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2026.10.26 らしくコラム

Azure OpenAIで作る社内文書検索|5つの工程と確認点

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

文書保管室で紙のファイルの中身を確かめ、ノートPCに登録の段取りを控える技術者

この記事の結論

  • Azure OpenAIの社内文書検索は、Azure AI Searchで文書の関係する部分を探し、それを根拠に答えさせて作ります。
  • On Your Dataは2026年10月14日に終了したため、検索と権限の確認はアプリの側で組み直します。
  • 権限の絞り込みは文書の置き場所で方法を選び、評価の質問の一覧で検索と回答の質を測り続けます。

※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

社内の規程やマニュアルを、生成AIに聞けば答えてくれるようにしたい。でも、見せてはいけない文書まで答えに混ざらないかが心配だ——。社内文書検索を任された担当者がつまずきやすい点です。Azure OpenAIで作る社内文書検索は、Azureの検索サービスで社内の文書から関係する部分を探し、その部分を根拠にAzure OpenAIのモデルが答える仕組みです。RAG(検索拡張生成)と呼ばれる形です。

仕組みは単純ですが、取り込み方と権限の扱いで手間が大きく変わります。ただし万能ではなく、文書が古ければ答えも古くなります。本記事では、情報システムや開発の責任者に向けて、Microsoft Learnの公式ドキュメントで確かめた範囲で、文書の取り込み、権限に合わせた検索、回答の根拠の示し方、評価と運用、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。

Azure OpenAIの社内文書検索とは

Azure OpenAIのモデルは社内の文書を知りません。社内文書検索では、Azure AI Searchという検索サービスに文書を登録し、質問のたびに関係する部分を探してモデルに渡します。

以前はAzure OpenAIの「On Your Data」という機能を使えば、検索とのつなぎ込みを設定だけで済ませられました。この機能は2026年10月14日に提供を終えています。*2 これからは、Azure AI Searchの検索結果をアプリで受け取り、モデルに答えさせる形で作ります。方式は次の2つです。

Azure AI SearchでRAGを組む2つの方式
方式 検索の流れ 提供の状況 向いている場面
従来型のRAG(classic RAG) アプリが1回の検索を送り、その結果をモデルに渡して答えさせる 一般提供(GA)の機能だけで組める 一般提供の機能に限りたい。検索の流れを自分で細かく制御したい
エージェント型の検索(agentic retrieval) モデルが質問を小さな問いに分けて並行して検索し、根拠と出典をまとめて返す 一部の機能がプレビュー(試験提供) 会話が続く問い合わせや複雑な質問。新しく作るとき

新しく作る場合、Microsoftはエージェント型から始めるよう勧めています。どちらの方式でも、社内文書検索を作る手順は次の5つの工程に分けられます。

社内文書検索を作る5つの工程
工程 やること つまずきやすい点
1 文書の取り込み 対象の保存場所と取り込み方を決める 保存場所ごとに使える方式と制約が違う
2 分割と更新 文書を検索しやすい大きさに分け、更新の間隔を決める 分割の大きさを変えると取り込み直しになる
3 権限に合わせた検索 利用者が見てよい文書だけを検索の対象にする 権限の情報が取り込みで引き継がれない場合がある
4 回答の根拠 答えのもとになった文書を利用者に示す 出典の名前や場所を索引に持たせていない
5 評価と運用 決めた質問で検索と回答の質を測り続ける 文書や設定を変えた後に測り直していない

社内文書検索を作る5つの工程を左から順に並べた流れ図。STEP1 文書の取り込み、STEP2 分割と更新、STEP3 権限に合わせた検索、STEP4 回答の根拠、STEP5 評価と運用。

文書の取り込みと更新

まず、対象にする文書の保存場所を決めます。Azure AI Searchのインデクサー(保存場所から文書を定期的に読み込む仕組み)は、Azureの10を超えるデータの置き場所から文書を取り込めます。*1 社内の文書がSharePointにある場合は、取り込み方を次の2つから選びます。

書類棚の前でバインダーを持ち上げ文書の目録に蛍光ペンで印を付ける

  • SharePointのインデクサー(プレビュー):文書を検索の索引に写し、新しい文書や変わった文書だけを取り込み直します。プライベートエンドポイント(社内のネットワークに置く専用の入口)には対応せず、条件付きアクセスを有効にしたテナントでは使えません。フォルダーの名前を変えると、別の文書として取り込み直されます*3
  • SharePointを直接検索する方式(プレビュー):索引を作らず、質問のたびにSharePointを検索します。使う人ごとにMicrosoft 365 Copilotのライセンスか従量課金の設定が要り、対象はSharePointのサイトだけでOneDriveは含みません。1回の検索で返る結果は多くて25件です*4

取り込んだ文書は検索しやすい大きさに分けます。Microsoftは、固定の長さで分ける場合、512トークン(モデルが文字を数える単位)から始め、前後の重なりを25%にすることを勧めています。*5

