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Dynamics GP/NAV移行、内製と外注どちらが得か
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- Dynamics GPは新規ライセンス販売がすでに終了しており、製品サポート自体も2029年12月末に終了予定であることがMicrosoft公式情報で示されています。
- Dynamics NAVも最終メジャーバージョンの延長サポートが2028年1月に終了予定で、両製品とも後継のBusiness Centralへの移行が現実的な選択肢になっています。
- 公式の移行ツールが自動化するのは標準的な会計・在庫データが中心であり、カスタマイズ資産やアドオンの扱いこそが内製と外注を分ける重要な論点になります。
目次
Dynamics GP・NAVはなぜ今、移行の検討が必要なのか
Microsoft Dynamics GPおよびDynamics NAVを基幹システムとして利用してきた企業にとって、後継製品への移行は避けて通れない検討課題になりつつあります。両製品はMicrosoftの公式ライフサイクルポリシー上ですでにサポート終了時期が示されており、情報システム部門としては「いつまで使えるか」だけでなく「どの体制で移行するか」を並行して考える段階に入っているためです。
結論を先に述べると、GPとNAVでは終了時期の性質が異なります。GPはModern Lifecycle Policy(継続的な更新提供を前提とする方針)のもとで運用されており、新規ライセンス販売の終了と製品サポート自体の終了という2段階の節目が公式に告知されています*1*3。一方のNAVは最終メジャーバージョンがFixed Lifecycle Policy(あらかじめ定めた期間で区切る方針)に沿っており、メインストリームサポートと延長サポートの終了日がすでに確定しています*5。
どちらの製品を使っている場合でも、移行の実務を進めるうえで避けて通れないのが、長年蓄積してきたカスタマイズ資産とデータの扱いです。この記事では公式情報に基づき両製品のロードマップを整理したうえで、Business Centralへの移行で何が自動化され、何が人手による判断を必要とするのかを解説し、内製と外注のどちらで進めるべきかの判断軸を示します。
Dynamics GPのサポートロードマップ:新規販売終了からセキュリティ更新終了まで
新規ライセンス販売はすでに終了している
Microsoftの公式発表によると、Dynamics GPの新規永続ライセンス販売は2025年4月1日をもって終了し、新規サブスクリプションライセンス販売も2026年4月1日をもって終了しました*4。この記事の執筆時点(2026年7月)では、いずれの販売形態についても新規顧客への提供は行われていません。ただし、これらの日付より前に契約した既存ユーザーについては、有効な保守契約やサブスクリプションがある限り、機能追加やユーザー数の追加は引き続き可能とされています*4。
製品サポート終了は2029年末、セキュリティ更新は2031年まで継続
現行バージョン(18.x系)はModern Lifecycle Policyの対象で、年3回(6月・10月・12月が目安)の全体アップデートを適用し続けることで継続的なサポートを受けられる方針です*1。ただしMicrosoftは、製品の機能拡張・税制及び規制対応・テクニカルサポートを2029年12月31日をもって終了すると公表しています*1*3。この終了日は当初2029年9月30日として発表されていましたが、給与計算や税務対応への影響を考慮し延長された経緯があります*1*3。さらに、必要に応じたセキュリティ更新プログラムは2031年4月30日まで提供される計画です*1*3。
Microsoftはこの一連の告知の中で、企業に対しDynamics 365 Business Centralへの移行を推奨する姿勢を明示しています*1。公式ドキュメントは「クラウドとAI活用の新しい時代に対応するため、Business Centralへの移行を推奨する」という趣旨を掲げ、移行を支援するパートナー一覧も案内しています*1。旧バージョン(GP2013・2015・2016・2018など)はFixed Lifecycle Policyのもとで個別の終了日が設定されているため、自社が利用しているバージョンとポリシーの対応関係を確認しておく必要があるでしょう*1。
Dynamics NAVのサポート終了時期:最終バージョンNAV2018の状況
