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暗号資産の開示規則案|10項目とソースコードの所在
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 開示は10項目に割られる:対象投資契約からリスク要因まで、書く項目が条文で並べられています*1。
- コードの置き場所も書く:Rule 103(b)(6)は公開しているならコードのURLを求めます*1。
- 免除には上限がある:4年で500万ドル、12か月で2,000万/7,500万ドルという区分です*1。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
資金調達の枠組みの話に見えて、実際に手を動かすのはシステム側ということがあります。開示の項目にアーキテクチャやソースコードの所在が入っているときは、まさにそれです。
米国証券取引委員会(SEC)が2026年8月21日、Regulation Crypto Assetsという新しい規則の案を連邦官報に掲載しました*1。Release Nos. 33-11434および34-106150、File No. S7-2026-27、RIN 3235-AN38で、17 CFR Parts 200、201、228、230、232、239の改正案です*1。意見の提出は2026年10月20日までとされています*1。
暗号資産そのものを扱う立場だけでなく、開示の材料をシステム側から出す立場にも関わる内容です。何が免除されるのか、何を書かされるのか、出したあと何が続くのかを一次情報から整理します。
目次
提案の骨格は「2つの免除」と「1つの安全港」
まず全体の形です*1。
SECは暗号資産が関わる一定の投資契約について、あつらえの募集の枠組みを作る新しい規則を提案するとしています*1。この枠組みはRegulation Crypto Assetsという名称の新しい規制に置かれ、1933年証券法5条の登録要件からの2つの免除を含むとされています*1。
2つの免除の輪郭はこうです*1。第一の免除は4年の期間中に500万ドルまでの募集を認め、第二の免除は12か月ごとに7,500万ドルまでの募集を認めるとされています*1。いずれの免除でも、発行者は一定の原則に基づく記述的な開示を投資家が利用できる状態にすることを求められるとされ、第二の免除に依る発行者は財務諸表の提供を求められ、継続的な報告の要件の対象となると述べられています*1。免除に依っても連邦証券法の詐欺禁止および相場操縦禁止の規定の対象であり続けるとされています*1。
三つめの要素が安全港です*1。提案される規則は、1933年証券法および1934年証券取引所法の「証券」の定義における「投資契約」の語からの、条件付きの安全港も含むとされ、その安全港の条件が満たされる場合、暗号資産は、それらの証券の定義の目的において、投資契約の対象ではないものとみなされると説明されています*1。
条文では228.400として置かれています*1。条件は二つで、発行者が、対象投資契約の下で行うと表明または約束した本質的な経営上の努力のすべてを完了し、または恒久的に止めており、当該暗号資産について本質的な経営上の努力を行う新たな表明や約束を行っておらず、行う意図もないこと、そして発行者がForm TR(239.604)で求められる情報を含む移行報告書を委員会へ提出することです*1。
上限と区分は数字で決まっている
金額の区分は条文に書かれています*1。
スタートアップ免除(228.200)は依拠の通知を提出した後に始まり、その提出から4年後、または発行者が移行報告書を提出した日のいずれか早い日に終わる期間の取引が対象とされ、対象取引における募集価格の総額と、当該対象取引の開始前および期間中のすべての対象取引からの総収入の合計が500万ドルを超えてはならないとされています*1。発行者およびその関係者は、同一の対象暗号資産または実質的に類似する暗号資産について、この免除に以前に依拠していてはならないという一度きりの条件も付いています*1。
資金調達免除(228.300)は2段構えです*1。Tier 1は、募集価格の総額と発行者およびその関係者による売付けの合計が2,000万ドルを超えない募集で、うち発行者の関係者である売出証券保有者が募集する分は600万ドルを超えないもの、Tier 2は同じ合計が7,500万ドルを超えない募集で、うち関係者である売出証券保有者の分は2,250万ドルを超えないものとされています*1。いずれも12か月の期間を単位とすると説明されています*1。
| 区分 | 文書に書かれている内容 |
|---|---|
| スタートアップ免除 | 4年の期間で合計500万ドルまで。依拠の通知(Form NOR)の提出が先に必要で、同一または実質的に類似する暗号資産について再度は使えないとされています |
| 資金調達免除 Tier 1 | 12か月で2,000万ドルまで。うち関係者である売出証券保有者の分は600万ドルまで。財務諸表の監査を得ることは求められないとされています |
