LASSIC Media らしくメディア

2026.09.29 採用支援コラム

外部人材活用の経理処理、外注費と給与の違いと源泉徴収の確認




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • 外部人材への支払いが給与か事業者への報酬かは、契約の名前ではなく働き方の事実から判定されます。
  • 源泉徴収の対象は所得税法204条に列挙された報酬で、講師料やデザイン料などが請求書に混ざることがあります。
  • 免税事業者からの仕入れで控除できる割合は、2026年10月1日から80%が70%に下がります。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

業務委託で来てもらったエンジニアへの支払いは、外注費で処理してよいのか。請求書に源泉徴収の欄が無いけれど、差し引かなくてよいのか——。外部人材を使い始めた開発の現場には、こうした質問が経理から届きがちです。外部人材活用の経理処理とは、社外の専門人材に払う報酬について、所得税と消費税の扱いを決め、帳簿と書類を整えることを指します。

経理処理そのものは経理部門や税理士が担いますが、判断の材料になる契約の中身や作業の進め方を知っているのは、仕事を頼んだ開発の担当者です。ただし、税務の結論は契約書の題名だけでは決まりません。本記事では、開発の現場を回すマネージャーに向けて、外注費と給与の違い、源泉徴収が必要な報酬、支払調書、インボイス制度での仕入税額控除、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。

黒・紫・青・緑・橙・赤の表紙のノートを扇形に重ねて広げた写真

外部人材活用の経理処理とは

外部人材活用の経理処理で確かめることは、大きく3つです。1つ目は、その支払いが給与なのか、独立した事業者への報酬なのか。2つ目は、報酬だとして、源泉徴収(支払う側が所得税を差し引いて国に納めること)の対象になるか。3つ目は、消費税の仕入税額控除(納める消費税から、仕入れで払った消費税を差し引くこと)を受けられるかです。

どれも、答えを左右するのは契約書に書いた条件と、実際の働き方、そして請求書の項目です。経理部門は請求書を受け取った時点でしか取引を見られません。「週に何日、何時から作業してもらっているか」「どの作業の対価か」「開発に使うパソコンは誰のものか」といった事実は、現場の担当者に聞かないと分からないのです。先に説明できるようにしておくと、支払いのたびに確認の往復が起きにくくなります。

外注費と給与の違い

国税庁の消費税法基本通達1-1-1は、事業者を「自己の計算において独立して事業を行う者」としています。自分の負担と判断で事業を営む人という意味です。給与と報酬は、受け取った対価が「雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価であるかどうか」で区分し、はっきりしないときは次の4つの点をあわせて見て判定するとされています。*1

  • その仕事を、本人以外の人に代わってもらえるかどうか
  • 仕事の進め方について、発注した会社の指揮監督を受けるかどうか
  • 納品前の成果物が災害などで失われても、それまでの作業分の報酬を請求できるかどうか
  • 仕事に使う材料や道具を、発注した会社から渡されているかどうか

所得税では、国税庁の通達が、これに「作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束」を受けるかどうかを加えています。*2 大工や左官などの報酬を対象にした通達ですが、国税庁が判定のときにどんな事実を見るかが分かります。

区分の結果で、経理処理は大きく変わります。給与と判定された支払いは、消費税法で課税仕入れ(控除の対象になる仕入れ)から除かれているため、仕入税額控除の対象になりません。*3 所得税も、報酬ではなく給与として源泉徴収することになります。開発用のパソコンを会社が貸しているか、作業時間を会社が指定しているかは、どちらもこの判定の材料になる事実です。

源泉徴収が必要な報酬

報酬の源泉徴収は、支払う報酬すべてにかかるわけではありません。所得税法204条1項が対象を列挙しています。原稿やデザインの報酬、講演料、弁護士・税理士・技術士などの業務に関する報酬などです。*4 国税庁のタックスアンサーNo.2792によると、対象は支払を受ける人が個人か会社かで異なり、会社に払う場合として挙がっているのは「馬主である法人に支払う競馬の賞金」です。*6 個人に払う場合とは、対象が大きく異なります。

