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業務委託の名刺のよくある質問|肩書きの表記と契約終了時の回収
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- 名刺を渡すこと自体を禁じる定めは見当たらず、気をつけるのは名刺の書き方と働き方の実態がどう見えるかです。
- 所属は受託している立場が分かる形にし、自社の役職名は付けず、取引先と約束してよい範囲を伝えておきます。
- 名刺の目的と表示、受け取った名刺の扱い、終了時の回収と停止を、名刺を作る前に契約で決めておきます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
業務委託で開発に加わってもらった外部のエンジニアが、取引先との打ち合わせに出ることになった。自社の名刺を持たせたいが、社員と同じ名刺でよいのか、肩書きは何と書くのか、偽装請負に見えないかと、迷う点がいくつも出てきます。
本記事では、発注する企業の担当者が迷いやすい10の問いを、民法と厚生労働省・個人情報保護委員会の資料をもとにQ&Aの形で整理します。各問いには答えの要点と判断の根拠を添え、資料に直接の答えがない点は「本記事の整理」と書き分けています。
目次
業務委託の名刺で迷う点
業務委託で開発に加わった外部のエンジニアが、取引先との打ち合わせに同席する。その場で名刺を持っていないと困る、取引先のほうも誰が何の担当かが分からない。こうした理由で、自社の名刺やメールアドレスを用意するかどうかを迷う企業は多いはずです。
迷う点は、持たせてよいか、名刺の表示、偽装請負や労働者性との関係、秘密保持、契約の終わりの5つに分かれます。次の表で、自社の疑問がどの問いに当たるかを確かめてから、該当するQ&Aを読んでください。
| 問いの種類 | 主な疑問 | 答えの決め手 | Q&A |
|---|---|---|---|
| 持たせてよいか | 自社の名刺を作って渡してよいか | 名刺に何を書き、取引先にどう見えるか | Q1 |
| 表示 | 所属と肩書きをどう書くか | 受託している立場が名刺から分かるか | Q2・Q3 |
| 偽装請負・労働者性 | 名刺を渡すと雇用や派遣とみなされないか | 名刺よりも、指示の出し方と働き方の実態 | Q4〜Q6 |
| 秘密保持 | 受け取った名刺や社内の情報をどう扱うか | 個人情報の扱いと誓約の取り方 | Q7・Q8 |
| 契約の終わり | 名刺とメールアドレスをどう片付けるか | 終了日に合わせた回収と取引先への連絡 | Q9・Q10 |
本記事は、名刺・メールアドレス・肩書きの扱いに絞ります。入館証や社内システムのアカウントの発行手順は業務委託エンジニアの受け入れで決める5つの手続きで、偽装請負そのものの見分け方と回避策はシステム開発の偽装請負リスクと回避策で扱っています。
名刺と肩書きの表示のQ&A
最初に整理しておきたいのは、名刺そのものが問題になるのではなく、名刺に書いた内容が取引先にどう伝わるかが問題になる、という点です。名刺は、相手がこちらの立場を知るための表示だからです。
Q1. 業務委託のエンジニアに自社の名刺を持たせてもよいですか
- 答えの要点:本記事で確かめた民法と厚生労働省・個人情報保護委員会の資料には、業務委託の相手に名刺を渡すこと自体を禁じる定めは見当たりませんでした(本記事の整理)。気をつけるのは、名刺の書き方と、名刺を渡すことで働き方の実態がどう見えるかの2つです。
- 判断の根拠:民法 第109条(代理権授与の表示による表見代理等)*1、厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)関係疑義応答集」*2
Q2. 所属と肩書きはどう書けばよいですか
- 答えの要点:受託している立場が名刺から分かるように書きます。自社の名前を入れるなら、業務委託であることと担当の範囲を添え、部長や課長といった自社の役職名は付けません。具体的な書き方の例は次の表のとおりです(本記事の整理)。
- 判断の根拠:名刺の書き方を定めた法令や公的なひな形はありません。次のQ3の民法の規定から、本記事が整理した例です。
| 項目 | 書き方の例 | 避けたい書き方 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 所属 | 受託会社の名前を主にし、自社の名前を入れるなら「〇〇株式会社 〇〇システム開発 業務委託」とする | 自社の社名と部署名だけを書く | 取引先が自社の社員と受け取りやすい |
| 肩書き | 「〇〇システム開発 担当エンジニア(業務委託)」のように担当の範囲で書く | 部長・課長・責任者など自社の役職名を付ける | 役職名は社内で持つ権限と結び付いて見える |
