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2026.07.16 らしくコラム

社内報システムの要件|配信・既読・エンゲージメント測定

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)として業務システムの開発・保守を受託

図1

この記事のポイント

  • 社内報システムは、社内向けの記事をWeb・アプリ・メールへ配信し、既読やリアクションを可視化して、部署・属性別のセグメント配信や閲覧率の測定までを担うインナーコミュニケーション基盤です。情報を「送る」だけでなく「読まれたか」を測る点に特徴があります。
  • 産業編集センターの調査(155社)では、Web社内報の閲覧率は4割前後がボリュームゾーンとされ、届けた情報が読まれない状態が課題として浮かびます。要件を測定まで含めて設計する意味はここにあります。
  • 要件を見極める軸は、配信チャネル・既読/リアクション・セグメント配信・効果測定という機能要素と、外注時に既存グループウェアとの連携範囲や測定指標をどこまで担えるかです。サイトを構築するCMSや検索基盤とは役割が異なります。

情報が届かない・読まれない——インナーコミュニケーションが抱える課題

図2

経営層の方針や現場の取り組みを社内に伝える活動は、多くの企業が日常的に行っています。ところが「伝えたつもり」が「伝わった」に届いていない、という実感を持つ担当者は少なくありません。メールで一斉送信しても開かれず、掲示板に載せても気づかれない。こうした行き違いが積み重なると、組織としての一体感や方針の浸透が細っていきます。

図
図:配信した情報は「到達」「閲覧」「浸透」の各段階で細っていく。どこで失われるかを測ることが出発点になる

この「読まれない」を裏づける調査があります。産業編集センターが企業のインターナルコミュニケーション担当者を対象に実施した調査(回答155社、2022年11月〜2023年1月)では、Web社内報の閲覧率はボリュームゾーンが4割にとどまり、閲覧率が5割以上と回答した企業は全体の約3分の1でした*2。半数以上に読まれている社内報のほうが少数派、という実態がうかがえます。

読まれないことは、単なる広報上の悩みにとどまりません。ソフィアが従業員1,000人以上の企業に勤める496名を対象に行った調査では、自社の経営目標や戦略に「共感している」と答えた社員は約1割にとどまり、部門間の分断を感じるという回答は58%にのぼりました*1。情報の行き違いは、方針の理解や組織の一体感にまで影を落とすのです。

背景には働き方の変化もあります。総務省の令和6年版情報通信白書によると、テレワークを導入している企業は約半数の水準にあり、オフィスに全員が集まる前提が崩れつつあります。同白書では、テレワーク時に上司・部下・同僚との相談や意思疎通のしにくさが課題として挙げられており、対面に頼らない情報共有の手段づくりが論点になっています( https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/html/nd21b220.html )。拠点や勤務形態が分散するほど、届ける仕組みと読まれたかを測る仕組みの両方が要ります。

社内報システムとは——社内向け記事を配信し反応を測る運用基盤

社内報システムとは、社内向けの記事やお知らせを作成し、Web・アプリ・メールといったチャネルへ配信して、既読やリアクションといった反応までを一つの基盤で管理するソフトウェアを指します。従来の紙の社内報やメール一斉送信と違うのは、届けた情報が「誰にどこまで読まれたか」をデータとして可視化できる点にあるでしょう。いわばインナーコミュニケーションを運用し、改善していくための土台です。

ここでいうインナーコミュニケーションとは、社内やグループ会社内という同一組織のなかで行う広報活動全般を指す考え方で、社内報や対話の場を通じて組織内の情報共有を活性化する取り組みとされています*1。その目的は、経営層のビジョンや戦略を現場に伝えるトップダウンの流れ、現場の声を経営に届けるボトムアップの流れ、部門間・社員間をつなぐ水平連携の3つに整理されます*1。社内報システムは、この3つの流れを日々の運用に落とし込むための道具立てだと考えると分かりやすいでしょう。

