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ソースコードの納品と保守で確かめる5つのポイント|契約と著作権
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- ソースコードが納入物に入るかは個別の契約で決まるため、まず納入物の明細と著作権の条文を確かめます。
- 所有権と著作権は別で、ソースコードを受け取っても改修してよい範囲は著作権の条文で変わります。
- 受け取ったソースコードは本番で動いている版と照らし合わせ、資料と一緒に自社でも管理します。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
保守を別の会社に頼みたいのに、手元にソースコードが無い。契約書を読み返しても、ソースコードを受け取れるのかどうかがはっきりしない——。開発会社にシステムを任せてきた企業では、保守の担当を替えようとした段階で、こうした食い違いに気づくことがあります。ソースコードの納品とは、開発会社が引き渡す物(納入物)の一つとして、プログラムの元になる記述を受け取ることです。
ソースコードが手元にあれば、保守をほかの会社や自社の担当者に任せる道が開けます。ただし万能ではなく、受け取っただけでは改修してよい範囲までは決まりません。本記事では、システムの保守を任されている情報システムの担当者に向けて、所有権と著作権の違い、確かめる5つのポイント、納品されていないときの進め方、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
ソースコードの納品とは
システム開発の契約では、開発会社が作って引き渡す物を「納入物」と呼び、何を納入物にするかは個別の契約で明細として決めます。*1 ソースコードの納品とは、この納入物の一つとして、プログラムの元になる記述(ソースコード)を受け取ることです。IPA(情報処理推進機構)のモデル契約の記入例では、設計書や運用マニュアルと並んで「ソースプログラム」が納入物に挙がっています。*2
- 納入物は契約ごとに決めるもので、ソースコードがいつも含まれるとは限りません
- 動くプログラム(実行できる形)だけを受け取り、ソースコードは開発会社の手元に残る契約もあります
- ソースコードが手元に無いと、ほかの会社や自社の担当者が直す作業に入れません
IPAのモデル契約は、経済産業省が2007年に公開した「情報システム・モデル取引・契約書」を見直したものです。*4 実際の契約書はこのひな型どおりとは限らないので、自社の契約書と照らし合わせて読みます。
所有権と著作権の違い
ソースコードを受け取っていても、それだけで自由に直してよいとは限りません。納入物という「物」を持つ権利(所有権)と、プログラムを複製したり作り変えたりする権利(著作権)は、別々に扱われるからです。モデル契約も、所有権は個別契約で決めた時期に移るとする条文と、著作権の帰属を定める条文を分けています。*1

| 項目 | 中身 | 保守で効いてくる場面 |
|---|---|---|
| 納入物の所有権 | 個別契約で決めた時期に開発会社から発注者へ移る(モデル契約の場合) | ソースコードを記録した媒体やファイルを受け取れるか |
| 著作権 | 契約で決める。決めていなければ、社員が職務で書いたプログラムの著作者はその会社になる | ほかの会社に改修を任せてよいか、どこまで作り変えてよいか |
| 複製物の所有者の利用 | 自ら実行するために必要な限度で、プログラムを複製できる | 著作権が無くても、動かし続けるための複製はできる |
著作権法は、法人の発意で社員が職務として作るプログラムの著作者を、作成時の契約や勤務規則に別段の定めがない限りその法人としています。*3 また、著作権を譲る契約で、作り変える権利(第27条・第28条の権利)を譲渡の対象として書き出していないときは、それらは譲った側に残ると推定されます。*3 契約書の著作権の条文に、この2つの条文の番号があるかどうかも見ておきます。
確かめる5つのポイント
ソースコードの納品と保守について契約書や手元の資料を見るときは、次の5つのポイントを順に確かめます。前の3つは契約書の条文、後の2つは受け取った物の中身を見る作業です。
- ポイント1 納入物の明細:個別契約の納入物にソースコードが書かれているか。納期と受け取る形も決まっているか
- ポイント2 著作権の帰属:開発会社に残るのか、自社に移るのか、共有なのか。移るならいつ移るのか
- ポイント3 自社で使える範囲:著作権が開発会社に残る場合に、自社で複製・改変できる範囲が書かれているか
- ポイント4 版の一致:受け取ったソースコードが、いま本番で動いている版と同じか
- ポイント5 引き継ぎの資料:設計書、運用マニュアル、変更の履歴がソースコードとそろっているか
ポイント2は、モデル契約に3つの案があります。A案は著作権をすべて開発会社に残し、B案は汎用的なプログラムを除いて委託料の完済時に発注者へ移し、C案は新たに作ったプログラムを両者の共有にします。*1 A案でも、発注者が自ら実行するために必要な限度で複製・翻案できる旨の条文が置かれています。*1 自社の契約がどの案に近いかで、ポイント3で見る範囲が変わります。
納品されていないときの進め方
ソースコードが納入物に入っていなくても、すぐに保守ができなくなるわけではありません。モデル契約の解説は、著作権を持たない発注者でも、保守運用をほかの会社に委託することは可能だとし、ソースコードや資料の開示・交付を受けるには、納入物にソースコードを明記するか、エスクロウ(第三者に預けておく仕組み)を使う方法を挙げています。*2
- ステップ1:基本契約と個別契約を並べ、納入物の明細と著作権の条文を書き出す
