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2026.07.23 らしくコラム

研究費管理システムの要件|科研費と不正防止の仕組み

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

大学・研究機関のイメージ

この記事のポイント

  • 研究費管理システムは、科研費など競争的資金の予算配分・執行・証跡管理を一元化し、公的研究費ガイドラインが求める体制整備を支える仕組みです。
  • 発注と検収の担当分離、エフォート管理、e-Radとの連携は、不正防止と説明責任の両面で欠かせない要件になります。
  • 一般企業向けの購買・原価・会計システムとは管理単位や参照すべきガイドラインが異なるため、大学・研究機関特有の要件を踏まえた内製・外注の判断が必要です。

研究費管理システムとは?大学等に公的資金のガバナンス強化が求められる背景

研究費経理管理のイメージ

研究費管理システムとは、大学・研究機関が科研費をはじめとする競争的資金について、予算配分から執行、証跡の保管までを一元的に扱う仕組みを指します。文部科学省は「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」(令和3年2月1日改正)において、公的研究費を扱う研究機関に対し、機関内の体制整備とルールの明確化・統一化を求めています*1

図
図:研究費管理の基本フロー(予算配分→発注・検収→執行・証跡管理→e-Rad連携)

この改正は、平成19年2月15日に文部科学大臣決定として策定されたガイドラインの延長線上にあり、公的研究費を配分される機関全体に、職務権限に応じた決裁手続と相互チェックの仕組みを求めるものです*1。あわせて文部科学省は「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成26年8月26日文部科学大臣決定)において、不正行為への対応を研究者個人の責任にとどめず、機関として組織的に取り組む方針への転換を打ち出しました*2

研究費管理システムは、こうした2つのガイドラインが求める体制整備を、日々の予算執行業務の中で実現するための基盤と位置づけられます。表計算ソフトや紙の伝票による管理では、費目・年度・エフォートといった競争的資金特有の管理単位を横断的に把握しづらく、けん制体制の実効性を確認する監査対応にも時間がかかりやすくなります。

予算配分・執行管理と費目・年度をまたぐ実務

費目別・年度別の執行計画と実績の突き合わせ

科研費をはじめとする競争的資金は、物品費・旅費・人件費/謝金・その他といった費目ごとに予算が配分され、年度単位で執行状況を管理する必要があります。研究費管理システムには、配分された予算に対する執行実績を費目別・年度別にリアルタイムで突き合わせ、残額を可視化する機能が求められます。

年度をまたぐ経費の繰越しなど、費目・年度の取り扱いは配分機関や制度ごとに条件が異なる場合があります。日本学術振興会は科研費の「機関使用ルール」と「研究者使用ルール」を区分して定めており*5、繰越しの可否や条件を含む詳細は、都度公式情報で要確認となる点に留意が必要です。

研究者ごとの執行状況を可視化する意義

研究者が複数の競争的資金を並行して受給しているケースでは、資金ごとの執行状況を個別に把握するだけでなく、研究者単位で横断的に集計できる仕組みも欠かせません。予算執行の遅れや偏りを早期に把握できれば、年度末に向けた駆け込み発注のような不適切経理の温床になりやすい状況を未然に防ぎやすくなります。

発注・検収とエフォート管理に見る不正防止のけん制体制

発注担当者と検収担当者を分離するけん制の考え方

「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」は、機関に対し、競争的研究費等の事務処理に関する構成員の権限と責任を明確に定めて理解を共有することを求めています。職務分掌等に規定した職務権限に応じた明確な決裁手続を経て研究費を使用し、他者による相互チェックが持つけん制機能によって不正を防止する考え方が示されています*1

検収についても、物品と同様に役務も検収対象として想定されており、成果物の適否を発注者本人だけでは専門的に判断できない場合には、発注者以外の専門知識を有する者が確認することが求められています*1。研究費管理システムでこの分離を仕組み化するには、発注申請者・承認者・検収者を役割として登録し、同一人物が発注から検収までを一貫して処理できないよう権限を制御する設計が要件になります。

エフォート管理は過度な集中を防ぐための仕組み

エフォートとは、研究者の全仕事時間に対して当該研究の実施に必要な時間の配分割合を示す指標です。文部科学省の通知によれば、平成30年4月1日以降、応募時は電子申請システムに入力し、交付内定後はe-Rad上で一元管理する方式に変更されています*4。複数の競争的資金にまたがるエフォートの合計値が、研究者の全仕事時間に相当する上限を超えている場合は「超過者」として特定され、その状態が解消されるまで交付決定が行われない運用です*4

