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消費者ADRの年次報告、英国が並べた12項目と3つの手数料
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 旧2015年規則は廃止された:2026年4月6日からの体制です*2。
- 年次報告は12項目:件数と割合の両方を出します*4。
- 手数料は3種類:定期のものは6か月ごとです*3。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
紛争解決を事業として提供するなら、実績をどう数えるかが制度の側から決められることがあります。英国は、その項目を12個並べました。
デジタル市場・競争・消費者法2024の第4部第4章が2026年4月6日に施行し、旧来の消費者紛争ADR(所管当局および情報)規則2015は廃止されました*2。同じ日に、機能の付与*1、付随改正*2、手数料*3、情報*4の4本の規則が施行しています*1*2*3*4。
オンラインで紛争を扱う仕組みを作る立場から、誰が認定するのか、いくらかかるのか、何を報告するのかを順に見ていきます。
目次
認定と監督は、CTSIへ付与された
まず全体像です*1*2*3*4。
制度を動かすのはADR当局です*4。情報規則の第2条は、これを法第307条に基づく規則により機能を付与された者、そのような者がいない場合は大臣と定義しました*4。
その付与を行ったのが機能の付与に関する規則2026です*1。第2条は、CTSIを勅許により設立された法人である勅許取引標準協会(登録番号RC000879)と定義します*1。
第3条が、CTSIへ付与される機能を8つ並べました*1。手数料の定めを承認する機能(法第294条第2項(b))、認定または認定の変更の申請に関する機能(第296条)、申請の判断に関する機能(第297条)、認定の取消しや停止に関する機能(第298条)、認定ADR提供者が支払う手数料を受け取る機能(第299条第1項)、執行通知に関する機能(第302条)、ADR情報の指示に関する機能(第304条)、そしてADR情報の開示に関する機能(第305条)です*1。
いくつかには「ただし別の条を見よ」という留保が付いています*1。手数料の定めの承認、申請、取消し・停止、執行通知、情報の開示について、規則の後段に条件が置かれる構造です*1。行政の中核に近い判断には、追加の手続きが被せられています*1。
この規則は肯定的決議手続で作られました*1。法第307条第6項と第337条第3項に従い、草案が議会へ提出され、両院の決議で承認されています*1。民間の団体へ規制の機能を渡す以上、手続きは重くなります*1。
手数料は3種類、定期のものは6か月ごと
費用の見通しは、手数料規則で分かります*3。
| 種類 | 金額と根拠 | 支払いの時期 |
|---|---|---|
| 認定の申請 | 6,151ポンド(法第296条第1項(b)) | 申請のとき |
| 認定の変更の申請 | 950ポンド(法第296条第5項) | 申請のとき |
| 定期の手数料 | 1,318ポンド(法第299条第1項) | 「関係日」から1か月以内。以後は6か月の各期間の終わりから1か月以内 |
関係日の定義が細かいところです*3。第5条第3項は、認定が効力を生じた日から始まる6か月の期間の末日としました*3。認定の直後ではなく、半年後が起点になります*3。
支払いの相手は、いずれもADR当局です*3。CTSIが受領の機能を持つため、実務上はCTSIへ支払うことになります*1*3。
大臣は、この金額を定めるにあたり法第300条第3項の事項を考慮したと規則の前文に記されています*3。金額の根拠が法定の考慮事項に紐づく形です*3。
年間の負担を単純に足すと、定期の手数料だけで2,636ポンドになります*3。初年度は申請の6,151ポンドが加わります*3。認定を維持する費用として、事業計画に載せておく額です*3。
年次の報告は12項目、件数と割合の両方
情報規則の別表第1部が、報告の中身です*4。
まず数字の部分です*4。ADRの申立ての件数に加えて、受理した件数と割合、受理しなかった件数と割合およびその理由、ADRで解決した件数と割合、解決に至る前に中断した件数と割合および分かる場合はその理由、消費者に有利に解決した件数と割合、事業者に有利に解決した件数と割合を出します*4。
分類の軸も指定されました*4。違反が主張された法令と苦情の類型ごとの件数と割合*4。そして受理した申立てを、実施したADRの種類ごとに集計した件数と割合です*4。
時間の指標が2通りある点は、実装で効いてきます*4。消費者契約紛争の解決に要した平均の時間を、申立てが行われた日から解決の日までと、申立てが受理された日から解決の日までの両方で算出します*4。受理までの待ち時間を切り分けて見せる設計です*4。
