LASSIC Media らしくメディア

2026.07.08 らしくコラム

電子処方箋の対応、医療機関のシステム開発を外注

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

医療機関の受付システム

この記事のポイント

  • 電子処方箋の対応とは、電子カルテやレセコンなどの既存システムを電子処方箋管理サービスに接続する開発を指します。
  • HPKIカードによる資格確認やリフィル処方箋への対応など、システム側で満たすべき要件が複数あります。
  • 改修範囲の広さや工数の見極めが、医療機関がシステム開発を内製するか外注するかの判断材料になります。

本稿では、電子処方箋への対応に特化してシステム開発の進め方を整理します。医療分野のシステム開発全般の外注については、別記事で詳しく解説しています。

電子処方箋の対応とは、医療機関のシステムを管理サービスに接続する取り組み

薬局のデジタル化

電子処方箋とは、オンライン資格確認等システムを拡張し、紙で行われていた処方箋の運用を電子で実施する仕組みです*1。医療機関や薬局がこれに対応するには、電子カルテ・レセコン(レセプトコンピュータ。診療報酬の請求データを作成するシステム)・薬局システムを電子処方箋管理サービスに接続する開発が必要になります*1*2

図
図:電子処方箋管理サービスを介した医療機関と薬局のシステム連携の流れ

電子処方箋管理サービスは支払基金・国保中央会が運営し、オンライン資格確認等システムを基盤としています*1*2。運用は2023年1月に始まり、政府は当初、2024年度末までに概ねすべての医療機関・薬局への導入を目指す方針を示していました*1

接続対応を検討する際は、自院・自社の既存システムがどの範囲まで電子処方箋管理サービスに対応済みかを、ベンダーへ確認することが最初の一歩になります。対応範囲は電子カルテ・レセコン・薬局システムのバージョンによって異なる場合があります。

2024年3月に9.3%だった導入率——薬局と医療機関の差を数字で見る

電子処方箋管理サービスの導入状況は、厚生労働省が施設ごとに公表しています*1。2024年3月31日時点で、オンライン資格確認を導入した医療機関・薬局のうち電子処方箋の運用を開始していた施設の割合は、全体で9.3%でした*1

施設種別で見ると差は大きく、同時点で病院1.4%、医科診療所2.2%、歯科診療所0.1%だったのに対し、薬局は29.4%に達していました*1。運用開始の当初から、薬局が先行する形で進んでいたことがうかがえます。

その後も対応は着実に広がっています。厚生労働省が公開する対応施設リストによれば、2026年5月時点で薬局の9割以上が電子処方箋に対応するまで拡大しました*3。施設ごとの最新の対応状況は、デジタル庁が公表するダッシュボードでも確認できます*4

医療機関側の対応が薬局より遅れやすいのは、電子カルテ・レセコンのベンダーやシステム構成が施設ごとに異なり、改修対象の組み合わせが複雑になりやすいためです。薬局システムに比べて、既存システムの改修範囲を見極める工程に時間がかかる場合があります。

医療機関から薬局まで——電子処方箋管理サービスが処方・調剤情報をつなぐ仕組み

電子処方箋管理サービスでは、医師・歯科医師が電子カルテシステム等で作成した処方箋を管理サービスに登録します*1。薬局側は管理サービスから処方箋を取得し、薬剤師が薬局システムで調剤内容を登録する流れです*1

この間、患者はマイナンバーカードまたは健康保険証で本人確認・同意を行い、直近から過去3年分の処方・調剤情報をマイナポータルや電子版お薬手帳アプリで閲覧できます*1。医療機関・薬局を跨いだ重複投薬等チェックも、この情報共有によって実効性が高まるとされています*1

システム開発の観点では、電子カルテ・レセコン・薬局システムのそれぞれが、この登録・参照の一連の処理を管理サービスとやり取りできるように改修する必要があります。厚生労働省の補助金資料でも、改修対象は電子カルテシステムやレセプト電算化システム等の既存システムと位置づけられています*6

接続によって、重複投薬や併用禁忌の防止に加え、患者が窓口で支払う費用の抑制や残薬(飲み残し)の削減も期待されています*2。ただし効果を得るには、システム改修だけでなく運用面の定着も欠かせません。

