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2026.08.21 らしくコラム

EU包装規則|包装データ管理の実務



監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • 規則の位置づけ:包装・包装廃棄物規則(Regulation 2025/40)は2025年2月11日に発効し、一般的な適用は2026年8月12日からとされています*1。
  • 対象の広さ:すべての包装と包装廃棄物を対象とし、製造・構成・再利用や回収の可能性についての要件が置かれています*1。
  • データの勘どころ:包装を部材の単位まで分解して持てるか。商品マスタに区分と重量しかない状態では足りません。

※ 本記事は2026年8月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。

包装は、多くの企業のシステムで「商品の付属品」として扱われてきました。箱・小箱・袋といった区分と、送料の計算に使う重量と寸法。それ以上の情報を持っている企業は限られます。

その扱いが変わりつつあります。EUの包装・包装廃棄物規則(Regulation 2025/40)は2025年2月11日に発効し、一般的な適用は2026年8月12日からとされています*1。すべての包装と包装廃棄物が対象で、製造や構成、再利用または回収の可能性についての要件が置かれています*1。

本記事では、EU向けに製品を出している企業の情報システム部門と、その改修を受託する立場に向けて、包装をデータとしてどう持つべきか、どのシステムに影響が出るのかを整理します。適用の判断には法務の確認が要るため、実際の対応は最新の公式資料と確かめながら進めてください。

梱包資材と製品を確認する物流担当者のイメージ

規則が触れる四つの面

この規則の内容は幅広いのですが、システムへの影響という観点で整理すると、四つの面に分かれます*1。

包装データの持ち方が「商品マスタの区分と送料用の重量・寸法」から「材質・部材ごとの重量・再生材の割合・分別のしやすさ・含有物質」へ変わることを示し、規則が触れる四つの面(構成と回収性、一部の使い捨て樹脂の制限、容器の持込、含有物質)と影響するシステムを整理した図

第一に、包装そのものの要件です。EU市場に出されるすべての包装について、製造、構成、そして再利用または回収の可能性に関する要件が置かれています*1。包装が何からできていて、使い終わったあとどうなるのかが問われるということです。

第二に、特定の使い捨て樹脂の制限です。調味料やソースの個別ポーション包装など、一部の使い捨てプラスチックについて制限が置かれています*1。商品の構成そのものを見直す必要が出る場合があります。

第三に、容器の持込です。持ち帰りを扱う事業者に対して、顧客が自分の容器を持ち込む選択肢を追加費用なしで提供することを求める内容が含まれています*1。飲食や小売の現場に近い要求です。

第四に、含有物質です。懸念のある物質を最小化することが求められ、食品に触れる包装についてはPFASの制限も含まれるとされています*1。部材の中身についての情報が必要になります。

この四つを見ると、影響するシステムがそれぞれ違うことがわかります。第一と第四は商品マスタと部材の情報管理、第二は商品構成と生産の仕組み、第三は注文やレジの仕組みです。担当部署も分かれるため、全体を見渡す整理が最初に要ります。

包装データを分解して持つ

いちばん基礎になるのが、包装をデータとして分解して持つことです。現状の持ち方と、必要になる持ち方を比べてみます。

表1:包装データの項目——現状と、必要になる粒度
項目 よくある現状 必要になる粒度
単位 商品ごとに「箱」「袋」の区分 一次包装・二次包装・輸送包装を分けて持つ
材質 持っていない、または備考欄に記述 部材ごとに材質を項目として持つ
重量 送料計算用の総重量のみ 部材ごとの重量。集計して総量を出せる形
再生材 持っていない 部材ごとの再生材の割合と、その根拠
分別のしやすさ 持っていない 部材が分離できるか、複合材かどうか
含有物質 持っていない 懸念物質の有無。食品接触の可否と紐づけて

この表で要点になるのは「部材ごと」という粒度です。一つの包装が、外箱・緩衝材・ラベル・粘着テープ・窓の透明部分といった複数の部材からできている。それぞれ材質が違い、再生材の割合も違います。