| メールの署名 | 受託会社の名前と「業務委託」を署名に書く | 社員と同じ署名のひな形をそのまま使う | 立場と返信先が分からなくなる |
| 連絡先 | 業務用の電話番号とメールアドレスだけを書く | 私用の電話番号を書く | 契約が終わった後も連絡が残る |
| 作る枚数 | 契約期間に合わせて必要な分だけ作る | 大きな箱で何箱も作る | 終了時に回収しきれない |
Q3. 取引先が自社の社員だと思い込んだら何が起きますか
- 答えの要点:民法は、第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内でその他人が第三者とした行為について責任を負うと定めています。ただし、相手が代理権のないことを知っていたか、過失で知らなかったときは除かれます。権限の外の行為でも、相手に権限があると信ずべき正当な理由があれば、同じ考え方が準用されます。
- 判断の根拠:民法 第109条・第110条*1
- 自社の名刺がこの「表示」に当たるかどうかは、名刺の書き方や紹介の仕方など個別の事情で判断されます。見積もりや発注の約束をする権限を持たせないなら、そのことが名刺と取引先への紹介の両方から分かるようにしておきます。
偽装請負と労働者性のQ&A
名刺を自社と同じにすると、外部のエンジニアを自社の社員のように扱っていると見られないかも気になる点です。受託会社を通して契約している場合と、個人のフリーランスと直接契約している場合で、確かめる物差しが分かれます。

Q4. 受託会社のエンジニアに自社の名刺を渡すと偽装請負になりますか
- 答えの要点:請負か労働者派遣かは、契約の形式ではなく37号告示に基づいて実態で判断され、準委任契約でも同じです。疑義応答集に名刺を直接扱った問いはありませんが、近いのが作業服の問いです。発注者が直接作業服を指示すれば偽装請負と判断されますが、企業機密を守るためなど特段の合理的な理由で、双方の合意の上、あらかじめ契約で定めていることのみをもって偽装請負とは判断されないとしています。
- 判断の根拠:37号告示 第2条第1号ハ(服務上の規律に関する指示その他の管理を自ら行うこと)*3、疑義応答集 第1集 Q9*4、第3集 Q1*5
- 名刺も同じ考え方で、使う目的と表示の仕方を受託会社と合意して契約に書き、名刺は受託会社を通して渡すのが無難です(本記事の整理)。
Q5. 個人のフリーランスに自社の名刺を渡すと雇用とみなされますか
- 答えの要点:労働者に当たるかどうかは、契約の形式や名称にかかわらず、仕事の依頼を断る自由、業務の進め方への指揮監督、勤務の場所と時間の拘束などから総合的に判断されます。名刺だけで決まるものではありません。ただ、労働基準法研究会報告は、服務規律を適用していることなどを、使用者がその人を自らの労働者と認識していると推認される点として、労働者性を補強する事由とした裁判例があると記しています。
- 判断の根拠:厚生労働省「労働者とは」*6、労働基準法研究会報告(昭和60年12月19日)*7
- 社員と同じ名刺に加えて、社員と同じ就業のルールや肩書きまでそろえると、社員と同じ扱いの一部に見えます(本記事の整理)。
Q6. 自社のドメインのメールアドレスを発行してもよいですか
- 答えの要点:疑義応答集は、発注者から受託会社の責任者への依頼メールを、責任者の了解の下で働く人にもccで送ったことのみをもって、直ちに労働者派遣とは判断されないとしています。ただし、メールの中身が作業の順序や割り振りの細かい指示だったり、働く人に直接返信を求めたりする場合は、労働者派遣と判断されます。働く人のメールアドレスを受け取るときは、本人の同意を得るなど個人情報の適正な扱いも求められています。
- 判断の根拠:疑義応答集 第2集 Q10(厚生労働省「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」所収)*8
メールアドレスを発行するなら、表示名と署名に受託会社の名前と業務委託であることを入れ、作業の指示は受託会社の責任者を通す流れを先に決めておきます。アカウントの付与から削除までの管理は業務委託エンジニアの受け入れ時の権限管理で整理しています。
秘密保持と契約終了のQ&A
自社の名刺を持った外部のエンジニアは、取引先から名刺を受け取り、自社の名前で情報をやり取りします。受け取った情報の持ち主と、契約が終わったときの片付け方を、名刺を作る前に決めておきます。
Q7. 外部のエンジニアが受け取った取引先の名刺は誰が管理しますか