実際の社内報は、扱うテーマも媒体も広がっています。ウィズワークスが実施した社内報白書2023(有効回答277社、2023年8月)では、社内報の目的として「社内・グループ内の周知事項の伝達」が約95%で最も多く挙げられ、Web社内報やスマートフォンアプリ、動画、PDFといった媒体の活用も広がっていると報告されています*3。紙一辺倒だった時代から、複数チャネルを併用する運用へと移りつつあるのです。

こうした取り組みが注目される背景には、働きがいへの関心の高まりもあります。厚生労働省の令和元年版労働経済の分析(労働経済白書)は「働きがい」の確保を中心テーマに据え、仕事にやりがいや活力を感じている状態を示すワーク・エンゲイジメントを分析対象としました( https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/19-2.html )。方針や理念が現場に伝わり、双方向のやり取りが生まれる環境づくりは、こうした働きがいの土台とも重なります。社内報システムは、その環境を支える運用基盤の一つに位置づけられます。

CMS・エンタープライズ検索との違い——「運用」に特化する領域

社内向けに情報を扱うシステムには、CMS(コンテンツ管理システム)やエンタープライズ検索、問い合わせ管理といった隣接する仕組みがあります。社内報システムはこれらと言葉や機能が一部重なるため、混同されがちです。ただし主眼を置く領域が異なるため、要件を検討する前に役割の違いを押さえておきましょう。

CMSは、Webサイトやオウンドメディアといったコンテンツの構造を管理し、公開する仕組みが中心です。ページの作成やテンプレート管理には強い一方で、「誰が読んだか」「どの部署に届いたか」を測ることは主目的ではありません。エンタープライズ検索は、社内に散在する文書やデータを横断的に探し出すことに特化した仕組みで、情報を能動的に「探す」場面を支えます。問い合わせ管理は、寄せられた質問や依頼を受け付けて処理する業務向けの仕組みです。

これらに対して社内報システムが軸に据えるのは、インナーコミュニケーションの「運用」です。社内向け記事を作って配信し、既読やリアクションで反応を受け取り、セグメントごとに届け分け、閲覧率という指標で効果を測って次の発信につなげる。この一連のサイクルを回すことに特化しています。サイトを構築するのでも、情報を探すのでもなく、組織に情報を能動的に届けて浸透の度合いを測る点が、社内報システムの立ち位置だといえるでしょう。

項目 CMS/検索基盤 社内報システム
主眼を置く役割 サイト構築・情報の格納と検索 社内への情報配信と浸透の運用
情報の流れ 利用者が能動的に閲覧・検索する 組織側から能動的に届け分ける
中心となる指標 ページ公開・検索ヒット 既読率・リアクション・閲覧率
読者の想定 不特定または社内全般 部署・属性でセグメントした従業員

もっとも、これらは互いに排他的な関係ではありません。社内報システムが配信する記事の一部を検索基盤の対象に含めるなど、連携する場面もあります。ただし主目的が違うため、インナーコミュニケーションの運用を狙うなら、その領域に沿った要件で設計することが実務的でしょう。

機能要素——配信・既読/リアクション・セグメント配信・効果測定

図3

社内報システムの要件を検討する際は、次の4つの機能要素をどこまで満たすかを見比べると整理しやすくなります。自社の拠点数や勤務形態、運用体制に照らして、必要な要素に優先順位を付けていきましょう。

配信チャネル——Web・アプリ・メールへ届け分ける

まず土台になるのが、記事をどのチャネルへ届けるかという配信の設計です。ブラウザで読むWeb社内報、スマートフォンで通知を受け取れるアプリ、普段業務で使うメールなど、読者の働き方に合わせて経路を選べることが基本になります。社内報白書2023でも、Web・アプリ・動画・PDFといった媒体の併用が広がっていると報告されています*3。オフィス勤務と在宅勤務、現場勤務が混在する組織では、単一チャネルに絞るより複数を組み合わせるほうが届きやすいものです。

既読・リアクション・コメント——反応を受け取る

配信した情報が読まれたかどうかを把握するのが、既読やリアクション、コメントの機能です。誰が記事を開いたかを既読として記録し、共感を示すリアクションや自由なコメントを受け取れると、一方通行になりがちな社内発信に双方向のやり取りが生まれます。前掲のインナーコミュニケーションの定義でも、現場の声を経営に届けるボトムアップの流れは目的の一つに数えられていました*1。反応を集める仕組みは、この流れを支える要素になります。