複数の競争的資金に関わる研究者が多い機関ほど、エフォートの手作業集計は負荷が高くなります。研究費管理システムに研究者単位でエフォートを集計する機能を組み込んでおくと、超過者の早期発見と交付前の是正がしやすくなるでしょう。

研究活動の不正行為・不正使用への対応ガイドラインが求める体制整備

「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成26年8月26日文部科学大臣決定)は、研究機関に対し、不正行為を発生させる要因を把握したうえで不正防止計画を策定・実施することを求めています。あわせて、内部監査の結果を不正防止計画に反映させる運用も盛り込まれています。

日本学術振興会も、独自に「研究活動の不正行為及び研究資金の不正使用等への対応に関する規程」を定め、告発等を受け付ける窓口を監査・研究公正室に設置しています*6。加えて、科研費の交付申請等にあたっては、適正な研究費の使用に関するチェックリストの確認や、使用ルールを遵守する旨の誓約文書の提出・保管が求められています*5

研究費管理システムには、こうしたチェックリストの確認履歴や誓約文書の提出状況、内部監査の指摘事項と是正対応を紐づけて記録し、後から追跡できる証跡管理の機能が求められます。紙やメールでのやり取りだけに頼ると、監査時に必要な記録を探し出す作業自体が大きな負担になりかねません。

e-Radとの連携要件とシステムに必要な機能

e-Rad(府省共通研究開発管理システム)は、競争的研究費制度を中心として、応募受付・審査・採択・採択課題管理・成果報告等、研究開発管理に係る一連のプロセスをオンライン化する府省横断的なシステムです*3。内閣府をはじめとする関係府省が共同で運営し、2008年1月から運用されています*3

e-Radの目的には、研究資金制度間での情報共有、重複申請や過度な集中の防止、行政手続の簡素化・効率化が含まれます*3。研究費管理システムをこの仕組みと連携させる場合、次のような要件が論点になります。第一に、研究機関番号・研究者番号をe-Rad側のマスタと整合させ、二重登録や表記揺れを防ぐことです。第二に、採択課題ごとの予算・執行実績・エフォートをe-Radへの実績報告データと突き合わせられる形式で保持することです。

第三に、e-Radへの提出履歴や修正履歴を機関内のシステムにも記録し、いつ誰がどの数値を報告したかを追跡できるようにすることです。e-Rad自体は応募・審査・採択管理を担う府省横断の仕組みであり、機関内部での発注・検収・エフォート集計といった日常業務までは代替しません。両者を連携させる設計が、研究費管理システムに求められる中心的な要件になります。

一般的な購買・会計システムとの違い

企業向けの購買・調達管理システムや原価管理システム、会計システム連携は、一般的な支出の承認フローや原価計算、会計仕訳の自動化を主眼とする仕組みです。これに対し、本稿で扱う研究費管理システムは、公的研究費ガイドラインに基づく機関としての説明責任、費目・年度・エフォートという競争的資金特有の管理単位、e-Radへの実績報告連携を扱う点で対象が異なります。

大学・研究機関の中には、既存の会計システムに研究費特有の管理項目を後付けで拡張しようとして、費目区分やエフォート集計の粒度が業務に合わず運用が定着しないケースも見られます。一般的な購買・会計システムの機能を土台にしつつ、公的研究費ガイドラインとe-Radの要件を満たす形で設計し直すかどうかは、早い段階で判断しておきたいポイントです。

内製構築と外注委託のコスト構造比較

研究費管理システムの構築を情報システム部門による内製で進める場合と、外部パートナーへ委託する場合とでは、費用構造・必要スキル・監査対応の重心が異なります。以下の表に主な違いを整理しました。

比較項目 情報システム部門による内製 外注委託
ガイドライン準拠の要件整理 公的研究費ガイドラインの読み解きと業務への落とし込みを自前で行います*1 研究機関向けシステムの実績を持つパートナーの知見を活用できます
e-Rad連携の実装・保守 研究者番号・機関番号の整合設計やAPI連携を自社で開発・保守します*3 連携仕様の設計から保守まで一括して委託できます
けん制体制(職務分掌)の設計 発注・検収の権限分離をシステム要件として自前で定義します*1 他機関での設計事例を踏まえた権限モデルを提案してもらえます
監査対応・証跡整備 内部監査で求められる証跡項目の洗い出しを自前で継続します*2 監査対応を見据えたログ設計・保守を含めて依頼できます

導入を進めるステップと外注先選定の視点

現状業務と規程の棚卸しから始める

研究費管理システムの導入は、いきなりシステム選定から着手すると要件が定まらず手戻りが生じやすくなります。まず、自機関の経理規程・職務分掌規程が公的研究費ガイドラインの求める水準を満たしているかを棚卸しし、発注・検収の担当分離やエフォート集計の現状フローを可視化することが出発点です。