ここを一つの行で持とうとすると、すぐに行き詰まります。商品と包装を一対多、包装と部材を一対多で持つ構造が必要になります。マスタデータ管理で扱うような、階層を持つマスタの設計がそのまま当てはまります。

もう一つの論点が、同じ商品でも包装が変わることです。仕入先が変わった、包材を切り替えた、地域によって仕様が違う。この変化を追える形にしておかないと、いつの時点の情報なのかがわからなくなります。適用日つきで持つ設計が望ましいでしょう。

既存の商品マスタを拡張するのか、包装専用のマスタを別に作るのか。この判断は既存システムの構造で決まります。商品マスタが基幹システムの中心にあって触りにくい場合、別のマスタを作って商品コードで紐づける形が現実的なこともあります。

部材メーカーからの情報収集

データの器を作っても、中身は自社では作れません。包材のメーカーや商社から情報をもらう必要があります。ここが実務の難所です。

まず、聞くべき項目を定めることです。材質、重量、再生材の割合、含有物質。項目が定まっていないと、取引先ごとに違う形で回答が来て、集計できません。依頼のひな形を作るところから始まります。

次に、回答の粒度を揃えることです。「紙」と答える取引先と「板紙(古紙配合率〇〇%)」と答える取引先が混在すると、比較も集計もできません。選択肢を用意して選ばせる形にすると、揃いやすくなります。

そして、根拠の扱いです。再生材の割合について、何をもって示すのか。試験の結果か、供給者の申告か。求められる水準は制度の運用によりますが、少なくとも「誰が言った情報か」を記録しておく必要があります。

更新の受け取りです。包材の仕様は変わります。取引先が原料を切り替えることもあります。一度集めて終わりにせず、変更を知らせてもらう約束と、それを反映する手順が要ります。

この構造は、他の情報収集の枠組みとよく似ています。排出量の算定で扱うような、取引先からデータを集めて自社で集計する流れと、仕組みの作り方は共通します。同じ取引先へ複数の部署から別々に依頼する事態が起こりやすいため、窓口とひな形を整理しておく価値があります。

実務としては、量の多い包材から順に集めるのが現実的です。すべての部材を同じ精度で揃えようとすると終わりません。重量の大きい部材、使用量の多い部材から埋めていき、精度を段階的に上げていく進め方になります。

注文とレジへの影響——容器持込という要求

持ち帰りを扱う事業者に対して、顧客が自分の容器を持ち込む選択肢を追加費用なしで提供することを求める内容が含まれています*1。これは店舗のシステムに直接効いてきます。

注文の受け方です。持ち込みの容器で受け取るという選択を、注文の時点で表せるか。店頭のレジ、モバイルの注文、宅配の受付——それぞれの経路で選べる必要があります。

価格の扱いです。追加費用なしという条件があるため、容器の分を差し引く、あるいは容器代を別建てにしている場合はそれを外す処理が必要になります。POSと販売管理で扱うような、商品と付属品の価格構成を見直す作業になります。

調理と受け渡しへの伝達です。注文の情報として「持ち込み容器」が入っていても、厨房や受け渡しの担当に伝わらなければ運用できません。伝票の表示、画面の表示に反映する必要があります。

衛生面の手順です。持ち込まれた容器をどう扱うか。これはシステムの話ではありませんが、運用の手順として決めておかないと現場が止まります。システム側では、その手順に沿った表示や確認の導線を用意することになります。

日本国内でこの要求がそのままかかるわけではありませんが、EU域内で店舗を運営している企業、あるいはEU向けにサービスを提供している企業には関わってきます。海外展開している飲食・小売の企業では、店舗システムの地域差として扱う論点になります。

