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2026.07.24 らしくコラム

高年齢者雇用安定法と70歳就業確保への対応

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

高年齢者の就業のイメージ

この記事のポイント

  • 高年齢者雇用安定法は、65歳までの「雇用確保」を義務、70歳までの「就業確保」を努力義務と定めており、対応すべき水準が年齢で異なります。
  • 継続雇用制度を導入する場合、65歳までは原則として希望者全員が対象となり、対象者を労使協定で限定できた旧仕組みは廃止されています。
  • 対象者の年齢・適用制度・同意手続きを従業員数分だけ正確に記録し続ける体制づくりが、実務上の負担になりやすい領域です。

高年齢者雇用安定法とは?本記事で扱うテーマの範囲

雇用制度管理のイメージ

高年齢者雇用安定法(正式名称:高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)は、少子高齢化により労働力人口が減少するなか、働く意欲のある高年齢者が能力を発揮できる環境を整備する目的で定められた法律です*1。企業規模を問わず、65歳までの雇用確保と70歳までの就業機会確保という2つの階層で対応が求められる点が特徴です。

本記事は、この高年齢者雇用安定法に基づく「65歳までの雇用確保義務」と「70歳までの就業確保措置」への対応、および対象者・処遇の記録を仕組み化するテーマを扱います。当サイトで別途扱う障害者雇用(法定雇用率)や勤怠管理とは、根拠法令も管理すべき対象も異なりますので、あらかじめご了承ください。

人事・労務担当者にとってこの法律が悩ましいのは、単なる定年年齢の変更にとどまらず、対象者ごとに適用される制度が枝分かれし、それぞれに異なる手続きと記録が伴う点にあります。従業員数が数十名程度であれば個別対応も可能ですが、数百名規模の企業や、拠点・雇用形態が多岐にわたる企業では、誰にどの制度を適用し、いつ何を記録したかを正確に追跡する体制そのものが課題になりやすい領域と言えるでしょう。

図

厚生労働省が毎年公表する「高年齢者雇用状況等報告」の令和7年集計では、65歳までの雇用確保措置を実施済みの企業は99.9%に達している一方、70歳までの就業確保措置を実施済みの企業は34.8%にとどまっています*5。義務と努力義務という法的な位置づけの違いが、そのまま企業の対応率の差につながっていると言えるでしょう。

65歳までの「高年齢者雇用確保措置」——義務となる3つの選択肢

高年齢者雇用安定法は、事業主に対し次の3つのいずれかを講じるよう義務づけています*2

  • 定年制の廃止——定年そのものをなくす対応です。
  • 65歳までの定年の引き上げ——定年年齢を65歳まで引き上げる対応です。
  • 希望者全員を対象とする65歳までの継続雇用制度の導入——定年後、本人が希望すれば65歳まで雇用を継続する対応です*2

この義務は経過措置を経て、2025年4月1日以降は全面的な適用となりました*2。厚生労働省の集計によると、対応の内訳は「継続雇用制度の導入」が65.1%と最も多く、「定年の引き上げ」が31.0%で続きます*5。継続雇用制度を選ぶ企業が多数派である以上、その運用ルールを正確に把握しておく必要があるでしょう。

継続雇用制度は、かつて労使協定によって対象者を限定できる仕組みがありましたが、この仕組みは廃止されています*3。現在は原則として希望者全員が対象であり、心身の故障で業務に堪えられない、勤務状況が著しく不良であるなど、就業規則に定める解雇事由・退職事由に該当する場合に限り、継続雇用しないことができるとされています*3。「会社が必要と認めた者のみ」といった曖昧な基準で対象者を絞り込む運用は、この趣旨に沿わない点に注意が必要です。定年の引き上げや定年制の廃止を選ぶ場合も、就業規則の改定内容が全従業員に一律で適用されるため、対象者ごとに例外的な扱いが必要になる場面がないか、あらかじめ運用ルールを整理しておくことが望ましいでしょう。

70歳までの「高年齢者就業確保措置」——努力義務としての5つの選択肢

2021年4月1日の改正施行により、事業主には70歳までの就業機会を確保する努力義務が新たに課されました*4。65歳までの雇用確保義務とは異なり、次の5つの選択肢から自社の実情に応じた措置を選ぶ形になります*4

  • 70歳までの定年引き上げ
  • 定年制の廃止
  • 70歳までの継続雇用制度の導入(自社のほか、特殊関係事業主での継続雇用を含みます)
  • 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入(創業支援等措置)
  • 70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入(創業支援等措置)

