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カジュアル面談と面接の違い、義務はどこから
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 線は「最初に接触する時点」にある:大臣指針は原則としてその時点までに従事すべき業務の内容等を明示するとしています*1。
- 「まだ選考ではない」は免除にならない:面談という名前を付けても、条件に触れれば明示のルールが動き出します*1。
- 聞いてはいけない情報は3類型が明記:人種・民族等、思想及び信条、労働組合への加入状況は収集してはならないとされています*1。
※ 本記事は2026年8月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
「まずはカジュアルにお話ししましょう」という誘い方は、いまや採用の入口として定着しています。選考の前段階として位置づけ、条件の話は後回しにする——この運用に、実は法令上の裏付けはありません。
職業安定法に基づく大臣指針は、労働条件等の明示について原則として、求職者等と最初に接触する時点までに従事すべき業務の内容等を明示することとしています*1。「面談」という名前は、この時点をずらしてくれません。
もうひとつ、指針は求職者等の個人情報について収集してはならない情報を3類型で明記しています*1。面談の場で雑談の流れで触れやすい領域が、ここに含まれます。
本記事では、カジュアル面談を実施する側の目線で、どこから何の義務が動くのかを大臣指針に沿って整理します。個別の当てはめや社内ルールへの反映は、社会保険労務士等に確認したうえで進めてください。
目次
指針が引いている線は「最初に接触する時点」
まず、条文と指針の関係を確認します。
職業安定法第5条の3は労働条件等の明示について定めており、大臣指針の第三がその具体的な取扱いを示しています。指針は、労働者の募集を行う者等が求職者、募集に応じて労働者になろうとする者に対し、従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を可能な限り速やかに明示しなければならないとしています*1。
そして時点についてこう述べています。原則として、求職者等と最初に接触する時点までに従事すべき業務の内容等を明示すること*1。
「最初に接触する時点」に、面談という例外は設けられていません。スカウトの返信で日程を調整し、面談の席に着く。この流れで最初に会う場が面談であれば、その時点までに明示しておくのが原則ということです。
もっとも、指針は一部を後回しにする余地も残しています。従事すべき業務の内容等の事項の一部をやむを得ず別途明示することとするときは、その旨を併せて明示すること*1。つまり後回しにしてもよいが、後回しにしていること自体を伝える必要があります。
この違いは実務では大きいでしょう。「賃金レンジは次回お伝えします」と言うのは指針の想定内ですが、何も言わずに触れないのは想定外です。面談の冒頭で「今日お伝えできる範囲と、次回になる項目」を分けて示すだけで、指針の求める形に近づきます。
面談の時点で伝える内容は決まっている
では何を明示するのか。指針は項目ごとに踏み込んだ書き方をしています。
| 項目 | 指針が求めている内容 |
|---|---|
| 全体 | 明示する従事すべき業務の内容等は、虚偽又は誇大な内容としないこと |
| 労働時間 | 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日等について明示すること |
| 賃金 | 賃金形態(月給、日給、時給等の区分)、基本給、定額的に支払われる手当、通勤手当、昇給に関する事項等について明示すること |
| 固定残業代 | 計算方法(固定残業時間と金額を明らかにするもの)、固定残業代を除外した基本給の額、超える分の割増賃金を追加で支払うこと等を明示すること |
| 有期の試用期間 | 期間の定めのある労働契約が試みの使用期間の性質を有する場合、終了後ではなく当該試みの使用期間に係る内容等を明示すること |
裁量労働制や高度プロフェッショナル制度が適用されることとなる場合は、その旨を明示することも挙げられています*1。
なお同じ内容は、経路が変わっても求められます。指針は求人者は求人の申込みに当たり公共職業安定所、特定地方公共団体又は職業紹介事業者に対し、従事すべき業務の内容等を明示しなければならないとしています*1。ハローワークに出す求人票、人材紹介会社に渡す求人票、そして面談で口頭で伝える内容。この3つが食い違っていると、どこかで齟齬が表に出ます。面談の1枚を作る作業は、経路ごとの内容をそろえる作業と同じものです。
さらに配慮事項として、求職者等に具体的に理解されるものとなるよう、従事すべき業務の内容等の水準、範囲等を可能な限り限定すること、求職者等が従事すべき業務の内容に関しては、職場環境を含め、可能な限り具体的かつ詳細に明示することが示されています*1。