Dynamics NAVは、後継製品であるBusiness Centralへのブランド移行に伴い、NAV2018が実質的に最後のメジャーバージョンとなりました。Microsoft公式のライフサイクル情報によると、NAV2018はFixed Lifecycle Policyの対象で、メインストリームサポートは2023年1月10日に終了し、延長サポートは2028年1月11日に終了する予定です*5。延長サポート期間中は重大なセキュリティ修正が中心となり、新機能や税制対応を含む一般的な更新は提供されません。
NAVを現在も稼働させている企業では、延長サポート終了後の運用継続にセキュリティ・保守の両面でリスクが伴います。旧バージョンのNAV(2016・2017など)を利用している場合はさらに早い時期に延長サポートが終了しているケースもあるため、自社の導入バージョンごとに個別の終了時期を確認することが前提になります。日本国内での提供・保守状況については、契約している販売パートナーまたはMicrosoft公式情報での個別確認が必要です。
移行先Business Centralとはどのような製品か
Dynamics 365 Business Centralは、Microsoftが提供する中堅・中小企業向けのビジネス管理ソリューションです。公式ドキュメントは、財務・製造・販売・出荷・プロジェクト管理・サービスなど幅広い業務プロセスを1つの基盤で管理でき、業種や地域に応じたカスタマイズにも対応する製品として位置づけています*7。導入のしやすさと設定の容易さを重視した製品設計になっている点も特徴です*7。
提供形態としてはオンライン(クラウド・SaaS)が中心ですが、公式ドキュメントはオンプレミス版を利用する組織にも言及しており、機能の適用時期がオンライン版と異なる場合がある点に注意を促しています*7。近年はCopilotを活用したAI機能(自然言語でのデータ分析、仕訳の自動提案、銀行勘定の消込支援など)の実装が進められており、単なる基幹システムの置き換えにとどまらず、業務プロセス自体の見直しにつながる製品として位置づけられています*7。GPやNAVからの移行を検討する際は、単純な機能の一対一対応ではなく、クラウド前提の運用モデルへの転換であることを踏まえておく必要があるでしょう。
GPからBusiness Centralへのデータ移行:公式ツールが自動移行する項目
会計期間・勘定科目・取引先マスタは自動移行の対象
Microsoftは、Dynamics GPからBusiness Central Onlineへのクラウド移行を支援する公式の移行ツール(GP Company Migration Configuration)を提供しています*6。公式ドキュメントによると、この移行ツールで自動移行できる項目には、会計期間(Business Central側では会計期間として扱われる)、勘定科目(メインの科目セグメントは勘定科目番号に、残りのセグメントはディメンションにマッピングされる)、得意先・仕入先マスタとその未決済取引、在庫品目、当座勘定(チェックブック)情報などが含まれます*6。
未決済の売掛金・買掛金についても、GP側で入力済みの取引を残高ベースで引き継ぐ仕組みが用意されており、たとえば1,000ドルの請求書のうち600ドルが未払いであれば、Business Central側にも600ドルの請求書として作成される、という具体的な移行ロジックが公式ドキュメントで説明されています*6。過去の会計年度のデータについても「GP Historical Snapshot」という機能を使えば、総勘定元帳明細・売掛金・買掛金・受発注・在庫取引などの履歴を移行し、Power BIなど外部ツールでの分析に利用できます*6。
移行ツールが対象とするのは標準的な業務データに限られる
ここで見落としやすいのは、公式の移行ツールが対象とする範囲があくまで標準的な会計・在庫・取引先データに限られている点です。移行ガイドの説明には、サードパーティ製アドオンや自社独自の追加開発(カスタマイズ)の自動移行に関する記載は見当たりません*6。つまり、標準機能の範囲で運用してきた企業であれば移行ツールの恩恵を受けやすい一方、長年の運用の中で独自のカスタマイズを積み重ねてきた企業ほど、ツールが自動化しない部分の設計・検証を人手で行う必要が大きくなるということです。
カスタマイズ資産とアドオンの扱いが移行の重要な論点になる理由
