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2026.10.31 らしくコラム

多段階契約とは?システム開発を工程ごとに契約する仕組みを解説

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

大型モニターの工程表の切れ目を示す発注側の担当者と、うなずく開発会社の担当者

この記事の結論

  • 多段階契約は、共通のルールを基本契約で決め、工程ごとに個別契約を結んでいく発注の方式です。
  • 要件定義までは準委任、作るものが決まった工程は請負という形で、工程ごとに契約の型を選びます。
  • 契約の切れ目で工期や予算がずれないよう、完成までの全体の工程と予算を管理することが大切です。

※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

要件がまだ固まっていないのに、開発全体の見積もりを出してほしいと言われた。契約した後で仕様が変わり、追加の費用をめぐって話がこじれた——。システム開発を外部に発注する現場では、こうした食い違いが起こりがちです。多段階契約は、システム開発を工程ごとに区切り、工程ごとに個別の契約を結んでいく方式です。

要件定義のように先が見えにくい工程と、作るものが決まった工程とで、契約の型や金額の決め方を分けられます。ただし万能ではなく、契約の手間が増えるうえ、工程の切れ目の管理を怠ると全体の工期や予算がずれます。本記事では、システム開発の発注を担当する方に向けて、経済産業省とIPAのモデル契約書の考え方、一括契約との違い、工程ごとの準委任と請負の使い分け、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。

多段階契約とは

多段階契約の考え方は、経済産業省が2007年に公開した「情報システム・モデル取引・契約書」で示され、IPA(情報処理推進機構)が2020年12月22日に公開した第二版に引き継がれています。*2 モデル契約書は、見積もりの時期とリスクの関係を踏まえ、発注側と受注側の双方がリスクを見直す機会を持てるように、多段階契約と再見積りの考え方を採りました。*1

  • 多段階契約:工程ごとに個別契約を結ぶ方式*1
  • 再見積り:あいまいさが残る段階の見積もりを、要件がはっきりした段階で見積もり直すこと
  • 基本契約:役割分担など全工程に共通するルールを定める契約。委託料と支払い方法は定めず、個別契約に回します
  • 個別契約:工程ごとの作業内容・委託料・納期を定める契約。基本契約と食い違う点は個別契約が優先します

モデル契約書は、システム開発には「無から有を生じさせる」という特性があるとして、工程ごとに成果と役割分担と責任をはっきりさせた契約を重ねていくことが双方にとって合理的だと説明しています。*1

一括契約との違い

多段階契約と比べられるのは、開発の全工程を最初に1本の契約で発注する一括契約です。一括契約は手続きが1回で済みますが、要件が固まる前に全体の金額と納期を決めることになります。モデル契約書は、多段階契約にすると契約作業の手間は増える一方で、開発の途中で起きる仕様変更の影響をできるだけ抑えられ、工程ごとに別の会社へ分けて発注することもできると整理しています。*1

ノートPCの比較表を示して契約の分け方を説明する担当者と、腕を組んで考える課長

多段階契約と一括契約・アジャイル開発の契約の違い
項目 多段階契約 一括契約 アジャイル開発のモデル契約
契約の単位 基本契約+工程ごとの個別契約 全工程を1本の契約で 準委任契約が前提
金額を決める時期 工程に入るたびに見積もり直す 最初に全体を決める 開発を進めながら優先順位を見直す
契約の手間 工程ごとに契約するため増える 1回で済む 体制と役割分担を事前に確かめる
向いている場面 要件がまだ固まっていない大きな開発 作るものが最初からはっきりしている開発 作りながら仕様を決めていく開発

アジャイル開発(短い期間で作って確かめることを繰り返す開発)については、IPAが2020年3月に別のモデル契約を公開しており、完成に対価を払う請負契約ではなく準委任契約を前提にしています。*3 多段階契約は、工程を順に進めるウォーターフォール型の開発を前提にしたモデル契約書の仕組みです。