- 答えの要点:個人情報保護委員会のQ&Aは、従業者が企業の業務に使うために整理した名刺は、企業の個人情報データベース等に該当し得るとしています。外部のエンジニアは従業者ではないため、そのまま当てはまるとは限りません。自社の名刺で受け取った名刺は自社の業務の情報として扱い、保管の場所と契約終了時の返し方を決めておきます(本記事の整理)。
- 判断の根拠:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A Q1-37*9
- 自社の個人データの扱いを任せる場合は、委託先に必要かつ適切な監督を行う義務があります(個人情報保護法 第25条*10)。
Q8. 秘密保持の誓約は誰に出してもらいますか
- 答えの要点:受託会社を通す契約では、受託会社が働く人を自ら決めている限り、情報漏洩の防止のために、働く人が受託会社あてに出した誓約書の写しを求めても、それのみで労働者派遣とは判断されないとされています。一方、働く人の職務経歴書を求めたり事前面談をしたりすると、配置の決定に影響を与えるので労働者派遣と判断されることがあります。
- 判断の根拠:疑義応答集 第2集 Q13(同ガイド所収)*8
- 個人のフリーランスと直接契約するなら、契約書の秘密保持の条項で扱う情報の範囲と返却の方法を決めます(本記事の整理)。

Q9. 契約が終わったら名刺とメールアドレスはどうしますか
- 答えの要点:民法は、他人に代理権を与えた者は、代理権が消えた後もその範囲内の行為について、消えたことを知らなかった第三者に責任を負うと定めています。第三者が過失で知らなかったときは除かれます。代理権を与えていた場合はもちろん、与えていない場合も取引先が思い違いをしないよう、終了日に合わせて名刺の回収、メールアドレスの停止、取引先への担当交代の連絡をまとめて行います(本記事の整理)。
- 判断の根拠:民法 第112条(代理権消滅後の表見代理等)*1
Q10. 名刺を作る前に契約で決めておくことは何ですか
- 答えの要点:名刺とメールアドレスを使う目的と場面、表示する所属と肩書き、取引先と約束してよい範囲、受け取った名刺や情報の扱い、契約終了時の返却と停止の5つです(本記事の整理)。作業服の例のように、あらかじめ合意して契約に書いておくことが、後から説明できる形になります。
- 判断の根拠:疑義応答集 第1集 Q9*4、民法 第109条・第112条*1
- 個別の契約の書き方や、自社の場合に偽装請負に当たらないかの判断は、弁護士や都道府県労働局など専門家・窓口に確かめてください。
名刺とメールアドレスについて決めることを、契約の前・使っている間・契約の終わりの3つの時期に分けると、次の図のとおりです(本記事の整理)。
契約終了時の引き継ぎ全体の進め方は業務委託エンジニアの離任で引き継ぎが漏れる理由と防ぎ方で、個人データを任せる前の確認は業務委託エンジニアの情報セキュリティで整理しています。
外部人材に頼むときに確認しておきたい点
名刺やメールアドレスの扱いは、外部のエンジニアにどんな役割を任せるかで決まります。取引先と会う役割を任せるなら名刺の書き方まで、社内の開発だけなら表示名と署名の書き方までを決めれば足ります。相談の前に、次の点を書き出しておくと話が早く進みます。
- 範囲:頼む開発の中身と、取引先の打ち合わせに出るかどうか
- 期間:契約の期間と、名刺やメールアドレスを使う期間
- 体制:作業の指示を出す受託会社側の責任者と、自社で窓口になる人
- 費用の決まり方:名刺の作成や機器の用意を誰の負担にするか
- 引き継ぎ:契約の終わりに名刺・アカウント・受け取った資料をどう返してもらうか
業務委託の人材に頼むか、リモートで働く社員を採るかを比べている段階でも構いません。取引先の前に立つ役割まで任せたいのか、開発だけを頼みたいのかを書き出すと、どちらの形が合うかが見えてきます。
まとめ:業務委託の名刺で決めておく点
業務委託の外部エンジニアに名刺を持たせるときに決めておきたい点は3つです。第一に、名刺を渡すこと自体ではなく、名刺の書き方と働き方の実態がどう見えるかに気をつけること。第二に、所属と肩書きは受託している立場が分かる形にし、取引先と約束してよい範囲を名刺と紹介の両方で伝えること。第三に、名刺とメールアドレスを使う目的と表示、受け取った名刺や情報の扱い、契約終了時の回収と停止を、名刺を作る前に受託会社や本人と合意して契約に書いておくことです。
よくある質問
派遣で来ている人に自社の名刺を渡す場合も同じ考え方ですか
労働者派遣は、派遣先の指揮命令を受けて働く形です。偽装請負の論点は当てはまりませんが、取引先が自社の社員や代理人だと思い違いをしないよう、所属の書き方に気をつける点は同じです(本記事の整理)。
社内の開発だけを頼む場合も名刺は要りますか
社外の人と会う場面がなければ、名刺を作らず、社内のチャットやメールの表示名と署名で所属が分かるようにすれば足りることが多いです(本記事の整理)。
名刺の作成費用は誰が負担しますか
