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予実管理システムの開発を外注する進め方
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)として経営管理・基幹システムの開発を受託
この記事のポイント
- 予実管理システムは、予算と実績を同一の粒度で突き合わせ、差異分析と着地見込みの更新によって経営判断を支える仕組みです。
- スマートキャンプの2025年の調査では、予算管理にExcelを使う担当者の72%がミスによる経営への悪影響を懸念していました。
- 外注では、予算配賦ロジックの複雑さ・既存会計/ERPとの連携・現場の入力性が、パッケージとスクラッチを分ける判断材料になります。
目次
予実管理システムとは、予算と実績を突き合わせ経営を可視化する仕組み
予実管理システムとは、予算(計画)と実績を同一の粒度で突き合わせ、その差異を可視化したうえで、期末の着地見込みを更新しながら経営判断につなげる仕組みを指します。単に実績を記録する会計の帳簿とは役割が異なり、計画側のデータを保持し、実績と対比させる点が特徴です。管理のサイクルは、予算編成から実績の取り込み、予実対比と差異分析、着地見込み(フォーキャスト)の更新、そして経営会議での意思決定へと循環していきます。
多くの企業では、このサイクルの大半をExcelで運用してきました。スマートキャンプが2025年10月に経営企画・経理財務・経営層などを対象に実施した調査(事前調査1,737人、Excelで予算管理する担当者646人が本調査対象)では、予算管理で主に使うツールはExcelが59%で最多でした*1。同じ調査で、Excelで予算管理する担当者の72%が「入力ミスや数式の誤りが経営に悪影響を及ぼすこと」を懸念していると回答しています*1。
この背景には、経営データの活用をどう高度化するかという課題があります。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「DX動向2025」は、DXを実現する技術利活用の論点としてデータの利活用を挙げ、日本企業の取り組みを「内向き・部分最適」から「外向き・全体最適」へ移す方向性を示しました*3。部門ごとに分断されたExcelの予算表を、全社で突き合わせられる仕組みへ移す動きは、この文脈の一部だと言えるでしょう。
予実管理システムが備える主な機能——編成・配賦・取込・差異分析・見込
予実管理システムの機能は、前章のサイクルに沿って整理すると理解しやすくなります。起点は予算編成です。部門やプロジェクトごとに目標値を入力し、全社の予算として積み上げます。ここで欠かせないのが予算配賦の考え方です。本社費や共通費といった直接ひもづかないコストを、売上高や人数などの基準で各部門へ割り振ります。配賦が多段になる組織では、この計算ロジックの作り込みが機能の要になってきます。
次に実績データの取り込みです。会計システムやERPから仕訳・残高を取り込み、予算と同じ勘定科目・部門コードの粒度にそろえます。取り込んだ実績を予算と並べるのが予実対比であり、差額と達成率を算出して差異分析へと進む流れです。ここで「なぜ差異が出たのか」を掘り下げるため、多くのシステムはドリルダウン(集計値から明細へ掘り下げる操作)を備えています。
さらに、期中の実績を踏まえて期末の着地を予測する見込み(フォーキャスト)機能があります。四半期や月ごとに予測を作り直すローリングフォーキャスト(計画期間を固定せず、一定周期で先の見通しを更新し続ける手法)に対応する製品も一般的です。加えて、部門別・セグメント別の集計、KPIダッシュボード、経営会議向けのレポート出力なども中核機能に含まれます。
代表的な機能を整理すると次の通りです。
| 機能 | 役割 | 外注時に確認したい点 |
|---|---|---|
| 予算編成・目標設定 | 部門・案件ごとに予算を入力し全社へ積み上げる | 入力フォームの柔軟さと承認ワークフローの有無 |
| 予算配賦 | 共通費・本社費を基準に応じて各部門へ割り振る | 多段配賦や配賦基準の変更に耐える設計か |
| 実績データ取込 | 会計/ERPの実績を予算と同じ粒度でそろえる | 勘定科目・部門コードのマッピング方法 |
| 予実対比・差異分析 | 予算と実績の差額・達成率を算出し要因を掘り下げる | ドリルダウンの深さと集計軸の追加可否 |
| 着地見込(フォーキャスト) | 期中実績から期末着地を予測し随時更新する | ローリングフォーキャストへの対応範囲 |
| ダッシュボード・レポート | KPIを可視化し経営会議向けに出力する | 出力形式と閲覧権限の設計 |
会計システム・原価管理・BIとの違いと連携——CPM/EPMの位置づけ
会計システムとの違い——実績の記録か、計画との対比か
会計システムは、取引を仕訳として記録し、試算表や決算書を作る「実績の器」です。ここには基本的に計画のデータは入りません。一方の予実管理システムは、会計から実績を受け取りつつ、計画側の予算を主役として保持する点に特徴があるものです。両者は対立するものではなく、会計が出口の実績を、予実管理がその実績を予算と対比する役割を担う関係にあります。したがって外注の要件では、どの会計システムから、どの粒度で実績を受け渡すのかが最初の論点になります。