セグメント配信——部署・属性ごとに届け分ける

全社に同じ情報を一律で流すだけでは、自分に関係のない記事が増え、かえって読まれなくなることもあります。そこで有効なのが、部署・拠点・職種・雇用区分といった属性ごとに配信先を絞るセグメント配信です。全社共通の周知事項は全員へ、部門固有の連絡はその部署へ、というように届け分けられると、読者が受け取る情報の密度が上がります。誰にどの情報を届けるかを設計できることは、閲覧率の底上げにもつながるでしょう。

効果測定——閲覧率などの指標で見直す

配信・既読・セグメントで得たデータがたまると、記事ごと・セグメントごとの閲覧率が見えてきます。どの部署に届いていないのか、どんなテーマが読まれているのかが分かれば、次の発信を根拠づけて改善できます。産業編集センターの調査で示されたWeb社内報の閲覧率4割前後という水準は、裏を返せば測って見直す余地が大きいことを意味します*2。効果測定は、社内報の運用を勘や慣習から、データに基づく改善サイクルへと切り替える要になる要素です。なお、ここでいう閲覧率などの指標は組織や測定方法によって幅があるため、自社の定義をそろえて継続的に見ていくことが前提になります。

開発を外注する前に確認したい点——配信チャネル・測定指標・既存基盤連携

社内報システムを自社向けに開発して外部委託する場合、既製のサービスをそのまま使うのとは違い、自社のグループウェアや権限体系、運用ルールに合わせて作り込める利点があります。一方で、要件のすり合わせが甘いと、作ったものの読まれず定着しない、という結果になりかねません。委託前に確認しておきたい点は、次の3点です。

第一に、配信チャネルの範囲です。Web・アプリ・メールのうちどこまでを対象にするのか、アプリを用意するならプッシュ通知をどう扱うのかを最初に決めます。読者の勤務形態が多様なほど、チャネルの設計は開発の工数に直結する部分です*3。全員に同じ経路を強いるのではなく、読まれる経路を選べる余地を残しておくとよいでしょう。

第二に、効果測定の指標と範囲です。既読をどの単位で記録するのか、閲覧率をどう定義するのか、セグメントごとの集計をどこまで出せるのかを、要件定義の段階ですり合わせておきます。測定の設計を後回しにすると、配信はできても改善につながらない、という状態に陥りがちです。指標の定義を委託先と共有しておくことが、運用開始後のズレを抑える助けになります。

第三に、既存基盤との連携とデータ・権限の設計です。社員名簿や人事情報とどう連携してセグメントを組むのか、既存のグループウェアやシングルサインオンとどうつなぐのか、部署・拠点ごとに編集・配信の権限をどう分けるのかを詰めておきましょう。総務省の白書でも、テレワーク下のコミュニケーション不足を補うため、多くの企業が業務用のICTツールを併用している状況が示されています( https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/html/nd21b220.html )。既存のツール群と無理なくつながるかどうかは、定着を左右する要素です。

加えて、委託範囲を要件定義から設計・構築、運用・保守までのどこまでとするかを明確にし、元請(プライムベンダー)として一貫して担える体制かどうかを見極めることが、外注先選びの実質的な分かれ目になります。配信チャネルや連携先が増えるほど、障害時の切り分けや改善対応を任せられるパートナーの価値は高まるものです。