法令で決まっているものではないため、契約で決めておきます。受託会社を通す契約では、名刺も受託会社を通して用意する形にすると、渡し方と負担の話をまとめられます(本記事の整理)。
取引先の前に立つ役割も任せられる専門人材を探す
任せたい開発の範囲と、取引先の打ち合わせに出てもらうかどうかが決まっていれば、そのままご相談いただけます。業務委託とリモートで働く社員のどちらにするかを決めきれていない段階でも構いません。
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出典
- *1 参考:e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号)(https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)。出典:第109条(代理権授与の表示による表見代理等)、第110条(権限外の行為の表見代理)、第112条(代理権消滅後の表見代理等)を参照(確認日2026年10月28日)(2026年10月確認)
- *2 参考:厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)関係疑義応答集」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gigi_outou01.html)。出典:労働者派遣か請負かは契約形式ではなく基準に基づき実態に即して判断されることを参照(確認日2026年10月28日)(2026年10月確認)
- *3 参考:厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/000780136.pdf)。出典:第2条第1号ハ(服務上の規律に関する事項についての指示その他の管理)を参照(確認日2026年10月28日)(2026年10月確認)
- *4 参考:厚生労働省「37号告示に関する疑義応答集」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/001328443.pdf)。出典:Q9(請負労働者の作業服)を参照(確認日2026年10月28日)(2026年10月確認)
- *5 参考:厚生労働省「37号告示に関する疑義応答集(第3集)」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/001704257.pdf)。出典:Q1(準委任契約でも実態として指揮命令関係があれば労働者派遣事業に該当)を参照(確認日2026年10月28日)(2026年10月確認)
- *6 参考:厚生労働省「労働者とは」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/index02.html)。出典:労働者に該当するかどうかの判断基準(使用従属性)を参照(確認日2026年10月28日)(2026年10月確認)
- *7 参考:厚生労働省「労働基準法研究会報告(労働基準法の『労働者』の判断基準について)」(昭和60年12月19日)(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/001477330.pdf)。出典:「労働者性」の判断を補強する要素(3)その他(服務規律の適用)を参照(確認日2026年10月28日)(2026年10月確認)
- *8 参考:厚生労働省・都道府県労働局「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/001704200.pdf)。出典:Q&A第2集 Q10(依頼メールのcc送付とメールアドレスの提供)、Q13(誓約書の写し・職務経歴書・事前面談)を参照(確認日2026年10月28日)(2026年10月確認)
- *9 参考:個人情報保護委員会「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」(https://www.ppc.go.jp/personalinfo/faq/APPI_QA/)。出典:Q1-37(一定の規則で整理された名刺と個人情報データベース等)を参照(確認日2026年10月28日)(2026年10月確認)
- *10 参考:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」(平成15年法律第57号)(https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057)。出典:第25条(委託先の監督)を参照(確認日2026年10月28日)(2026年10月確認)