この2つは、カジュアル面談の中身そのものに関わります。「いろいろやってもらいます」「幅広く見ていただきます」という説明は、水準や範囲を限定していません。面談の場で魅力を伝えようとするほど、範囲が広がって曖昧になりやすい構造があります。
職場環境まで含めて具体的に、という点も見落としやすい部分です。リモートの可否、レビューの運用、使っている道具。求人票に書ききれない部分を面談で埋める形は、指針の方向と一致します。求人票の側の項目はエンジニア求人票の書き方と必須14項目で扱いました。
試用期間の扱いも整理しておく価値があります。有期契約が試用の性質を持つ場合は、その期間の条件を明示することとされています*1。試用期間そのものの設計は試用期間とは何を見る期間か、設計と運用で扱いました。
条件が動いたときの手順
面談で伝えた条件が、その後の選考で変わることはあります。指針はここにも手順を置いています。
まず、変わる可能性があるなら先に言う。指針は明示する従事すべき業務の内容等が労働契約締結時の従事すべき業務の内容等と異なることとなる可能性がある場合は、その旨を併せて明示するとともに、従事すべき業務の内容等が既に明示した内容と異なることとなった場合には、当該明示を受けた求職者等に速やかに知らせることとしています*1。
そして契約を結ぶ段階では、法第5条の3第3項に基づく変更明示があります。指針は明示された従事すべき業務の内容等を変更し、特定し、削除し、又は第一項明示に含まれない従事すべき業務の内容等を追加する場合は、当該契約の相手方となろうとする者に対し、当該変更し、特定し、削除し、又は追加する従事すべき業務の内容等を明示しなければならないとしています*1。
「特定」が含まれている点に注目してください。面談で「年収500万〜700万円」と幅で伝えて、内定時に「600万円」と決める。これも変更明示の対象です。幅を絞ることは削除でも追加でもありませんが、特定にあたります。
方法についても示されています。望ましいのは第一項明示と変更内容等とを対照することができる書面を交付することで、労働基準法第15条第1項に基づく書面において変更内容等に下線を引き、若しくは着色し、又は変更内容等を注記することも可能とされています*1。削除する場合は削除される前の当該従事すべき業務の内容等も併せて記載することとされています*1。
実務では、面談で伝えた内容を記録しておくかどうかが分かれ目になります。対照する書面を作るには、最初に何を伝えたかが残っていなければなりません。面談を口頭だけで済ませる運用は、この段階で行き詰まります。
もうひとつ、時間についての記述があります。指針は締結しようとする労働契約に係る従事すべき業務の内容等の調整が終了した後、当該労働契約を締結するかどうか紹介求職者等が考える時間が確保されるよう、可能な限り速やかに明示することを求めています*1。条件が固まった当日に返答を求める運用は、この趣旨から離れます。
面談で聞いてはいけない情報は明記されている
雑談の比重が大きい場ほど、話題の範囲に注意が要ります。指針は収集してはならない個人情報を列挙しています。
前提として、指針はその業務の目的の達成に必要な範囲内で、当該目的を明らかにして個人情報を収集することとし、そのうえで次に掲げる個人情報を収集してはならないとしています*1。
- 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項
- 思想及び信条
- 労働組合への加入状況
例外もありますが狭いものです。特別な職業上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合に限られます*1。
カジュアルな場で出やすいのは1つめでしょう。出身地、家族構成、実家の話。場を和ませるつもりの話題が、収集してはならない事項に触れる場面があります。厚生労働省の公正な採用選考のサイトも、配慮すべき事項として本人に責任のない事項の把握を挙げています*3。
収集の手段についても定めがあります。本人から直接収集し、本人の同意の下で本人以外の者から収集し、又は本人により公開されている個人情報を収集する等の手段であって、適法かつ公正なものによらなければならない*1。第三者からの間接的な確認についてはリファレンスチェックの手順と同意の取り方で扱いました。
集めた後の扱いにも一文あります。個人情報の保管又は使用は、収集目的の範囲に限られることとされ、加えて適正な管理の措置として収集目的に照らして保管する必要がなくなった個人情報を破棄又は削除するための措置が挙げられています*1。面談のメモをそのまま残し続ける運用は、この点で見直しの対象になります。
