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2026.07.13 らしくコラム

設備保全管理システム(CMMS)の外注の進め方

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム開発・保守・運用を受託

設備保全のイメージ

設備の故障による突発的なダウンタイムは、生産や施設運営の損失に直結します。設備保全管理システム(CMMS)は、設備台帳や保全計画、作業指示、保全記録、部品在庫を一つの仕組みにまとめ、紙やスプレッドシートに散らばりがちな保全情報を統合するためのソフトウェアです。本稿では、CMMSの機能と保全方式の違いを公的規格をもとに整理し、新規開発や刷新を外注する際の判断軸と確認点を、設備管理・IT・経営の各レイヤーに向けて解説します。

この記事のポイント

  • CMMSは設備台帳・保全計画・作業指示・保全記録・部品在庫などを一元管理するソフトウェアで、保全業務の効率化と設備の状態把握を支えます。
  • 保全はJIS Z 8141で事後保全と予防保全に分類され、予防保全はさらに時間計画保全(TBM)と状態基準保全(CBM)に分かれます。予知保全は状態基準保全に位置づけられています。
  • 外注では現場のモバイル・オフライン対応、既存の生産管理やIoT基盤との連携、設備階層マスタの柔軟性が判断材料になります。

設備保全管理システム(CMMS)とは、保全業務を一元管理する仕組み

点検作業のイメージ

設備保全管理システム(CMMS。Computerized Maintenance Management System)とは、組織の保全作業に関する情報をコンピューターのデータベースで維持するソフトウェアパッケージを指します*3。設備の台帳、予防保全の計画、作業指示、保全記録、部品や予備品の在庫といった情報を一つの基盤に集約し、保全担当者の作業効率化と管理者の意思決定を支える点が中核です*3

そもそも設備保全とは何か。JIS Z 8141:2022(生産管理用語)は保全を、設備性能を維持するために設備の劣化防止・劣化測定・劣化回復の諸機能を担う、日常的または定期的な計画・点検・検査・調整・修理・取替えなどの諸活動の総称と定義しています*1。CMMSは、この一連の活動をデジタルに支える道具立てだといえます。

図
図:CMMSが支える保全サイクル(設備台帳→保全計画→作業指示→保全記録→KPI分析→計画へ反映)

紙の点検表やスプレッドシートによる管理では、故障履歴が個人の手元に分散し、どの設備がいつ止まったのかを横断的に振り返りづらくなりがちです。CMMSはこれらを一つのデータベースに集約するため、設備ごとの保全実績を後から分析へつなげられます。次章では、この土台の上で運用される保全方式の違いを整理します。

予防保全・事後保全・予知保全——CMMSが支える保全方式の違い

保全方式の違いを押さえておくと、CMMSに求める機能の輪郭が見えてきます。JIS Z 8141:2022は、保全を大きく事後保全と予防保全に分類しています*1

事後保全——故障を検出してから修復する方式

事後保全は、フォールト(故障)の検出後に、アイテムを要求どおりの実行状態へ修復させるために行う保全と定義されています*1。壊れてから直す進め方であり、突発的な停止と修復コストの読みにくさが課題になりがちです。CMMS上では、故障・停止の記録と作業指示の履歴として蓄積される領域にあたります。

予防保全——劣化を見越して先手を打つ方式

予防保全は、アイテムの劣化の影響を緩和し、かつ故障の発生確率を低減するために行う保全と定義されます*1。予防保全はさらに、時間計画保全(TBM)と状態基準保全(CBM)に分かれます*1。TBMは、時間や生産数といったあらかじめ決めた基準で点検や部品交換を実施する進め方です。一方のCBMは、設備の状態を監視し、あらかじめ定めたしきい値を外れたタイミングで手を打ちます。CMMSは、このTBMの周期管理と、点検チェックリストの運用を担う中心的な役割を果たします。

