LASSIC Media らしくメディア
データ分析の業務委託|社員採用・分析受託との違いと任せる範囲
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- 個人の分析者には集計・分析・可視化と報告を任せ、何を明らかにするかと結果を受けた判断は社内に残します。
- テーマと期間が決まった分析は業務委託、作るものを決めて丸ごと頼むなら分析受託、事業に続けて組み込むなら社員採用が合います。
- 個人データを渡すなら委託先の監督が求められるため、渡すデータの範囲と成果物の権利、引き継ぎを契約の前に決めます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
売上や問い合わせのデータはたまっているのに、分析できる人が社内にいない。社員を採るほどの仕事量かは分からないので、まずは業務委託で分析者に入ってもらえないか——。データ分析の業務委託を考える企業からは、こうした相談がよく聞かれます。
ただ、個人の分析者にどこまで任せてよいのか、社員で採る場合や分析を会社に丸ごと頼む受託と何が違うのかで迷いがちです。本記事では、データ分析の業務委託で任せる範囲と社内に残す判断、社員採用・分析受託との違い、費用の決まり方、データを渡すときの準備を、IPA(情報処理推進機構)の資料と法令をもとに整理します。
目次
個人の分析者に任せる仕事と残す判断
IPAのデジタルスキル標準(DSS)は、データサイエンティストの役割を次の2つに分けています。*1
- データビジネスストラテジスト:事業戦略に基づくデータ・AI活用戦略を立て、ほかの役割のマネジメントや連携を進める役割
- データサイエンスプロフェッショナル:データ・AIの処理・解析と、その結果の評価などを担う役割
業務委託で個人に頼みやすいのは、主に後者の処理・解析の仕事です。前者は事業の方針や社内の部門との調整に関わるため、社内の人が持つほうが進めやすくなります。

仕事ごとに分けると、次のようになります。
| 仕事 | 業務委託の分析者に任せる | 社内に残す |
|---|---|---|
| 問いを決める | 分析の切り口や見る指標の案を出す | 何を明らかにしたいか、結果を何に使うかを決める |
| データの準備 | 集計・加工・形式をそろえる作業 | どのデータを使ってよいかを決め、使う許可を出す |
| 分析と可視化 | 統計の分析、グラフやダッシュボードづくり | 途中の結果を見て、方向を直すかを決める |
| 報告 | 結果のまとめと読み取り方の説明 | 結果を受けて施策や予算を決める |
| 仕組みづくり | 定期の集計を自動で回す仕組みの試作 | 社内で動かし続けるかを決め、担当を置く |
同じ資料は、データサイエンスプロフェッショナルが現場でのデータ活用の仕組みづくりや教育・サポートも担い、結果の活用の場面でも一定の責任を負うとしています。*1 業務委託でも報告書を渡して終わりにせず、社内の担当者への説明までを範囲に入れておくと、分析が使われないまま残ることを防げます。
社員採用・業務委託・分析受託の違い
分析の担い手を確保する方法は、個人への業務委託だけではありません。社員として採る方法と、分析を会社にまとめて頼む分析受託もあります。選ぶときに使う軸で3つを並べます。
| 観点 | 社員で採る | 個人に業務委託する | 会社に分析受託で頼む |
|---|---|---|---|
| 契約 | 雇用契約 | 個人との業務委託契約 | 分析会社との業務委託契約 |
| 費用の払い方 | 給与と賞与、社会保険料などの会社負担 | 稼働の量と期間に応じた報酬 | 成果物や工程ごとの見積もり額 |
| 期間 | 期間を定めず続けて働く前提 | テーマと期間に合わせて決める | 成果物を納めるまで |
| 仕事の指示 | 上司として日々の業務を指示できる | 範囲と報告の方法を契約で決める | 作業者への指示は受託した会社が行う |
| 成果物の権利 | 職務上の著作物は条件を満たせば会社が著作者 | 契約で決める | 契約で決める |
| 社内に残るもの | 分析の経緯と業務の知識 | 記録を残す約束が無いと抜けやすい | 納品された成果物と報告書 |
| 向いている場面 | 分析を事業の判断に続けて組み込みたい | テーマと期間が決まった分析を早く始めたい | 作るものが決まっていて丸ごと頼みたい |
