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LMS(学習管理システム)開発を外注する方法
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム開発・保守を受託
この記事のポイント
- LMS(学習管理システム)は教材配信・受講管理・テスト採点・修了証発行をひとつにまとめる仕組みで、SCORMやxAPIといった標準規格への対応が教材資産の使い回しやすさを左右します。
- SCORMはADL(Advanced Distributed Learning)が策定したモデルで、xAPIはIEEE 9274.1.1-2023として標準化された仕様です。
- 既製LMSとスクラッチ開発では初期費用・カスタマイズ範囲・運用負荷の前提が変わるため、社内研修か顧客/パートナー教育かという用途の見極めが検討の出発点になります。
目次
LMS(学習管理システム)とは——教材配信から修了証発行までを担う仕組み
LMS(Learning Management System。学習管理システム)とは、eラーニング教材の配信、受講者の進捗管理、テストの採点、修了証の発行までを一つのシステムでまかなう仕組みを指します。社員教育や研修、コンプライアンス教育をオンライン化する際の中核となる基盤です。
具体的な機能としては、動画やスライドなどの教材コンテンツ配信、受講者ごとの進捗・受講履歴の記録、確認テストの採点、合格者への修了証発行、部門・拠点単位での受講状況レポートが挙げられます。加えて、スマートフォンやタブレットからの受講に対応するモバイル対応も、現場の教育担当者からよく求められる機能です。
これらの機能をどこまで自社で構築し、どこから外部の専門パートナーに委ねるかは、教育対象の規模や既存システムとの連携範囲によって変わってきます。次章では、LMSの教材資産を長く使い回すうえで押さえておきたい標準規格を整理します。
SCORM・xAPIとは——教材の互換性を支える標準規格
LMSを新規に構築する、あるいは乗り換える際に重要になるのが、教材コンテンツの標準規格対応です。標準規格に沿った教材であれば、LMSを切り替えても既存の教材資産を再利用しやすくなります。
SCORM(Sharable Content Object Reference Model)は、米国国防総省傘下のADL(Advanced Distributed Learning)が策定したモデルで、教材コンテンツをLMS間で共有・再利用できるよう、パッケージング方式とランタイム通信の仕様を定めています*1。教材の起動情報などをまとめたimsmanifestというXML文書と、LMSと教材が進捗データをやり取りするget/set形式の通信が、その中核です*1。バージョンはSCORM 1.2とSCORM 2004があり、2004ではシーケンシングとナビゲーションの仕様が拡張されています*1。
xAPI(Experience API)は、SCORMより後発の学習技術仕様で、学習者の活動と経験に関する通信を「主語・動詞・目的語」に近い形式で記録できるようにしたものです*3。SCORMがLMS内での受講記録を主な対象としていたのに対し、xAPIはモバイル学習やシミュレーション、対面研修の記録なども扱える点が特徴です*2。xAPIは2023年、IEEE 9274.1.1-2023として標準化されています*2。
このほか、1EdTech(旧IMS Global)もLMSに関わる標準規格を複数策定しています。学習プラットフォームと外部ツールを連携させるLTI(Learning Tools Interoperability)、テストや設問データの交換を担うQTI(Question & Test Interoperability)、学習コンテンツと評価をパッケージ化して交換するCommon Cartridgeなどが該当します*4。テスト・採点機能を持つLMSを検討する場合は、QTI対応の有無も確認材料になります。
これらの標準規格にどこまで対応させるかは、既存の教材資産の量や、将来的な他システムとの連携計画によって判断が分かれます。標準規格への理解が不足したまま設計を進めると、後から教材の移行や外部ツール連携で手戻りが発生しやすくなります。
社内研修向けLMSと顧客/パートナー向け教育の違い
LMSは利用対象によって求められる機能の重心が変わります。社員向けの研修やコンプライアンス教育では、部門・役職ごとの受講割り当て、未受講者へのリマインド、監査対応のための受講履歴の証跡管理が重視される傾向にあります。人事・教育担当が受講状況を一元的に把握できることが、社内研修向けLMSの実務上の要点です。