更新の間隔も、この段階で決めます。インデクサーは5分から24時間までの間隔で定期的に動かせます。*6 規程の改定をすぐ答えに反映したい業務なら間隔を短くし、取り込みの失敗を確かめる担当も決めます。分割の大きさや検索結果の並べ替えの改善はRAGの精度改善を外注するで扱っています。

権限に合わせた検索

社内文書検索でいちばん気を付けたいのは、利用者が見てはいけない文書を答えの根拠にしないことです。Azure AI Searchは、文書ごとに見てよい人を絞る方法を4つ用意しています。*7

文書ごとに見てよい人を絞る4つの方法
方法 仕組み 合う場面
セキュリティフィルター 文書ごとに見てよい利用者やグループの識別子を持たせ、検索のたびにその値で絞り込む 自社で作った認証の仕組みを使う。一般提供の機能だけで組みたい
ACL・RBACの範囲(プレビュー) 保存場所の権限の情報を取り込み、検索する人のMicrosoft Entra IDの身元と照らし合わせる Azure Data Lake Storage Gen2やAzure Blob Storageに権限を付けて文書を置いている
Microsoft Purviewの秘密度ラベル(プレビュー) 文書に付けた秘密度ラベルを取り込み、検索のときに利用者の権限と照らし合わせる Purviewで文書を分類して守っている
SharePointの権限(プレビュー) SharePointの権限の情報を取り込み、検索のときに照らし合わせる 文書がSharePointのライブラリやページにある

セキュリティフィルターは、識別子を文字列として照らし合わせるだけで、それ自体に認証の働きはありません。すべての検索でフィルターをかけ、識別子を結果に表示しない設定だけに頼らないことが大切です。*8

On Your Dataからの移行の手引きも、続けて聞かれた質問を含むすべての要求で、利用者ごとの権限をアプリの側で確かめるよう求めています。*2 方法は、文書の置き場所と社内の認証の仕組みから選びます。

回答の根拠と評価・運用

根拠を示せば、利用者は元の文書で答えを確かめられます。エージェント型の検索では、検索の結果に、答えのもとになった文書の一覧(references)と、どんな検索をしたかの記録(activity)が含まれます。*9 従来型なら、出典に示す文書の名前と保存場所を取り込みの段階で索引に入れておきます。

質問と答えの一覧に赤ペンで丸を付けもう1人が規程の箇所を指で押さえる

評価では、検索の段階と回答の段階を分けて測ります。Microsoft Foundryには、RAGの評価に使う次のような評価の仕組みが用意されています。*10

RAGの評価に使う主な仕組み
評価の仕組み 測ること 段階
Retrieval 取り出した文書の部分が質問に合っているか 検索
Document Retrieval 正解として用意した文書をどれだけ取り出せたか 検索
Groundedness 答えが渡した文書の中身から外れていないか 回答
Relevance 答えが質問に正しく答えているか 回答
Response Completeness(プレビュー) 正解の答えにある大事な情報を落としていないか 回答

移行の手引きは、答えられる質問、文書に答えがない質問、権限がなく答えてはいけない質問の3種類を、自社の文書で試すよう挙げています。*2 この3種類の質問の一覧を残し、文書や設定を変えるたびに測り直すと、質の低下に気付けます。評価の指標の決め方はRAG・LLMの精度評価にまとめています。

外部に頼むときに確認しておきたい点

社内文書検索を外部に頼むときは、取り込み方と権限の設計に手間がかかります。導入そのものの手順はAzure OpenAI導入支援の手順で整理しています。見積もり前に次の点を確かめます。

  • 範囲:文書の取り込み、分割と更新、権限に合わせた検索、根拠の示し方、評価のうち、どこまで任せるか
  • 期間:試しに使う文書の範囲と期間、本番の業務に広げるかを判断する時期
  • 体制:文書の持ち主や見てよい人を決める社内の担当者と、外部の担当者が一緒に決める事項
  • 費用の決まり方:作業の範囲で決まる一括の見積もりか、期間で決まる支援か。Azureの利用料とは分けて見るか
  • 引き継ぎ:取り込みの設定、権限の方法を選んだ理由、評価に使う質問の一覧を文書に残し、社内で測り直せる状態にするか

プレビューの機能はサービスレベル保証の対象外で、本番利用は勧められていません。使うなら一般提供までの扱いを確かめます。全体の進め方は社内文書検索AI導入を委託する進め方で扱っています。

まとめ:社内文書検索で確かめておきたい3つの点

Azure OpenAIで社内文書検索を作るうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、保存場所ごとの取り込み方と更新の間隔を先に決めること。第二に、置き場所に合わせて権限の絞り込み方を選ぶこと。第三に、評価の質問の一覧で変更のたびに測り直すことです。この3点を踏まえておけば、「見せてはいけない文書まで答えに出てしまった」という事態を避けやすくなります。設計や移行に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

LASSICは2006年の創業以来、システムの運用・保守に特化したプライム(一次請け)のシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。日本ニアショア開発推進機構の認定ベンダーとして、全国のリモート人材による開発・運用の体制を整えています。

