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出社回帰とリモート活用の両立|エンジニア確保の視点
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- 出社回帰は生産性やコミュニケーションを理由に一定の広がりを見せていますが、IT人材の確保にはリモート・ハイブリッドの活用が引き続き重要な論点です。
- 出社頻度の急な引き上げはエンジニアの転職検討につながりやすいという調査結果があり、離職リスクの見極めが欠かせません。
- 職種特性・セキュリティ・評価制度を軸に自社の働き方を設計し、不足するリソースは地方や社外の人材活用で補う両立が現実的な選択肢になります。
目次
出社回帰とは?なぜ今、揺り戻しが起きているのか
本記事は、出社回帰という時流を軸に、IT人材、とりわけエンジニアの働き方設計と定着・確保をテーマにしています。人材不足を委託で補完する各記事や、地方拠点・ニアショア活用を個別に掘り下げた記事とは切り口が異なる点を、まず明示しておきます。
出社回帰とは、新型コロナウイルス感染拡大を機に広がったテレワークから、フル出社や出社日数の引き上げへと方針を戻す動きを指す言葉として、近年の報道や調査で使われるようになりました。総務省の調査によると、テレワークを導入している企業は47.3%とされており*1、テレワークそのものが消えたわけではなく、企業ごとに出社とリモートの比率を見直す局面に入ったと捉えるのが実態に近いでしょう。
出社回帰が語られる背景としては、対面でのコミュニケーションのしやすさ、新人育成のしやすさ、偶発的な情報共有の機会といった論点が挙げられることが多いようです。総務省の調査でも、テレワークの必要性に対する認識は年代によって差があり、20代では37.4%にとどまる一方、60代では59.7%に達するという傾向が示されています*1。育成段階にある若手層ほど、対面での指導を求める声とリモートを希望する声が併存しやすい構図がうかがえます。
海外でも、一部の大手企業がオフィス回帰の方針を相次いで打ち出したとする報道が見られ、生産性やイノベーション創出をめぐる議論は国内に限った話ではないようです。ただし、こうした動きが特定の業界・企業に偏っている可能性もあり、統計的な裏付けを伴わない報道ベースの情報については、傾向の一つとして参考にするにとどめ、断定的に語れる段階ではない点には留意が必要でしょう。
ここで注意したいのは、出社回帰が全業種・全職種に一律で当てはまる潮流ではないという点です。対面対応が業務上必須の職種と、成果物の提出やオンラインでの連携で完結しやすいエンジニア職とでは、出社の必要性そのものが異なります。次章以降では、出社・リモート・ハイブリッドそれぞれの特性を整理したうえで、エンジニア人材への影響を具体的に見ていきます。
出社・リモート・ハイブリッドの比較:メリットとデメリット
働き方を検討するうえでは、出社・リモート・ハイブリッドの3形態を、コミュニケーション・育成・採用競争力・セキュリティ・コストという複数の観点から横断的に見比べる必要があります。以下の表に主な違いを整理しました。
| 比較項目 | フル出社 | リモートワーク | ハイブリッド |
|---|---|---|---|
| コミュニケーション | 対面での偶発的な会話や相談が生まれやすい一方、離れた拠点のメンバーとは差が出やすい | テキストでの情報共有が中心になり、感情や意図の読み取りに課題が出やすい | 出社日に合わせて対面での会話を確保しつつ、非同期のやり取りも併用できる |
| 育成・OJT | 新人への質問対応やその場での指導がしやすい | マニュアル整備と1on1の頻度設計が育成の鍵になる | 出社日に育成の機会をまとめて配置しやすい |
| 採用競争力 | 通勤圏内の候補者に母集団が限られやすい | 居住地を問わず全国から候補者を募りやすい | 通勤圏の候補者に加え、一定の出社が可能な層まで広げられる |
| セキュリティ・情報管理 | 社内ネットワーク内で完結させやすい | VPNやアクセス制御、端末管理など在宅前提の対策が必須になる | 出社時・在宅時の双方に対応する運用ルールが必要になる |
| オフィスコスト | 全員分の座席・什器を確保する必要がある | 座席規模を縮小できる可能性がある | フリーアドレス等の運用で座席数を調整しやすい |
表からも分かるとおり、どの形態にも一長一短があります。自社にとって重要な軸が育成なのか採用競争力なのかによって、最適な比率は変わってくるでしょう。特にエンジニア職は、次章で見るように出社方針の変化が採用・定着に直結しやすい職種のため、慎重な見極めが求められます。