個人のフリーランスのエンジニアに払う報酬では、列挙に当たる項目が混ざっていないかを見ます。所得税法施行令320条は、翻訳・通訳・校正の報酬や「知識の教授の報酬」を源泉徴収の対象に加えています。*5 社内勉強会の講師料やマニュアルの翻訳料は、ここに当たるかを確かめる項目です。デザインの報酬は、所得税基本通達204-7が工業デザイン、グラフィックデザイン(広告、ポスター、包装紙等)など9つの種類を挙げています。*7

技術士の業務に関する報酬にも注意が要ります。施行令320条2項は、技術士の資格がなくても「技術士の行う業務と同一の業務を行う者」を対象に含めています。 国税庁の「源泉徴収のあらまし」は、その業務を、科学技術に関する高度な専門知識が要る事項の計画、研究、設計、分析、試験、評価と、それらの指導の業務と説明しています。*8 システムの設計や評価を頼む契約がこれに当たるかどうかは、作業の中身を添えて税理士に確かめてください。

対象になる報酬の税額は、1回の支払金額が100万円以下なら10.21%、100万円を超える部分は20.42%です。*9 名目を「謝礼」や交通費にしても、中身が対象の報酬と同じなら源泉徴収の対象になります。

請求書の項目ごとに確かめる

1人の外部人材に、開発の作業と社内向けの講師を一緒に頼むことがあります。請求書が1枚でも、源泉徴収の要否は項目ごとに分かれるかもしれません。下の表は、開発の現場で請求書に並びやすい項目と、確かめることを並べたこの記事の整理です。

請求書の項目ごとに確かめることの例
請求書の項目の例 確かめること 見る条文・通達
システムの設計、プログラムの作成 給与と事業者への報酬のどちらか。報酬なら、技術士と同一の業務に当たるか 消費税法基本通達1-1-1、所得税法施行令320条2項
社内勉強会の講師 講演料や知識の教授の報酬に当たるか 所得税法204条1項1号、施行令320条1項
画面や広告のデザイン 通達が挙げるデザインの種類に当たるか 所得税基本通達204-7
マニュアルの執筆、翻訳 原稿や翻訳の報酬に当たるか 所得税法204条1項1号、施行令320条1項
交通費、宿泊費 本人に渡すか、交通機関やホテルに会社が直接払うか 所得税基本通達204-4

最後の行の旅費は、支払い方で扱いが変わります。所得税基本通達204-4では、会社が交通機関やホテルに直接支払い、金額が「通常必要であると認められる範囲内」なら、源泉徴収をしなくて差し支えないとされています。*7 本人が立て替えて請求書に載せてくる場合は、報酬に含めて源泉徴収の対象になります。

項目ごとに分けて書いてもらうよう、発注の段階で頼んでおくと、経理部門が請求書だけで判断しやすくなります。請求書の書き方は、契約の前に相手と決めておくのが確実です。

支払調書の提出

所得税法204条1項の報酬を支払った会社は、支払を受ける人ごとに「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を作り、支払の確定した年の翌年1月31日までに税務署長に提出します。 支払調書には、支払金額と源泉徴収税額のほか、支払を受ける人の個人番号(マイナンバー)も記載します。原稿料や技術士業務の報酬のような報酬では、同じ人へのその年の支払金額が5万円以下なら提出は要りません。提出の方法にも変更があります。法定調書(支払調書や源泉徴収票など税務署に出す書類)の種類ごとに、前々年に出すべきだった枚数が30枚以上なら、e-Tax(国税の電子申告の仕組み)などで提出します。2026年12月31日までに出す分は、この基準が100枚以上です。*10

外部人材活用を広げて個人との契約が増えると、この枚数に近づくことがあります。現場の担当者に関わるのは、個人番号の受け取りです。個人の外部人材と契約するときに、誰がいつ番号を受け取り、どこに保管するかを経理部門と決めておくと、年明けにまとめて集め直す手間が減ります。番号を扱うときの管理の手順は「マイナンバーの安全管理措置」で扱っています。