努力義務であるため罰則はなく、どの措置をどのような対象者に講じるかは、労使間で十分に協議したうえで、個々の企業の実情に応じて定めるものとされています*4。65歳までの継続雇用制度とは異なり、70歳までの就業確保措置では対象者基準を設けることも認められていますが、基準には具体性と客観性が求められ、「会社が必要と認めた者」や「上司の推薦」のみといった判断基準のみでは不適切とされています*4

5つの選択肢は、大きく「雇用による措置」と「雇用によらない措置」に分かれます。定年引上げ・定年廃止・継続雇用制度(自社のほか、資本関係等がある特殊関係事業主での継続雇用を含みます)は雇用契約が続く形ですが、業務委託契約や社会貢献事業への従事は雇用契約そのものを終了し、契約形態を切り替える点で性質が異なります*4。社会保険の適用や労働時間管理の要否も雇用の有無によって変わるため、どの措置を選ぶかによって記録すべき項目自体が変わることを押さえておく必要があるでしょう。

業務委託契約の締結や社会貢献事業への従事といった、雇用によらない措置(創業支援等措置)を導入する場合は、実施計画を作成し、過半数労働組合等の同意を得たうえで労働者に周知することが必要です*4。実施計画には、従事する業務の内容・支払う金銭・契約の頻度・安全衛生の確保といった項目を記載する必要があるとされています*4。各措置の対象業務の範囲や契約条件の詳細な要件は個社の実情によって変わるため、制度設計にあたっては厚生労働省の公式情報や専門家への確認をあわせて行うことをおすすめします。

継続雇用制度の設計と就業規則への反映

定年の変更や継続雇用制度の導入・変更は、就業規則の「退職に関する事項」として記載し、所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります*4。65歳までの雇用確保義務と70歳までの就業確保措置とでは、義務のレベル・対象者基準の設け方・必要な手続きが異なるため、次の表で要点を整理します。

比較項目 65歳までの雇用確保措置 70歳までの就業確保措置
法的な位置づけ 義務(2025年4月1日以降、経過措置終了で全面適用)*2 努力義務(罰則なし)*4
選択肢の数 3つ(定年廃止・定年引上げ・継続雇用制度)*2 5つ(雇用による3措置に加え、業務委託・社会貢献事業の2措置)*4
対象者基準 継続雇用制度は原則希望者全員。労使協定による限定は廃止*3 対象者基準を設定可能。ただし具体性・客観性が必要*4
必要な手続き 就業規則への記載・労基署届出*4 創業支援等措置は実施計画の作成・過半数労組等の同意・周知が必要*4

この表からも分かるとおり、70歳までの就業確保措置は選択の自由度が高い一方、雇用によらない措置を選ぶ場合は実施計画という別の書類管理が発生します。65歳までの対応と70歳までの対応を同じ台帳で管理しようとすると、必要な手続きの違いを見落とすリスクが生じやすい点には注意が必要です。

就業規則や労使協定は、一度整備して終わりではなく、法改正や運用見直しに応じて改定を重ねていくものです。改定履歴と適用開始日を紐づけて管理していないと、ある従業員にどの時点でどの版の基準を適用していたかを、後から正確に説明できなくなるおそれがあります。労働基準監督署への説明や社内監査の場面で、旧版の規程のまま運用を続けていたことが判明するケースは、書面管理だけに頼る企業で起こりやすい失敗と言えるでしょう。

対象者・処遇の記録管理をどう仕組み化するか

ここまで見てきたとおり、高年齢者雇用安定法への対応は、年齢と制度の組み合わせによって必要な手続きが枝分かれします。対象となる従業員が数名程度であれば台帳や表計算ソフトでも管理できますが、従業員数が増えるほど、次のような課題が顕在化しやすくなります。

システム化の要件 具体的な内容 未整備の場合に想定されるリスク
対象者リストと年齢管理 全社員の生年月日・雇用形態を一元化し、65歳・70歳到達時期を自動的に検知できる状態にします。 対応時期を個別に見落とし、制度適用の判断や書面手続きが遅れます。
制度別の適用管理 部門・雇用形態ごとに適用する措置(定年引上げ・継続雇用・創業支援等)を従業員単位で紐づけて管理します。 誰にどの制度が適用されているか把握できず、適用漏れや二重運用が生じます。
就業規則・協定・実施計画の版管理 改定履歴と適用開始日を記録し、旧版との整合をいつでも確認できる状態を保持します。 監督署への説明や監査対応で、どの時点にどの基準を適用していたか証明できなくなります。
記録・証跡の保存 継続雇用の同意書、創業支援等措置の実施計画、労使協定の締結記録、報告書の提出履歴を保存します。 高年齢者雇用状況等報告の作成時に、該当書類を都度探し直す手間が発生します。