予知保全——劣化傾向から最適な時期を見極める方式

予知保全は、設備の劣化傾向を設備診断技術などによって管理し、故障に至る前の最適な時期に対策を行う方法で、JISでは状態基準保全とも呼ばれます*1。近年はIoTセンサーで取得した温度・振動・電流などのデータを分析し、故障の予兆を検知する取り組みが広がってきました。経済産業省は、産業保安分野でセンサーやAIを活用して異常検知や予知保全を高度化する「スマート保安」を推進しています(経済産業省 産業保安グループ「スマート保安先進事例集」令和4年4月)。一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)も、予知保全技術の動向を継続的に調査しています*4

ここで注意したいのは、CMMS単体が予知保全そのものを実行するわけではない点です。IoTのセンサーデータと、CMMSに蓄積された保全履歴を組み合わせることで、どのような予兆の後にどのような故障が起きたのかを分析できるようになります。CMMSは予知保全の土台として機能する、と捉えると役割を整理しやすいでしょう。

CMMSの主要機能——設備台帳・作業指示・部品在庫・保全KPI

CMMSに求められる機能は、設備台帳、予防保全計画、作業指示、保全記録、部品や予備品の在庫管理、資産管理などに整理されます*3。それぞれがどのように保全業務を支えるのかを見ていきます。

設備台帳(設備階層マスタ)は、CMMSの基礎になるデータです。工場・ライン・設備・ユニット・部品といった階層で設備を登録し、型式や設置年、保全区分などの属性を紐づけます。この階層構造が実態と合っていないと、後段の計画や記録の精度が落ちてしまいます。

保全計画と作業指示は、予防保全の周期に沿って点検や交換の予定を生成し、担当者へ作業指示(ワークオーダー)として展開する機能です。作業指示には点検チェックリストや必要な部品が紐づき、実施後は保全記録として結果が戻ります。

故障・停止管理と部品在庫は、事後保全の記録と、修理に使う予備品の在庫を結びつけます。どの部品がどの設備でどれだけ消費されたかを追えると、欠品による復旧の遅れを抑えやすくなるでしょう。法定点検の管理機能を備え、点検期限を漏らさない運用を支えるCMMSもあります。

保全KPIの可視化では、信頼性の指標を活用します。JIS Z 8115:2019(ディペンダビリティ用語)は、MTBF(平均故障間動作時間。故障間動作時間の期待値)とMTTR(平均修復時間。修復時間の期待値)を定義しています*2。CMMSに蓄積した故障・修復の記録からこれらを算出すれば、故障が頻発する設備や修復に時間がかかる設備を客観的に把握でき、限られた保全リソースの優先順位づけに役立ちます。

生産管理・在庫管理・IoT基盤との違いと連携の考え方

CMMSは単独で完結するものではなく、隣接するシステムとの役割分担を整理しておく必要があります。混同されやすいのが、生産管理システムや在庫管理システム、そしてIoT基盤との境界です。

生産管理システムは、生産計画や工程進捗、原価などモノづくりの流れを管理する仕組みです。設備が「いつ・どれだけ動くか」を扱う生産管理に対し、CMMSは設備を「いつ・どう保つか」を扱います。両者を連携させると、生産計画の空き時間に予防保全を割り当てるといった調整がしやすくなるでしょう。

在庫管理システムとの関係も整理が要ります。CMMSが扱うのは、あくまで保全に使う予備品や消耗品の在庫です。製品や原材料を扱う一般的な在庫管理システムとは対象が異なります。ただし発注や購買の仕組みは重なる部分があり、二重管理を避けるための連携設計が論点になります。

IoT基盤との関係は、前章で触れた予知保全に直結します。センサーが収集する稼働データやアラートを蓄積・処理するのがIoT基盤の役割で、CMMSはそのアラートを起点に作業指示を自動生成するといった連携が考えられるでしょう。役割を切り分けたうえで、どの範囲までCMMSに持たせるかを決めることが、開発の要件定義では欠かせません。

製造設備・ビル設備・インフラで変わる要件

設備修理のイメージ

ひとくちにCMMSといっても、対象となる設備の性質によって要件は変わります。自社の現場がどれに近いのかを見極めると、外注先へ伝えるべき要件が明確になります。

製造設備では、生産ラインの停止がそのまま生産の損失につながるため、TBMとCBMを組み合わせたきめ細かい計画保全と、生産管理との連携が重視されます。設備の種類が多く、設備階層マスタが複雑になりやすい点も特徴でしょう。

