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副業エンジニアの夜間稼働、返事が遅れる理由と稼働時間の決め方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 平日の副業に使われた時間の45.0%は18時から24時で、社内の技術者が働いている時間とはあまり重なりません。
- 社内の担当者が夜に届いた質問やレビューの依頼に翌日の何時までに返すかを決め、往復の日数を納期に入れます。
- 夜間の障害の最初の対応と本番作業は社内の担当者が受け持ち、副業エンジニアには自分が作った部分の説明を頼みます。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
質問を送っても、返事が来るのは夜遅く。翌朝その返事を読んで聞き直すと、次の返事はまた夜になる。レビューを頼まれても社内の担当者が見るのは翌日の日中になり、直した版が届くのはさらに次の夜——。本業を持つエンジニアに開発を頼む現場では、こうしたやり取りの遅れが起こりがちです。副業エンジニアの夜間稼働とは、本業を持つエンジニアが、本業の勤務を終えた後の夜の時間に、頼まれた作業を進めることを指します。
夜間稼働は、日中に時間を取れない人にも開発を頼めるやり方です。ただし万能ではなく、社内の担当者が働いている時間と重ならないため、1回のやり取りに1日かかることもあります。本記事では、副業エンジニアに業務委託で開発を頼むマネージャーに向けて、副業が行われている時間帯、社内の勤務時間とのずれ、返事とレビューの期限の決め方、障害対応と本番作業の時間帯、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
副業エンジニアの夜間稼働とは
夜間稼働は、作業する時間の長さではなく、作業する時刻の話です。週に何時間を見込むかは「副業エンジニアの稼働時間、依頼の前に決める3つのこと」で扱いました。同じ週10時間の稼働時間でも、平日の夜に作業する人、朝の始業前に作業する人、週末の日中にまとめて作業する人がいて、社内とのやり取りの進み方はそれぞれ違います。本記事では、平日の夜と週末の作業を中心に見ていきます。
副業に使う時間の長さには、総務省の「社会生活基本調査」(2021年10月)に手がかりがあります。15分ごとに何をしていたかを記録してもらう調査で、仕事をしている人のうち、調査の日に副業をした人は0.7%、その人たちが副業に使った時間は平均3時間15分でした。*1 専門的・技術的職業に就く人に限ると、副業をした人は0.4%、平均の時間は3時間47分です。*1
本業を終えてから3時間作業すれば、終わるのは夜の遅い時刻です。夜間稼働の人に頼むときは、その時刻に社内の誰が返事をできるのか、あるいは返事を翌日に回すのかを、先に決めておく必要があります。
副業は何時に行われているか
同じ調査は、副業をしていた人の割合を15分ごとに集計しています。*2 平日の15分ごとの割合を時間帯ごとに合計すると、副業に使われた時間のうち45.0%が18時から24時、21.3%が0時から9時、33.6%が9時から18時でした(筆者算出)。土曜日は9時から18時が65.5%、日曜日は68.5%で、週末は日中に作業する人が多くなります。
副業をした人は仕事をしている人の1%に満たず、約1万人の回答者のうち副業をした人はごく一部なので、時間帯ごとの割合は大まかな目安として見ておきます。それでも、平日の副業の3分の2ほどが朝9時より前か夕方6時より後に行われている点は、依頼する側が知っておきたい数字です。
平日の夜に作業する人は本業を終えてから作業を始め、週末に作業する人は土曜や日曜の日中にまとめて進めます。平日の日中は本業の勤務中なので、すぐには返事が来ないものとして予定を組みます。どちらの人に頼むかによって、質問を送る時刻、レビューを返す時刻、打ち合わせを入れられる曜日が変わるため、作業する曜日と時間帯を稼働時間と一緒に聞いておきます。
社内の勤務時間とのずれ
では、社内の技術者は何時まで仕事をしているのでしょうか。同じ調査のうち、より多くの人(約18万人)が回答した集計で、技術者を含む専門的・技術的職業に就く人が平日に仕事をしていた割合を見ると、最も高いのは11時から11時15分までの76.6%です。*3 17時からの15分間では63.9%、18時からは41.5%、19時からは23.8%、20時からは13.8%、21時からは8.9%まで下がります。*3
平日の副業の時間の多くが集まる18時以降には、この職業に就く人の多くはもう仕事をしていません。土曜日に仕事をしていた人の割合は、最も高い10時30分からの15分間でも27.1%、日曜日は15時15分からの15分間の12.8%です。*3 平日の夜も週末も、副業の人が作業する時間と、社内の人が働いている時間は、重なる部分が短くなります。
このずれを前提に決めごとを作っておかないと、質問や確認のたびに1日ずつ待つことになります。社内の担当者に夜の返事を頼めば待つ時間は減りますが、今度は社内の担当者の勤務時間が延びます。先に決めておきたいのは、どの連絡を翌日に回してよいか、どの連絡だけは重なる時間に済ませるかです。
返事の期限と質問の書き方