工程ごとの準委任と請負

多段階契約では、個別契約を結ぶたびに、その工程を準委任契約にするか請負契約にするかを選びます。*1 2つの違いは、請負は仕事を完成させる義務を負い、準委任は仕事の完成までは約束しない点にあります。モデル契約書が示す工程ごとの型は次のとおりです。

モデル契約書が示す工程ごとの契約の型
工程 契約の型
システム化の方向性・システム化計画・要件定義 準委任
システム外部設計(画面や帳票など外から見える部分の設計) 準委任か請負
システム内部設計・ソフトウェア設計・プログラミング・テスト・結合 請負
システムテスト 準委任か請負
受け入れ・導入の支援、運用テスト 準委任

請負に向くのは、作業に入る前に作るものの中身を具体的に決められる工程です。要件定義までは、発注側にとっても始める時点で成果物を思い描けないため、準委任が適切とされています。*1 また、システムテストと外部設計は同じ契約の型にそろえることが望ましいとされています。*1 2つの契約の違いそのものはシステム開発の準委任契約と請負契約の違いで詳しく扱っています。

多段階契約の進め方

多段階契約の流れは、基本契約を結んでから、工程に入るたびに個別契約を重ねていく形です。モデル契約書は、画面や帳票を決める外部設計の段階で金額を確定できると考え、それより前の工程の見積もりは確定したものではないと位置づけています。*1

  • ステップ1:基本契約を結び、工程ごとの役割分担と変更の手続きを決める
  • ステップ2:要件定義を準委任の個別契約で進め、発注側が要件を固める
  • ステップ3:外部設計を終えた段階で、開発以降の金額と納期を見積もり直す
  • ステップ4:開発・テスト・移行を工程ごとの個別契約で進め、仕様の変更は変更の手続きで扱う

多段階契約の進め方を4つの段階で左から順に並べた流れ図。STEP1 基本契約で共通ルールを決める、STEP2 要件定義を準委任で契約、STEP3 外部設計の後に見積もり直す、STEP4 開発以降を工程ごとに契約。

注意したいのは、工程の切れ目です。モデル契約書は、前の工程と次の工程の間に空白の期間ができると全体の工期が実質的に縮むことや、力のある発注先を選べないおそれがあることを挙げ、契約ごとだけでなく完成までの全体の工程を管理する必要があるとしています。全体の予算が決まっているときは、見積もり直しのしわ寄せが後の工程に集まらないよう注意します。*1

外部に頼むときに確認しておきたい点

多段階契約で開発を頼むときは、個別契約の中身だけでなく、契約と契約のつなぎ目の扱いを最初に話し合っておくことが大切です。見積もりや提案を受ける段階で、次の点を確かめておきます。

窓際の席でビデオ会議を聞きながらノートに書き留める担当者

  • 全体の工程表:個別契約の切れ目と、完成までの全体の工程を誰が管理するか
  • 見積もり直しの条件:どの工程の終わりで、何が変わったら金額を見直すか。全体の予算の上限をどう扱うか
  • 前の工程の成果物の確認:次の工程を別の会社に頼む場合、受け取った設計書を確認する期間を設けるか
  • 複数の会社に分けるときのとりまとめ:全体をつなぎ合わせる責任は発注側が負うとされています。調整の業務を外部に頼むなら準委任の契約にします*1
  • 契約どうしの関係:ある工程の契約にトラブルが起きたとき、ほかの工程の契約にどう影響するか

最後の点は、IPAが第二版で見直した論点の一つで、モデル契約書は前の工程の契約と後の工程の契約の関係が争われた裁判例も紹介しています。*2 個別の契約でどう扱うかは、契約書の専門家に確かめながら決めてください。契約書全体で確認したい条項はシステム開発の契約書で発注側が確認すべきチェックポイントにまとめています。