HPKIカードによる電子署名と資格確認——システム側に必須となる要件

電子処方箋の処方箋登録・調剤内容登録には、医師・歯科医師・薬剤師によるHPKI(Healthcare Public Key Infrastructure、医療分野の公開鍵基盤)を使った電子署名が組み込まれています*1。医師法施行規則が求める記名押印・署名の義務は、電子処方箋でも変わりません。

HPKIカードは資格を電子的に証明する機能と、電子的な押印に相当する電子署名の機能を兼ね備えます*5。日本医師会電子認証センターは、電子処方箋や診療情報提供書へのHPKI電子署名がカードの利用場面になると説明しています*5

システム開発では、カードリーダーの接続やオンライン資格確認端末との連携が必要です。厚生労働省の補助金資料でも、資格確認のためのカードリーダー導入費用が対象経費として挙げられています*6。医師・薬剤師個人によるHPKIカードの取得手続きと、システム側の対応は別の作業として進めることになります。

HPKIカードは医師・歯科医師・薬剤師といった職種ごとに発行元が分かれており、取得は個人単位での申請になります*5。医療機関側でカードの発行状況を職員ごとに把握しておくことが、システム稼働後の運用をスムーズにします。

リフィル処方箋・マイナ保険証連携で増える改修項目

医師のシステム利用

リフィル処方箋(症状の安定した患者が一定期間内に3回まで反復利用できる処方箋)は、令和4年度診療報酬改定で導入された制度です*1。中央社会保険医療協議会の資料によれば、算定回数は令和4年5月の21,025回(全処方箋の0.04%)でした*1。その後、令和5年3月には35,914回(0.05%)まで増えています*1

件数としては全処方箋の一部にとどまりますが、利用は緩やかに広がっている状況です。電子処方箋でリフィル処方箋を扱うには、システム側でリフィル回数の管理機能を追加する必要があります*1

マイナ保険証(健康保険証として利用するマイナンバーカード)による資格確認は、電子処方箋の基盤となるオンライン資格確認等システムと直結しています*1。厚生労働省には医療情報化支援基金(電子処方箋の導入・機能拡充を対象とした国の補助制度)があります*6。リフィル処方箋やマイナンバーカードによる電子署名対応を新機能として、基本機能と同時に導入する場合の補助が用意されています*6

補助上限額は施設の種別で異なります。同基金の資料によれば、電子処方箋システムを初期導入する場合の補助上限額は診療所27.1万円、薬局27.7万円です*6。院内処方機能を同時に導入する場合は、診療所35.9万円、薬局30.2万円まで上限が上がります*6。薬局の補助対象導入期限は令和8年9月までとされており、対応を検討する際は最新の要綱を確認する必要があります*6

対応システム開発を外注するときの確認ポイント——工数とリスクの見極め

電子処方箋対応のシステム開発を内製で担うには、複数領域の知識が必要です*1*5。電子カルテ・レセコンの改修、オンライン資格確認基盤との接続、HPKI電子署名の組み込みに加え、医療保険制度や関連法令の理解も欠かせません。

具体的には、電子処方箋管理サービスとの接続仕様の理解が必要です*1。オンライン資格確認等システムとのデータ連携、既存の電子カルテ・レセコンのデータ構造の把握など、専門知識も求められます。これらを兼ね備えた担当者を確保できるかが、内製の実現性を左右します。

改修範囲の見極めを誤ると、資格確認との接続不備によって処方箋の登録・取得に失敗し、窓口業務が止まるおそれがあります*1。院内処方機能やリフィル処方箋への対応漏れも、後から追加改修の手間とコストを生む要因になります。

専門パートナーに委託する場合は、電子カルテ・レセコン・薬局システムいずれの改修経験があるか、資格確認基盤との接続実績があるかをまず確認します*6。内製では既存の運用担当者が通常業務と並行して対応することになり、監査や検証に割ける時間が限られる場合があります。

外注する場合の進め方は、現状システムの調査、改修要件の定義、電子処方箋管理サービスとの接続開発、資格確認基盤との連携テストという順に進むのが一般的です。各工程で医療機関側の運用担当者と委託先との確認が必要になるため、コミュニケーションの負荷も見込んでおく必要があります。