次に、費目・年度をまたぐ執行ルール、エフォート集計の対象範囲、e-Radとの連携方式について要件を定義します。この段階で自機関だけでは判断がつかない論点が残る場合は、公式ガイドラインの記載を確認するか、専門家への相談を検討する必要があるでしょう。

外注先を選ぶ際に確認したい視点

外注委託を検討する場合は、大学・研究機関向けの案件経験があるか、公的研究費ガイドラインやe-Rad連携の要件を踏まえた提案ができるか、監査対応を見据えた証跡設計の実績があるかを確認しておきたいところです。研究機関特有の管理単位を理解しないままシステムを構築すると、後から費目区分やエフォート集計の粒度を作り直す手間が発生しかねません。

まとめ:研究費管理システム導入の3つの判断軸

本稿では、大学・研究機関における研究費管理システムの要件を、公的研究費ガイドラインとe-Radに関する公式情報に基づいて整理しました。要点は次の3つに集約できます。第一に、予算配分から執行、証跡管理までを一元化する仕組みは「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」が求める体制整備の基盤になります*1。第二に、発注・検収の担当分離とエフォート管理は、不正防止のけん制体制として欠かせない要件です*1*4。第三に、e-Radとの連携やガイドラインの読み解きには専門知識が必要であり、一般的な購買・会計システムとは異なる要件を踏まえた内製・外注の判断が求められます*3

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、業務システムの開発・保守を元請(プライムベンダー)として受託しています。大学・研究機関の研究費管理システムについても、公的研究費ガイドラインの読み解きから発注・検収のけん制体制設計、e-Radとの連携要件整理まで、貴機関の規程・運用に合わせて伴走します。自機関だけでの要件整理に不安がある場合は、まずは現状の経理規程・執行フローの棚卸しからご相談ください。

よくある質問

研究費管理システムを導入すれば科研費の獲得可能性は上がりますか。

研究費管理システムは、採択された競争的資金の予算執行やけん制体制、e-Rad連携を適切に運用するための仕組みであり、審査そのものに直接作用するものではありません。ただし、公的研究費ガイドラインが求める体制整備を満たしていない場合は交付や配分に影響し得るため、体制整備の観点では重要な位置づけになります*1

e-Radと研究費管理システムはどう違いますか。

e-Radは、応募・審査・採択・成果報告等を扱う府省横断の外部システムです*3。一方、研究費管理システムは機関内部の予算執行・発注検収・エフォート集計といった日常業務を扱う仕組みで、両者はデータ連携によって補完し合う関係になります。

エフォート管理は具体的にどのように行えばよいですか。

研究者ごとに全仕事時間に対する研究実施時間の配分割合を把握し、複数の競争的資金にまたがる合計値が全仕事時間相当の上限を超えていないかを確認します。超過者は交付決定が留保される運用になっているため*4、交付前の早期確認が欠かせません。

小規模な研究室で発注担当者と検収担当者を分けるのが難しい場合はどうすればよいですか。

ガイドラインは、発注者以外の専門知識を有する者によるチェックを想定しており、大規模な人員体制だけを前提としているわけではありません*1。事務部門など発注に直接関与しない部署が検収を確認する運用や、システム上で承認ルートを分ける設計により、少人数の体制でもけん制機能を持たせることは可能です。

内製と外注はどちらで進めるべきですか。

まずは自機関の経理規程・職務分掌が公的研究費ガイドラインの水準を満たしているかを棚卸しし、費目・年度・エフォート・e-Rad連携の要件を整理することが出発点です。そのうえで、社内に専門知識を蓄積する余力があるかどうかを踏まえ、内製と外注のいずれで進めるかを判断することになります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:文部科学省「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」(令和3年2月1日改正)(https://www.mext.go.jp/a_menu/kansa/houkoku/1343904_21.htm
  2. *2 出典:文部科学省「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成26年8月26日文部科学大臣決定)(https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/1351568.htm
  3. *3 出典:e-Rad(府省共通研究開発管理システム)公式サイト「e-Radとは」(https://www.e-rad.go.jp/about.html
  4. *4 出典:文部科学省「科学研究費助成事業における平成30年4月1日以降のエフォート管理について」(https://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/hojyo/1402832.htm
  5. *5 出典:日本学術振興会「科学研究費助成事業(科研費)-使用ルール」(https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/16_rule/shiyourule.html
  6. *6 出典:日本学術振興会「研究活動の不正行為及び研究資金の不正使用等への措置について」(https://www.jsps.go.jp/j-kousei/sochi.html


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