まとめ:多段階契約で確かめておきたい3つの点

多段階契約でシステム開発を発注するうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、基本契約で役割分担と変更の手続きを決め、金額と納期は工程ごとの個別契約で決めること。第二に、要件定義までは準委任、作るものが決まった工程は請負と、工程に合った契約の型を選ぶこと。第三に、契約の切れ目で空白の期間や予算のしわ寄せが出ないよう、完成までの全体の工程と予算を管理することです。この3点を踏まえておけば、「工程ごとに契約したのに、気づけば全体の納期にも予算にも収まらなかった」という事態を避けやすくなります。進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

LASSICは2006年の創業以来、システムの運用・保守に特化したプライム(一次請け)のシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。日本ニアショア開発推進機構の認定ベンダーとして、全国のリモート人材による開発・運用の体制を整えています。

多段階契約で進める開発では、共通フレーム2013(工程の呼び名と作業の範囲をそろえる枠組み)に沿って工程の区切りを決め、工程ごとの作業責任分担表と成果物の受け入れ基準を個別契約に添えます。設計の段階では、外部設計とシステムテストを同じ契約の型にそろえるか、前の工程の成果物を確認する期間をどれだけ取るかを判断点としてお示しします。運用では、変更管理の会議と課題管理表で仕様変更の影響と見積もり直しの経緯を記録し、工程の切れ目ごとに全体の工程表と予算を見直します。

よくある質問

小さな開発でも多段階契約にしたほうがよいですか

必ずしもそうではありません。モデル契約書は、重要インフラや企業の基幹システムの受託開発を主な対象として作られており、中小企業での活用については別に留意点を示しています。*1 作るものが最初からはっきりしている小さな開発なら、手間の少ない一括の契約が合うこともあります。

IPAのモデル契約書はそのまま使えますか

ひな型はIPAのページから入手できますが、そのまま使うことは想定されていません。モデル契約書自身が、各企業の状況に合わせて全部または一部を活用して検討することが望ましいとしています。*1 参照している法令の改正状況も含めて、契約書の専門家に確かめてから使ってください。

途中の工程から発注先を変えることはできますか

多段階契約では工程ごとに契約を結ぶため、次の工程を別の会社に頼むこともできます。その場合は、前の会社が作った設計書の扱い(権利の帰属や引き継ぎ)を、前の工程の個別契約の時点で決めておくと進めやすくなります。

工程ごとの契約と開発の進め方のご相談

要件定義から設計・開発・テストまで、工程ごとの契約の組み立てと完成までの全体の工程管理を、元請(プライムベンダー)としてご提案します。

2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。

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出典

  1. *1 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報システム・モデル取引・契約書(受託開発(一部企画を含む)、保守運用)〈第二版〉」(2025年4月8日更新)(https://www.ipa.go.jp/digital/model/ug65p90000001ljh-att/000087884.docx)。出典:多段階契約と再見積りの定義、基本契約と個別契約の関係(第3条・第5条・第6条の解説)、フェーズの分類と契約類型、請負と準委任の違い、外部設計での確定見積、複数の会社への分割発注、モデルの対象範囲の記述を参照(2026年10月確認)
  2. *2 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」公開ページ・「第二版公表にあたって」(https://www.ipa.go.jp/digital/model/model20201222.html)。出典:経済産業省が2007年に公開したモデル契約書を見直し、2020年12月22日に第二版を公開した経緯と、第二版の見直しのポイント(複数契約の関係)を参照(2026年10月確認)
  3. *3 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「アジャイル開発版『情報システム・モデル取引・契約書』」(https://www.ipa.go.jp/digital/model/agile20200331.html)。出典:2020年3月の公開と、準委任契約を前提とする特徴の記述を参照(2026年10月確認)
  4. *4 参考:経済産業省「ソフトウェア・情報サービス産業の取引に関する取組」(情報システム・モデル取引・契約書)(https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/softseibi/index.html)。出典:情報システム・モデル取引・契約書の策定の経緯を参照(2026年10月確認)




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