数字以外の項目もあります*4。分かる範囲での、結果や事前に合意された事項の履行率、特別ADR取決めがある場合の、その下で行ったADRの種類と関与した提供者の数、経験に基づく、消費者と事業者の間で紛争を生じさせる制度的または実体的な繰り返しの論点の記述と、回避・解決のための提言、提供するADRの有効性の評価と改善の提案、事業者と消費者の信頼と満足に関する情報、ADRを行う者へ提供した研修に関する情報、そしてその他、提供者が関連すると考える情報です*4。
提出の期限は、認定の効力発生日の1周年から1か月以内、以後は各応当日から1か月以内です*4。宛先は2つで、ADR当局へは耐久性のある媒体の書面で、消費者へは自社のウェブサイトがあればそこで公表して提供します*4。
認定を失った者にも義務が残ります*4。第4条は、認定が効力を失った日から1か月以内に、同じ第1部の報告を出すことを求めます*4。対象期間は、前回の報告の後から失効の日まで、前回がなければ認定の効力発生日から失効の日までです*4。
変わったら更新する情報は、別に10項目
別表第2部は、年次ではなく変化があったときの更新です*4。
第3条第4項は、認定ADR提供者に対して、法第296条の認定の申請の一部として提供した情報、またはこの規則により提供した情報と異なる範囲で、合理的に実行可能な限りすみやかに、第2部の情報を提供することを求めます*4。
| 項 | 内容 |
|---|---|
| (a)(b) | ADR提供者の名称、連絡先、ウェブサイトの住所/実施するADRの種類と、それぞれで考えられる結果 |
| (c)(d) | 取り扱う消費者契約紛争の類型/対象とする分野と消費者契約紛争の区分 |
| (e) | ADRの実施に関する手続き、規則、要件、実務。紛争を付託できる時間の制限、当事者の一方または双方が事前または実施中に満たすべき条件、口頭と書面のいずれで行えるかを含む |
| (f)(g) | 付託された紛争について当事者が負担する手数料や費用/申立てとADRの実施に使える言語 |
| (h)(i)(j) | ADRの結果に拘束力があるかどうか/特定の紛争の取扱いを拒める理由/苦情を処理する手順 |
この10項目は、認定の申請で出す情報とほぼ同じです*4。つまり、申請時に固めた内容を、変わるたびに追いかけて届け出る仕組みになっています*4。
免除される提供者にも、別の形で義務があります*4。第5条は、免除ADR提供者について、第1部と第2部の情報を、規制機関へも提供しており、消費者契約紛争に関するものである範囲で、ADR当局へ提供することを求めます*4。方法は規制機関へ提供したのと同じ方法で、時期は規制機関へ提供してから1か月以内です*4。
耐久性のある媒体の定義も置かれました*4。紙または電子メール、その他、受け手に宛てて情報を届けられ、その情報の目的に照らして十分に長い期間、将来の参照に使える形で受け手が保存でき、保存した情報を変更なく再現できる媒体です*4。
設計として見ると、集計の要件が先に決まっている
この制度は、報告の項目が先に決まっている点に特徴があります*4。
第一に、件数と割合を対にしていることです*4。割合を出すには分母が要ります*4。どの件数を分母にするかを決めておかないと、年度末に数字が合いません*4。申立ての総数、受理の総数のどちらを基準にするかは、項目ごとに読み分ける必要があります*4。
第二に、状態遷移を持たないと集計できないことです*4。受理、不受理、解決、中断という区分は、案件の状態です*4。しかも不受理には理由、中断には(分かる場合は)理由が要ります*4。理由を自由記述で残すと、集計のたびに人が分類することになります*4。
第三に、2種類の所要時間です*4。申立てからの時間と、受理からの時間を別々に出すため、申立ての日時と受理の日時を別のイベントとして記録しなければなりません*4。1つの「起票日」だけでは足りません*4。
第四に、公表が義務に含まれることです*4。報告はADR当局へ出すだけでなく、自社のサイトで公表します*4。社内の集計をそのまま外へ出す前提になるため、数字の定義と表記を、公表に耐える形で固めておくことになります*4。似た構図は、豪州が障害の履歴を公開させた障害登録簿の仕様にも見られました*4。
日本のIT部門が持ち帰れる論点
この規則群は英国の制度で、日本の事業者に直接の義務を課すものではありません*1*2*3*4。ただし、苦情や紛争を扱う仕組みを作る立場では参考になります*4。
第一に、報告の項目から逆算してデータモデルを決めることです*4。集計の要件が後から来ると、状態や日時の持ち方を作り直すことになります*4。制度がある分野では、報告の様式を先に読み、必要な項目を洗い出してから設計に入るのが早道です*4。