同意についても条件が付いています。指針は業務の目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を収集し、保管し、又は使用することに対する同意を、労働者の募集の条件としないこととし、求職者等の自由な意思に基づき、本人により明確に表示された同意であることを求めています*1。
管理の措置と、求職者から説明を求められたとき
集めた情報の管理についても、指針は具体的な措置を挙げています。ここは面談の運用そのものより、その後の記録の扱いに関わる部分です。
指針は、保管又は使用に係る個人情報に関して次の措置を講ずることを求めています*1。
- 個人情報を目的に応じ必要な範囲において正確かつ最新のものに保つための措置
- 個人情報の漏えい、滅失又は毀損を防止するための措置
- 正当な権限を有しない者による個人情報へのアクセスを防止するための措置
- 収集目的に照らして保管する必要がなくなった個人情報を破棄又は削除するための措置
そして、この4つには説明の義務が付いています。指針は求職者等からの求めに応じ、当該措置の内容を説明しなければならないとしています*1。「聞かれたら答えられる状態にしておく」までが求められている、ということです。
3つめのアクセス防止は、実務では最も抜けやすい項目でしょう。面談の記録を共有ドライブに置き、権限を絞らないまま社内の誰でも見られる状態にしている会社は少なくないはずです。候補者の情報は、選考に関わる人の範囲で閉じるのが原則です。
秘密に触れる情報については、さらに強い書き方がされています。指針は求職者等の秘密に該当する個人情報を知り得た場合には、当該個人情報が正当な理由なく他人に知られることのないよう、厳重な管理を行わなければならないとしています*1。面談で在職中の候補者から転職の事情を聞く場面は、まさにここに当たります。
あわせて、指針は個人情報保護法との関係にも触れています。個人情報の保護に関する法律第十六条第二項に規定する個人情報取扱事業者に該当する場合には、同法第四章第二節に規定する義務を遵守しなければならない*1。指針の措置と個人情報保護法の義務は、別々に効いてくるという整理です。
同意を取る場面についても条件が示されています。同意を求める事項について、求職者等が適切な判断を行うことができるよう、可能な限り具体的かつ詳細に明示すること*1。同意の文面を短くまとめすぎると、この点で足りなくなります。
着手の順序——面談の冒頭3分を設計する
順序を置きます。運用の作り替えは要りません。面談の冒頭に手を入れるところから始まります。
- ① 面談で毎回伝える項目を1枚にする。表1の内容から、自社の枠で埋まる範囲を書き出します
- ② 今日伝える範囲と、後になる項目を分ける。後回しにするなら、その旨を伝える設計にします
- ③ 幅で伝える項目を決めておく。年収レンジは後で「特定」する前提なので、記録が要ります
- ④ 面談の記録の様式を作る。誰が何を伝えたかが残らないと、変更明示の対照ができません
- ⑤ 話題の線引きを共有する。収集してはならない3類型を、面談に出る社員全員に伝えます
- ⑥ メモの保管期間を決める。保管する必要がなくなった情報を破棄・削除する手順を置きます
①と②で、面談の冒頭3分の形が決まります。「今日は仕事の内容と働き方をお伝えします。処遇のレンジは選考に進む段階でお伝えします」と最初に言えるかどうかが、指針の求める形との距離です。
④は地味ですが、後の手戻りを一番減らします。面談を現場のエンジニアが担当する会社では、伝えた内容が人によってばらつきます。1枚の様式に沿って話し、その控えを残す。それだけで内定時の対照が成立します。
⑤は採用担当以外に届けるのが難しい項目です。現場の社員が面談に出る運用では、話題の線引きが共有されていないと事故が起きます。技術面での見極めと合わせて整理しておくと、伝えやすくなります。技術面接で人事が見極める5つの質問もあわせて参考になるでしょう。
なお、面談に出す社員の時間が確保できないまま接点を増やすと、①〜⑥のどれもが形だけになります。面談の質は、現場に余力があるかどうかで決まります。当座の負荷が高い局面では、期間を区切って外部の力を借りて現場を空けるという選択もあります。
まとめ:カジュアル面談で押さえる3つの視点
第一に、義務が動き出す線は「最初に接触する時点」だという点です。職業安定法に基づく大臣指針は、労働者の募集を行う者等が求職者等に対し、従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を可能な限り速やかに明示しなければならないとし、原則として求職者等と最初に接触する時点までに明示することを求めています。面談という名称は、この時点をずらしません。一部をやむを得ず別途明示するときは、その旨を併せて明示することとされています。第二に、明示する内容が項目ごとに具体化されているという点です。虚偽又は誇大な内容としないこと、始業及び終業の時刻や所定労働時間を超える労働の有無や休憩時間や休日、賃金形態や基本給や定額的に支払われる手当や通勤手当や昇給に関する事項、固定残業代を採用する場合の計算方法と除外した基本給の額。