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契約管理システム(CLM)の開発を外注する進め方
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- 契約管理システム(CLM)は、契約の作成から締結・期限管理・更新までのライフサイクル全体を扱う点で、締結手続きに焦点を当てる電子契約サービスとは役割が異なります。
- 契約書を含む電子取引データは、電子帳簿保存法の下で取引年月日・取引金額・取引先による検索要件を満たす保存が求められる場面があり、CLMの台帳機能と関係します*2*3。
- 経済産業省とIPAは情報システム取引向けのモデル契約書を公表しており、社内のひな形・条項管理を検討する際の参照点になります*1。
目次
契約管理システム(CLM)とは何か——契約のライフサイクル全体を管理する仕組み
契約管理システム(CLM。Contract Lifecycle Managementの略で、契約の作成から締結・履行・更新・終了までを一連の流れとして管理する仕組み)とは、契約に関わる業務プロセスをシステム上で一元化し、標準化する考え方を指します。国内でも法務部門を中心に、この概念に基づくシステム導入の検討が広がりつつあります。
この5段階のうち、締結より前の作成・審査と、締結より後の管理・更新までを継続的に扱う点がCLMの特徴です。契約書は締結して終わりではなく、期限や更新条件を抱えたまま社内に存在し続けます。この「締結後」の期間をどう管理するかが、CLM導入を検討する企業の主な関心事になっています。
電子契約・AI契約審査・文書管理システムとの違い——CLMがカバーする範囲
契約に関わるシステムには複数の種類があり、名称が近いために役割を混同しやすい状況があります。整理すると、それぞれがライフサイクルの異なる段階を担っています。
電子契約サービスは、押印に代わる電子署名や、当事者間の合意形成の記録を担うものです。契約は当事者の意思の合致によって成立し、書面の作成や押印は特別の場合を除いて必須の要件ではないとする整理が、内閣府・法務省・経済産業省の押印に関するQ&A(令和2年6月19日公表)でも示されています。この整理を背景に、締結手続きの電子化そのものは電子契約サービスの担当領域として広く普及しました。
契約書レビューAIは、締結前の審査段階で条項の抜け漏れやリスクの高い表現を検出する役割を担います。あくまで審査を支援する位置づけであり、最終的な判断は担当者や弁護士が行うものとされています。
文書管理システム(DMS)は、契約書に限らずあらゆる社内文書を保管・検索する汎用の仕組みです。契約書もDMSに格納できますが、期限管理や更新アラート、契約特有のステータス管理といった機能は備えていない場合が少なくありません。
これに対しCLMは、締結の前後を含めた契約特有のプロセス全体を対象にします。ひな形の管理、承認ワークフロー、締結後の期限監視、更新判断までを一つの台帳でつなぐ点が、電子契約・AI契約審査・DMSのいずれとも異なる立ち位置です。実装にあたっては、電子契約サービスをCLMの締結機能として連携させる構成が一般的になっています。
CLMの主要機能——契約台帳・期限アラート・ワークフロー・ひな形管理・全文検索
CLMと呼ばれるシステムが備える機能は製品によって幅がありますが、共通して挙げられる要素は次の通りです。
- 契約台帳:契約書の原本や締結日、相手方、金額などをレコードとして一元管理します。
- 期限・更新アラート:契約期間の満了日や自動更新条項の通知期限が近づくと、担当者へ知らせます。
- ステータス管理・承認ワークフロー:起案から審査、承認、締結までの進捗を可視化し、担当者の承認履歴を残します。
- ひな形・条文管理:社内で使うひな形や標準条項をライブラリとして管理し、条項単位で流用できるようにします。
- 全文検索:契約書の本文や条項の文言をキーワードで横断的に検索します。
- 電子契約サービスとの連携:締結済みデータをAPI経由で台帳へ自動反映します。
- 権限管理:閲覧・編集・承認の権限を役割ごとに分けて設定します。
- リスク条項の可視化:損害賠償の上限や解除条件など、注意すべき条項をタグ付けして一覧化します。
このうち台帳とひな形・条文管理の考え方は、経済産業省とIPAが公表する「情報システム・モデル取引・契約書」のような公的なモデル契約書とも関係します。同資料は2020年12月22日公表の第二版が改正民法に対応しており、2025年6月17日にはサイト構成が見直され、アジャイル開発版と合わせて整理されました*1。自社のひな形をこうした公的なモデルと突き合わせ、条項単位でシステムに登録していく作業は、CLM導入の初期工程で発生しやすい作業です。