第二に、理由をコードで持つことです*4。不受理の理由、中断の理由、拒否できる理由。いずれも集計の軸になります*4。選択式のコードとして持ち、必要なら自由記述を併記する形にすると、後から数えられます*4。
第三に、時間の起点を複数持つことです*4。受付、受理、着手、解決。どこからどこまでを測るかで、見える課題が変わります*4。1つの指標だけを持つと、待ち行列の問題と処理の問題を切り分けられません*4。
第四に、認定の維持費を運用の費用に含めることです*3。この制度では、初年度に6,151ポンド、以後は年に2,636ポンドの定期の手数料が発生します*3。認定や資格が前提となる事業では、こうした継続の費用と、更新の作業の工数を、あらかじめ見積もりへ入れておくことになります*3。近い論点は、英国が製品の適合を外国のラベルで代替できるようにしたみなし適合の仕組みにも現れます*3。
まとめ:英国の消費者ADRの認定制で押さえる3つの視点
英国では、デジタル市場・競争・消費者法2024の第4部第4章が2026年4月6日に施行し、消費者紛争ADR(所管当局および情報)規則2015が廃止されました。同じ日に、機能の付与に関する規則2026、付随改正の規則2026、手数料の規則2026、情報の規則2026が施行しています。押さえたい視点は三つあります。第一に、担い手。機能の付与に関する規則2026の第3条は、法第307条に基づき、勅許取引標準協会(CTSI、勅許により設立された法人、登録番号RC000879)へ、手数料の定めの承認、認定と変更の申請、申請の判断、認定の取消しや停止、手数料の受領、執行通知、ADR情報の指示、ADR情報の開示に関する機能を付与しました。この規則は、法第307条第6項および第337条第3項に従い、草案が両院の決議で承認されています。第二に、手数料。認定の申請は6,151ポンド、認定の変更の申請は950ポンド、定期の手数料は1,318ポンドで、いずれもADR当局へ支払います。定期の手数料は、認定が効力を生じた日から始まる6か月の期間の末日を「関係日」とし、そこから1か月以内に初回を、以後は6か月の各期間の終わりから1か月以内に支払います。第三に、報告。情報の規則2026の別表第1部は、申立ての件数、受理・不受理とその理由・解決・中断とその理由・消費者に有利な解決・事業者に有利な解決の件数と割合、主張された法令と苦情の類型ごとの集計、実施したADRの種類ごとの集計、申立ての日からと受理の日からの2通りの平均の解決時間、履行率、特別ADR取決めの内容、繰り返しの論点と提言、有効性の評価と改善の提案、信頼と満足に関する情報、研修に関する情報、その他の情報を求めます。提出は認定の効力発生日の1周年から1か月以内、以後は各応当日から1か月以内で、ADR当局へは耐久性のある媒体の書面で、消費者へは自社のウェブサイトがあればそこで公表します。認定を失った者も、失効の日から1か月以内に同じ報告を出します。別表第2部の10項目は、申請時の内容と異なることになった場合に、合理的に実行可能な限りすみやかに更新します。
よくある質問
いつから新しい制度になりましたか。
2026年4月6日からです。付随改正の規則2026の説明は、デジタル市場・競争・消費者法2024の第4部第4章が2026年4月6日に施行し、消費者紛争ADR(所管当局および情報)規則2015(SI 2015/542)が廃止されたことに伴う改正であると述べています。機能の付与に関する規則2026、手数料の規則2026、情報の規則2026も、いずれも2026年4月6日に施行しました。
認定を行うのは誰ですか。
勅許取引標準協会(CTSI)です。機能の付与に関する規則2026の第2条はCTSIを勅許により設立された法人(登録番号RC000879)と定義し、第3条が、法第294条第2項(b)、第296条、第297条、第298条、第299条第1項、第302条、第304条、第305条に基づく機能をCTSIへ付与しています。情報の規則2026の第2条は、ADR当局を、法第307条に基づく規則により機能を付与された者、そのような者がいない場合は大臣と定義しています。
手数料はいくらかかりますか。
3種類あります。手数料の規則2026により、法第296条第1項(b)の認定の申請に係る手数料は6,151ポンド、法第296条第5項の認定の変更の申請に係る手数料は950ポンド、法第299条第1項の定期の手数料は1,318ポンドです。いずれもADR当局へ支払います。定期の手数料は、認定が効力を生じた日から始まる6か月の期間の末日を関係日とし、そこから1か月以内に初回を、以後は6か月の各期間の終わりから1か月以内に支払います。
年次の報告はどこへ出しますか。
ADR当局と、自社のウェブサイトの両方です。情報の規則2026の第3条第3項は、報告を、ADR当局へは耐久性のある媒体の書面で提供し、消費者へは認定ADR提供者のウェブサイトがあればそこに公表して提供しなければならないとしています。耐久性のある媒体は、第2条により、紙または電子メールその他、受け手に宛てて情報を届けられ、目的に照らして十分に長い期間、将来の参照に使える形で保存でき、変更なく再現できる媒体と定義されています。
