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2026.08.11 らしくコラム

アラート疲れ対策|監視アラートのチューニング運用

監視の仕組みを入れたはずなのに、通知が鳴りやまない。深夜のオンコールで叩き起こされたが、確かめてみれば対応の要らない一時的な揺らぎだった——こうした経験は、システム運用の現場でよく聞かれます。通知が多すぎると、担当者はやがて通知を軽く見るようになり、本当に危険な兆候まで見落としてしまいます。この状態が「アラート疲れ」です。

アラート疲れは、監視ツールを導入すれば自動的に解消されるものではありません。むしろ、監視を始めたあとに、鳴り方を継続的に整えていく運用があってこそ防げるものです。本記事では、システムを運用する情報システム部門やサービス運営の担当者に向けて、アラート疲れがなぜ起きるのか、アラートのチューニングとはどんな作業か、そして定期運用として回し続けるための勘所と外注の考え方を整理します。

監視アラートのチューニング運用のイメージ

アラート疲れとは——監視構築・インシデント対応との違い

アラート疲れとは、通知の量が多すぎるために、受け取る側が通知への注意を失っていく状態を指します。対応の要らない通知が繰り返されると、人はやがて「またか」と反応が鈍り、通知を確かめずに閉じるようになります。その結果、まれに混じる重大な兆候まで、見過ごされてしまうのです。似た言葉と並べると、この記事が扱う範囲がはっきりします。

監視・オブザーバビリティの基盤構築は、メトリクス・ログ・トレースといった「何をどう測るか」をそろえる取り組みです。これに対して本記事のテーマは、測ったものをもとに「どう鳴らすか」を絞り込み、整え続ける運用です。またインシデント対応・オンコールは、鳴ったアラートを受けて障害を復旧させる動きを指します。アラートのチューニングは、その前段で、そもそも鳴らすべきものだけが鳴る状態をつくる作業だといえます。

つまり、基盤を作る段階でも、鳴ったあとに動く段階でもなく、その間にある「鳴り方そのものを整える」ところに焦点があります。監視を導入した直後は、とりあえず多くの項目に通知を設定しがちで、運用が始まってから通知が過剰だと気づくことも多いものです。だからこそ、鳴り方の調整は、監視を続ける限りついて回る仕事になります。

この記事のポイント

  • アラート疲れは、監視基盤の構築やインシデント対応とは別に、「鳴り方を整え続ける運用」がないと防げません。
  • 重複の集約・しきい値の見直し・症状ベースの判定・優先度づけで、対応すべきアラートだけを残すのが基本です。
  • 一度の調整で終わらせず、発報数や誤検知の傾向を定例で振り返り、見直し続ける仕組みが欠かせません。

なぜアラートは鳴りすぎるのか

通知が過剰になる背景には、いくつかの共通した原因があります。原因を切り分けておくと、どこから手を付ければよいかが見えてきます。

一つ目は、しきい値の設定です。「CPU使用率が一定を超えたら通知」のような固定の基準は、負荷が高まりやすい時間帯に頻繁に発報しがちです。基準が実態より低いと、対処の要らない一時的な揺らぎでも鳴ってしまいます。二つ目は、重複した発報です。一つの障害が起きると、関連する複数の監視項目が同時に反応し、同じ出来事について何通もの通知が届くことがあります。三つ目は、対応のしようがない通知です。見ておきたいだけの情報まで通知にしてしまうと、担当者が動けない通知が積み上がります。四つ目は、状態の考慮不足です。計画的なメンテナンスやデプロイの最中は一時的に数値が乱れますが、そこで抑制の設定がないと、想定内の変化でも通知が飛びます。これらが重なると、一日に届く通知は膨らみ、重要なものが埋もれていきます。

チューニングの考え方

アラートのチューニングは、やみくもに通知を減らす作業ではありません。「対応すべきものは漏れなく届き、そうでないものは静かにする」状態へ近づけていく取り組みです。基本の考え方を、いくつかの軸で整理します。

まず、重複の集約です。同じ障害から生じる複数の通知は、関連するものとしてまとめ、一つの事象として扱えるようにします。次に、しきい値の見直しです。固定の基準だけに頼らず、平常時の変動を踏まえて、対処が要る水準を見極めます。さらに、症状ベースの判定という考え方があります。内部の細かな指標が乱れたことそのものではなく、利用者に影響が出ている状態——たとえば応答が返らない、エラーが増えている——を軸に鳴らす発想です。関連して、SLI・SLO・エラーバジェットの考え方を用い、サービスの目標水準を守れなくなりそうなときに通知する設計も広がっています。そのうえで、通知には重大度で優先度をつけ、すぐ動くべきものと、翌営業日に回してよいものとを分けるのが基本です。計画的な作業中は一時的に抑制(サイレンス)する設定も欠かせません。こうした調整の流れを図にすると、次のようになります。

アラートチューニングの考え方を示す図

つまずきやすい難所

チューニングを進めるうえで、あらかじめ想定しておきたい難所があります。踏まえておくと、行き過ぎや形骸化を避けやすくなります。

一つ目は、減らしすぎによる見落としです。通知を絞ることばかりに気を取られると、本来拾うべき兆候まで消してしまう恐れがあります。何を鳴らさないと決めるときは、その判断の理由を残しておくと、後から見直しやすくなります。二つ目は、属人化です。「この通知は無視してよい」という暗黙の了解が特定の担当者の頭の中だけにあると、担当が替わったときに引き継げません。ルールとして明文化しておくことが求められます。三つ目は、見直しが続かないことです。導入直後は熱心に調整しても、時間がたつと放置され、いつのまにか元の鳴りすぎる状態へ戻りがちです。システムやサービスは変わり続けるため、一度の調整では追いつきません。四つ目は、目的の取り違えです。通知の件数を減らすこと自体が目的化すると、数字は良くなっても肝心の異常を捉えられない、という本末転倒に陥ります。あくまで「重要なものを見落とさない」ことが狙いだと、立ち返れるようにしておきましょう。