一方、顧客やパートナー企業向けの教育プログラムでは、対象者が自社の従業員ではないため、アカウント管理の設計が異なります。企業単位でのグループ管理、外部ドメインでのログイン、受講データを自社の顧客管理システムと連携させる仕組みなどが必要になる場面も出てくるでしょう。マーケティング施策の一環として教育コンテンツを提供する場合は、受講後のアンケートや問い合わせ導線の設計も検討事項に加わります。
同じLMSという括りでも、社内利用と社外利用では要件がかなり異なるため、企画段階でどちらを主眼に置くかを明確にしておくことが、後工程の手戻りを減らすことにつながります。
タレントマネジメントシステムとの連携で人材データをつなぐ
LMSは単体で使われるだけでなく、タレントマネジメントシステム(人材の評価・配置・育成計画を管理するシステム)と連携させるケースが増えています。受講履歴やテスト結果をタレントマネジメント側の人材データベースに反映させることで、研修の受講状況と評価・キャリア開発の情報を紐づけて確認できるようになります。
連携の実装方式は、CSV等によるバッチ連携、API連携、SSO(シングルサインオン)による認証連携など複数の選択肢があります。どの方式を選ぶかは、既存のタレントマネジメントシステムが提供する連携インターフェースの仕様に依存します。連携範囲を広げるほど設計・テストの工数は増えるため、どのデータをどの頻度で連携させる必要があるかを、企画段階で洗い出しておくことが実務上のポイントです。
既製LMS(パッケージ)とスクラッチ開発——どちらを選ぶか
LMSの導入方式は、大きく既製LMS(パッケージ製品やSaaS)の利用と、スクラッチ(独自開発)の二つに分かれます。両者は初期費用、カスタマイズできる範囲、運用の負荷という点で前提が異なります。
| 観点 | 既製LMS(パッケージ/SaaS) | スクラッチ開発 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 比較的抑えやすい | 設計・開発の工数分がかかる |
| カスタマイズ範囲 | 製品の仕様範囲内に限られる | 要件に合わせて自由度が高い |
| 既存システム連携 | 提供されるAPI・連携機能に依存 | 既存システムに合わせて設計できる |
| 標準規格対応 | 製品によりSCORM/xAPI対応状況が異なる | 対応範囲を要件として定義する必要がある |
| 運用・保守 | ベンダー側での保守が中心 | 自社または委託先での保守体制が必要 |
社内研修が中心で、標準的な機能で足りる場合は既製LMSの利用がまず検討対象になります。一方、顧客/パートナー向け教育や、既存の人事システム・タレントマネジメントシステムとの独自連携が多い場合は、スクラッチ開発、あるいは既製LMSをベースにアドオン開発を加える方式が選択肢に入ります。どちらを選ぶにしても、標準規格への対応状況は製品選定・要件定義の段階で確認しておく事項です。
LMS開発とコンテンツ制作は別工程として考える
LMSの導入を検討する際に混同されやすいのが、システムとしてのLMS開発と、教材コンテンツの制作です。LMSは教材を配信・管理する箱であり、動画やスライド、テスト問題といった教材そのものの制作は、別の専門領域になります。
教材制作を内製で進める企業もあれば、動画制作会社やeラーニングコンテンツ専門の制作会社に委託する企業もあります。LMSの開発を依頼する委託先が、教材制作まで一括して請け負えるとは限りません。見積もりや提案を比較する際は、LMSというシステム部分の開発範囲と、教材コンテンツの制作範囲が、どこまで含まれているのかを分けて確認することが必要です。
導入の進め方——要件整理から本稼働までの流れ
LMS導入は、要件整理、標準規格・連携方式の選定、既製LMSかスクラッチかの方式決定、PoC(概念実証)や試験運用、本稼働という流れで進めるのが一般的です。
最初の要件整理では、対象者(社員か、顧客/パートナーか)、必要な機能(受講管理・テスト・修了証・レポートのどこまでか)、既存システムとの連携範囲を洗い出します。続いて、教材資産の標準規格対応やタレントマネジメントシステムとの連携方式を検討し、既製LMSの導入かスクラッチ開発かを決めます。