取り込みはAzure AI Searchのインデクサーとスキルセットで組み、Text Split(分割)とAzureOpenAIEmbedding(ベクトル化)を文書の種類に合わせて設定します。権限はMicrosoft Entra IDのグループを使うセキュリティフィルターか、保存場所の権限を取り込む方法かを、置き場所と認証の仕組みから判断します。評価はMicrosoft FoundryのRetrieval・Groundedness・Relevanceで測り、実行の間隔と失敗の通知まで決めて引き継ぎます。

よくある質問

On Your Dataで作ったアプリはどうすればよいですか

提供終了後は、On Your Dataの設定を含む要求は使えません。互換のある索引は使い回せますが、移行は自動ではなく、検索・回答・出典の部分をアプリで作り直します。権限の情報も自動では引き継がれません。

日本語と英語が混ざった文書でも検索できますか

Azure AI Searchは、50を超える言語の文章の区切り方と、複数の言語に対応したベクトルに対応しています。*1 利用者がどの言語で質問するかも確かめて、索引を設計します。

文書を削除したら検索の結果からも消えますか

SharePointのインデクサーは、ファイルやページの削除を次の実行で見つけ、対応する文書を索引から消します。*3 ほかの保存場所では取り込み方によって削除の扱いが変わるため、設計の段階で確かめておきます。

Azure OpenAIでの社内文書検索のご相談

Azure AI Searchへの文書の取り込みから、権限に合わせた検索、回答の根拠の示し方、評価と運用まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。

2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。

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出典

  1. *1 参考:Microsoft Learn「Retrieval-augmented generation (RAG) in Azure AI Search」(https://learn.microsoft.com/en-us/azure/search/retrieval-augmented-generation-overview)。出典:RAGで難しくなる5つの点、従来型とエージェント型の違いと選び方、インデクサーが取り込める置き場所の数、言語への対応を参照(2026-10-24確認)(2026年10月確認)
  2. *2 参考:Microsoft Learn「Azure OpenAI On Your Data (classic)」(https://learn.microsoft.com/en-us/azure/foundry-classic/openai/concepts/use-your-data)。出典:2026年10月14日の提供終了、移行が自動ではないこと、索引の再利用、利用者ごとの権限の確認、移行の確認項目を参照(2026-10-24確認)(2026年10月確認)
  3. *3 参考:Microsoft Learn「Index content from SharePoint in Microsoft 365 (preview)」(https://learn.microsoft.com/en-us/azure/search/search-how-to-index-sharepoint-online)。出典:差分の取り込み、削除の検出、プライベートエンドポイントと条件付きアクセスの制約、フォルダー名の変更の扱いを参照(2026-10-24確認)(2026年10月確認)
  4. *4 参考:Microsoft Learn「Create a remote SharePoint knowledge source (preview)」(https://learn.microsoft.com/en-us/azure/search/agentic-knowledge-source-how-to-sharepoint-remote)。出典:利用者ごとのライセンスか従量課金の条件、対象がSharePointのサイトだけであること、結果の上限を参照(2026-10-24確認)(2026年10月確認)
  5. *5 参考:Microsoft Learn「Chunk large documents for agentic retrieval and RAG」(https://learn.microsoft.com/en-us/azure/search/vector-search-how-to-chunk-documents)。出典:分割の大きさと重なりの推奨値を参照(2026-10-24確認)(2026年10月確認)
  6. *6 参考:Microsoft Learn「Schedule an indexer in Azure AI Search」(https://learn.microsoft.com/en-us/azure/search/search-howto-schedule-indexers)。出典:インデクサーの実行の間隔の下限と上限を参照(2026-10-24確認)(2026年10月確認)
  7. *7 参考:Microsoft Learn「Document-level access control in Azure AI Search」(https://learn.microsoft.com/en-us/azure/search/search-document-level-access-overview)。出典:文書ごとに権限を絞る4つの方法と選び方、プレビューの機能の扱いを参照(2026-10-24確認)(2026年10月確認)
  8. *8 参考:Microsoft Learn「Security filters for trimming results in Azure AI Search」(https://learn.microsoft.com/en-us/azure/search/search-security-trimming-for-azure-search)。出典:識別子が認証を伴わない文字列であること、すべての検索にフィルターをかけること、結果に表示しない設定だけに頼らないことを参照(2026-10-24確認)(2026年10月確認)
  9. *9 参考:Microsoft Learn「Retrieve data using a knowledge base in Azure AI Search」(https://learn.microsoft.com/en-us/azure/search/agentic-retrieval-how-to-retrieve)。出典:検索の結果に含まれる参照の一覧と検索の記録を参照(2026-10-24確認)(2026年10月確認)
  10. *10 参考:Microsoft Learn「Retrieval-Augmented Generation (RAG) evaluators」(https://learn.microsoft.com/en-us/azure/foundry/concepts/evaluation-evaluators/rag-evaluators)。出典:RAGの評価の仕組みと、それぞれが測ることを参照(2026-10-24確認)(2026年10月確認)




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