どの形態を選ぶにしても、経営層が重視する軸と、現場のエンジニアが求める働き方との間にギャップがあると、導入後の運用で摩擦が生じやすくなります。次章では、このギャップがエンジニア人材の採用・定着にどのような影響を及ぼしているかを、具体的な調査結果とあわせて見ていきます。
エンジニア人材への影響:採用競争力と離職のリスク
出社回帰の動きは、エンジニア人材の採用と定着に少なからぬ影響を及ぼしているようです。レバレジーズ株式会社が2025年7月に正社員のITエンジニア654名を対象に実施した調査によると、約4人に1人(23.2%)が「企業の要請で出社頻度が増加した」と回答しています*3。勤務形態としてはハイブリッド型が44.6%と最多で、週2〜3日出社が一つの目安になっている様子がうかがえます*3。
同調査では、現在リモートワーク中のエンジニアの約8割が今後も継続を希望していると回答し、現在非リモート勤務のエンジニアでも約4割がリモートを希望しているという結果が示されています*3。この点は、出社回帰 退職というキーワードで検索する担当者が少なくない背景にもつながっているのではないでしょうか。
とりわけ注目したいのは、出社回帰方針に対する反応です。同調査では、出社回帰方針が敷かれた場合に「同職種での転職を検討する」と答えたエンジニアが約4割(43.7%)に上り、30代に限ると過半数に達したとされています*3。さらに「どのような制度・環境が整っても出社は検討できない」という強いリモート志向を持つ層も約6人に1人(16.2%)存在すると報告されています*3。
これらの数値は特定の調査によるものであり、すべての企業・エンジニアに当てはまると断定はできません。ただし、労働力人口の減少が進む中でIT人材の獲得競争が続いていることを踏まえると、出社方針の急な転換が離職の引き金になり得るという傾向は、採用・人事の担当者が押さえておくべき論点でしょう。エンジニアという専門職の特性上、リモート勤務に対応する競合他社への流出リスクも軽視できません。
出社比率の設計は、既存社員の定着だけでなく、これから採用する候補者の母集団の広さにも影響します。育児や介護と両立しながら働くエンジニア、地方に住みながら都市部の企業で働きたいエンジニアにとって、フル出社が応募の前提条件になっていると、応募自体をためらう要因になりかねません。柔軟な勤務形態を用意できるかどうかが、採用競争力を左右する時代に入りつつあると言えるでしょう。
自社の方針を決める4つの判断軸
出社比率をどう設定するかは、感覚や世間の潮流だけで決めるのではなく、自社の状況に即した判断軸に沿って検討する必要があります。以下のフロー図は、判断から制度化までの大まかな流れを示したものです。
この流れに沿って、実務上押さえておきたい4つの判断軸を整理します。
- 職種特性:インフラ保守やオンサイト対応が多い職種か、開発・設計中心でリモートとの親和性が高い職種かによって、必要な出社頻度は大きく変わります。
- セキュリティ:社内ネットワークへの依存度、端末管理やアクセス権限の設計状況によって、リモート比率を高める際に整備すべき対策の量が変わります。
- 評価制度:勤務時間や在席状況に基づく評価が中心の場合、リモート比率を上げると評価の納得感が下がりやすくなります。成果ベースの評価軸をどこまで整備できているかが分かれ目になります。
- オフィス投資:座席数、フリーアドレスの導入、サテライトオフィスの活用など、出社比率の見直しに合わせてオフィスへの投資方針も再検討が必要になります。
この4軸は独立しているようで相互に関連します。たとえばセキュリティ対策が手薄なままリモート比率だけを上げると、情報管理上のリスクが先に顕在化しかねません。逆に評価制度を成果ベースへ整えないまま出社回帰を進めると、リモートを希望していたエンジニアの離職につながりやすくなるでしょう。4つの軸をセットで点検する姿勢が欠かせません。
実務でよく見られる失敗は、同業他社の動向だけを参考にして出社比率を決めてしまうケースです。「同業他社がフル出社に戻した」という情報だけで自社も方針転換すると、セキュリティ対策や評価制度の整備が追いつかないまま運用が始まり、後になって不満や離職という形で表面化しやすくなります。他社事例はあくまで参考情報の一つと位置づけ、自社の職種構成や採用状況に照らして判断する姿勢が欠かせません。
人材確保の選択肢:柔軟な制度設計と外部リソースの活用
自社のエンジニアを定着させるには、一律のフル出社を強制するのではなく、職種や業務内容に応じた柔軟な制度設計が現実的な選択肢になります。たとえば出社日数の下限だけを定めてチーム内の裁量に委ねる、コアタイム制と組み合わせて出社・退社時刻の融通を利かせる、評価基準を成果・アウトプット中心に見直すといった工夫が考えられます。
