LASSIC Media らしくメディア
ServiceNow導入支援の5ステップと支援会社に頼める作業
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- ServiceNow導入支援では、業務の決めごとは社内で持ち、設定や移行の作業を支援会社と分担します。
- 要望はまず標準の設定で満たし、カスタマイズは理由を記録したうえで絞るのが基本です。
- 開発・テスト・本番の順に移す手順と、稼働後のバージョンアップの担当を最初に決めておきます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
ServiceNowを入れることは決まったものの、どこまでを支援会社に頼めばよいのか分からない。見積もりを見たら、画面の作り込みが思った以上に多かった——。ITサービスの管理の仕組みを初めて入れる会社では、こうした迷いが起こりがちです。ServiceNow導入支援とは、ServiceNowの設定、データの移行、テスト、本番の稼働までを、製品に詳しい外部の技術者と分担して進める支援のことです。
問い合わせや障害の受付を1つにまとめたい会社には役立ちますが、万能ではなく、作り込みを増やすほど、稼働後のバージョンアップの手間が自社に残ります。本記事では、ServiceNowの導入を任された情報システムの担当者に向けて、導入支援で頼める作業、設定とカスタマイズの違い、導入の5ステップ、稼働後の備え、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
ServiceNow導入支援とは
ServiceNowは、社内のIT部門が受ける依頼や障害への対応を、クラウド上でまとめて扱うための仕組みです。中心になるIT Service Management(ITSM=ITサービスの管理)は、サービスの依頼、インシデント(障害や不具合)、問題、変更を管理して解決するための製品と説明されています。*1 導入支援では、これらを自社の業務で使える状態にするまでの作業を支援会社と分担します。
- 業務の流れの整理:いまの問い合わせ窓口や、変更を承認する流れを書き出す
- 設定:画面の項目、承認の流れ、権限、サービスカタログ(社員が依頼を出す窓口の画面)を整える
- データの移行:いまの台帳や、過去の問い合わせの記録を取り込む
- テスト:本番の前に、テスト用の環境で動きを確かめる
- 引き継ぎ:運用の手順書を作り、社内の管理者に操作を渡す
一方で、社内に残る役割もあります。どの依頼をどの部署が受けるか、承認者を誰にするかといった業務の決めごとは、支援会社には決められません。決めごとを受け持つ担当者を社内で1人決めておくと進めやすくなります。人材の確保の観点は、ServiceNow人材の不足を外注で補う進め方で扱っています。
設定とカスタマイズの違い
ServiceNowの公式ドキュメントは、自社に合わせて動きを変える方法を「設定(configuration)」と「カスタマイズ(customization)」に分けて説明しています。設定は、標準の道具を使い、最初から入っているプログラムには手を入れずに動きを変えることです。カスタマイズは、最初から入っているプログラムや処理の流れそのものを変えることを指します。*2

| 方法 | 例 | 新しい版に上げるときの影響 |
|---|---|---|
| 設定 | 画面の項目や初期値、ボタン、サービスカタログ、閲覧の権限、全体の設定値 | 最初から入っているプログラムを変えないので小さい |
| カスタマイズ | スクリプトで標準の動きを変える、専用のテーブルを新しく作る、外部システムとの連携、画面部品を新しく作る | 変えた部分は自動では更新されず、自社で取り込み直す |
| 個人の表示設定 | 利用者が自分の画面だけを変える(ダークモード、表示する列) | 影響しない |
公式ドキュメントによれば、カスタマイズした記録は新しい版に上げるときに更新されず「スキップされた記録」として残り、手作業で取り込み直す必要があります。*2要望はまず設定で満たせないかを確かめ、カスタマイズは業務上の価値がはっきりしたものに絞るのが基本です。
導入の5ステップ
ServiceNowの導入は、環境(インスタンス)を複数用意し、開発用で作ったものをテスト用、本番用へと順に移して進めます。公式ドキュメントも、開発・テスト・本番の3つの環境を前提に手順を説明しています。*3 次の5つのステップで進めます。
- ステップ1:業務の流れを整理する(問い合わせ、障害、変更の受付と承認を書き出す)
- ステップ2:標準の機能との差を確かめる(要望ごとに、設定で足りるかカスタマイズが要るかを決める)
- ステップ3:開発用の環境で設定し、テスト用の環境へ移す(更新セット=設定の変更をまとめて別の環境へ運ぶ仕組みを使う)*4
- ステップ4:データを取り込み、テストする(台帳や過去の記録はインポートセットという取り込みの機能で入れる)*5
- ステップ5:本番の環境へ移し、運用を社内の管理者に引き継ぐ
つまずきやすいのはステップ2です。「いまの帳票と同じ画面にしたい」という要望をすべて作り込むと、カスタマイズが増えて、あとの版の更新が重くなります。ステップ4では、取り込みでエラーが出なくても、データが意図どおりに入ったかを見直すよう公式ドキュメントが勧めています。*5 テストは、変更のたびに動きを自動で確かめるATF(自動テストの仕組み)を使うと繰り返し実行できます。*6
稼働後のバージョンアップへの備え
ServiceNowは本番で動き始めたら終わりではなく、その後も新しい版へのバージョンアップが続きます。公式ドキュメントは、本番から最も遠い環境から順に、開発、テスト、本番の順で上げる手順を示しています。*3

- テスト用の環境は、本番の環境からデータを複製(クローン)してから上げ、本番に近い状態で確かめる*3
- カスタマイズの一覧と理由を残しておき、スキップされた記録と照らし合わせて、残すか標準に戻すかを決める*2
- 本番を上げるときは、利用者への影響が小さい時間帯を選び、テストと連携の確認、問題が起きたときの対応の時間まで作業の枠に含める*7
- 自動テストは開発やテスト用の環境で実行し、本番の環境では実行しない
バージョンアップの作業量は、導入のときのカスタマイズの量で大きく変わります。稼働後のバージョンアップを誰が受け持つかを導入支援の段階で決めておくと、どこまで作り込むかを判断しやすくなります。
外部に頼むときに確認しておきたい点
ServiceNow導入支援を頼むときは、見積もりの金額を比べる前に、次の5つを確かめて文書に残しておきます。
- どこまで頼むか:業務の整理、設定、データの移行、テスト、手順書づくりのうち、どれを任せるか
- カスタマイズの扱い:設定で足りない要望を、誰がどの基準で判断するか。一覧と理由を文書で残すか
- 環境の使い方:環境をいくつ持つか。更新セットを誰がいつ本番へ移すか