ビル設備(空調・給排水・電気・昇降機など)では、テナントや利用者への影響を抑える保全が中心になります。法定点検の管理や、複数拠点・多数設備を横断して管理する運用が求められる場面も多いでしょう。設備ごとの点検周期を漏れなく回す仕組みが軸になります。

インフラ設備(プラント・電力・上下水道など)では、停止が社会的影響に及ぶため、保安の観点が前面に出ます。経済産業省が推進するスマート保安のように、遠隔監視や予知保全による保安の高度化が政策的にも後押しされています(経済産業省 産業保安グループ「スマート保安先進事例集」令和4年4月)。保安にかかわる要件が厳しく、システムにも高い信頼性が要求されます。

パッケージCMMSとスクラッチ開発の判断軸

CMMSの導入では、既製のパッケージ製品を使うか、自社向けにスクラッチで開発するかという選択に直面します。どちらが適するかは、業務要件の標準からの距離で判断すると整理しやすくなります。

パッケージCMMSは、一般的な保全業務の型が作り込まれているため、導入までの期間を短縮しやすい選択肢です。保全業務が業界標準に近く、製品の機能に自社の運用を寄せられる場合に向いています。ただし、自社固有の設備階層や既存システムとの連携要件が強いと、カスタマイズ費用がかさむこともあります。

スクラッチ開発は、自社の設備構成や現場の運用フローに合わせて作り込める点が強みです。自社固有の設備階層マスタ、特殊な点検フロー、既存の生産管理やIoT基盤との密な連携が必要な場合に検討する価値があります。一方で、開発と保守の工数や期間は大きくなりがちで、要件定義の精度が成否を左右します。

現実には、パッケージを土台にしつつ連携部分やモバイル画面を個別開発する折衷案も選ばれます。まずは自社の保全業務のうち、標準に乗せられる部分と譲れない部分を切り分けることが出発点になるでしょう。この切り分けの精度が、後の外注範囲の判断に効いてきます。

外注時に確認すべき点——モバイル・既存連携・設備階層マスタ

CMMSの開発を外注する際は、一般的なシステム開発の確認事項に加えて、保全業務に固有の論点を委託先とすり合わせておく必要があります。ここでは特に見落としやすい3点を挙げます。

第一に、現場のモバイル・オフライン対応です。保全作業は工場の奥や屋外、地下の設備室など、通信環境が安定しない場所で行われることも珍しくありません。作業員がスマートフォンやタブレットで作業指示を確認し、点検結果やメーターの値をその場で入力できるか、通信が切れてもオフラインで記録し後から同期できるかは要確認です。この要件を軽視すると、結局は紙に戻ってしまう運用になりかねません。

第二に、既存の生産管理・IoT基盤との連携です。前章までで触れたとおり、CMMSは周辺システムとの役割分担が肝になります。連携するシステムのAPIやデータ形式、連携の頻度(リアルタイムか日次バッチか)を早い段階で洗い出し、委託先の対応範囲を契約前に明確にしておくことが望まれます。IoTのアラートを作業指示へつなぐ場合は、その処理をどちら側が担うのかも論点です。

第三に、設備階層マスタの柔軟性です。設備の増設や更新、組織変更に伴って、設備階層は運用の中で変化していきます。階層の追加や付け替えを管理者が画面から柔軟に行えるか、それとも改修を都度依頼する必要があるのかで、運用開始後の負担は大きく変わります。将来の設備構成の変化を見据えた設計になっているかを確認しておきたいところです。

委託先の選定では、これらを一貫して相談できるかが分かれ目になります。設備管理の業務理解、モバイル開発、既存システム連携の実績を、要件定義から運用まで通して任せられるかどうかを見極めるとよいでしょう。