それでもなお、自社だけではエンジニアが不足するという企業は少なくありません。採用競争が激しい都市部だけに求人を絞るのではなく、地方在住のエンジニアや社外のリソースを組み合わせる選択肢も現実的な一案です。地方には、フルリモートやハイブリッドであれば就業可能な経験豊富なエンジニアが一定数存在しており、地理的な制約を緩めることで採用母集団を広げられる余地があります。
LASSICのようなITソリューション企業のニアショア開発体制や受託開発の活用は、自社の出社方針を大きく変えずに開発リソースの不足分を補う一つの手段です。自社エンジニアの働き方設計と、外部リソースの活用は二者択一ではなく、組み合わせて検討する発想が現実的でしょう。地方エンジニアの採用難やニアショア活用の詳細については、テーマを絞った別記事で個別に掘り下げていますので、あわせてご確認いただくことをおすすめします。
制度・ルールを文書化し、記録を残す
働き方を柔軟にするほど、口頭の運用に頼らず就業規則やテレワーク規程として明文化しておく重要性が増します。厚生労働省と総務省が共同運営するテレワーク総合ポータルサイトでは、テレワークの導入プロセスやテレワークモデル就業規則の考え方が公開されており*2、労働時間の把握方法や費用負担の取り決めなど、記録に残すべき項目を確認する際の参考になります。
出社日数の下限やコアタイムの運用実績についても、決めたままにせず、実際の運用状況を定期的に記録・振り返る仕組みを設けておくと、制度の見直しがしやすくなります。特にハイブリッド勤務では、部署やチームによって運用実態にばらつきが出やすいため、全社共通のルールと、現場裁量に委ねる範囲を文書上で切り分けておくことが、後々のトラブル防止につながるでしょう。
まとめ:出社回帰の時代にエンジニアを確保する3つの視点
本稿では、出社回帰というトレンドをエンジニアの働き方設計と人材確保の観点から整理しました。要点は次の3つに集約できるでしょう。第一に、出社回帰は生産性や育成、コミュニケーションといった論点から広がりを見せていますが、テレワーク自体が縮小しているわけではなく、企業ごとに比率を見直す局面にあります*1。第二に、出社頻度の急な引き上げはエンジニアの転職検討につながりやすいという調査結果があり、離職リスクを踏まえた慎重な制度設計が求められます*3。第三に、職種特性・セキュリティ・評価制度・オフィス投資という4つの判断軸で自社方針を固めたうえで、不足するリソースは地方エンジニアや外部パートナーの活用で補う両立が、現実的な人材確保の道筋になります。
よくある質問
出社回帰はすべての企業に当てはまる流れですか。
一律の傾向とは言い切れません。総務省の調査でもテレワークを導入している企業は47.3%とされており*1、業種・職種によって出社とリモートの最適な比率は異なります。自社の業務特性を踏まえて個別に判断することが大切です。
出社頻度を上げると、エンジニアの離職リスクは高まりますか。
レバレジーズ株式会社の調査では、出社回帰方針に対して約4割のITエンジニアが同職種での転職を検討すると回答しており、30代では過半数に達したと報告されています*3。すべてのケースに当てはまるとは限りませんが、離職リスクを見込んだ制度設計が望ましいでしょう。
ハイブリッド勤務を導入する際、特に注意すべき点は何ですか。
セキュリティ面ではVPNやアクセス制御、端末管理など出社・在宅の双方に対応する体制が必要です*2。加えて、評価制度を在席状況ではなく成果ベースに近づけておくと、出社日数の差による不公平感を抑えやすくなります。
自社にエンジニアが不足している場合、リモート採用以外にどのような選択肢がありますか。
全国から採用できるリモート求人に加えて、地方在住のエンジニアや外部パートナーの開発体制を組み合わせる方法があります。LASSICのようなニアショア開発の実績を持つ企業に、体制強化の一部を相談するのも一つの選択肢です。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:総務省「令和7年版 情報通信白書|テレワーク・オンライン会議」(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd21b220.html)
- *2 出典:厚生労働省・総務省「テレワーク総合ポータルサイト」(https://telework.mhlw.go.jp/)
- *3 出典:レバレジーズ株式会社(レバテック)「出社回帰で約4割のITエンジニアが同職種での転職を検討」(https://levtech.co.jp/research/4063975/)