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クラウド移行のチェックリスト|移行前・移行中・移行後の15項目
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- クラウド移行のチェックリストは、移行判定と稼働判定を区切りに、移行前・移行中・移行後の3段階で項目を並べると使いやすくなります。
- 移行前は移す範囲と責任の分かれ目、移行中は手順書・リハーサル・切り戻しの条件を確かめます。
- 移行後は設定の定期点検と退職者のアカウント停止を続け、社内で埋まらない項目だけを外部に頼みます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
移行の日程は決まったのに、何を確かめれば次へ進んでよいのか社内で答えられない。委託先から手順書を受け取ったものの、抜けがないかを見る物差しがない——。自社のサーバーで動かしてきたシステムをクラウドへ移す現場では、こうした迷いが起こりがちです。クラウド移行のチェックリストは、移行前・移行中・移行後の段階ごとに、次へ進む前に確かめる項目を並べた一覧です。
項目を決めておけば、担当者が替わっても確認の抜けを防げ、委託先との役割分担も話しやすくなります。ただし万能ではなく、印を付けること自体が目的になると、中身を確かめないまま次へ進んでしまいます。本記事では、クラウド移行を任された情報システムの担当者に向けて、段階の区切り方、移行前・移行中・移行後の15項目、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
クラウド移行のチェックリストとは
チェックリストの段階を区切る目安になるのが、デジタル庁の標準ガイドライン(DS-100)です。政府の情報システムを対象にした規範で、移行を業務移行・システム移行・データ移行の3つに分けたうえで、本番の移行を始める前の「移行判定」と、本番の稼働を始める前の「稼働判定」という2つの判断の場を置いています。*1 民間のクラウド移行でも、この2つの判定を区切りにすると、どの項目をいつ確かめるかが整理しやすくなります。
- 移行前:移す範囲と責任の分かれ目を決める段階(計画づくり)
- 移行中:手順書とリハーサルで流れを確かめ、移行判定を経て本番の移行を行う段階
- 移行後:稼働判定で切り替えを決め、設定と運用を引き継いで回す段階
ここで挙げる15項目(各段階5項目)は、移行先のクラウドを限らずに使えるよう、確かめる中身だけを並べています。移行方式(そのまま移すか作り直すか)の選び方はクラウド移行戦略と移行方式(6R)の選び方、よくある失敗の型はクラウド移行の失敗・注意点と回避策で扱っています。
移行前に確かめる5項目
移行前の確認は、移す範囲と責任の線引きを決める作業が中心です。ここが曖昧なままだと、移行中に「このデータも要る」といった手戻りが続きます。

| No. | チェック項目 | 確かめる中身 |
|---|---|---|
| 1 | 移す対象を3つに分けて書き出したか | 業務移行・システム移行・データ移行ごとに、移行時期・移行方式・移行対象・移行環境を書いたか*1 |
| 2 | 移すデータを絞ったか | 今のデータをすべて移す前提にせず、新しい環境で必要なものに限ったか*3 |
| 3 | 止められる時間を決めたか | 移行のためにシステムを止められるか、止めるなら何時間までかを業務部門と合意したか |
| 4 | 責任の分かれ目を確かめたか | 利用する側が受け持つ範囲(業務アプリケーション・端末・運用・クラウドの設定・アカウント)の担当者を決めたか*3 |
| 5 | データの取り出しと料金の管理を確かめたか | 将来ほかの環境へデータを移せるか、料金の体系が公開されているか、利用料の管理の方針を文書にしたか |
4番目の責任の分かれ目は、責任共有モデル(クラウドの事業者と利用者がセキュリティの責任を分け合う考え方)と呼ばれます。総務省のガイドブックは、SaaS・PaaS・IaaSといったサービスの種類によって分担の範囲が変わることと、利用規約の免責事項に注意することを挙げています。*4 移行先の種類が決まった時点で、規約の該当箇所を社内の関係者と読み合わせておきます。
移行中に確かめる5項目
移行中は、計画を手順書に落とし、本番と同じ流れを一度試してから本番に入ります。DS-100は、本番の移行を始める条件として、受入テストで品質基準を満たしていること、移行計画書の内容とリハーサルの結果が適正であることなどを挙げています。*1
| No. | チェック項目 | 確かめる中身 |
|---|---|---|
| 1 | 移行手順書があるか | データの変換方法を標準の場合と例外の場合に分けて書き、作業の順番と担当が手順書に入っているか |
| 2 | リハーサルをしたか | 本番と同じ手順で試し、作業量と移行にかかる時間が予定に収まるかを確かめたか |
| 3 | 移行判定の基準は客観的か | 誰が見ても同じ結論になる基準か。基準を満たさないときに再び行う手順があるか*2 |
| 4 | 切り戻しの条件と方法は明確か | 本番の切り替えがうまくいかないとき、元の環境へ戻す条件と方法を決めたか*2 |
| 5 | 設定する人と確かめる人を分けたか | クラウドの設定を1人で済ませず、設定した人とは別の人が確かめる流れにしたか |
見落とされやすいのが4番目の切り戻しです。移行の当日は時間が限られているため、戻すかどうかをその場で話し合うと判断が遅れます。「どの確認が通らなければ戻すか」「戻すと決める人は誰か」を手順書に書いておけば、当日は書かれたとおりに動けます。
本番の移行が済んだら、移したデータの件数と中身を確かめます。DS-100は、移行後のデータだけでなく、例外データなどについても確認するよう求めています。*1 ふつうの形のデータは問題なく移っても、古い入力ルールで作られたデータや空欄の多いデータでつまずくことがあるからです。
移行後に確かめる5項目
移行後は「動いたら終わり」ではなく、運用に入ってから設定がずれていかないかを見続ける段階です。総務省のガイドブックは、クラウドの仕様変更や機能追加でデフォルトの設定値が変わることがあるため、定期的・継続的なチェックが必要だとしています。*4

| No. | チェック項目 | 確かめる中身 |
|---|---|---|
| 1 | 稼働判定をしたか | 移行の結果が適正で、切り替えても業務に支障がないことを、決めておいた人が判断したか |