Dynamics GPやNAVは長期間にわたり利用されてきた製品であるだけに、業種固有の帳票、独自の承認ワークフロー、外部システムとの連携用に構築されたアドオンなど、標準機能だけでは把握しきれないカスタマイズ資産を抱えている企業が少なくありません。これらの資産は、Business Central標準の移行ツールが対象とする会計・在庫・取引先データとは性質が異なり、次のような検討が個別に必要になります。
第一に、そのカスタマイズが自社の業務上どうしても必要な機能なのか、それとも運用でカバーできる範囲なのかを棚卸しし、第二に、Business Central上で同等機能をどう再現するか(標準機能の設定変更で済むのか、拡張機能の開発が必要なのか)を設計する必要があります。第三に、外部システムとの連携部分について、移行後の接続方式を再設計しなければなりません。これらはいずれも自社の業務知識とBusiness Centralの設計知識の両方を要するため、情報システム部門だけで完結させるのが難しい領域と言えるでしょう。
内製で移行を進める場合に必要なスキルと負荷
Dynamics GP・NAVからBusiness Centralへの移行を内製で進める場合、求められる知識は多岐にわたります。まず、移行ツールの設定項目(会計期間・勘定科目のディメンションマッピング・得意先/仕入先クラスの扱いなど)を正しく理解し、自社のデータ構造に合わせて設定する知識が必要です*6。次に、移行ツールが対象としないカスタマイズ資産について、Business Central標準機能での代替案や拡張機能の要件を整理する設計スキルが求められます。
加えて、移行前後のデータ整合性を検証するテスト工程、旧システムからの並行稼働期間の運用設計、ユーザー教育といった、システム移行に共通する負荷も発生します。判断を先送りにしたまま自己流で移行計画を進めると、カスタマイズ資産の洗い出しが不十分なまま本稼働に踏み切り、業務に支障が出てから対応に追われるという事態にもなりかねません。特にサポート終了時期が迫っている場合、スケジュールに余裕がないまま移行作業を進めることになりやすい点にも注意が必要です。
内製と外注の判断軸:比較表で見る違い
Dynamics GP・NAVからBusiness Centralへの移行は、内製で進める場合と外部パートナーへ委託する場合とで、費用構造・必要スキル・スケジュールの確実性が異なります。以下の表に主な違いを整理しました。
| 比較項目 | 内製で移行 | 外注委託 |
|---|---|---|
| 必要な専門知識 | 移行ツールの設定知識に加え、Business Centralの機能・拡張開発の知識を自社で習得する必要があります*6 | GP/NAVとBusiness Central双方の移行実績を持つパートナーの知見を活用できます |
| カスタマイズ資産の棚卸し | 自社の業務担当者が中心となって洗い出しと要否判断を行います | 移行実績に基づく棚卸しの型を活用し、抜け漏れを抑えやすくなります |
| スケジュールの確実性 | サポート終了時期までに検証工程を終えられるかは自社の体制次第です | 移行工程の標準化により、期限からの逆算計画を立てやすくなります |
| 費用構造 | 人件費と教育コストが中心で、追加のライセンス費用は発生しにくい構造です | 委託費用が発生する一方、設計から検証までを含めて任せられます |
どちらを選ぶ場合でも、出発点は自社のカスタマイズ資産とサポート終了までの残り期間の整理です。特に、独自開発やアドオンの依存度が高い企業ほど、標準の移行ツールだけでは対応しきれない範囲が大きくなるため、早い段階での外部相談が選択肢に入ってくるでしょう。
まとめ:Dynamics移行を判断する3つの軸
本稿ではDynamics GP・NAVのサポートロードマップと、Business Centralへの移行の要点を公式情報に基づいて整理しました。判断軸は次の3つに集約されるでしょう。第一に、GPは新規ライセンス販売がすでに終了し、製品サポートは2029年12月末、セキュリティ更新は2031年4月末まで継続する計画である一方、NAVは最終バージョンの延長サポートが2028年1月に終了予定であり、両製品とも移行の検討時期に入っています*1*3*5。第二に、公式移行ツールが自動化するのは会計期間・勘定科目・取引先マスタといった標準データが中心で、カスタマイズ資産の移行方針は個別に設計する必要があります*6。第三に、カスタマイズへの依存度が高いほど、内製だけで移行を完結させる負荷は大きくなり、外部委託によってスケジュールと品質のリスクを抑えやすくなります。
よくある質問
Dynamics GPは今すぐ使えなくなるのですか。