報告と表示——出口の設計

集めたデータは、いくつかの出口に向かいます。出口を先に決めておくと、集める項目の設計が定まります。

第一に、包装の総量です。どの材質の包装を、どれだけ市場に出したか。商品の販売数量と、商品ごとの包装データを掛け合わせて集計する形になります。販売数量が地域ごとに分かれて持てているかが前提になります。

第二に、再生材の割合です。部材ごとの割合を重量で重み付けして集計します。単純平均では意味のある数値になりません。集計のロジックを決めて文書に残しておきます。

第三に、表示です。包装に何を示すかという要求が関わる場合、表示するデータを商品マスタから生成できる形にしておくと、変更のたびの手作業を減らせます。ラベルの版管理も含めて設計します。

第四に、取引先への提供です。自社が包材や部材を供給する立場なら、逆に情報を求められる側になります。求められたときに出せる形——決まった項目、決まった単位——を用意しておくと、対応の負担が下がります。

これらの出口は、いずれも「集計できるデータ構造を持っているか」に帰着します。後から集計処理を作るより、項目を設計する段階で出口を想定しておくほうが確実です。

廃棄物として扱う側の記録も関わってきます。廃棄物の管理票で扱うような仕組みを持っている企業では、包装のデータと廃棄の記録を突き合わせられる形にしておくと、社内での説明がしやすくなります。

時間軸と、着手の順序

規則は2025年2月11日に発効し、一般的な適用は2026年8月12日からとされています*1。個別の要件については、それぞれ適用の時期が定められる形になります。

この状況を踏まえた着手の順序を挙げます。

第一に、対象の洗い出しです。EU市場に出している商品はどれか。その包装はどのような構成か。品目数が多い企業では、この洗い出し自体に時間がかかります。

第二に、データの器を作ることです。包装を部材の単位で持てる構造。これは要件の詳細が固まる前でも進められます。むしろ先に作っておかないと、情報が集まったときに入れる場所がありません。

第三に、情報収集を始めることです。取引先からの回答には時間がかかります。量の多い包材から順に、早めに依頼を出しておきます。

第四に、集計の仕組みを作ることです。データが揃ってから作るのでは、最初の報告に間に合わない可能性があります。仮のデータで集計を試し、ロジックを固めておきます。

第五に、商品構成の見直しを検討することです。特定の使い捨て樹脂の制限に触れる商品がある場合、包装そのものを変える判断が必要になります。これは開発の話ではなく、商品企画と調達の判断です。早めに共有しておきます。

優先順位としては、EU向けの売上が大きい商品群から着手するのが現実的でしょう。すべての品目を同じ精度で整えようとすると、どれも中途半端になります。

受託・委託で進めるときの要点

この種の改修を外部と進める場合の要点を挙げます。

第一に、既存マスタの構造調査を独立した工程にすることです。商品マスタに包装の情報をどこまで持てるか、拡張できるのか。基幹システムの中心にあるマスタは、簡単には触れません。この調査で改修の方針が決まります。

第二に、拡張か新設かの判断を早く行うことです。既存の商品マスタに項目を足すのか、包装専用のマスタを作って紐づけるのか。工数と将来の保守性の両方から判断します。

第三に、情報収集の仕組みを要件に含めるかを決めることです。取引先へ依頼して回答を受け取る仕組みまで作るのか、当面は表計算での運用にするのか。件数の見立てから決めます。

第四に、集計の定義を文書として残すことです。再生材の割合をどう重み付けするか、包装の総量をどう数えるか。定義が残っていなければ、担当者が変わるたびに数値が変わります。

第五に、商品企画・調達との窓口を決めることです。包装の仕様を変える判断は開発の外にあります。開発側は決まった仕様をデータとして扱う役割に集中し、判断の窓口を分けておきます。

体制としては、商品と物流の業務を理解している要員が入れるかが分かれ目になります。データ構造だけを設計する体制では、一次包装と輸送包装の区別や、地域ごとの仕様差といった実務の勘所に届きません。業務側と設計側が同じ場で話せる形を作れるかを、委託先を選ぶ観点に入れておくとよいでしょう。