まとめ:社内報システムの要件で押さえる3つの視点

本稿では、社内報システムの要件を、配信・既読・エンゲージメント測定の観点から整理しました。要点は次の3つです。第一に、社内報システムは社内向け記事を配信し、既読やリアクションを可視化して、セグメント配信や閲覧率の測定までを担うインナーコミュニケーションの運用基盤であり、サイトを構築するCMSや情報を探すエンタープライズ検索とは役割が異なります。第二に、機能要素は配信チャネル・既読/リアクション・セグメント配信・効果測定の4つで、産業編集センターの調査が示したWeb社内報の閲覧率4割前後という水準は、測って見直す余地の大きさを物語ります*2。第三に、外注にあたっては配信チャネルの範囲、効果測定の指標、既存基盤との連携と権限設計をどこまで担えるかが、システムと委託先の見極めどころになります。自社のインナーコミュニケーションの実態を棚卸ししたうえで、必要な要素に優先順位を付けて検討することをおすすめします。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、業務システムの開発・保守を元請(プライムベンダー)として受託しています。社内報・インナーコミュニケーション基盤についても、Web・アプリ・メールへの配信設計、既読やリアクションの可視化、人事情報と連携したセグメント配信、閲覧率など効果測定の作り込み、既存グループウェアやシングルサインオンとの連携までを一貫して支援できる体制を整えています。既存の運用を活かしながら内製と外注の切り分けを検討したい企業様は、現状の整理からご相談いただけます。

よくある質問

社内報システムと、Webサイトを作るCMSは何が違いますか。

CMSはWebサイトやコンテンツの構造を管理して公開する仕組みが中心で、利用者が能動的に閲覧・検索する場面を支えます。社内報システムは、組織側から社内向け記事を配信し、既読やリアクション、セグメント配信、閲覧率の測定までを担うインナーコミュニケーションの運用基盤です。情報を「読まれたか」を測る点に主眼があり、役割が異なります。

メールの一斉送信やグループウェアの掲示板では足りないのでしょうか。

周知事項を流すだけであれば既存の手段でも対応できます。ただし、誰にどこまで読まれたかを把握したい、部署や属性ごとに届け分けたい、閲覧率をもとに改善したい、という段階になると、既読やセグメント配信、効果測定の機能が手薄になりがちです。産業編集センターの調査ではWeb社内報の閲覧率のボリュームゾーンが4割とされており*2、読まれたかを測って見直す仕組みを補う意義が出てきます。

セグメント配信とは具体的にどういう機能ですか。

部署・拠点・職種・雇用区分といった属性ごとに、配信先を絞り込んで記事を届ける機能です。全社共通の周知事項は全員へ、部門固有の連絡はその部署へ、と届け分けることで、読者が受け取る情報の密度を高められます。人事情報や社員名簿と連携して属性を管理すると、配信先の設定を運用に乗せやすくなります。

エンゲージメントの測定では何を見ればよいですか。

記事ごと・セグメントごとの閲覧率や既読率、リアクションやコメントの数などが基本の指標になります。どの部署に届いていないか、どんなテーマが読まれているかが見えると、次の発信を根拠づけて見直せるでしょう。閲覧率などの指標は組織や測定方法によって幅があるため、自社での定義をそろえ、継続して同じ基準で見ていくことが前提になります。

社内報システムの開発を外部に委託する場合、何を確認すればよいですか。

Web・アプリ・メールのうちどこまでを対象にするかという配信チャネルの範囲、既読の記録単位や閲覧率の定義といった効果測定の指標、人事情報やグループウェア・シングルサインオンとの連携と権限設計をまず確認します。あわせて委託範囲を要件定義から運用・保守までどこまでとするかを明確にすると、導入後の定着につながります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:株式会社ソフィア「インターナルコミュニケーションとは?目的・施策・成功事例を徹底解説」(同社インターナルコミュニケーション実態調査/従業員1,000人以上の企業に勤める496名を対象)(https://www.sofia-inc.com/blog/4776.html
  2. *2 出典:株式会社産業編集センター「Web社内報の閲覧率、“4割の壁”」(インターナルコミュニケーションに関する調査/回答155社・2022年11月〜2023年1月)(https://www.shc.co.jp/column/6217/
  3. *3 出典:ウィズワークス株式会社「社内報白書2023」解説(社内報ナビ/有効回答277社・2023年8月)(https://shanaiho-navi.jp/archives/30200/
  4. *4 出典:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析(労働経済白書)」( https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/19-2.html )
  5. *5 出典:総務省「令和6年版 情報通信白書」テレワーク・オンライン会議(通信利用動向調査)( https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/html/nd21b220.html )


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