| 資金調達免除 Tier 2 | 12か月で7,500万ドルまで。うち関係者である売出証券保有者の分は2,250万ドルまで。監査済みの財務諸表と追加の開示の対象とされています |
| 初年度の売出しの上限 | 最初の募集、またはその適格化の日から1年内に適格化された募集では、売出証券保有者の証券に帰属する部分が募集価格の総額の30パーセントを超えてはならないとされています |
金額は固定ではありません*1。委員会は、少なくとも5年ごとに、228.200およびサブパートCの募集金額の制限を、労働省労働統計局が公表する全都市消費者物価指数の変動を反映するよう調整しなければならないとされています*1。
発行者の側にも条件があります*1。資金調達免除では米国またはその州・領域・コロンビア特別区の法の下で組織され、その法の適用を受ける主体であることに加え、執行役員または取締役の過半が米国の市民または居住者であること、資産の50パーセント超が米国内に所在すること、事業が主として米国内で運営されていることが挙げられています*1。
開示の10項目に技術の話が入っている
ここが本題です*1。
開示要件は228.103に置かれ、10の項目に分かれています*1。順に、(1) 対象投資契約、(2) 募集、(3) 対象暗号資産、(4) 経営陣・関係者・利益相反、(5) 関連暗号ネットワーク/アプリケーションと開発計画、(6) セキュリティおよびソースコード、(7) 対象暗号資産の経済性と割当、(8) ガバナンス、(9) 対象暗号資産のエコシステム、(10) リスク要因です*1。
技術寄りの項目の中身を見ると、書く相手がシステム側であることがはっきりします*1。(5)は、関連暗号ネットワークまたは関連暗号アプリケーションの重要な側面と、それらについての発行者の開発計画、および開発計画に対する進捗の説明を求めています*1。(7)は、供給、価格付け、ロックアップ、配分の方法、関係者の保有、放出の予定に加えて、対象暗号資産を生成し破棄する仕組み、および取引履歴を検証する方法まで挙げています*1。(8)は、ガバナンスの仕組み、スマートコントラクトのガバナンスの仕組み、および権限(permissions)です*1。
| 項目 | 求められている内容 |
|---|---|
| (5) ネットワーク/アプリと開発計画 | 関連暗号ネットワークまたは関連暗号アプリケーションの重要な側面、発行者の開発計画、およびその計画に対する進捗の説明とされています |
| (6) セキュリティおよびソースコード | 対象暗号資産と関連ネットワーク/アプリのセキュリティの重要な側面の説明、および公開している範囲で、基礎となるコードにアクセスできるウェブサイトのアドレスとされています |
| (7) 経済性と割当 | 供給・価格付け・ロックアップ・配分方法・関係者の保有・放出予定に加え、生成と破棄の仕組み、取引履歴を検証する方法とされています |
| (8) ガバナンス | ガバナンスの仕組み、スマートコントラクトのガバナンスの仕組み、および権限とされています |
| (9) エコシステム | 現在および想定されるエコシステムの重要な側面を、オンチェーンとオフチェーンの双方について、技術の基盤・参加者の種類・利用する他の当事者や仕組みを含めて説明するとされています |
(6)の条文はこう書かれています*1。対象暗号資産および関連暗号ネットワークまたは関連暗号アプリケーションのセキュリティの重要な側面の説明、ならびに発行者がそれを公開している範囲で、関連暗号ネットワークまたは関連暗号アプリケーションの基礎にあるコード(「ソースコード」とも呼ばれる)にアクセスできるウェブサイトのアドレスです*1。
この項目が入った背景も書かれています*1。関連暗号ネットワークまたは関連暗号アプリケーションについての情報、すなわちアーキテクチャ、ネットワークのプロトコルと機能、およびセキュリティとソースコードは、対象投資契約に合わせた開示の枠組みにとって重要だと複数の意見提出者が述べた、情報の主要な分類の一つであるとされています*1。意見提出者が挙げた項目としてエコシステムとガバナンスの仕組み、暗号ネットワークまたは割当の開発計画、そしてソースコードのセキュリティも挙げられています*1。
実務がすでにそうなっているという指摘もあります*1。ある研究では、標本に含まれるICOのうち53パーセントが、ソフトウェア製品またはトークンのスマートコントラクトの技術的なソースコードを、オンラインのコードリポジトリ(GitHubなど)を通じて公開しており、それにより投資家や顧客が技術的な調査を行えるようになっていたと述べられています*1。委員会も対象投資契約の発行者は、公開されたオープンソースのコードを持つ関連暗号ネットワークや関連暗号アプリケーションを開発し利用していることが多いとしています*1。
権限やログの設計をどう書くかという論点は、業種を越えて共通します。近い話は移転代理人の電子記録保存の5統制やLLMデータ保護条項の4つの役割でも整理しています。
出したあとに続く作業がある
開示は一度出して終わりではありません*1。
