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自動運転の表示規制、英国が禁じた8つの用語と例外
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 8つの用語が制限される:変化形も似た語も含みます*1*2。
- 違反は刑事罰になる:正式起訴では2年以下です*2。
- 施行は2027年1月7日:準備の時間が置かれました*1。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
製品の呼び方を法律が指定する例は多くありません。英国は、自動運転をめぐる8つの語について、それをやりました。
自動運転車(マーケティング制限)規則2026が2026年7月1日に制定され、2027年1月7日に施行します*1。根拠は自動運転車法2024の第78条第1項です*2。
自動車の話ですが、読みどころは用語の規制という手法そのものにあります。何が禁じられ、どこまで及び、どう逃れられるのか。条文から順に見ていきます。
目次
8つの語が、認可された車両だけのものになる
まず全体像です*1*2。
規則の第2条第1項は、次の8つを制限用語としました*1。automated、automated driving、autonomous、autonomous driving、drive autonomously、drive itself、driverless、self-drivingです*1。
ただし、第2項が2語に条件を付けます*1。automatedとautonomousは、車両の全体、または車両の運転の機能もしくは能力の全体を説明するために使う場合に限って制限用語になります*1。部品や個別の機能を指す使い方は外れる、という整理です*1。
射程は語形にも及びます*1。第3項は、列挙された語に、その語が別の品詞に振り替えられたことによる変化形と、その他の文法上の形を含むとしました*1。名詞と形容詞、単数と複数、時制の違いでは逃れられません*1。
さらに法の側が網を広げます*2。第78条第9項は、制限用語と取り違えられそうなほど近く似た語、表現、記号または標章を使った者は、制限用語を使ったものとして扱うとしています*2。綴りを少し変える、記号に置き換えるといった回避も想定済みです*2。
用語の並びを見ると、選定の考え方も読み取れます*1。drive itselfやdriverlessのように、技術の用語ではなく日常の言い回しが入っています*1。専門用語だけを押さえても、販促の現場で使われるのは平易な表現だという判断でしょう*1。
そもそも第78条第1項は、対象を語、表現、記号または標章としています*2。今回の規則が指定したのは語だけですが、将来は記号やマークも指定できる建て付けです*2。
犯罪の成立には、5つの要件がそろう必要がある
禁止の中身は、規則ではなく法の第78条にあります*2。
| 項 | 要件 |
|---|---|
| (a) | 道路車両の販売促進または供給に関連して、制限用語を使うこと(使わせること、使うことを許すことを含む) |
| (b) | その者が事業の過程で行っていること |
| (c) | その使用が、その車両の最終利用者または見込みの最終利用者へ向けられていること |
| (d) | その使用が、グレートブリテンにおける最終利用者または見込みの最終利用者の目に触れることを予期するのが合理的であること |
| (e) | その車両が「適当な車両」ではないこと |
適当な車両は第8項で定義されます*2。その制限用語の使用が第1項により適当とされている、認可された自動運転車です*2。認可は法第3条によるもので、認可を受けていない車両に8つの語を使えば、要件がそろいます*2。
装備品についても、第3項が同じ構造の犯罪を置きました*2。道路車両の装備品として使うことを意図した製品の販売促進や供給に関連して制限用語を使う場合で、その用語が、適当な車両の装備品としての使用に特に関連して使われているのでないときです*2。車両本体だけでなく、後付けの機器や部品も対象です*2。
(c)と(d)が、対象を絞る役割を果たします*2。最終利用者へ向けられていることと、グレートブリテンで目に触れると予期できることです*2。事業者間の技術文書や、地域を限った発信は、この2つの要件で外れる余地があります*2。