定期運用として回し続ける

アラートの調整は、一度きりの作業ではなく、繰り返し回していく運用です。仕組みとして定着させると、鳴りすぎる状態への逆戻りを抑えられます。目安となる進め方を整理しました。

頻度 主な作業 見るポイント
通知が鳴るたび 対応の要否を記録する 動いたか/無視したかを残す
週次・月次 発報の傾向を振り返る 件数の推移・多く鳴った通知・対応不要だった割合
見直しのつど しきい値・通知先を調整する 減らした理由・残した理由を記録に残す
構成変更時 新しい対象の通知を設計する 増設・移行に合わせて過不足を点検

大切なのは、通知の記録をもとに振り返る点です。どの通知がよく鳴り、そのうちどれだけが実際の対応につながったのか——この傾向が見えると、削るべき通知と、逆に手薄な領域が浮かび上がります。振り返りの場を定例に組み込み、調整の判断とその理由を残していけば、担当が替わっても運用を引き継げます。

外注時に確認しておきたい点

アラートの調整や監視運用を外部に委託する場合は、次の点を事前にすり合わせておくと、認識のずれを防ぎやすくなります。まず、任せる範囲です。しきい値の調整だけを頼むのか、通知の記録・定例の振り返り・見直しまで含めるのかで、進め方が変わります。次に、対応の判断をどこで持つかです。通知を受けて実際に動く役割を外部が担うのか、社内が担うのかによって、体制の組み方が変わってきます。

さらに、どの状態を「対応すべき」とみなすかの基準は、サービスの目標水準(SLO)や自社の事情に左右されます。ここは委託先任せにせず、一緒に決めていくのが望ましいところです。加えて、調整の判断とその理由を記録に残し、社内でも追えるようにしておくと、運用が特定の担当者や委託先に閉じてしまう事態を避けられます。整備の支援だけを頼むのか、日々の運用まで含めて依頼するのかを明確にしておくと、任せたあとのつまずきを抑えやすくなります。

まとめ:アラート運用で押さえる3つの視点

アラート疲れは、監視基盤を作る取り組みや、鳴ったあとのインシデント対応とは別に、「鳴り方そのものを整え続ける運用」があってはじめて防げます。押さえておきたい視点は3つに整理できます。第一に、監視の構築・インシデント対応・アラートの調整を切り分け、自社に足りていないのがどれなのかを見極めること。第二に、重複の集約・しきい値の見直し・症状ベースの判定・優先度づけによって、対応すべきアラートだけが届く状態を目指すこと。第三に、一度の調整で終わらせず、通知の記録をもとに定例で振り返り、見直し続ける仕組みを持つことです。この3点を踏まえておけば、「監視は入れたのに、肝心なときに気づけない」という事態を避けやすくなります。運用の負担が大きいと感じるなら、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、元請(プライムベンダー)としてシステムの開発から運用までを一貫して受託しています。アラートの調整は、監視で何を測るかの整理から、鳴りすぎる通知の棚卸し、しきい値と通知先の見直し、そして定例で振り返り続ける運用まで、工程を分断せずに対応できるのが強みです。どこから手を付けるべきか、現状把握の段階からご相談いただけます。

よくある質問

アラート疲れとは何ですか。

通知の量が多すぎるために、受け取る側が通知への注意を失っていく状態を指します。対応の要らない通知が繰り返されると、人はやがて反応が鈍り、通知を確かめずに閉じるようになります。その結果、まれに混じる重大な兆候まで見過ごされてしまう点が問題です。監視を入れただけでは解消されず、鳴り方を整える運用が要ります。

監視の導入とアラートのチューニングは何が違うのですか。

監視・オブザーバビリティの導入は、メトリクスやログなど「何をどう測るか」をそろえる取り組みです。アラートのチューニングは、測ったものをもとに「どう鳴らすか」を絞り込み、整え続ける運用を指します。測る仕組みがあっても、鳴り方が過剰なままだと重要な兆候が埋もれるため、両方がそろってはじめて監視が役立ちます。

症状ベースのアラートとはどういう考え方ですか。

内部の細かな指標が乱れたことそのものではなく、利用者に影響が出ている状態を軸に鳴らす発想です。たとえば応答が返らない、エラーが増えているといった、実際に困りごとが起きているサインを重視します。原因ごとの細かな通知を無数に設定するより、影響に着目したほうが、対応すべき事象を捉えやすくなると考えられています。

通知を減らすと、異常を見落としませんか。

その懸念はもっともで、減らすこと自体を目的にすると見落としを招きます。狙いはあくまで「重要なものを見落とさない」ことで、そのために対応不要な通知や重複を静かにしておくものです。何を鳴らさないと決めるときは、その理由を記録に残し、定例の振り返りで手薄な領域がないかを点検すると、行き過ぎを防ぎやすくなります。

外注する場合、どこまで依頼できますか。

しきい値の調整から、通知の記録・定例の振り返り・見直し、さらに通知を受けて動く運用まで、範囲を分けて依頼できます。ただし、どの状態を対応すべきとみなすかの基準は自社の事情やSLOに左右されるため、委託先任せにせず一緒に決めるのが望ましいところです。調整の理由を記録に残し、社内でも追える形にしておくと引き継ぎやすくなります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑

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  1. *1 参考:Google「Site Reliability Engineering / The Site Reliability Workbook(Alerting on SLOs)」(https://sre.google/workbook/alerting-on-slos/


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