インボイス制度での仕入税額控除

インボイス制度(適格請求書等保存方式)では、一定の事項を記載した帳簿と、適格請求書などの請求書等の保存が仕入税額控除の要件です。適格請求書を出せるのは税務署長の登録を受けた事業者だけで、登録番号は「T+13桁の数字」の形をとり、国税庁の公表サイトで確かめられます。*11

登録を受けていない免税事業者などからの課税仕入れは、原則として控除できません。ただし経過措置があり、2026年9月30日までは仕入税額相当額(仕入れにかかった消費税に当たる額)の80%を控除できます。この割合は2026年10月1日から70%に下がり、その後も段階的に下がって、経過措置は2031年9月30日までとされています。また、2026年10月1日以後に始まる課税期間では、1つの免税事業者等からの経過措置の対象となる課税仕入れが税込みで年1億円を超えると、超えた部分には経過措置を適用できません。帳簿には「80%控除対象」のように、経過措置を受ける課税仕入れであることを書いておきます。*12

免税事業者等からの課税仕入れで、仕入税額相当額のうち控除できる割合の推移を示す棒グラフ。2023年10月1日から2026年9月30日までは80%、2026年10月1日から2028年9月30日までは70%、2028年10月1日から2030年9月30日までは50%、2030年10月1日から2031年9月30日までは30%。出典は国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問113。

割合の切り替わりで迷いやすいのが、月をまたぐ作業です。国税庁のQ&Aは、役務の提供(作業やサービスの提供)を受けた場合の課税仕入れの時期を「原則として、その約した役務の全部が完了した日」としています。9月21日に始まり10月20日に完了した役務なら、70%の割合を使う例が示されています。*13 作業の完了日を記録しておくと、経理部門が割合を選ぶ材料になります。

外部に委託するときに確認しておきたい点

契約の前に確かめておきたいのは、次の4つです。相手が個人か会社か。個人なら適格請求書発行事業者の登録番号があるか。頼む作業に、講師やデザイン、執筆や翻訳のような源泉徴収の対象になりうる作業が含まれるか。旅費を本人に払うか、会社が直接払うか。この4つは契約書と発注書に書ける事実なので、経理部門と税理士に渡す材料にもなります。

人材を紹介する会社や仲介の会社を通じて契約する場合は、支払先がその会社になります。支払先が会社か個人かで源泉徴収の対象は異なるため、請求書の発行元が誰かを確認しておきます。 税務の判断は、同じ契約でも働き方しだいで結論が変わることがあります。この記事の整理は判断の材料をそろえるためのもので、個別の判断は税理士に確かめるのが確実です。

まとめ:経理処理で確かめておきたい3つの点

外部人材活用の経理処理を進めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、その支払いが給与か事業者への報酬かを、契約の条件と実際の働き方から説明できるようにしておくこと。第二に、報酬の中に源泉徴収の対象になる項目があるかを請求書の項目ごとに見て、支払調書と個人番号の扱いまで経理部門と決めておくこと。第三に、相手の登録番号を確かめ、免税事業者なら2026年10月1日からの割合の変更を踏まえておくことです。この3点を踏まえておけば、「年明けになって源泉徴収の漏れと支払調書の不足が見つかった」という事態を避けやすくなります。契約の形や作業の分け方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

外部人材活用の経理処理は、契約の形と頼む作業が決まっていると確かめやすくなります。頼みたい作業を整理したうえで、業務委託で開発に加わる専門人材を探す方法も選択肢に入れておけます。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

源泉徴収した所得税は、いつまでに納めますか

支払った月の翌月10日までに納めます。国税庁のタックスアンサーNo.2795では、原稿料や講演料から源泉徴収した税額は、納期の特例(給与の源泉所得税をまとめて納める特例)の対象とならないとされています。*9 給与の源泉徴収で納期の特例を受けている会社でも、報酬の分は毎月の納付になる点に注意します。

請求書の消費税の分にも源泉徴収しますか

原則は消費税を含めた金額が対象です。ただし、請求書で報酬の額と消費税等の額が明確に区分されていれば、報酬の額だけを対象にして差し支えないとされ、インボイス制度の開始後もこの扱いは変わっていません。