まず、社内の担当者が返事をする期限を決めます。夜に届いた質問には翌日の17時までに返す、と決めておけば、副業エンジニアはその夜の作業を始める前に答えを読めます。担当者が休む日や会議で返せない日もあるので、代わりに返事をする人も決めておきます。
次に、質問の書き方をそろえます。何を知りたいのか、考えられる選択肢、答えが来るまでに進められる作業は何か——この3つを書いてもらうと、1回の返事で次に進める場合が増えます。返事が来ないまま次の作業に入ってよいかどうかも、作業ごとに決めておきます。仮の判断で進めてよい作業と、返事を待つべき作業を分けておけば、待つ間に作業が止まりません。
重なる時間を使うのは、文字のやり取りでは片づかない話だけにします。仕様の食い違いや作業の優先順位の変更は、チャットで何往復もするより、短い打ち合わせで決めたほうが早く済みます。平日の19時台に週1回30分を取るのか、土曜日の午前に取るのかは、社内の参加者の勤務時間と本人の予定の両方から選びます。
レビューと承認の待ち時間
コードのレビュー(書いたプログラムを別の人が読んで確かめる作業)も、同じずれの影響を受けます。夜に出されたレビューの依頼を社内の担当者が翌日の日中に見て、指摘を受けた本人がその夜に直し、翌日にもう一度確かめる。これで1往復に1日かかります。指摘が2回あればレビューを3回受けることになり、1つの作業が終わるまでに3日かかります。
作業を5つに分けて順に頼むなら、指摘が無くても5日、指摘が2回ずつあれば15日を、レビューを待つ日数として見込みます。納期を決めるときは、作業の時間に加えて、この待ち時間を日数で数えておきます。待つ日数を減らすには、社内の担当者がレビューで確かめる点の一覧を先に本人へ渡しておき、1回目のレビューで指摘がまとめて出るようにするのが有効です。
作業の完了を認めて本番用のプログラムに取り込む人(承認する人)も決めておきます。承認する人が1人しかいないと、その人が休んだ日は作業が止まるため、承認する人とその代わりの人、レビューを返す期限を決めて本人に伝えます。週末に作業する人が金曜日の夜に出したレビューの依頼は、社内では月曜日まで読まれません。金曜日の日中までに次の作業の質問に答えておくか、週末は別の作業を進めてもらうかを決めておきます。
障害対応と本番作業の時間帯
夜に作業している人でも、夜間に起きた障害(システムが止まる、動きがおかしくなるといった不具合)の最初の対応は、任せずに社内で受け持つ形にしておきます。本業の勤務中は連絡がつかず、夜も毎日作業するわけではないからです。障害が起きたときに最初に動く人は、社内の当番か、障害対応の契約を結んだ保守の会社の中から決めておきます。
副業エンジニアには、自分が作った部分について、障害の原因を調べるときに説明してもらう役割を頼むのが現実的です。そのために、障害のときの連絡手段と、連絡してよい時刻を決めておきます。平日の日中は本業の勤務中で返事が遅れることを、社内の担当者にも伝えておきます。
本番作業(利用者が使っている環境へのプログラムの反映やデータの移行)の時間帯も決めておきます。夜に行う場合でも、社内の担当者が立ち会い、元の状態に戻す手順を社内で実行できるようにしておきます。本番環境を操作する権限を副業エンジニアに渡すかどうかも、このときに決めます。本番作業の日時は早めに決め、本人の本業の予定と重ならないことを確かめておきます。
夜間の作業と健康への配慮
夜の作業が続くと、本人の睡眠の時間が削られます。厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、副業をする労働者について「自ら各事業場の業務の量やその進捗状況、それに費やす時間や健康状態を管理する必要がある」としています。*4 あわせて、始業・終業時刻や勤務時間の記録をつけるツールを使い、自分の就業時間や健康を管理することも挙げています。*4
企業の側についても、ガイドラインは「長時間労働や不規則な労働による健康障害を防止する観点」から、働き過ぎにならないよう労使で話し合うことが適当としています。*4 これは本人を雇っている会社に向けた記述ですが、業務委託で頼む側にもできることがあります。深夜に返事を求めない、週末の作業が夜遅くまで続くような月曜日の朝の締め切りは避ける、といった決め方です。
作業の報告に、作業した日と時間帯も書いてもらうと、深夜の作業が何週も続いていないかが分かります。続いているなら、頼む作業の量か納期を見直します。本業の会社に副業をどう届け出ているか、本業の会社が副業の時間をどう把握しているかは会社ごとに違うため、本人に確かめてもらいます。
外部に委託するときに確認しておきたい点
夜間稼働の副業エンジニアを探す段階では、次の点を候補者と確かめておくと、作業を始めてからのやり取りの遅れを減らせます。
- 作業する曜日と時間帯、平日の日中に連絡がつく時間があるか
- 社内の担当者と打ち合わせができる曜日と時刻
- 質問への返事の期限と、担当者が返せない日に代わりに返す人
- レビューを返す期限と、承認する人とその代わりの人
- 障害のときの連絡手段と連絡してよい時刻、本番作業の日時と立ち会う人