- ステップ2:開発会社と話し合い、ソースコードを受け取るか、利用の範囲を書面で取り決める
- ステップ3:受け取ったソースコードと本番で動いている版を照らし合わせ、違いを一覧にする
- ステップ4:次の保守契約から、納入物と変更の履歴の扱いを契約書に書いておく
つまずきやすいのはステップ3です。長く保守を続けてきたシステムでは、資料が散らばり、動いているシステムと設計書やソースコードが合っていないことが少なくないと、モデル契約の解説も指摘しています。*2 権利の扱いは個別の契約と事情で変わるので、判断に迷う点は弁護士などの専門家に確かめながら進めます。開発会社が倒産した場合の手順はシステム開発会社の倒産対応で扱っています。
外部に頼むときに確認しておきたい点
ソースコードを受け取ったあと、保守をほかの会社に頼む場合や、開発会社を替える場合は、引き継ぎの段階で何をしてくれるかを見積もりの前に確かめます。モデル契約は保守の工程について、設計文書への確実な反映や業務・設計のノウハウの円滑な引継ぎなど、適切な管理を発注者に求めています。*2

- 現行の調査を頼めるか:手元のソースコードと本番の版の違いを調べる作業を、見積もりに含めるか
- 版の管理をどう引き継ぐか:変更の履歴と版数を誰が持ち、どこに置くか(モデル契約の保守の例でも、受託側の作業に挙がっています)*2
- 資料をどこまで直すか:設計書や運用マニュアルが古いとき、どの範囲を今の状態に合わせるか
- 権利の確認に付き合えるか:契約書の納入物と著作権の条文を一緒に読み、使えるものを整理できるか
- 次の引き継ぎへの備え:保守で直したソースコードと資料を、自社の管理する場所にも置く取り決めにできるか
保守会社を比べる観点はシステム保守会社の選び方にまとめています。
まとめ:ソースコードの納品と保守
ソースコードの納品と保守で確かめておきたい点は、3つに整理できます。第一に、個別契約の納入物にソースコードが書かれているかと、著作権が誰に帰属し、自社で複製・改変できる範囲がどこまでかを確かめること。第二に、受け取ったソースコードが本番で動いている版と同じかを照らし合わせること。第三に、設計書や変更の履歴とあわせて、自社の管理する場所にも置いておくことです。この3点を踏まえておけば、「保守の会社を替えようとしたら、直せるソースコードが無かった」という事態を避けやすくなります。契約の読み方や引き継ぎの進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
保守契約を結んでいる今の開発会社に、後からソースコードの納品を頼めますか
頼むことはできますが、応じるかどうかや条件は相手との話し合いで変わります。著作権が開発会社に残る契約なら、受け取ったあとに自社でどこまで使えるかも、あわせて書面で取り決めておきます。判断に迷う点は弁護士などの専門家に確かめてください。
ソースコードを受け取れば、自社で自由に改修できますか
受け取っただけでは決まりません。改修してよい範囲は著作権の条文で変わり、著作権を譲る契約でも、作り変える権利(第27条・第28条の権利)を書き出していないと、譲った側に残ると推定されます。*3 自社の契約書の条文を確かめてから改修に入ります。
これから発注するシステムで、気をつけておくことはありますか
個別契約の納入物の明細にソースコードを書き、納期と受け取る形も決めておきます。モデル契約の記入例でも、設計書や運用マニュアルと並んでソースプログラムが納入物に挙がっています。*2 著作権をどの案で扱うかも、見積もりの段階で話し合っておくと後で困りません。
ソースコードの引き継ぎと保守のご相談
ソースコードが手元に無いシステムの現行調査から、保守の引き継ぎと版の管理の仕組みづくりまで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報システム・モデル取引・契約書〈第二版〉ソフトウェア開発委託基本モデル契約書(条文抜き出し版)」(https://www.ipa.go.jp/digital/model/ug65p90000001ljh-att/000087508.docx)。出典:第2条(個別契約で定める納入物の明細)、第43条(納入物の所有権)、第45条(納入物の著作権のA案・B案・C案)を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報システム・モデル取引・契約書〈第二版〉」(2025年4月8日更新)(https://www.ipa.go.jp/digital/model/ug65p90000001ljh-att/000087884.docx)。出典:著作権の帰属についての解説(著作権を持たないユーザによる保守運用の委託、ソースコード等の開示・交付)、保守の工程の説明、システム再構築時の現行システム調査、ドキュメントモデルの納入物の記入例、アプリケーション保守の構成管理を参照(2026年10月確認)
- *3 参考:e-Gov法令検索「著作権法」(昭和四十五年法律第四十八号)(https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048)。出典:第15条第2項(職務上作成するプログラムの著作物の著作者)、第47条の3(プログラムの著作物の複製物の所有者による複製)、第61条第2項(第27条・第28条の権利の特掲)を参照(2026年10月確認)
- *4 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」(https://www.ipa.go.jp/digital/model/model20201222.html)。出典:経済産業省が2007年に公開したモデル契約を見直した経緯の記述を参照(2026年10月確認)