。対象システムの規模や新機能の同時導入有無によって必要な工数は変わるため、現状のシステム構成を診断したうえで内製・外注を検討することが実務的です。

まとめ:電子処方箋対応システム開発で押さえる3つの判断軸

本稿では電子処方箋への対応に必要なシステム開発の範囲を、内閣官房・厚生労働省・支払基金等の公式情報をもとに整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、電子処方箋の対応とは電子カルテ・レセコン・薬局システムを電子処方箋管理サービスに接続する開発であり、2023年1月から運用が始まっています*1*2。第二に、HPKIカードによる電子署名、リフィル処方箋やマイナ保険証連携といった新機能への対応で、改修範囲は基本機能以上に広がります*1*5*6。第三に、2024年3月時点で医療機関の導入率は薬局より大きく下回っていました*1。対象システムの規模や新機能の同時導入有無によって工数は変わり、内製と外注の判断材料になります。補助制度の期限も踏まえ、早めに現状システムの棚卸しから着手することが望ましいと言えます*6

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、医療機関・薬局のシステム保守・運用を元請(プライムベンダー)として受託しています。電子カルテ・レセコンの改修調査から、電子処方箋管理サービスへの接続開発、HPKI認証・資格確認基盤との連携まで一貫して対応する体制を整えています。既存システムへの影響を抑えながら対応を進めたい医療機関様は、現状の構成診断からご相談いただけます。

よくある質問

電子処方箋の対応システム開発は、電子カルテやレセコンの改修だけで完了しますか。

電子カルテ・レセコンの改修に加え、薬局システムとの接続やオンライン資格確認基盤との連携が必要です*1*2。HPKIカードによる電子署名の組み込みも欠かせません*5。改修範囲は基本機能とリフィル処方箋等の新機能で異なるため、事前の要件確認が大切です*6

HPKIカードの導入は医療機関側のシステム開発の負担になりますか。

HPKIカード自体は医師・薬剤師が個人で取得する資格証明ですが、システム側にはカードリーダーの接続やオンライン資格確認端末との連携が必要です*1*5。厚生労働省の補助金資料でも、カードリーダー導入費用は補助対象経費として位置づけられています*6

リフィル処方箋に電子処方箋で対応するには、追加の改修が必要ですか。

リフィル処方箋は電子処方箋の新機能として、基本機能とは別に扱われています*6。リフィル回数の管理などの機能をシステムに追加する必要があります*1

電子処方箋管理サービスの導入補助金はいつまで利用できますか。

厚生労働省の医療情報化支援基金による補助制度では、薬局の補助対象導入期限が令和8年9月までとされています*6。医療機関側の期限や補助上限額は施設の種別によって異なるため、最新の要綱を事前に確認する必要があります*6

電子処方箋対応のシステム開発を外注する場合、何を確認すればよいですか。

電子カルテ・レセコン・薬局システムいずれかの改修実績があり、オンライン資格確認基盤との接続経験がある業者を選ぶことが大切です。改修範囲の切り分けや検証環境での確認方法を、契約前にすり合わせておくとトラブルを抑えやすくなります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


ITアウトソーシング・システム開発のご相談はLASSICへ

元請(プライムベンダー)として、貴社の課題に合わせた体制構築・開発支援をご提案します。まずはお気軽にご相談ください。

無料相談はこちら

ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。

  1. *1 出典:内閣官房「電子処方箋とは/医療DXの推進に関する工程表」(令和5年6月2日 医療DX推進本部決定・令和5年度全国厚生労働関係部局長会議説明資料抜粋、令和5年11月10日中央社会保険医療協議会総会資料抜粋を含む)(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_gyozaikaikaku/taiwa8/taiwa1.pdf
  2. *2 出典:社会保険診療報酬支払基金「電子処方箋管理サービス」(https://www.ssk.or.jp/datahealth/s_z_04.html
  3. *3 出典:厚生労働省「電子処方せん対応の医療機関・薬局についてのお知らせ」(2026年6月28日時点)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/denshishohousen_taioushisetsu.html
  4. *4 出典:デジタル庁「電子処方箋の導入状況に関するダッシュボード」(https://www.digital.go.jp/resources/govdashboard/electronic-prescription
  5. *5 出典:日本医師会電子認証センター(https://www.jmaca.med.or.jp/
  6. *6 出典:厚生労働省「医療情報化支援基金(電子処方箋)等の補助について」(https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001208233.pdf


View