原価管理との違いと連携——原価は「作る側」、予実は「経営側」
原価管理は、製品や案件ごとの材料費・労務費・経費を集計し、標準原価と実際原価の差異を追う仕組みです。関心の中心は「いくらで作れたか」にあります。対して予実管理は、全社や部門の予算に対して実績がどうだったかを見るもので、視点はより経営寄りです。両者は連携させると効果が高まります。原価管理で算出した製造原価の実績を予実管理へ取り込めば、売上総利益レベルの予実対比まで一気通貫で見られるようになるためです。
BIツールとの違い——可視化だけか、計画データを持つか
BI(ビジネスインテリジェンス)ツールは、既存データを集計・可視化することに強みがあります。ただし計画データそのものを編集・保持する用途は本来の守備範囲ではありません。デロイト トーマツは、経営管理を担うEPM(Enterprise Performance Management)について、一般的なBIより高いトランザクション処理能力と業務プロセス機能を持つと整理しています*2。予算入力から承認までのワークフローを回すには、この違いが効いてきます。
CPM/EPMの位置づけ——経営管理を束ねる概念
予実管理システムは、より広い「経営管理システム」の一部として語られることも増えました。デロイト トーマツは、EPMを計画データと実績データを統合し、中期経営計画から短期予算・予実・実績・非財務KPIまでを一つの基盤に載せる仕組みと説明しています*2。同社はEPMがCPM(Corporate Performance Management)と呼ばれてきた点にも触れています*2。CPMはGartnerが提唱した用語で、財務部門を中心とした全社パフォーマンス管理を指す概念として整理されています*4。予実管理はこの経営管理の土台に位置づけられる機能だと捉えると、システムの拡張余地を見通しやすくなります。
パッケージ(予算管理SaaS)とスクラッチ開発の判断軸
開発方式の選択は、予算管理SaaSなどのパッケージを使うか、スクラッチで作り込むかに大別できます。パッケージは、標準的な予算編成・予実対比・ダッシュボードがあらかじめ用意され、会計連携のコネクタを備える製品も少なくありません。導入期間を短縮しやすく、初期コストを抑えられる点が利点です。予算管理の型が一般的な業務に近い場合は、まず候補に入ります。
一方でスクラッチ開発が視野に入るのは、標準機能では吸収しきれない要件がある場合です。たとえば、複数の配賦基準を組み合わせる多段の予算配賦ロジック、業界固有のKPIや自社固有の予算様式、既存の基幹システムとの密な連携、現場が慣れたExcelに近い専用の入力画面などが挙げられます。これらを無理にパッケージへ合わせると、かえって運用が複雑になることもあります。
両者の判断軸を整理すると次のようになります。実務では「パッケージを基盤にし、独自要件だけを追加開発する」中間の形も一般的です。どこまでを標準に寄せ、どこを作り込むかの線引きこそが、外注先とすり合わせるべき最初の設計判断になります。
| 判断軸 | パッケージ(予算管理SaaS)が向く | スクラッチ開発が向く |
|---|---|---|
| 予算配賦ロジック | 標準的な単純配賦で足りる | 多段配賦や独自基準が多い |
| 既存システム連携 | コネクタで会計とつなげる | 基幹と密結合させたい |
| 入力画面 | 用意されたUIで運用できる | 現場に合わせたExcelライクな画面が要る |
| 導入スピード・初期費用 | 短期・低コストを優先したい | 時間をかけても要件を優先したい |
開発を外注するとき確認すべき点——配賦ロジック・会計連携・入力性
予実管理システムの外注では、汎用的な開発力に加えて、経営管理特有の勘所を押さえられる相手かどうかが成否を左右します。確認したい観点は主に5つです。
第一に、予算配賦ロジックの複雑さです。共通費をどの基準で各部門へ配賦するのか、配賦を何段階にわたって行うのか、基準の変更にどこまで柔軟に追随できるのかを、要件定義の早い段階で言語化しておく必要があります。ここを曖昧にしたまま進めると、後工程での手戻りが大きくなりがちです。
第二に、既存の会計システムやERPとの連携です。勘定科目や部門コードのマッピング、月次の締め処理のタイミング、マスタ(取引先や部門などの基礎データ)の整合をどう保つかは、実績取込の品質に直結します。締めのたびに手作業が発生する設計では、運用負荷が下がりません。
第三に、Excelライクな入力性です。予算を入力するのは経理の専任者だけでなく、各部門の現場担当者でもあります。使い慣れたExcelから極端に離れたUIは定着を妨げるため、コピー&ペーストやオフラインでの下書き、一括取込といった実務動線への配慮が問われます。
第四に、権限とワークフロー、そして内部統制です。部門が入力し、上長が承認し、経営企画が確定するという流れを、権限設計と承認フローで担保できるかを確認します。あわせて、いつ・誰が・何を変更したかを追える監査証跡(操作履歴の記録)があると、決算や監査の局面で役立ちます。第五に、要件の広さに応じて段階的にリリースできるか、そして要件定義から連携・運用設計までを元請(プライムベンダー)として一貫して請け負える体制かどうかも確かめておきたい点です。