確かめた結果、社内と重なる時間がほとんど取れない、レビューの往復で納期に間に合わない、と分かることもあります。その場合は、夜と週末に進められる作業を副業エンジニアに頼み、日中に社内とやり取りしながら進める作業は、日中に稼働できる人に任せる分け方もあります。契約の前に本人と確かめる事項は「副業エンジニアと契約する前に本人と確かめる5つのこと」にまとめました。
まとめ:夜間稼働で確かめておきたい3つの点
副業エンジニアの夜間稼働を前提に開発を頼むうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、平日の副業の多くは夕方から夜と早朝に行われ、社内の技術者が働いている時間とはあまり重ならないと知っておくこと。第二に、質問への返事の期限、レビューを返す期限と承認する人、重なる時間に済ませる話を先に決めること。第三に、夜間の障害の最初の対応と本番作業は社内の担当者が受け持ち、深夜の作業が続いていないかを報告で確かめることです。この3点を踏まえておけば、「質問を送るたびに1日待ち、レビューの往復で納期を過ぎてしまった」という事態を避けやすくなります。副業エンジニアの稼働時間や連絡の取り方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
平日の夜に定例の打ち合わせを入れてもよいですか
社内の参加者の勤務時間の扱いを確かめたうえで、短く決めるのがよいでしょう。週1回30分ほどにして、決まったことは文書に残し、出られなかった人も後で読めるようにします。社内の参加者を毎回同じ人にすると、その人の勤務時間だけが延びるので、交代で出る方法もあります。
作業の報告は何時に送ってもらえばよいですか
その日の作業が終わったときに送ってもらい、社内では翌朝に読む形がおすすめです。チャットの通知が夜に社内の担当者へ届かないよう、通知の設定もあわせて見直しておきます。報告には、終わった作業、残っている作業、翌日までに答えてほしい質問を分けて書いてもらいます。
日中に作業する人と同じチームに入ってもらうときの注意はありますか
同じプログラムを別の時間帯に直すと、同じ箇所を2人が別々に書き換えてしまうことがあります。担当するファイルや機能を人ごとに分け、作業の終わりに何を変えたかを書き残してもらいます。日中の人がその記録を読んでから作業を始めると、同じ箇所を二重に直すやり直しを減らせます。
夜間稼働の人との進め方を相談したいとき
頼みたい作業と希望の納期、社内で返事をする人の勤務時間が分かっていれば、そのままご相談いただけます。夜と週末の作業で間に合うかどうか、まだ決めきれていない段階でも構いません。
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出典
- *1 参考:総務省統計局「令和3年社会生活基本調査 調査票Bに基づく結果 結果の概要」(PDF)(https://www.stat.go.jp/data/shakai/2021/pdf/gaiyoub.pdf)。出典:総務省統計局「令和3年社会生活基本調査 調査票Bに基づく結果 結果の概要」。調査は2021年10月20日現在、生活時間は10月16日〜24日のうち調査区ごとに指定した連続する2日間。調査票Bの集計対象は約1万人。表3-1・表3-3(副業関連の行動者率と行動者平均時間、週全体、有業者)を参照(2026年9月確認)
- *2 参考:総務省統計局「令和3年社会生活基本調査 調査票Bに基づく結果 時間帯編 第6-1表〜第6-3表」(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000032260968)。出典:総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」第6-1表(平日)・第6-2表(土曜日)・第6-3表(日曜日)の曜日,男女,ふだんの就業状態,行動の種類,年齢,時刻区分別行動者率(主行動)。有業者・男女総数・年齢総数の「副業」の行動者率を用いた。時間帯ごとの割合は、15分ごとの行動者率を筆者が時間帯ごとに合計して算出した(2026年9月確認)
- *3 参考:総務省統計局「令和3年社会生活基本調査 調査票Aに基づく結果 時間帯編 第14表」(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000032224351)。出典:総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」第14表 曜日,男女,職業,行動の種類,時刻区分別行動者率(有業者)。専門的・技術的職業従事者・男女総数の「仕事」の行動者率を用いた。調査票Aの集計対象は約18万人。図は示された数値をもとに筆者が作成した(2026年9月確認)
- *4 参考:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定・PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000962665.pdf)。出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(平成30年1月策定、令和2年9月改定、令和4年7月改定)。3(3)イ(健康確保措置等の円滑な実施についての留意点)、4(2)・(3)(労働者の対応)を参照(2026年9月確認)