また、契約書を含む電子取引データの保存については、電子帳簿保存法の下で検索要件が定められています。取引年月日・取引金額・取引先の3項目で検索できることが基本の要件とされ、期間や金額の範囲指定、複数項目の組み合わせ検索にも対応する必要があるとされています*3。基準期間の売上高が一定額以下の事業者や、税務調査時にデータのダウンロードの求めに応じられる事業者については、この検索要件が免除される取り扱いもあります*2*3。CLMの全文検索・台帳機能は、こうした保存・検索の実務とも接点があるといえます。
期限管理と更新アラートが要る理由——更新漏れと自動更新条項のリスク
契約書には、期間満了の一定日数前までに解約通知をしなければ自動更新される旨の条項が含まれることがあります。担当者の異動や表計算での個別管理が続くと、こうした通知期限そのものを見落とすおそれがあります。見直したかった契約が意図せず継続してしまうのは、こうした見落としが招く典型的な事態です。
CLMの期限アラート機能は、満了日や通知期限を台帳上で一元的に監視し、あらかじめ設定した日数前に担当者へ通知します。契約数が数百件を超える企業では、この監視を人手だけで維持するのは負荷が大きくなりがちです。台帳と通知の仕組みをシステム側に持たせることで、担当者の記憶や引き継ぎ資料に依存しない運用に近づけられます。
あわせて、契約のステータス(審査中・締結済み・更新検討中など)を可視化しておくと、法務部門以外の関連部署も進捗を把握しやすくなります。契約書の所在や最新版の確認に時間を要していた企業ほど、台帳の一元化による効果を実感しやすい傾向があります。
パッケージ型とスクラッチ開発の比較——自社の契約フローに合わせた選び方
CLMの導入方式は、既製のSaaS型パッケージを利用する方法と、自社の契約フローに合わせてスクラッチで開発する方法に大別されます。判断の軸を整理すると次の通りです。
| 観点 | パッケージ型 | スクラッチ開発 |
|---|---|---|
| 導入スピード | 比較的短期間で利用開始しやすい | 要件定義から始めるため長めになりやすい |
| 承認フローの柔軟性 | 製品の設定範囲に沿う形になる | 自社独自のフローをそのまま反映できる |
| 既存システム連携 | 標準APIの範囲内で連携する | 基幹システムに合わせた連携を作り込める |
| 費用の性質 | 月額・年額の利用料が中心 | 初期の開発費が中心で保守費が別途発生する |
| 向く企業像 | 契約フローが標準的な業種・規模 | 契約類型が多岐にわたる、または既存システムとの一体運用を重視する企業 |
契約の種類が数種類に絞られ、承認フローも比較的シンプルな企業であれば、パッケージ型で運用を始めやすい状況です。一方、契約類型が業種特有で多岐にわたる企業や、基幹システム・電子契約サービスとの連携を細かく作り込みたい企業では、スクラッチ開発、またはパッケージにアドオン開発を組み合わせる方式が選択肢になります。どちらを選ぶ場合でも、まずは自社の契約フローと承認ルールを言語化しておくことが、要件定義を進めるうえでの前提になります。
導入の進め方——契約実態の調査から本番稼働までのステップ
CLM導入は、いきなりシステム選定から入るのではなく、現状の契約実態を把握する工程から始めるのが実務的な進め方です。
最初の工程は、契約書の保管場所・件数・契約類型を洗い出す実態調査です。表計算やファイルサーバーに散在している契約書を棚卸しし、どのような期限管理が抜け落ちているかを確認します。次に、承認フローとひな形の整理を行う要件定義に進みます。誰がどの段階で承認するか、どの契約類型にどのひな形を使うかを言語化する工程です。
要件が固まった段階で、対象範囲を絞ったPoC(概念実証)や試験運用を行い、既存の電子契約サービスや基幹システムとのAPI連携を検証します。問題がなければ、既存契約データの移行と本番環境への切り替えに移り、運用開始後も台帳への登録漏れがないか一定期間モニタリングします。
この一連の工程は、契約実務・システム開発・既存インフラとの連携という複数領域にまたがります。社内の法務担当者だけで進めようとすると、要件定義とシステム選定の両方に時間を要する場合があります。
外注先を選ぶ際に確認したいポイント——要件定義力・連携実績・権限設計
CLM開発を外部のパートナーに委託する場合、確認しておきたい観点はいくつかあります。まず、契約実務のヒアリングから要件を整理できる要件定義力です。法務部門特有の承認フローやひな形の運用ルールを、システムの機能要件へ落とし込む工程には、業務理解とシステム設計の双方が求められます。