自動運転の判定そのものは、法の第1条にあります*3。車両が自動運転の要件を満たすのは、その機能により自律的に走行することを意図して設計または改造されており、かつその機能によって安全かつ適法にそうできる場合です*3。自律的にとは、個人ではなく車両の装備によって制御されており、かつ運転への即時の介入を念頭に、個人が車両やその周囲を監視していないことを指します*3。
抗弁は3つ、いずれも立証する側に置かれた
第78条の第4項から第6項に、抗弁が並びます*2。いずれも被告人が証明する形です*2。
1つ目は自動化と無関係な用法です*2。その制限用語が、自動化に関わる意味を伝える意図なく用いられ、かつ、そのような意味を伝えるものと合理的には理解されえない方法で用いられたことを証明する抗弁です*2。たとえば、製造工程の自動化を説明する文脈での「automated」が想定されます*2。
2つ目は域外向けの発信です*2。その使用がグレートブリテンの外の車両の利用者または見込み利用者だけに向けられていたことに加えて、あらゆる合理的な予防措置を講じ、相当の注意を払ったことを証明します*2。その中身は、グレートブリテンの利用者の目に触れないようにすることか、そうした利用者が、その使用が自分たちへ向けられたものでないと理解できるようにすることのいずれかです*2。
1つ目の抗弁は、証明の負担が軽くありません*2。意図がなかったことだけでなく、そのような意味を伝えるものと合理的には理解されえないことまで求められます*2。読み手がどう受け取るかという客観の側も含むため、前後の文脈で自動化の話でないことが明らかである必要があります*2。
この2つ目は、越境するウェブサイトや動画を扱う立場では重要です*2。地域を限らずに公開している素材は、この抗弁を使いにくくなります*2。地域の出し分け、言語の切り替え、対象地域の明示といった手当てが、抗弁を支える材料になります*2。
3つ目は他人が作った表現です*2。その者が行っていた事業が、当該の車両や装備品の製造または供給を含んでいなかったこと、制限用語が使われた通信が別の事業の過程で作成されたこと、そしてその使用が本条の犯罪に当たることを知らず、疑う理由もなかったことの3つを証明します*2。広告を掲載する媒体や、素材をそのまま流す販売店を想定した規定です*2。
法定刑も定められました*2。正式起訴による有罪では、2年以下の拘禁刑もしくは罰金、またはその併科です*2。簡易手続による有罪の場合は、イングランド・ウェールズとスコットランドで別に上限が置かれています*2。
施行は半年後、準備の時間が置かれた
時期の設計も、この制度の特徴です*1*2。
規則は2026年7月1日に制定され、7月7日に議会へ提出されました*1。しかし施行は2027年1月7日で、提出から半年の間隔が置かれています*1。
用語の規制は、既存の販促物すべてに及びます*1。ウェブサイト、カタログ、動画、店頭の表示、取扱説明書。半年という期間は、それらの棚卸しと差し替えのためのものと読めます*1。
法の側の施行も段階的です*2。第78条は、2026年1月1日に特定の目的について効力を持ち始めました*2。規則を作るための権限を先に動かし、禁止の効力は規則の施行日に合わせる形です*2。
制定の前提として、協議も義務づけられていました*1。法の第97条第2項により、大臣は規則を作る前に適当と考える代表的な団体と協議しなければならないとされています*1。用語の選定に、業界の意見を通す経路が置かれた形です*1。
適用地域はイングランド、ウェールズ、スコットランドです*1。北アイルランドは含まれません*1。法の要件に出てくるグレートブリテンという地理の単位も、これと対応します*2。
用語を規制するという手法をどう見るか
この制度は、自動車という分野を超えて示唆があります*1*2。
第一に、能力の主張ではなく、語そのものを規制対象にした点です*2。誇大な表示を一般的に禁じる規定は各国にありますが、その適用には「誤認を生じたか」の評価が要ります*2。用語を名指しで列挙すれば、判定はその語を使ったかどうかと認可があるかどうかの二段になります*2。
第二に、認可制度と結び付いていることです*2。制限用語を使えるのは、法第3条により認可された自動運転車だけです*2。用語の規制が単独ではなく、認可という別の仕組みの表示面として置かれています*2。似た構図は、英国が製品のセキュリティ要件で外国の認証ラベルを受け入れたみなし適合の仕組みにも見られます*2。
第三に、回避を先回りしていることです*1*2。変化形、品詞の変更、紛らわしいほど似た語。抜け道として使われそうな手を、条文が先に塞いでいます*1*2。用語を規制する制度を作るなら、この網の掛け方は参考になります*2。
