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棚卸システムとは?紙の棚卸しとの違いと選び方をわかりやすく解説
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- 棚卸システムは、端末でコードを読み取り、数えた結果をそのまま集めて帳簿と照らし合わせる仕組みです。
- 紙の棚卸しと比べて打ち直しが要らず、差異のある商品だけを数え直せます。
- 選ぶときは、読み取り方式と在庫管理システムとの受け渡しの方法を先に決めます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
決算のたびに倉庫や店舗を止めて紙の棚卸表に数を書き込み、あとで表計算ソフトに打ち直している。数え終わっても帳簿の在庫数と合わず、どこで数え間違えたのか追えない——。商品や部品を多く抱える現場では、こうした悩みが毎期のように繰り返されがちです。棚卸システムは、ハンディターミナル(棚卸しや検品に使う持ち運べる読み取り端末)やスマートフォンでコードを読み取り、数えた結果をそのままデータとして集めて帳簿と照らし合わせる仕組みです。
書き写しの手間が減り、帳簿と実際の数のずれ(差異)が数えている途中で分かるようになります。ただし万能ではなく、商品にコードが付いていない、保管場所が決まっていないといった現場では、仕組みより先に整えることがあります。本記事では、倉庫や店舗の棚卸しを任された担当者に向けて、棚卸システムの仕組み、紙の棚卸しとの違い、選び方、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
棚卸システムとは
棚卸しで数える対象は、法人税法で「棚卸資産」と呼ばれます。法人税法は棚卸資産を「商品、製品、半製品、仕掛品、原材料その他の資産で棚卸しをすべきもの」と定め、*1 政令はその範囲に貯蔵中の消耗品なども加えています。*2 棚卸システムは、こうした物品の数を確かめる作業を効率よく行うための仕組みで、主に次の要素でできています。
- 読み取り端末:ハンディターミナル、スマートフォン、RFID(電波を使って離れた場所から読み取る電子タグ)のリーダー
- 商品マスタ:コードと商品名・保管場所を結び付けた一覧。在庫管理システムや基幹システムから取り込みます
- 集計と差異の確認:数えた結果を帳簿の数と照らし合わせ、ずれのある商品を一覧にする機能
- 結果の出力:確定した数を在庫管理システムへ戻すためのデータと、決算に使う棚卸表
期末の棚卸しは税務とも結び付いています。法人税法は、事業年度の終わりに持っている棚卸資産(期末棚卸資産)の評価の方法を、売上原価の計算と結び付けて定めています。*1 また法人税法施行規則は、青色申告の法人に、棚卸表を貸借対照表や損益計算書とあわせて7年間保存するよう求めています。*3 棚卸システムを入れるときは、出力する棚卸表の形と保存の方法も最初に決めておきましょう。保存の細かな扱いは、顧問の税理士に確かめてください。
紙の棚卸しとの違い
紙の棚卸しは、棚卸表に品名と数を書き込み、あとで集計の担当者が表計算ソフトに打ち直す流れが一般的です。書く・読む・打ち直すの3か所で写し間違いが起こりうるうえ、帳簿と合わない商品が見つかるのは集計が終わってからになります。棚卸システムでは読み取った時点で数がデータになるため、この流れが短くなります。

| 項目 | 紙の棚卸し | 棚卸システム |
|---|---|---|
| 数の記録 | 棚卸表に手で書く | 端末でコードを読み取り、数を入れる |
| 集計 | 表計算ソフトに打ち直す | 端末から自動で集まる |
| 差異の確認 | 集計が終わってから | 数えている途中でも一覧で見られる |
| 数え直し | 紙を探して該当の行を確かめる | 差異のある商品と場所だけを指示できる |
| 始める準備 | 棚卸表を印刷する | 商品マスタとコードの整備、端末の用意 |
表の最後の行のとおり、棚卸システムには始める前の準備が要ります。商品にバーコードが付いていない、保管場所の番地が決まっていない、という状態では効果が出にくいものです。導入を決める前に、現場の棚とコードの状態を一度見て回っておくことが大切です。
棚卸システムの仕組み
棚卸システムを使った棚卸しは、次の4つの段階で進みます。紙の場合と大きく違うのは、ステップ3の差異の確認を、全部を数え終わる前から始められる点です。
- ステップ1:在庫管理システムから、その時点の帳簿の数と商品マスタを取り込む
- ステップ2:担当者が保管場所ごとに端末でコードを読み取り、数を入れる
- ステップ3:帳簿の数と照らし合わせ、差異のある商品だけを数え直す
- ステップ4:確定した数を在庫管理システムへ戻し、棚卸表を出力して保存する
ステップ1の前に、棚卸しの間の入荷と出荷を止めるか、止めずに記録を分けるかを決めておきます。止めずに進めると、数えている間に出荷された分が差異に見えてしまうためです。在庫管理システムそのものの機能や作り方は在庫管理システム開発を外注する費用と進め方で扱っています。
棚卸システムの選び方
棚卸システムを選ぶときに最初に決めるのは、何で読み取るかです。国内の商品の多くにはJANコードが付いていて、標準的なものは13桁です。*4 一方のRFIDについて、GS1 Japan(流通システム開発センター)は、無線で離れたところから読み取れ、遮るものがあっても金属でなければ読み取れると説明しています。*5

| 読み取り方式 | 向いている場面 | 気を付けたい点 |
|---|---|---|
| バーコード(スマートフォンやハンディターミナル) | 商品にJANコードがすでに付いている店舗や倉庫 | 1つずつ読み取るため、点数が多いと時間がかかる |
