(人材版伊藤レポート、2020年9月公表/人材版伊藤レポート2.0、2022年5月公表)(https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/index.html)
- *2 出典:ISO「ISO 30414:2025 Human resource management — Requirements and recommendations for human capital reporting and disclosure」(2025年8月改定)(https://www.iso.org/standard/30414)
- *3 出典:金融庁「『企業内容等の開示に関する内閣府令』等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等の公表について」(2023年1月31日)(https://www.fsa.go.jp/news/r4/sonota/20230131/20230131.html)
- *4 出典:金融庁「『人的資本可視化指針(改訂版)』の公表について」(https://www.fsa.go.jp/news/r7/sonota/20260323-1/20260323.html)