第四に、抗弁の置き方です*2。禁止を広く取ったうえで、正当な用法を抗弁で救う構造です*2。運用の側から見ると、後から説明できる材料を残しているかが結果を分けます*2。地域の出し分けの設定、素材の作成者、掲載の判断の記録が、そのまま証拠になります*2。
日本のIT部門が持ち帰れる論点
この規則と法は英国の制度で、日本の事業者に直接の義務を課すものではありません*1*2*3。ただし、製品の表現を扱う場面では参考になります*2。
第一に、用語の棚卸しを機械的にできるようにすることです*1。8つの語とその変化形を、既存のウェブサイト、カタログ、動画の字幕、アプリ内の文言から拾い出す作業は、手作業では抜けます*1。文言をコードから分離し、翻訳の資源として一元管理していれば、検索と差し替えが一度で済みます*1。
第二に、地域の出し分けを設計に入れることです*2。域外向けの抗弁は、合理的な予防措置と相当の注意を求めます*2。地域ごとに配信を分ける仕組み、対象地域を明示する表示、検索エンジンへの指示(hreflang や地域の指定)といった手当てが、その裏づけになります*2。
第三に、素材の出所を記録することです*2。他人が作った表現の抗弁は、通信が別の事業の過程で作成されたことの証明を求めます*2。外部から受け取った素材について、提供元、受領日、掲載の承認者を残しておくと、後から示せます*2。
第四に、「自動」「AI」といった語の使い方を自社で決めることです*1。英国が自動運転で行ったことは、他の分野でも起こりえます*1。製品の呼び方について、何をどの水準で満たしたときにその語を使うかを社内の基準として決めておくと、規制が来たときの手直しが小さくなります*1。近い論点は、英国の自動意思決定の規律のように、機能の定義から規制が始まる制度にも共通します*1。
まとめ:英国の自動運転の表示規制で押さえる3つの視点
英国では、自動運転車(マーケティング制限)規則2026が2026年7月1日に制定され、7月7日に議会へ提出、2027年1月7日に施行します。根拠は自動運転車法2024第78条第1項で、適用はイングランド、ウェールズ、スコットランドです。押さえたい視点は三つあります。第一に、制限される用語。規則第2条第1項は、automated、automated driving、autonomous、autonomous driving、drive autonomously、drive itself、driverless、self-driving の8つを制限用語としました。ただし automated と autonomous は、車両の全体、または車両の運転の機能もしくは能力の全体を説明するために使う場合に限られます。第3項により、品詞が変わった変化形やその他の文法上の形も含み、法第78条第9項により、取り違えられそうなほど近く似た語、表現、記号、標章も同様に扱われます。第二に、犯罪の成立。法第78条第2項は、道路車両の販売促進または供給に関連して制限用語を使うこと、事業の過程で行っていること、その使用が最終利用者または見込みの最終利用者へ向けられていること、グレートブリテンの利用者の目に触れると予期するのが合理的であること、その車両が当該用語について認可された自動運転車ではないことの5つを要件とします。第3項は、道路車両の装備品として使うことを意図した製品についても同旨の犯罪を置きました。第三に、抗弁と刑。第4項は、自動化に関わる意味を伝える意図がなく、そう理解されえない用法であったこと、第5項は、使用がグレートブリテン域外の利用者だけに向けられ、あらゆる合理的な予防措置と相当の注意を尽くしたこと、第6項は、自社の事業が当該車両や装備品の製造・供給を含まず、通信が別の事業の過程で作られ、犯罪に当たることを知らず疑う理由もなかったことを、それぞれ抗弁としています。法定刑は、正式起訴による有罪で2年以下の拘禁刑もしくは罰金、またはその併科です。
よくある質問
制限される用語はいくつですか。
8つです。規則第2条第1項は、automated、automated driving、autonomous、autonomous driving、drive autonomously、drive itself、driverless、self-driving を制限用語としています。ただし第2項により、automated と autonomous の2語は、車両の全体、または車両の運転の機能もしくは能力の全体を説明するために使う場合に限って制限用語となります。第3項により、品詞が変わった変化形と、その他の文法上の形も含まれます。
表記を少し変えれば規制を避けられますか。