方式が固まったら、一部の部門や少人数を対象にした試験運用を経て、問題がなければ全社展開に移ります。試験運用の段階で、モバイル端末からの受講やSCORM教材の再生といった、実際の利用シーンに近い形での動作確認を行っておくと、本稼働後のトラブルを抑えやすくなります。
内製と外注の分かれ目——体制と標準規格の知見で判断する
LMS開発を内製で担うか外注するかは、社内にどれだけの開発体制と標準規格の知見があるかによって分かれます。SCORM/xAPIといった標準規格への対応、タレントマネジメントシステムとのAPI連携、既存の認証基盤とのSSO連携など、複数領域の技術知見が必要になる場面が多いためです。
外部の専門パートナーに委託する場合は、要件整理からシステム設計、標準規格対応、既存システム連携、本稼働後の保守運用までを一貫して依頼できるかどうかが選定の分かれ目になります。教材コンテンツ制作を別途手配する必要がある場合は、その連携範囲もあわせて確認しておくと、後工程での認識齟齬を防ぎやすくなります。
。対象者の規模や既存システムとの連携範囲によって必要な工数は変わってくるため、現状の要件を整理したうえで、内製・外注の切り分けを検討することが実務的です。
まとめ:LMS開発を外注で進める3つの判断軸
本稿ではLMS(学習管理システム)の機能と標準規格、導入の進め方を整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、LMSは教材配信・受講管理・テスト採点・修了証発行・レポートを担う仕組みであり、SCORMやxAPIといった標準規格への対応が教材資産の使い回しやすさを左右します*1*2。第二に、社内研修向けか顧客/パートナー向け教育かという用途の違いによって、アカウント管理や連携の要件が変わります。第三に、既製LMSとスクラッチ開発では初期費用・カスタマイズ範囲・運用負荷の前提が異なり、標準規格への対応状況と併せて確認しておく必要があります。
よくある質問
LMSとeラーニングシステムは同じものですか。
eラーニングは学習の形態そのものを指す言葉で、LMSはそのeラーニングを配信・管理するためのシステムを指します。教材の配信や受講管理、テスト採点、修了証発行といった機能をまとめたシステムがLMSにあたり、eラーニングを実施する際の基盤として使われます。
SCORMとxAPIはどちらを選べばよいですか。
既存の教材資産がSCORM形式で蓄積されている場合や、標準的なLMS内での受講管理が中心の場合はSCORM対応で足りることが多くあります*1。モバイル学習や対面研修の記録など、LMSの外での学習経験も記録したい場合はxAPI対応を検討する必要があります*2。既存教材の形式と、今後の活用範囲の両方から判断することになります。
既製LMSとスクラッチ開発は途中で乗り換えられますか。
教材がSCORMやxAPIなど標準規格に沿って作られていれば、LMSを乗り換える際も教材資産を再利用しやすくなります*1*3。一方で、独自仕様の連携機能やレポート機能まで作り込んでいる場合は、乗り換え時に改めて設計・開発が必要になる場合があります。
顧客/パートナー向け教育に既存の社内LMSをそのまま使えますか。
社内向けLMSは自社の従業員を前提としたアカウント管理になっていることが多く、外部の企業や個人を対象にする場合はアカウント管理や認証方式の設計を見直す必要があります。企業単位でのグループ管理や外部ドメインでのログインなど、社外向け特有の要件を洗い出したうえで判断することになります。
LMS開発を外注する場合、何を確認すればよいですか。
対象者(社員か、顧客/パートナーか)、必要な機能の範囲、既存の人事・タレントマネジメントシステムとの連携方式、SCORM/xAPIなど標準規格への対応状況をまず整理します。教材コンテンツの制作を別途手配するかどうかもあわせて確認し、委託先の対応範囲とすり合わせておくことが大切です。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:SCORM.com(Rustici Software)「What is SCORM?」(https://scorm.com/scorm-explained/)
- *2 出典:xAPI.com「What is xAPI」(https://xapi.com/overview/)
- *3 出典:ADL「xAPI-Spec」(GitHubリポジトリ)(https://github.com/adlnet/xAPI-Spec)
- *4 出典:1EdTech「Standards」(https://www.1edtech.org/standards/details)