いいえ、すぐに使えなくなるわけではありません。新規ライセンス販売はすでに終了していますが、既存ユーザーへの製品サポートは2029年12月31日まで、セキュリティ更新は2031年4月30日まで提供される計画です*1*3。ただし移行の検討・準備には相応の期間が必要なため、早めの着手が望ましいでしょう。
Dynamics NAVはいつまで使えますか。
最終メジャーバージョンであるNAV2018は、延長サポートが2028年1月11日に終了する予定です*5。それ以前のバージョンを利用している場合は、さらに早い時期にサポートが終了しているケースもあるため、自社の導入バージョンを個別に確認する必要があります。
Business Centralへの移行では過去のデータもすべて移行できますか。
会計期間・勘定科目・得意先/仕入先の未決済取引・在庫品目などは公式の移行ツールで自動移行できます*6。過去年度の履歴データも「GP Historical Snapshot」機能で移行可能ですが、対象年度は移行設定で選択する仕組みです*6。一方、サードパーティ製アドオンや自社独自のカスタマイズについては、移行ツールの対象外となるため個別の設計が必要です*6。
内製と外注はどちらで移行を進めるべきですか。
標準機能の範囲で運用してきた場合は内製でも対応しやすい一方、独自のカスタマイズやアドオンへの依存度が高い企業ほど、棚卸しと再設計の負荷が大きくなります。サポート終了までのスケジュールとカスタマイズの量を踏まえ、外部パートナーへの相談も含めて早めに方針を固めることが望ましいでしょう。
Business Centralはオンプレミスでも使えますか。
Business Centralはオンライン(クラウド)版が中心ですが、公式ドキュメントはオンプレミス版を利用する組織にも言及しています*7。ただし機能の提供時期がオンライン版と異なる場合があるため、自社の要件に応じて提供形態を確認することが大切です。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:Microsoft Learn「Understand the Lifecycle Policies – Dynamics GP」(https://learn.microsoft.com/en-us/dynamics-gp/terms/lifecycle)
- *2 出典:Microsoft Learn「Dynamics GP – Microsoft Lifecycle」(https://learn.microsoft.com/en-us/lifecycle/products/dynamics-gp)
- *3 出典:Microsoft公式ブログ「Announcing end of support for Dynamics GP」(https://www.microsoft.com/en-us/dynamics-365/blog/it-professional/2024/09/25/announcing-end-of-support-for-dynamics-gp/)
- *4 出典:Microsoft Dynamics Community公式ブログ「Discontinuing support for Microsoft Dynamics GP」(https://community.dynamics.com/blogs/post/?postid=468f615b-fe79-ef11-a671-7c1e521674d3)
- *5 出典:Microsoft Learn「Dynamics NAV 2018 – Microsoft Lifecycle」(https://learn.microsoft.com/en-us/lifecycle/products/dynamics-nav-2018)
- *6 出典:Microsoft Learn「Migrate Dynamics GP data to the cloud – Business Central」(https://learn.microsoft.com/en-us/dynamics365/business-central/dev-itpro/administration/migrate-dynamics-gp)
- *7 出典:Microsoft Learn「Welcome to Microsoft Dynamics 365 Business Central」(https://learn.microsoft.com/en-us/dynamics365/business-central/welcome)