| 2 | 運用の担当へ引き継いだか | 設計書・作業の経緯・残った課題を、運用と保守の担当へ渡したか*1 |
| 3 | 設定値を定期的に点検しているか | 点検の頻度と担当を決め、事業者からの仕様変更の知らせを受け取る窓口を決めたか |
| 4 | 退職者・異動者のアカウントを止めているか | 退職や異動のたびに、アカウントの削除や権限の引き継ぎを行う流れがあるか |
| 5 | 利用料を毎月確かめているか | 請求額を確かめる担当を決め、想定と違うときに設定を見直す流れがあるか |
4番目の退職者のアカウントは、総務省のガイドブックが独立したコラムで注意を促している項目です。退職者が自分から設定の変更や削除を申請することは少ないため、人事部門と情報システム部門が連携して対処する必要があるとしています。*4 この流れは移行の前に決めておきます。
外部に頼むときに確認しておきたい点
チェックリストを埋めてみると、「手順書を書ける人がいない」「リハーサルの環境を用意できない」「設定を確かめる2人目がいない」といった、社内だけでは埋まらない項目が見えてきます。足りない項目が分かれば、外部に頼む範囲もその項目に絞って相談できます。依頼の前に、次の点を確かめておきます。
- 範囲:15項目のうち、どれを任せるか。止められる時間や稼働判定のように、社内で決める判断は手元に残す
- 手順書とリハーサル:移行手順書の作成とリハーサルの実施まで含むか。リハーサルの結果を誰が評価するか
- 切り戻し:戻す手順を作るだけか、移行の当日に立ち会って戻す作業まで受け持つか
- 体制:設定する人と確かめる人を分けた体制で作業するか
- 引き継ぎ:設計書・作業の経緯・残った課題をどの形で受け取るか。移行後の設定点検を続けて頼めるか
見積もりは、金額だけでなく範囲をそろえて比べます。移行作業だけの見積もりと、手順書・リハーサル・移行後の点検まで含む見積もりでは、同じクラウド移行でも中身が違うためです。
まとめ:クラウド移行で確かめておきたい3つの点
クラウド移行をチェックリストで進めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、移す対象とデータの範囲、責任の分かれ目を移行前に決めること。第二に、手順書とリハーサルを経て、客観的な基準で移行判定を行い、切り戻しの条件まで書いておくこと。第三に、稼働判定のあとも設定の点検とアカウントの管理を続けることです。この3点を踏まえておけば、「移行の日には動いたのに、数か月後に設定のずれや退職者のアカウントが見つかった」という事態を避けやすくなります。社内で埋まらない項目があれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
チェックリストは誰が管理すればよいですか
社内で移行の責任を持つ人が1つの一覧を持ち、項目ごとに担当者と確認日を書き込む形がおすすめです。委託先に作業を頼む場合も、一覧そのものは社内に置き、委託先には担当する項目の結果を報告してもらいます。
小さなシステムでも15項目すべてが必要ですか
規模が小さければ、手順書やリハーサルを簡単な形にしてもかまいません。ただし、止められる時間と切り戻しの条件は、規模にかかわらず省かずに決めておきます。
移行後の設定の点検はどのくらいの頻度で行えばよいですか
決まった回数があるわけではなく、扱うデータの重要さと設定を変える頻度に合わせて決めます。総務省のガイドブックは、定期的・継続的なチェックを求めています。*4 定期の点検に加えて、事業者から仕様変更の知らせが来たときと、担当者の異動があったときにも見直すと漏れを減らせます。
クラウド移行の確認と作業のご相談
移行手順書の作成からリハーサル、切り戻しの準備、移行後の設定点検まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:デジタル庁「デジタル社会推進標準ガイドライン DS-100 デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン」(2026年6月12日 デジタル社会推進会議幹事会決定)(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/54d8725e/20260715_resources_standard_guidelines_guideline_01.pdf)。出典:第3編第5章「移行に関する事項」、第7章「移行ツールの実装及び移行データ・移行手順書等の作成」「移行の実施・管理」(リハーサル・移行判定・本番環境への移行の実施・稼働判定)「引継ぎ」の記述を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:デジタル庁「デジタル社会推進実践ガイドブック DS-110 デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン解説書(第3編第1章 ITマネジメントの全体像)」(2026年6月12日)(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/50952dae/20260715_resources_standard_guidelines_guideline_03.pdf)。出典:第7章 設計・開発「移行の実施・管理」の確認項目(移行リハーサル・移行判定・本番切替え)の確認観点の例を参照(2026年10月確認)
- *3 参考:デジタル庁「デジタル社会推進標準ガイドライン DS-310 政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」(2025年5月27日 デジタル社会推進会議幹事会決定)(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/a612d406/20250619_resources_standard_guidelines_guideline_08.pdf)。出典:「ベンダーロックインについて」、責任共有モデルによる利用システムの責任範囲、データ移行を必要なものに限る記述を参照(2026年10月確認)
- *4 参考:総務省「クラウドの設定ミス対策ガイドブック」(2024年4月)(https://www.soumu.go.jp/main_content/000944467.pdf)。出典:2-1 責任分担の原則、3-2 体制の整備、コラム「退職者の管理」、3-6 作業手順面の対策、チェックリスト(課金管理等のリスク対応)の記述を参照(2026年10月確認)