スタートアップ免除では発行者は、228.103に記載された情報を、依拠の通知に指定したウェブサイトのアドレスにおいて、無償で公に利用できる状態にしなければならず、その時点は依拠の通知を委員会へ提出する時またはそれ以前とされています*1。さらにその情報が、依拠の通知に指定したウェブサイトのアドレスにおいて、期間中を通じて無償で公に利用できる状態にとどまるようにしなければならないとされ、期間中、各暦年の終わりの時点で以前に開示した情報に重要な変更がある場合、暦年の終わりから30暦日内に開示を修正しなければならないと定められています*1。
資金調達免除では継続報告が並びます*1。年次報告はForm 1-KC(239.601)、半期報告はForm 1-SC(239.602)で会計年度の最初の6か月を対象とし、臨時報告はForm 1-UC(239.603)とされています*1。特別財務報告の期限も具体的です*1。直近の会計年度の財務諸表(Tier 2では監査済みであることが求められる)が募集届出書に含まれていなかった場合はForm 1-KCの表紙で適格化の日から120暦日内、会計年度の後半6か月に適格化された場合の当年度の最初の6か月の未監査の財務諸表はForm 1-SCの表紙で90暦日内とされています*1。
依拠の通知そのものにも更新の義務があります*1。Form NOR(239.605)で求められる情報を含む依拠の通知を、対象取引の開始前に委員会へ提出しなければならないとされ、重要な事実の誤りや誤記を訂正するためには発見後できるだけ速やかに、以前に提出した通知の情報に重要な変更が生じたことを反映するためには変更後できるだけ速やかに修正を提出するとされています*1。
失格の規定も置かれています*1。発行者または230.262(a)に列挙された種類の者が230.262に基づく失格の対象となる場合、Regulation Crypto Assetsに基づく免除は証券の売付けについて利用できないとされています*1。
システム側の準備に置き換えるときの読みどころ
この提案を自社の作業に落とすと、次の五点になります。
第一に、開示の材料をどこから出すかを先に決めることです。(5)から(9)までの項目は、アーキテクチャ、プロトコル、セキュリティ、生成と破棄の仕組み、取引履歴の検証方法、スマートコントラクトの権限という単位で書かれています*1。これらは設計文書や構成管理の中にある情報で、募集の直前に集めるものではありません。どのリポジトリの、どのドキュメントが開示の出どころかを決めておくと、更新のたびに探し直す手間がなくなります。
第二に、コードの公開範囲を意思決定として扱うことです。(6)が求めるのは公開している範囲でのURLです*1。つまり公開そのものは義務ではありません。ただし公開していれば所在を書くことになるため、どのリポジトリを公開し、どこは公開しないのかを先に線引きしておく必要があります。
第三に、更新の期限を運用の予定に入れることです。スタートアップ免除では暦年の終わりから30暦日内の修正が求められ、資金調達免除では年次1-KC、半期1-SC、臨時1-UCが続きます*1。開示のページを誰がいつ直すのかが決まっていないと、期限が来てから慌てることになります。
第四に、金額の区分で作業量が変わると見ることです。Tier 1は2,000万ドルまでで財務諸表の監査を得ることは求められないとされ、Tier 2は7,500万ドルまでで監査済みの財務諸表と追加の開示の対象とされています*1。調達額の見込みが、そのまま社内の作業量に跳ね返ります。
第五に、安全港は「終わり」の証明が要ると考えることです。228.400の条件は本質的な経営上の努力を完了または恒久的に止めていることとForm TRの提出です*1。止めたと言うだけでは足りず、開発計画に対する進捗として何を出してきたかが下敷きになります。
誤解されやすいのは、暗号資産を発行しない会社には関係ないという受け取り方です。開示に必要な情報の多くは、受託して作ったシステムの側にあります。適用の可否は取引と資産の性質により変わりますので、確認を挟みながら進めてください。
まとめ:暗号資産の開示規則案で押さえる3つの視点
米国SECは2026年8月21日、Regulation Crypto Assetsという新しい規則の案を連邦官報に掲載しました。Release Nos. 33-11434および34-106150、File No. S7-2026-27、RIN 3235-AN38で、17 CFR Parts 200、201、228、230、232、239の改正案です。意見の期限は2026年10月20日とされています。押さえたい視点は三つです。第一に、枠組みの形。1933年証券法5条の登録要件からの2つの免除が置かれ、スタートアップ免除は4年の期間で合計500万ドルまで、資金調達免除はTier 1が12か月で2,000万ドルまで、Tier 2が7,500万ドルまでとされています。関係者である売出証券保有者の分はそれぞれ600万ドルと2,250万ドルまでで、最初の募集などでは売出しの部分が募集価格の総額の30パーセントを超えないこととされています。