内製と外注の分かれ目——表計算の延長で足りるかで見極める
すべてを外注すべきというわけではありません。部門数が限られ、予算の様式も比較的シンプルで、配賦がほとんど発生しない組織であれば、表計算の延長やノーコードツールで内製できる場合もあります。判断が分かれるのは、配賦ロジックが複雑になったり、複数の基幹システムとの連携が必要になったり、内部統制や監査証跡が求められたりする段階です。
内製で進める場合、経営企画や情報システムの担当者が通常業務と並行して開発と保守を担うことになり、要件の変化に追従し続ける負荷が課題になります。外注を選ぶ場合は、単発の開発だけでなく、会計制度の改定や組織変更に合わせた継続的な保守までを見据えて委託先を選ぶと、長期の運用が安定しやすくなります。
外注先を選ぶ際は、経営管理領域の開発実績や会計/ERP連携の対応範囲をあらかじめ確認しておくと、比較の軸が定まりやすくなります。現状の予算様式や会計/ERPの構成、配賦ロジックの複雑さを棚卸ししたうえで、パッケージ活用とスクラッチ開発、内製と外注の切り分けを検討することが実務的な進め方になります。
まとめ:予実管理システムの外注で押さえる3つの判断軸
本稿では、予実管理システムの役割と機能、周辺システムとの違い、そして開発を外注する際の要点を整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、予実管理システムは予算と実績を同一粒度で突き合わせ、差異分析と着地見込みで経営判断を支える仕組みであり、実績を記録する会計システムや原価管理、可視化を担うBIとは役割が異なります*2。第二に、開発方式はパッケージとスクラッチに大別され、予算配賦ロジックの複雑さ・既存会計/ERP連携・現場の入力性が選択を分ける軸になります。第三に、Excel中心の運用にはミスによる経営への悪影響という懸念が残るため*1、全社で突き合わせられる仕組みへ移すことが、データ活用の高度化という流れにも沿った選択になるでしょう*3。
よくある質問
予実管理システムと会計システムは何が違いますか。
会計システムは取引を仕訳として記録し決算書を作る「実績の器」で、計画のデータは基本的に持ちません。予実管理システムは会計から実績を受け取りつつ、計画側の予算を主役として保持し、両者の差異を分析する仕組みです。役割が異なるため、外注では「どの会計システムからどの粒度で実績を受け渡すか」が最初の論点になります。
Excelでの予実管理には限界がありますか。
部門数が少なく様式が単純なうちはExcelでも運用できます。ただしスマートキャンプの2025年の調査では、Excelで予算管理する担当者の72%がミスによる経営への悪影響を懸念していました*1。集計工数の増加や属人化、複数部門の突き合わせが難しくなる点が、システム化を検討する目安になります。
パッケージ(予算管理SaaS)とスクラッチ開発はどう選べばよいですか。
予算配賦が単純で会計連携もコネクタで足りるなら、導入が速く初期費用を抑えやすいパッケージが有力です。多段の配賦ロジックや業界固有のKPI、既存基幹との密な連携、Excelライクな独自入力が求められる場合はスクラッチが視野に入ります。実務では、パッケージを基盤にして独自要件だけを追加開発する中間形も一般的です。
既存の会計システムやERPと連携できますか。
多くの製品や開発案件で連携は可能ですが、勘定科目・部門コードのマッピング、月次の締め処理のタイミング、マスタの整合をどう保つかが品質を左右します。締めのたびに手作業が発生しない設計になっているかを、要件定義の段階で確認しておくとよいでしょう。
開発を外注する際、何を確認すればよいですか。
予算配賦ロジックの複雑さ、既存会計/ERPとの連携方式、現場が使えるExcelライクな入力性、権限と承認ワークフロー、監査証跡の5点をまず確認します。加えて、要件定義から連携・運用保守までを一貫して請け負える体制か、段階的にリリースできるかを委託先とすり合わせておくと、稼働後のトラブルを抑えやすくなります。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:スマートキャンプ株式会社「Excelを用いた予算管理の実態調査」(2025年10月実施、事前調査1,737人・本調査646人、BOXIL Magazine掲載)(https://boxil.jp/mag/a10206/)
- *2 出典:デロイト トーマツ グループ「EPM (Enterprise Performance Management)を理解する」(https://www.deloitte.com/jp/ja/services/risk-advisory/blogs/enterprise-performance-management-01.html)
- *3 出典:IPA(独立行政法人情報処理推進機構)「DX動向2025」(2025年6月26日公開)(https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/dx-trend-2025.html)
- *4 出典:Gartner「Corporate Performance Management (CPM)」(Gartner Glossary of Information Technology Terms)