まとめ:EU包装規則への備えで押さえる3つの視点

包装・包装廃棄物規則(Regulation 2025/40)は2025年2月11日に発効し、一般的な適用は2026年8月12日からとされ、すべての包装と包装廃棄物を対象に、製造・構成・再利用や回収の可能性についての要件、一部の使い捨てプラスチックの制限、持ち帰りでの容器持込の選択肢、そして懸念物質の最小化が置かれています。押さえたい視点は三つです。第一に、包装を部材の単位まで分解して持てるデータ構造が土台になり、商品マスタに区分と送料用の重量しかない状態では足りないこと。第二に、材質や再生材の割合といった中身は自社では作れないため、包材メーカーや商社から集める仕組み——依頼のひな形、回答の選択肢、根拠の記録、更新の受け取り——が実務の要になること。第三に、集計や表示という出口を先に決めておくと、集める項目の設計が定まり、後から集計処理を作る手戻りを避けられることです。まずはEU向け商品の包装構成の洗い出しと、部材の単位で持てるデータの器を作るところから着手するのが堅実でしょう。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、元請(プライムベンダー)として、商品・調達・物流に関わる業務システムの開発と改修を受託しています。階層を持つ包装マスタの設計、取引先からの情報収集と検査の仕組み、重量で重み付けする集計ロジック、注文やレジへの反映まで、業務の実態に合わせた形をご提案できるのが強みです。

よくある質問

商品マスタに包装の区分と重量があれば足りますか。

足りません。包装は外箱・緩衝材・ラベル・テープなど複数の部材からできており、それぞれ材質も再生材の割合も違います。部材ごとに材質・重量・再生材の割合・分別のしやすさを持てる構造が必要になります。商品と包装、包装と部材をそれぞれ一対多で持つ形が基本になります。

材質や再生材の情報はどう集めればよいですか。

包材のメーカーや商社へ依頼して集めることになります。要点は、聞く項目を定め、回答を選択肢から選ばせる形にして粒度を揃えることです。あわせて「誰が言った情報か」を記録し、仕様が変わったときに知らせてもらう約束をしておきます。量の多い包材から順に埋め、精度を段階的に上げる進め方が現実的です。

既存の商品マスタを拡張すべきですか、別に作るべきですか。

既存システムの構造で決まります。商品マスタが基幹システムの中心にあって触りにくい場合、包装専用のマスタを別に作り、商品コードで紐づける形が現実的なこともあります。まず既存マスタの構造を調べ、拡張の可否と影響範囲を確かめてから判断します。

容器の持込はシステムに関係しますか。

関係します。持ち込みの容器で受け取るという選択を注文の時点で表せる必要があり、追加費用なしという条件があるため価格構成の見直しも関わります。さらに、その情報を厨房や受け渡しの担当へ伝える表示も必要になります。EU域内で店舗を運営している企業では、店舗システムの地域差として扱う論点になります。

どこから着手すべきですか。

データの器を先に作ることです。要件の詳細が固まる前でも、包装を部材の単位で持てる構造は作れます。器がないと、取引先から情報が集まっても入れる場所がありません。並行して、量の多い包材から情報収集の依頼を出しておくと、後の作業が楽になります。

包装データの構造設計はLASSICへ

元請(プライムベンダー)として、階層を持つマスタの設計から取引先データの収集と検査、集計ロジック、注文やレジへの反映までご提案します。まずはお気軽にご相談ください。

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出典

  1. *1 参考:European Commission「Packaging waste」(Packaging and Packaging Waste Regulation 2025/40)(https://environment.ec.europa.eu/topics/waste-and-recycling/packaging-waste_en)。規則の番号、発効日と一般的な適用開始日、対象範囲、製造・構成・再利用や回収の可能性に関する要件、特定の使い捨てプラスチックの制限、容器持込の選択肢、懸念物質の最小化に関する一次情報として(2026年8月確認)




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