| RFID(UHF帯の電子タグ) | 同じ箱や棚に多くの商品が並ぶ現場。UHF帯は一括で読み取りやすい*5 | タグを付ける手間がかかる。金属や水の影響を大きく受ける。機器によっては電波法の免許か登録が要る*5 |
読み取り方式のほかに、次の点を比べておくと、導入してから困ることが減ります。どれも製品の説明書きだけでは分かりにくいため、試用の段階で自社の棚を使って確かめるとよいでしょう。
- 在庫管理システムや基幹システムと、帳簿の数の取り込みと書き戻しをどう受け渡すか
- 電波が届きにくい倉庫の奥でも、端末に記録をためておけるか
- 一斉棚卸し(全商品を一度に数える方法)だけでなく、循環棚卸し(場所を分けて少しずつ数える方法)にも使えるか
- 数え直しの指示や、担当者ごとの進み具合の確認ができるか
- 決算に使う棚卸表を、決めた形で出力して保存できるか
外部に頼むときに確認しておきたい点
棚卸システムは、パッケージ製品を入れる場合でも、在庫管理システムとのつなぎ込みや商品マスタの整備で外部の手を借りることが多い分野です。構築や連携を頼むときは、次の点を見積もりの前に確かめておきます。
- どこまで頼むか:端末の選定、商品マスタの整備、在庫管理システムとの連携、操作の説明のうち、どれを任せるか
- 連携の方式:帳簿の数の取り込みと確定した数の書き戻しを、ファイルで行うか、システム同士を直接つなぐか
- 試し方:本番の前に一部の棚で試しに数え、紙で数えた結果と照らし合わせる場を設けるか
- 棚卸表の出力:決算に使う棚卸表の形と保存先を、経理の担当者を交えて決めるか
- 運用後の見直し:差異の多かった商品や場所をもとに、置き方やコードの付け方を直す場を設けるか
棚卸しの差異は、入荷のときの数え間違いから生まれていることもあります。入荷時の数の確かめ方まで見直したい場合は、検品システムの選び方も参考になります。検品と棚卸しを同じコードと同じ端末で扱えるかを一緒に確かめておくと、現場の覚えることが少なくて済みます。
まとめ:棚卸システムで確かめておきたい3つの点
棚卸システムを入れるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、商品にコードが付き、保管場所の番地が決まっているかを先に確かめること。第二に、バーコードとRFIDのどちらで読み取るかを、商品の点数と置き方から決めること。第三に、在庫管理システムとの取り込み・書き戻しの方法と、棚卸表の出力の形を最初に決めることです。この3点を踏まえておけば、「端末は入れたが、結局紙の棚卸表に戻ってしまった」という事態を避けやすくなります。連携の作り方や進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
棚卸システムはスマートフォンだけでも使えますか
使える製品もあります。スマートフォンのカメラでバーコードを読み取る方式なら、専用の端末をそろえずに始められます。ただし、読み取る点数が多い倉庫や、手袋をしたまま作業する現場では、ボタンで読み取れる専用のハンディターミナルのほうが扱いやすいこともあります。
RFIDのタグは商品1つずつに付ける必要がありますか
数えたい単位に付けるのが基本です。商品1つずつに付ける方法のほか、箱やパレット(荷を載せる台)の単位で付ける方法もあります。どの単位で付けるかで、タグの枚数と棚卸しで分かる数の細かさが変わるため、一部の棚で試してから決めるとよいでしょう。
導入にはどのくらいの期間がかかりますか
商品の点数や連携の範囲で変わるため、一律には言えません。パッケージをそのまま使い、帳簿の数をファイルで受け渡すだけなら比較的短く始められます。在庫管理システムと直接つなぐ、RFIDのタグを付けるといった作業が加わるほど期間は延びるため、見積もりの段階で、試しに数える期間も含めた計画を出してもらいましょう。
棚卸システムの導入と連携のご相談
棚卸システムの選定から、商品マスタの整備、在庫管理システムとの連携、試しの棚卸しまで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:e-Gov法令検索「法人税法」(昭和四十年法律第三十四号)(https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034)。出典:第2条第20号(棚卸資産の定義)、第29条(棚卸資産の売上原価等の計算及びその評価の方法)を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:e-Gov法令検索「法人税法施行令」(昭和四十年政令第九十七号)(https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097)。出典:第10条(棚卸資産の範囲)を参照(2026年10月確認)
- *3 参考:e-Gov法令検索「法人税法施行規則」(昭和四十年大蔵省令第十二号)(https://laws.e-gov.go.jp/law/340M50000040012)。出典:第59条(帳簿書類の整理保存)の棚卸表を7年間保存する定めを参照(2026年10月確認)
- *4 参考:一般財団法人流通システム開発センター(GS1 Japan)「GS1事業者コード・GTIN(JANコード)とは」(https://www.gs1jp.org/code/jan/about_jan.html)。出典:GTIN(JANコード)の説明と、13桁の標準タイプ・8桁の短縮タイプの体系を参照(2026年10月確認)
- *5 参考:一般財団法人流通システム開発センター(GS1 Japan)「EPC/RFID(電子タグ)」(https://www.gs1jp.org/standard/epc/)。出典:RFIDの特徴(非接触・遮蔽物があっても読み取り可能・金属を除く)、周波数帯ごとの一括読取りと金属・水の影響、電波法の免許・登録制度の記述を参照(2026年10月確認)