出典
- *1 参考:英国法令データベース「The Digital Markets, Competition and Consumers Act 2024 (Alternative Dispute Resolution) (Conferral of Functions) Regulations 2026」(SI 2026 No. 259・2026年3月9日制定/2026年4月6日施行)(https://www.legislation.gov.uk/uksi/2026/259/made)。担い手の一次情報として。根拠(デジタル市場・競争・消費者法2024 第307条第1項から第3項および第337条第1項、ならびに第307条第6項・第337条第3項に基づく両院の決議による承認)、第1条(施行日2026年4月6日、適用地域)、第2条の定義(CTSI=勅許取引標準協会、登録番号RC000879、耐久性のある媒体)、および第3条(CTSIへ付与される8つの機能。第294条第2項(b)、第296条、第297条、第298条、第299条第1項、第302条、第304条、第305条。それぞれに後続の条による留保がある旨)を確認した。確認日は2026年9月10日。(2026年9月確認)
- *2 参考:英国法令データベース「The Digital Markets, Competition and Consumers Act 2024 (Alternative Dispute Resolution) (Consequential Amendments) Regulations 2026」(SI 2026 No. 263)(https://www.legislation.gov.uk/uksi/2026/263/made)。移行の一次情報として。デジタル市場・競争・消費者法2024の第4部第4章が2026年4月6日に施行したことと、消費者紛争ADR(所管当局および情報)規則2015(SI 2015/542)が廃止されたことに伴い、一次法令および二次法令へ改正を行うものであることを確認した。確認日は2026年9月10日。(2026年9月確認)
- *3 参考:英国法令データベース「The Digital Markets, Competition and Consumers Act 2024 (Alternative Dispute Resolution) (Fees) Regulations 2026」(SI 2026 No. 290・2026年3月11日制定/2026年4月6日施行)(https://www.legislation.gov.uk/uksi/2026/290/made)。手数料の一次情報として。根拠(法第300条第1項および第2項(c)、ならびに第300条第3項の事項の考慮)、第1条(施行日と適用地域)、第2条の定義(ADR当局)、第3条(認定の申請の手数料6,151ポンド、ADR当局へ支払う旨)、第4条(認定の変更の申請の手数料950ポンド)、および第5条(定期の手数料1,318ポンド、関係日=認定の効力発生日から始まる6か月の期間の末日、初回は関係日から1か月以内、以後は6か月の各期間の終わりから1か月以内)を確認した。確認日は2026年9月10日。(2026年9月確認)
- *4 参考:英国法令データベース「The Digital Markets, Competition and Consumers Act 2024 (Alternative Dispute Resolution) (Information) Regulations 2026」(SI 2026 No. 293・2026年3月11日制定/2026年4月6日施行)(https://www.legislation.gov.uk/uksi/2026/293/made)。報告の一次情報として。根拠(法第303条第1項・第2項・第3項・第5項)、第1条(施行日と適用地域)、第2条の定義(ADR当局、耐久性のある媒体)、第3条(年次の報告の期限と、ADR当局への書面および自社サイトでの公表、第2部の情報の更新)、第4条(認定を失った者の報告と対象期間)、第5条(免除ADR提供者について、規制機関へも提供しており消費者契約紛争に関する範囲で、同じ方法により1か月以内に提供する旨)、別表第1部((a)から(l)の12項目。件数と割合、法令と苦情の類型による分類、ADRの種類による分類、申立ての日からと受理の日からの2通りの平均時間、履行率、特別ADR取決め、繰り返しの論点と提言、有効性の評価、信頼と満足、研修、その他)、ならびに別表第2部((a)から(j)の10項目)を確認した。確認日は2026年9月10日。(2026年9月確認)