金額は少なくとも5年ごとに全都市消費者物価指数で調整されます。第二に、開示の中身。228.103は開示を10項目に分け、対象投資契約、募集、対象暗号資産、経営陣と利益相反、関連ネットワークと開発計画、セキュリティとソースコード、経済性と割当、ガバナンス、エコシステム、リスク要因を並べています。Rule 103(b)(6)はセキュリティの重要な側面の説明に加えて、公開している範囲でコードにアクセスできるウェブサイトのアドレスを求め、アーキテクチャやネットワークのプロトコルと機能も重要な情報の分類として挙げられています。第三に、出したあとの運用。開示は無償で公に利用できる状態に置き、期間中それを保ち、重要な変更は暦年の終わりから30暦日内に反映するとされています。資金調達免除では年次のForm 1-KC、半期のForm 1-SC、臨時のForm 1-UCが続き、特別財務報告は適格化から120暦日内または90暦日内とされています。安全港は本質的な経営上の努力の完了または恒久的な停止とForm TRの提出を条件としています。
よくある質問
どんな規則案ですか。
米国証券取引委員会(SEC)が、暗号資産が関わる一定の投資契約についてあつらえの募集の枠組みを作る新しい規則の案です。2026年8月21日に連邦官報へ掲載され、Release Nos. 33-11434および34-106150、File No. S7-2026-27、RIN 3235-AN38として17 CFR Parts 200、201、228、230、232、239を改正する提案です。意見の期限は2026年10月20日とされています。
2つの免除の上限はいくらですか。
スタートアップ免除は4年の期間で合計500万ドルまでとされています。資金調達免除はTier 1が12か月で2,000万ドルまで(うち関係者である売出証券保有者の分は600万ドルまで)、Tier 2が7,500万ドルまで(同2,250万ドルまで)とされています。金額は少なくとも5年ごとに全都市消費者物価指数で調整されるとされています。
開示は何を書くのですか。
228.103は10項目を挙げています。対象投資契約、募集、対象暗号資産、経営陣・関係者・利益相反、関連暗号ネットワーク/アプリケーションと開発計画、セキュリティおよびソースコード、対象暗号資産の経済性と割当、ガバナンス、エコシステム、リスク要因です。リスク要因は一般的な記述を避け、個別の要因のみを含めるとされています。
ソースコードは公開しなければなりませんか。
条文は「発行者がそれを公開している範囲で」コードにアクセスできるウェブサイトのアドレスを求めています。公開そのものを義務づける書き方ではありません。あわせて、対象暗号資産と関連ネットワークまたはアプリケーションのセキュリティの重要な側面の説明が求められています。
開示は一度出せば終わりですか。
終わりません。スタートアップ免除では、開示を無償で公に利用できる状態に置き、期間中それを保ち、暦年の終わりの時点で重要な変更があれば30暦日内に修正するとされています。資金調達免除では年次のForm 1-KC、半期のForm 1-SC、臨時のForm 1-UCの提出が続くとされています。
開示に耐える設計文書と権限管理はLASSICへ
元請(プライムベンダー)として、開示の出どころの台帳化から権限設計、履歴の検証と監査ログの保存までご提案します。まずはお気軽にご相談ください。
出典
- *1 参考:U.S. Securities and Exchange Commission「Regulation Crypto Assets」(連邦官報 2026年8月21日・提案規則)(https://www.federalregister.gov/documents/2026/08/21/2026-17183/regulation-crypto-assets)。提案規則の掲載。Release Nos. 33-11434および34-106150、File No. S7-2026-27、RIN 3235-AN38、17 CFR Parts 200・201・228・230・232・239の改正案、意見期限2026年10月20日、2つの免除の上限と条件、228.103の開示10項目、228.400の安全港、228.305の継続報告の一次情報として。確認日は2026年9月7日。(2026年9月確認)
- *2 参考:U.S. Securities and Exchange Commission「同 提案規則(連邦官報掲載 全文テキスト)」(https://www.federalregister.gov/documents/full_text/text/2026/08/21/2026-17183.txt)。上記の全文。Rule 103(b)(6)の条文、Tier 1・Tier 2の金額区分、228.102の物価指数による調整、228.200の依拠の通知と30暦日内の修正、特別財務報告の120暦日/90暦日、ICOの53パーセントがコードリポジトリで公開していたとする記述の確認に使用。確認日は2026年9月7日。(2026年9月確認)