次に、既存の電子契約サービスや基幹システムとのAPI連携の実績です。CLMは単体で完結するシステムではなく、締結機能を担う電子契約サービスや、会計・購買システムとの接続が前提になる場合が多くあります。連携部分の設計・保守を任せられるかどうかは、選定の分かれ目になりやすい点です。
権限設計への対応力も欠かせません。契約書には金額や取引条件などの機密情報が含まれるため、閲覧・編集・承認の権限を役割ごとに細かく分ける設計が必要です。あわせて、電子帳簿保存法の検索要件のような法令面の実務にも配慮した台帳設計ができるかどうかを、委託前に確認しておくとよいでしょう*2*3。
元請(プライムベンダー)として要件定義から運用保守までを一括で担えるパートナーであれば、契約フローの変更が生じた際の改修も含めて、継続的な体制を維持しやすくなります。
まとめ:契約管理システム(CLM)導入で押さえる3つの判断軸
本稿では契約管理システム(CLM)の位置づけと導入の進め方を整理しました。要点は次の3点です。第一に、CLMは契約の作成から締結・管理・更新までのライフサイクル全体を扱う仕組みであり、締結手続きを担う電子契約サービスや、審査を支援する契約書レビューAI、汎用の文書管理システムとは役割が異なります。第二に、契約台帳・期限アラート・ひな形管理・全文検索といった機能は、電子帳簿保存法の検索要件のような実務上の制約とも関係します*2*3。第三に、パッケージ型かスクラッチ開発かは自社の契約類型・承認フローの複雑さで判断が分かれ、外注先には要件定義力と既存システムとの連携実績が求められます。
よくある質問
契約管理システム(CLM)と電子契約サービスは何が違いますか。
電子契約サービスは主に締結手続き(電子署名・合意記録)を担う仕組みです。CLMは、締結の前段階である作成・審査から、締結後の期限管理・更新までを含めた契約のライフサイクル全体を扱う点で範囲が異なります。実装では、電子契約サービスをCLMの締結機能として連携させる構成がよく見られます。
契約書レビューAIを導入していればCLMは不要ですか。
契約書レビューAIは締結前の審査段階を支援するものであり、締結後の期限管理や更新アラート、台帳としての一元管理といった機能は担いません。審査支援と締結後の管理は別の課題であるため、両方を必要とする企業では併用が検討対象になります。
CLM導入で電子帳簿保存法への対応も済みますか。
契約書を含む電子取引データは、電子帳簿保存法の下で取引年月日・取引金額・取引先による検索要件を満たす保存が求められる場合があります*3。CLMの台帳・検索機能はこの実務と関係しますが、自社の取引区分や保存方式によって要件の適用範囲は異なるため、個別の要件確認が必要です*2。
パッケージ型のCLMとスクラッチ開発、どちらを選ぶべきですか。
契約類型が絞られ承認フローが比較的シンプルな企業はパッケージ型で運用を始めやすい状況です。契約類型が多岐にわたる企業や、基幹システムとの連携を細かく作り込みたい企業では、スクラッチ開発やアドオン開発を組み合わせる方式が選択肢になります。自社の契約フローを言語化したうえで比較することが実務的です。
CLM開発を外注する場合、契約前に何を確認すればよいですか。
契約実務のヒアリングから要件を整理できるか、既存の電子契約サービスや基幹システムとのAPI連携の実績があるか、権限設計や台帳の検索要件に配慮した設計ができるかを確認します。要件定義から運用保守までを一括で担える体制かどうかも、選定の判断材料になります。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:IPA 独立行政法人情報処理推進機構「情報システム・モデル取引・契約書」(https://www.ipa.go.jp/digital/model/index.html)
- *2 出典:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm)
- *3 出典:国税庁「電子取引データの保存(請求書・領収書・契約書・見積書などに関する電子データを送付・受領した場合)」パンフレット(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0021011-068.pdf)
- *4 出典:内閣府・法務省・経済産業省「押印についてのQ&A」(令和2年6月19日公表、moj.go.jpにて公開。アクセス制御によりURL直接参照が難しいため、文書名での出典明記とする)