成果物の権利は見落としやすい点です。著作権法第15条は、会社の発意に基づき、その業務に従事する者が職務上作成し、会社の名義で公表する著作物の著作者を、契約などに別段の定めがない限り会社としています。*2 業務委託の分析者が作る報告書や集計の仕組みがこれにあたるかは、働き方や契約で変わります。著作権を譲り受ける契約でも、翻案などの権利(第27条・第28条)は特に書いておかないと、譲った側に残ると推定されます。*2 権利の扱いと社内での使い道は契約で決め、個別の判断は専門家に確かめてください。
指示の仕方にも注意が要ります。国のフリーランスガイドラインは、業務の内容や進め方への具体的な指揮命令を、働く人が労働者にあたるかを見る要素の1つに挙げています。*3 業務委託では、日々の作業を細かく指示するのではなく、範囲と報告の方法を決めて任せます。
分析受託の費用と頼み先の選び方は、らしくコラムの「データ分析の外注費用相場」と「データアナリスト・BI人材不足を外注・委託で補完する進め方」で扱っています。
費用の決まり方と見積もりの比べ方
個人の分析者への報酬は、頼む条件で大きく変わります。本記事では金額の目安ではなく、金額が何で決まるかと見積もりの比べ方を整理します。主な条件は次の5つです。
- データの状態:すぐ集計できるか、形式をそろえる作業から始まるか
- 範囲:集計と可視化までか、統計の分析や予測の試作まで頼むか
- 稼働の量と期間:週に何日、何か月関わってもらうか
- 環境:分析に使うパソコンやツール、クラウドの利用料をどちらが用意するか
- 扱うデータ:個人データを含むか。含む場合は扱いの決まりが増える
払い方は、月ごとに決まった額を払う形と、関わった時間で精算する形が考えられます。データの状態は着手してから分かることも多いため、最初の数週間でデータを確かめ、その結果で範囲と日数を見直す区切りを置いておくと、見積もりのずれを抑えられます。
複数の候補を比べるときは、上の5つを書き出して同じ条件で見積もってもらいます。分析受託の見積もりと比べる場合は、受託の額に含まれる進行管理や報告の作業を、業務委託では社内の誰が受け持つかも含めて比べます。
分析データを渡すときの準備
分析には社内のデータを渡す必要があります。顧客や会員の情報など個人データを含むなら、法律上の手当てが要ります。個人情報保護法第25条は、個人データの取扱いを委託する場合、委託を受けた者に対し「必要かつ適切な監督」を行うよう求めています。*4 個人情報保護委員会のガイドラインは、ここでいう委託として、個人データの入力・編集・分析・出力などの処理を任せることが想定されるとしています。*5

同じガイドラインは、監督の中身として次の3つを挙げています。*5
- 適切な委託先の選定:委託先の安全管理措置が、委託元に求められるものと同等かをあらかじめ確かめる
- 委託契約の締結:取扱いの決まりと、委託元が取扱状況を把握することを契約に盛り込む
- 取扱状況の把握:契約で決めた内容が守られているかを確かめ、委託の内容の見直しを考える
委託する業務に必要のない個人データを渡さないことも、当然のこととして求められています。*5 個人の分析者に頼む場合は、次の準備をしておくと話を進めやすくなります。
- 分析に要らない氏名や連絡先などの列を外してから渡す
- データは自社が用意した環境の中で扱ってもらい、手元の機器に残さない決まりを作る
- 作業をほかの人に再委託してよいかを決めておく
- 契約を終えるときにデータを消去し、その報告をもらう
外部に頼むときに確認しておきたい点
分析者を探す前に、次の5つを社内で書き出しておくと、そのまま相談の材料になります。
- 範囲:集計・分析・可視化・報告のうち何を頼むか。問いを決め、結果を受けて判断する社内の責任者は誰か
- 期間:最初の契約期間と、データの状態を確かめたあとに範囲を見直す時期
- 体制:週の稼働日数、社内の窓口、途中の結果を共有する頻度、使ってよいデータと環境
- 費用の決まり方:月額で決めるか稼働時間で精算するか。ツールやクラウドの費用をどちらが持つか
- 引き継ぎ:集計の手順や分析の記録をどこに残すか。成果物の権利と、契約を終えるときに渡してもらうもの
フリーランスの個人と契約する場合は、法律で決まった手続きもあります。業務を委託したら、直ちに給付の内容・報酬の額・支払期日などを書面やメールなどで示します。*6
分析が一度で終わらず、事業の判断に続けて組み込まれていくなら、業務委託で始めた分析を社員に引き継ぐ計画も早めに考えておきます。業務委託の分析者に手順と記録を残してもらえば、社員が加わったときの立ち上がりも早くなります。
まとめ:データ分析を業務委託するときの3つの点