- テストの方法:受け入れテストの項目を誰が作るか。自動テストをどこまで用意するか
- 稼働後の体制:バージョンアップのとき、スキップされた記録の確認とテストを誰が受け持つか
特にカスタマイズの記録を残さないと、数年後のバージョンアップで何をなぜ変えたのかが分からなくなります。構成情報まで1か所で管理したい場合は、CMDB(構成管理データベース)の基本と運用にまとめています。
まとめ:ServiceNow導入支援の3つの確認点
ServiceNow導入支援を頼むうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、業務の決めごとは社内の担当者が持ち、作業を支援会社と分担すること。第二に、要望はまず標準の設定で満たし、カスタマイズは理由を記録したうえで絞ること。第三に、開発・テスト・本番の順に移す手順と、稼働後のバージョンアップを誰が受け持つかを最初に決めることです。この3点を踏まえておけば、「稼働はしたが、作り込みが多すぎて新しい版に上げられない」という事態を避けやすくなります。導入の進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
ServiceNowの導入にはどのくらいの期間がかかりますか
使う機能の数、カスタマイズの量、移すデータの量によって変わります。問い合わせと障害の受付のように対象を絞って始め、変更の管理などを後から加える進め方もあります。見積もりの前に業務の流れと標準の機能との差を整理しておくと、期間の見通しを立てやすくなります。
カスタマイズした部分の不具合はServiceNowのサポートに問い合わせできますか
公式ドキュメントは、自社で加えたプログラムが原因の問題はサポートの対象外で、標準の状態に戻すよう案内される場合があると説明しています。*2 カスタマイズした部分は、導入した支援会社か社内の管理者が受け持つ前提で体制を決めておきます。
ITサービス管理と関係の薄い業務もServiceNowで扱えますか
公式ドキュメントは、もとの製品の目的から外れる業務は、既存の製品を作り変えずに新しいアプリケーションとして作るよう勧めています。*2 例として、ITサービス管理の流れを出張申請に流用しないことが挙げられています。どちらで作るかは、ステップ2で要望を整理するときに決めておきます。
ServiceNow導入のご相談
ServiceNowの業務整理と設定から、データの移行、テスト、稼働後のバージョンアップへの備えまで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:ServiceNow「IT Service Management」(ServiceNow Docs, Australia)(https://www.servicenow.com/docs/r/australia/it-service-management/r_ITServiceManagement.html)。出典:ITSMがサービスの依頼・インシデント・問題・変更を管理し解決する製品であるとの説明を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:ServiceNow「Customization vs configuration」(ServiceNow Docs, Australia)(https://www.servicenow.com/docs/r/australia/servicenow-platform/service-catalog/customization-vs-configuration-concepts.html)。出典:設定・カスタマイズ・個人の表示設定の定義と例、カスタマイズした記録がアップグレード時にスキップされること、サポートの方針、新しいアプリケーションとして作る場合の考え方を参照(2026年10月確認)
- *3 参考:ServiceNow「Phase 5 – If applicable: Upgrade and validate your other non-production instances」(ServiceNow Docs, Australia Release Notes)(https://www.servicenow.com/docs/r/australia/release-notes/upgrades-phase-5.html)。出典:開発・テスト・本番の3つのインスタンスを前提とした手順、本番から遠い環境から順に上げること、本番からのクローンを参照(2026年10月確認)
- *4 参考:ServiceNow「System update sets」(ServiceNow Docs, Australia)(https://www.servicenow.com/docs/r/australia/application-development/system-update-sets/system-update-sets.html)。出典:更新セットが設定の変更をまとめて別のインスタンスへ移す仕組みであるとの説明を参照(2026年10月確認)
- *5 参考:ServiceNow「Importing data using import sets」(ServiceNow Docs, Australia)(https://www.servicenow.com/docs/r/australia/integrate-applications/system-import-sets/c_ImportDataUsingImportSets.html)。出典:インポートセットによる取り込みの流れと、エラーが無くても取り込み結果を見直すことの記述を参照(2026年10月確認)
- *6 参考:ServiceNow「Automated Test Framework (ATF)」(ServiceNow Docs, Australia)(https://www.servicenow.com/docs/r/australia/application-development/automated-test-framework-atf/atf-landing-page.html)。出典:変更後の動作を自動テストで確かめる仕組みであること、本番以外のインスタンスで実行することの記述を参照(2026年10月確認)
- *7 参考:ServiceNow「Phase 6 – Prepare to upgrade the production instance」(ServiceNow Docs, Australia Release Notes)(https://www.servicenow.com/docs/r/australia/release-notes/upgrades-phase-6.html)。出典:本番のアップグレードの時間帯の選び方、テストと連携の確認、エラー対応の時間を変更の枠に含めることの記述を参照(2026年10月確認)