常時雇用する労働者が21人以上の事業主は、毎年6月1日時点の高年齢者の雇用状況を、高年齢者雇用安定法第52条に基づき厚生労働大臣(ハローワーク経由)へ報告する義務も負っています*5。この報告に正確に答えられるかどうかは、日頃の記録管理の精度に左右されます。対象者数が多い企業ほど、年齢管理・制度適用・記録保存を個別に手作業で追うことの負担は大きくなり、既存の人事システムと連携させた一元管理を検討する意義が高まると考えられます。

まとめ:高年齢者雇用安定法対応で押さえるべき3つの視点

本稿では、高年齢者雇用安定法における65歳までの雇用確保義務と70歳までの就業確保措置について、厚生労働省の公式情報に基づいて整理しました。要点は次の3つに集約されます。第一に、65歳までは義務、70歳までは努力義務という法的な位置づけの違いにより、求められる対応の水準が異なります*2*4。第二に、対象者基準の設け方や必要な手続きは制度ごとに異なり、就業規則や実施計画への正確な反映が欠かせません*3*4。第三に、対象者が多人数・多制度にまたがるほど、年齢管理・制度別適用・記録保存を仕組み化する必要性が高まります*5。自社の対応状況を棚卸ししたうえで、記録管理の仕組みづくりを検討することをおすすめします。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、人事・労務領域のシステム開発を元請(プライムベンダー)として受託しています。高年齢者雇用安定法に対応した対象者管理・制度別適用管理・記録管理の要件整理から、既存の人事システムとの連携方式の検討まで一貫してご相談いただけます。多人数・多制度の管理に負担を感じている企業様は、まずは現状の管理方法の棚卸しからお問い合わせください。

よくある質問

65歳までの対応と70歳までの対応は何が違いますか。

65歳までは「高年齢者雇用確保措置」として、定年廃止・定年引き上げ・継続雇用制度導入のいずれかが義務です*2。70歳までは「高年齢者就業確保措置」として、これに業務委託契約・社会貢献事業を加えた5つの選択肢からの対応が努力義務とされています*4。義務か努力義務かという法的な位置づけの違いが、対応の必須度を分けています。

継続雇用制度の対象者を限定できますか。

65歳までの継続雇用制度は、労使協定で対象者を限定できた仕組みが廃止されており、原則として希望者全員が対象です。就業規則に定める解雇事由・退職事由に該当する場合に限り、継続雇用しないことができるとされています*3。70歳までの就業確保措置は努力義務であるため、具体性・客観性を備えた対象者基準を設けることも可能です*4

70歳までの就業確保措置に対応しないと罰則はありますか。

70歳までの就業確保措置は努力義務であり、対応しない場合の罰則は定められていません*4。ただし厚生労働省の集計では実施済み企業が34.8%まで増加しており*5、対応状況が採用力や企業評価に影響する場面も想定されるため、早めの検討が望ましいでしょう。

高年齢者雇用状況等報告とはどのような制度ですか。

常時雇用する労働者が21人以上の事業主が、毎年6月1日時点の高年齢者の雇用状況を、高年齢者雇用安定法第52条に基づき厚生労働大臣へ報告する制度です*5。令和7年の集計では、65歳までの雇用確保措置の実施率は99.9%、70歳までの就業確保措置の実施率は34.8%となっています*5

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:e-Gov法令検索「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(https://laws.e-gov.go.jp/law/346AC0000000068
  2. *2 出典:厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~『継続雇用制度』の対象者を労使協定で限定できる仕組みの廃止~」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koureisha/topics/tp120903-1.html
  3. *3 出典:厚生労働省「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koureisha/topics/newpage_55003.html
  4. *4 出典:厚生労働省・高年齢者雇用安定法特設サイト「Q&A集 高年齢者就業確保措置関係」(https://www.kourei-koyou.mhlw.go.jp/qa02.html
  5. *5 出典:厚生労働省「令和7年『高年齢者雇用状況等報告』の集計結果を公表します」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66853.html


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