データ分析を業務委託するときに確かめたい点は3つです。第一に、集計・分析・可視化と報告は個人の分析者に任せ、何を明らかにするかと結果を受けた判断は社内に残すこと。第二に、テーマと期間が決まっているか、作るものが決まっているか、事業に続けて組み込むかを見て、業務委託・分析受託・社員採用のどれが合うかを選ぶこと。第三に、渡すデータの範囲と成果物の権利、引き継ぎの方法を契約の前に決めておくことです。
よくある質問
データ分析の業務委託は、個人と会社のどちらに頼むのがよいですか
テーマと期間が決まった分析を早く始めたいなら個人への業務委託、作るものが決まっていて進行管理まで丸ごと頼みたいなら会社への分析受託が合います。個人に頼む場合は、進行管理や途中の確認を社内の誰が受け持つかも決めておきます。
業務委託の分析者に顧客データを渡してもよいですか
個人データの取扱いを委託する場合、個人情報保護法第25条により、委託先に対する必要かつ適切な監督が求められます。*4 分析に要らない列を外して渡し、扱う環境と契約終了時の消去を決めておきます。
分析の報告書や集計の仕組みの権利は誰のものになりますか
社員が職務上作り会社名義で公表するものは、条件を満たせば会社が著作者になります。*2 業務委託の分析者が作るものは働き方や契約で変わるため、権利の扱いと使い道を契約で決め、個別の判断は専門家に確かめてください。
データ分析を任せられる外部の専門人材を探す
頼みたい分析の範囲と期間が決まっていれば、そのままご相談いただけます。業務委託で始めるか社員で採るかを決めきれていない段階でも構いません。
Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。
Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。
出典
- *1 参考:IPA「デジタルスキル標準 DSS-P 分冊版 データサイエンティスト編」ver.2.0(2026年4月・PDF)(https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/dss/rcu1hd000000j76k-att/sep_dss-p_ds.pdf)。出典:独立行政法人情報処理推進機構。データサイエンティストのロール(データビジネスストラテジスト・データサイエンスプロフェッショナル)とスキルマッピングの考え方を参照(確認日2026年10月21日)(2026年10月確認)
- *2 参考:e-Gov法令検索「著作権法」(昭和45年法律第48号)(https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048)。出典:第15条(職務上作成する著作物の著作者)、第61条(著作権の譲渡)を参照(確認日2026年10月21日)(2026年10月確認)
- *3 参考:公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省「フリーランスガイドライン」(令和3年3月26日策定・令和8年1月1日改定・PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/001318001.pdf)。出典:労働基準法における「労働者性」の判断基準のうち、業務遂行上の指揮監督の有無を参照(確認日2026年10月21日)(2026年10月確認)
- *4 参考:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」(平成15年法律第57号)(https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057)。出典:第25条(委託先の監督)を参照(確認日2026年10月21日)(2026年10月確認)
- *5 参考:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/)。出典:3-4-4 委託先の監督(法第25条関係)の(1)〜(3)と※1を参照(確認日2026年10月21日)(2026年10月確認)
- *6 参考:e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(令和5年法律第25号)(https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000025)。出典:第3条第1項(給付の内容・報酬の額・支払期日等の明示)を参照(確認日2026年10月21日)(2026年10月確認)