まとめ:CMMS外注で押さえる3つの判断軸

本稿では、設備保全管理システム(CMMS)の機能と保全方式の違いを公的規格に沿って整理し、外注の進め方を解説してきました。要点は3つに集約できます。第一に、CMMSは設備台帳・保全計画・作業指示・保全記録・部品在庫を一元管理し、保全業務の効率化と設備状態の把握を支える土台です*3。予防保全のTBM・CBMを回し、IoTと組み合わせれば予知保全の基盤にもなります*1。第二に、生産管理・在庫管理・IoT基盤との役割分担を要件定義で切り分けることが、開発の前提になります。第三に、外注では現場のモバイル・オフライン対応、既存システムとの連携範囲、設備階層マスタの柔軟性という保全固有の3点を、契約前に委託先とすり合わせておくことが実務的です。自社の設備がどの類型に近いかを踏まえ、パッケージとスクラッチの切り分けから検討を始めることをおすすめします。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、業務システムの開発から保守・運用までを元請(プライムベンダー)として受託しています。設備保全業務のヒアリングと要件定義から、設備階層マスタの設計、現場向けモバイル画面の開発、既存の生産管理・IoT基盤との連携まで、一貫して対応する体制を整えています。パッケージとスクラッチの切り分けに迷う段階からご相談いただけます。

よくある質問

CMMSと予知保全システムは同じものですか。

同じではありません。CMMSは設備台帳や保全計画、作業指示、保全記録を一元管理するソフトウェアです*3。予知保全は、設備の劣化傾向から故障前の最適な時期に対策を行う方法を指します*1。IoTセンサーのデータとCMMSの保全履歴を組み合わせることで、CMMSは予知保全の土台として機能します。

パッケージ製品とスクラッチ開発は、どちらを選ぶべきですか。

保全業務が業界標準に近く、製品の機能に運用を寄せられるならパッケージが向いています。自社固有の設備階層や既存システムとの密な連携が必要な場合は、スクラッチ開発や折衷案を検討する価値があります。まずは標準に乗せられる部分と譲れない部分を切り分けることが出発点です。

CMMS導入で使われる保全のKPIには何がありますか。

代表的な指標がMTBF(平均故障間動作時間)とMTTR(平均修復時間)で、いずれもJIS Z 8115:2019で定義されています*2。CMMSに蓄積した故障・修復の記録から算出すると、故障が頻発する設備や復旧に時間がかかる設備を把握でき、保全リソースの優先順位づけに役立ちます。

既存の生産管理システムやIoT基盤と連携できますか。

連携するシステムのAPIやデータ形式、連携頻度(リアルタイムか日次バッチか)を洗い出したうえで設計すれば連携は可能です。生産計画の空き時間に予防保全を割り当てる、IoTのアラートから作業指示を自動生成するといった連携が考えられます。対応範囲は契約前に委託先と明確にしておくことが大切です。

CMMS開発を外注するとき、現場の使い勝手で確認すべき点は何ですか。

現場でのモバイル・オフライン対応が要点です。通信環境が不安定な設備室や屋外でも、作業指示の確認や点検結果の入力ができ、オフラインで記録して後から同期できるかを確認します。この対応が弱いと紙運用に戻りやすく、システムが定着しにくくなります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。

  1. *1 出典:日本産業規格「JIS Z 8141:2022 生産管理用語」(保全・予防保全・事後保全・時間計画保全・状態基準保全・予知保全の定義)(https://jis.eomec.com/jisz81412022/7
  2. *2 出典:日本産業規格「JIS Z 8115:2019 ディペンダビリティ(総合信頼性)用語」(MTBF・MTTR・可用性・保全性の定義)(https://kikakurui.com/z8/Z8115-2019-01.html
  3. *3 出典:ウィキペディア「CMMS(設備保全管理システム)」(定義・主要機能)(https://ja.wikipedia.org/wiki/CMMS
  4. *4 出典:一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)「予知保全技術に関する調査報告書 第3版」(2025年7月)(https://home.jeita.or.jp/indusys/
  5. *5 出典:経済産業省 産業保安グループ「スマート保安先進事例集」(令和4年4月)※発行元サイトの仕様により本文リンクは省略


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