海外に住むエンジニアに報酬を払う場合も同じ扱いですか

同じではありません。国税庁の「源泉徴収のあらまし」は、非居住者や外国法人に支払う所得を別の章で扱っています。 住所が国外にある人との契約では、日本と相手の国の租税条約の有無も確かめる必要があります。

支払調書の写しを本人に渡すときに気をつけることはありますか

写しを渡す場合、支払をする者と支払を受ける者の個人番号は記載できません。 税務署長に出す支払調書とは記載内容が異なるので、控えをそのまま渡さないようにします。

外部人材との契約の形から相談したいとき

頼みたい作業と、契約の形の整理からご相談いただけます。

Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。

Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。

無料相談はこちら

出典

  1. *1 参考:国税庁「消費税法基本通達 第1章第1節 個人事業者の納税義務」(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/01/01.htm)。出典:消費税法基本通達1-1-1(個人事業者と給与所得者の区分)を参照(2026年9月確認)
  2. *2 参考:国税庁「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて(法令解釈通達)」(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/shinkoku/091217/01.htm)。出典:平成21年12月17日課個5-5。記2(所得区分の判定で総合勘案する5つの事項)を参照(2026年9月確認)
  3. *3 参考:e-Gov法令検索「消費税法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/363AC0000000108)。出典:消費税法(昭和63年法律第108号)第2条第1項第12号(課税仕入れの定義)を参照(2026年9月確認)
  4. *4 参考:e-Gov法令検索「所得税法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033)。出典:所得税法(昭和40年法律第33号)第204条第1項・第2項第1号(源泉徴収義務)を参照(2026年9月確認)
  5. *5 参考:e-Gov法令検索「所得税法施行令」(https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000096)。出典:所得税法施行令(昭和40年政令第96号)第320条第1項・第2項を参照(2026年9月確認)
  6. *6 参考:国税庁 タックスアンサー No.2792「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2792.htm)。出典:令和8年4月1日現在法令等。居住者・内国法人ごとの対象と、注意事項4(消費税等の額の扱い)を参照(2026年9月確認)
  7. *7 参考:国税庁「所得税基本通達 法第204条《源泉徴収義務》関係」(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/36/01.htm)。出典:所得税基本通達204-2(報酬、料金等の性質を有するもの)・204-4(支払者が負担する旅費)、同204-7(デザインの範囲、https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/36/02.htm)を参照(2026年9月確認)
  8. *8 参考:国税庁「令和8年版 源泉徴収のあらまし」(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/aramashi2026/index.htm)。出典:第5 報酬・料金等の源泉徴収事務(技術士又は技術士補の業務に関する報酬・料金)と、第10 非居住者又は外国法人に支払う所得の源泉徴収事務の章立てを参照(2026年9月確認)
  9. *9 参考:国税庁 タックスアンサー No.2795「原稿料や講演料等を支払ったとき」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2795.htm)。出典:令和8年4月1日現在法令等。源泉徴収の方法(税率)と納付の期限・納期の特例の対象外を参照(2026年9月確認)
  10. *10 参考:国税庁「令和8年版 源泉徴収のあらまし 第11 源泉徴収票及び支払調書の提出」(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/aramashi2026/pdf/13.pdf)。出典:Ⅳ 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書(提出期限・提出不要の基準・写しの交付)と、e-Tax等による提出の基準を参照(2026年9月確認)
  11. *11 参考:国税庁 タックスアンサー No.6498「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6498.htm)。出典:仕入税額控除の要件(買手の留意点)と、登録番号の構成・公表サイトを参照(2026年9月確認)
  12. *12 参考:国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問113(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/113.pdf)。出典:問113(免税事業者等からの仕入れに係る経過措置、令和8年4月改訂)の期間と割合、課税期間ごとの金額、帳簿の記載事項を参照(2026年9月確認)
  13. *13 参考:国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問113-3(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/113-3.pdf)。出典:問113-3(令和8年10月1日前後の取引に係る経過措置の適用、令和8年4月追加)を参照(2026年9月確認)




View