あわせて業務の内容の水準や範囲を可能な限り限定し、職場環境を含め具体的かつ詳細に明示することが配慮事項として挙げられています。第三に、条件が動いたときの手順と、聞いてはいけない情報が定められているという点です。契約を結ぶ前に最初の明示を変更・特定・削除し、または含まれない内容を追加する場合は、その変更内容等を明示しなければなりません。年収を幅で伝えて後に1点に決めることも「特定」に当たります。また収集してはならない個人情報として、人種・民族・社会的身分・門地・本籍・出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項、思想及び信条、労働組合への加入状況の3類型が明記されています。まず面談で伝える項目を1枚にそろえるところから始めてください。
よくある質問
選考ではない面談なら、労働条件を伝えなくてよいですか。
そうはなりません。職業安定法に基づく大臣指針は、労働者の募集を行う者等が求職者等に対し従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を可能な限り速やかに明示しなければならないとし、原則として求職者等と最初に接触する時点までに明示することを求めています。面談という名称は明示の時点を後ろにずらしません。ただし一部をやむを得ず別途明示することとするときは、その旨を併せて明示することとされています。
年収を幅で伝えて、後で1つの金額に決めるのは問題ありますか。
幅で伝えること自体は否定されていませんが、後で1点に決めることは変更明示の対象になります。指針は、最初の明示を変更し、特定し、削除し、又は含まれない内容を追加する場合は、その変更内容等を明示しなければならないとしています。「特定」が明記されているため、幅を絞る行為も含まれます。望ましい方法として、最初の明示と変更内容等とを対照することができる書面の交付が挙げられています。
面談で出身地や家族の話をするのは避けるべきですか。
避けるのが原則です。指針は収集してはならない個人情報として、人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項、思想及び信条、労働組合への加入状況の3類型を挙げています。例外は、特別な職業上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合に限られます。厚生労働省の公正な採用選考でも、本人に責任のない事項の把握は配慮すべき事項とされています。
面談のメモはどこまで残してよいですか。
収集目的の範囲に限られます。指針は個人情報の保管又は使用は収集目的の範囲に限られるとし、適正な管理の措置として、収集目的に照らして保管する必要がなくなった個人情報を破棄又は削除するための措置を挙げています。あわせて、漏えい・滅失・毀損の防止や、正当な権限を有しない者によるアクセスの防止も措置として示されています。保管期間と破棄の手順を先に決めておくのが実務的です。
面談を現場のエンジニアが担当する場合、何を共有すべきですか。
最低限、面談で伝える項目と、収集してはならない3類型です。指針は業務の内容について水準や範囲を可能な限り限定し、職場環境を含め具体的かつ詳細に明示することを配慮事項として挙げています。伝える範囲が人によってばらつくと、後の変更明示で対照ができなくなります。1枚の様式に沿って話し、その控えを残す運用にしておくと、担当者による差が出ません。
出典
- *1 参考:厚生労働省「職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、募集情報等提供事業を行う者、労働者供給事業者、労働者供給を受けようとする者等がその責務等に関して適切に対処するための指針」(https://www.mhlw.go.jp/content/001003997.pdf)。第三(労働条件等の明示に関する事項・法第5条の3)の明示内容と時点・変更明示の方法、第五(求職者等の個人情報の取扱いに関する事項・法第5条の5)の収集してはならない個人情報・収集手段・保管と使用・同意の条件・適正な管理の一次情報として(2026年8月確認)
- *2 参考:厚生労働省「職業紹介事業に係る法令・指針」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/shoukaihourei.html)。職業安定法および関係する指針・告示の入手先として(2026年8月確認)
- *3 参考:厚生労働省 公正な採用選考をめざして「採用選考時に配慮すべき事項」(https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/consider.html)。採用選考の場面で把握を避けるべき事項の考え方の確認先として(2026年8月確認)