避けられない書き方になっています。規則第2条第3項は、列挙された語に、別の品詞へ振り替えられたことによる変化形と、その他の文法上の形を含めています。さらに自動運転車法2024第78条第9項は、制限用語と取り違えられそうなほど近く似た語、表現、記号または標章を用いた者は、制限用語を用いたものとして扱うとしています。綴りの変更や記号への置き換えも、この規定の射程に入りえます。
海外向けの発信でも罪に問われますか。
抗弁が用意されています。自動運転車法2024第78条第2項(d)は、その使用がグレートブリテンにおける最終利用者または見込みの最終利用者の目に触れることを予期するのが合理的であることを、成立の要件としています。加えて第5項は、その使用がグレートブリテン域外の利用者または見込み利用者だけに向けられており、かつ、グレートブリテンの利用者の目に触れないようにするため、またはそうした利用者が自分たちへ向けられたものでないと理解できるようにするため、あらゆる合理的な予防措置を講じ相当の注意を払ったことを、被告人が証明する抗弁としています。
いつから適用されますか。
2027年1月7日からです。規則第1条第1項は、規則が2027年1月7日に施行すると定めています。規則自体は2026年7月1日に制定され、7月7日に議会へ提出されました。なお、自動運転車法2024第78条は、2025年のコメンスメント規則により2026年1月1日に特定の目的について効力を持ち始めています。適用地域は、規則第1条第2項によりイングランドおよびウェールズとスコットランドです。
出典
- *1 参考:英国法令データベース「The Automated Vehicles (Marketing Restrictions) Regulations 2026」(SI 2026 No. 733・2026年7月1日制定/2027年1月7日施行)(https://www.legislation.gov.uk/uksi/2026/733/made)。本記事の一次情報。制定日、議会への提出日、施行日(2027年1月7日)、適用地域(イングランドおよびウェールズならびにスコットランド)、根拠(自動運転車法2024 第78条第1項および第97条第2項に基づく代表的な団体との協議)、第2条第1項の8つの制限用語、第2条第2項(automated と autonomous は、車両の全体または車両の運転の機能もしくは能力の全体を説明するために用いる場合に限る旨)、第2条第3項(品詞の変更による変化形とその他の文法上の形を含む旨)、ならびに説明ノート(第78条の効果と、認可された自動運転車の意味)を確認した。確認日は2026年9月10日。(2026年9月確認)
- *2 参考:英国法令データベース「Automated Vehicles Act 2024」第78条(制限用語を認可された自動運転車に限る規定)(https://www.legislation.gov.uk/ukpga/2024/10/section/78)。禁止と抗弁の一次情報として。第1項(語、表現、記号または標章を規則で指定する権限)、第2項(車両についての犯罪の5要件)、第3項(装備品として使うことを意図した製品についての犯罪)、第4項から第6項(自動化に関わる意味を伝える意図がなくそう理解されえない用法、域外向けであって合理的な予防措置と相当の注意を尽くした場合、他人が作成した通信で製造・供給に関わらず知らず疑う理由もなかった場合の各抗弁)、第7項(法定刑。正式起訴による有罪では2年以下の拘禁刑もしくは罰金またはその併科)、第8項(適当な車両と制限用語の定義)、第9項(取り違えられそうなほど近く似た語等の扱い)、ならびに施行の経緯(2026年1月1日に特定の目的について施行)を確認した。確認日は2026年9月10日。(2026年9月確認)
- *3 参考:英国法令データベース「Automated Vehicles Act 2024」第1条(自動運転の基本概念)(https://www.legislation.gov.uk/ukpga/2024/10/section/1)。判定の前提として。第2項(自動運転の要件を満たすのは、機能により自律的に走行することを意図して設計または改造され、その機能によって安全かつ適法にそうできる場合である旨)、第3項(判定は意図された走行の場所と状況を基準とする旨)、第4項(機能の定義)、第5項(自律的に走行するとは、個人ではなく車両の装備により制御され、即時の介入を念頭に個人が車両や周囲を監視していないことである旨)、第6項(制御の意味)、および第7項(安全かつ適法の意味)を確認した。確認日は2026年9月10日。(2026年9月確認)